ERPの種類
ERPはEnterprise Resource Planningの略称で、企業経営の基本とも言えるヒトやモノ・カネなどの資源を有効に活用し、生産性を高めていくという考え方です。その考え方を採用した経営効率化システムをERPシステム、または単にERPと呼びます。
ERPには、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つの種類があります。
クラウド型ERPは、インターネットを介してクラウド上に構築されたシステムを利用するタイプです。アップデートやメンテナンスは管理者が行うため自由度は低くなりますが、サーバーの準備や環境構築が不要な点はメリットと言えるでしょう。
対してオンプレミス型は、自社でサーバーを準備しERPを構築するタイプです。クラウド型に比べて導入費用はかさむものの、自社に合わせたカスタマイズが可能で、セキュリティ面の安心度が高い点がメリットと言えます。
ERPの選び方
クラウド型・オンプレミス型それぞれ多数のERPがありますが、導入を検討する際は、業務範囲や搭載機能、サポート体制を事前にチェックしておくことが大切です。
具体的なERPの選び方を見ていきましょう。
業務範囲で選ぶ
例えば、人事部門で使いたいのであれば勤怠管理や給与計算、管理部門であれば生産管理や在庫管理、販売部門であれば販売管理や顧客管理など、部門によって行う業務は異なります。
対応できる範囲はERPによって異なるため、自社が効率化したいと考える業務範囲に合ったERPを選ぶことが大切です。効率化したい業務の範囲を明確にすれば、どのERPを選べば良いか絞り込めるようになるでしょう。
機能で選ぶ
ERPには、それぞれ強みや弱みがあります。もし、業界特有のルールがある場合は、それに対応できるERPを選ばなければいけません。
どれだけ高機能なERPを選んでも、結局使わない機能ばかりであれば意味がないでしょう。コストの無駄にもつながりかねません。導入前に、搭載されている機能が自社の目的にマッチするかをしっかりと確認しましょう。
サポート体制で選ぶ
ERPを導入し実際に運用していくのは自社の社員です。導入が決まれば、ERPの使い方をレクチャーする必要が出てくるでしょう。
その際に、eラーニングによる活用支援や24時間対応できるサポート体制があれば、「導入後に使い方が分からず利用しなくなった」という事態を避けられます。
サポート体制が整っていれば、トラブル発生時にも相談が可能です。オンプレミス型の場合は自社でメンテナンスを対応することもありますので、サポート体制については事前に確認しておくことをおすすめします。
【大企業向け】おすすめのERP
それではここから、実際のERPを見ていきましょう。
まずは、大企業におすすめしたい製品とその特徴を紹介します。
Microsoft Dynamics 365
Microsoft Dynamics 365は、Microsoftが提供するグローバルなERPです。
営業・マーケティングや財務、カスタマーサポートなど、さまざまな機能によってあらゆる部門の業務を効率化します。ERPとCRMを統合したシステムなので、CRMツールとしての機能が欲しい企業にも向いていると言えるでしょう。
日頃からOfficeシステムを使用している企業であればすぐになじめ、機能拡張もできるため、柔軟に対応できるのがメリットです。
SAP S/4HANA Cloud
SAP S/4HANA Cloudは、Webサイトにログインして利用するクラウド型のERPです。
ガイド付きの導入プロセス、かつ誰でもすぐに使える直感的なインターフェースで、スムーズに利用開始できます。アップデートはSAP側で管理されるため、事業を中断させることもありません。
AIや機械学習、RPAなどの最新テクノロジーが搭載され、事業を継続的に改善できる点も魅力です。あらゆる業種に対応でき、業務が広範囲にわたる企業でも安心して導入できるシステムであると言えるでしょう。
HUEシリーズ
HUEシリーズは、日本の大企業のために作られたERPです。
実績に基づく圧倒的な業務の網羅性と追求された利便性で、「働くを変える」システムを提供しています。
製品ラインナップが幅広いだけではなく、さまざまなシステムとの連携も可能です。ECサイトやBIツールなどと連携し、企業のDX推進の基盤としても活用できます。
OBIC7
OBIC7は、業種別にさまざまなソリューションを用意している統合型のERPです。
会計情報を中心とし、人事や給与、販売、生産など、多彩な機能を組み合わせられるのが特徴です。また、クラウド型・オンプレミス型は自社に適した方を選べます。
オービックならではの手厚いサポート体制も魅力の一つです。ユーザーの業種や業務に合わせて最適なチームを編成し、運用をサポートしてくれます。
Biz∫
Biz∫は、ワークフロー分野で高評価を得ている「intra-mart」をベースとして開発された統合型ERPです。
業界別に豊富なテンプレートを用意し、あらゆる企業ニーズに対応しています。特定の業務要件に対応するため、課題別・業界別のソリューションを開発しているのが強みです。
また、バックオフィスの最適化のため、AIやRPAなどを活用したさらなる業務効率化を実現しています。
【中堅企業向け】おすすめのERP
次に、中堅企業向けにおすすめのERPを紹介します。
大企業ほど社員数は多くないものの、独自の技術や製品をもち、特定の分野に精通している中堅企業が多くあります。
Oracle Netsuite
Oracle Netsuiteは、世界33,000社を超える企業で採用されている統合型ERPです。
人事管理や在庫管理などのERP機能だけではなく、顧客管理やEコマースにまで対応できるのが特徴です。
海外展開にも柔軟に対応しょうかできるため、今後も拡大していく中堅企業のビジネスの基盤を作るのに適したERPであると言えるでしょう。
GLOVIA iZ
GLOVIA iZは、富士通が提供する「経営に革新を 企業に変革を」をコンセプトに掲げたERPです。
全社の情報を一元化し経営情報を可視化できる他、コミュニケーション機能を活用し、普及が進むテレワークにも対応できます。
経営・会計・人事・就業・販売・貿易・生産の7つの業務と基盤をラインナップし、一括導入と段階的導入を選べるのも魅力です。
GRANDIT
GRANDITは、コンソーシアム企業から生まれた“進化系”ERPです。
GRANDIT社が開発を担当し、コンソーシアムのパートナー企業が販売を請け負っています。パートナー企業がサポートする業種は多岐にわたり、かつそれぞれが独自のノウハウを持っているため、複数社のノウハウを集結した先進的なERPの構築を実現できているのが強みです。
常に進化し続けるERPとして、今後も注目していきたい製品の一つと言えるでしょう。
multibook
multibookは、海外に拠点をもつ企業を強力にサポートしてくれるERPです。
海外拠点の管理に適したクラウド型会計とERPを実装しています。売上の大きい拠点には大型のERPを導入し、中小規模の拠点にmultibookを導入すれば、規模に適した無駄のないシステム投資が可能です。
充実した内部統制支援機能を搭載しており、海外拠点の管理レベルを引き上げるのにも貢献します。
SAP Business ByDesign
SAP Business ByDesignは、一元化されたソリューション上で財務や販売、在庫管理などあらゆる業務に対応したERPです。
成長の著しい中堅・中小企業をメインターゲットとした製品で、必要な管理機能が一つにまとまっています。業種別に追加できるオプション機能も多数あり、海外展開にも強いのが特徴です。
【中小企業向け】おすすめのERP
続いて、中小企業向けにおすすめのERPを紹介します。
中小企業には、余分なコストがかからず業界や業務に特化したものや、企業の成長に合わせて自由度高く設定できるERPがおすすめです。
マネーフォワード クラウドERP
マネーフォワード クラウドERPは、最短1ヵ月からスモールスタートできるクラウド型のERPです。
会計や人事労務はもちろんのこと、あらゆるバックオフィス業務をシームレスに連携し自動化します。さまざまなサービスを組み合わせられるため、ユーザー企業の成長に合わせて使えるでしょう。
サービスは1サービスから導入できるため、スモールスタートから始めたい企業にも適しています。
クラウドERP freee
クラウドERP freeeは、経理・会計業務を主体としたERPです。
クラウド型の特徴を活かし、法改正や新機能追加も自動かつスピーディーに対応してくれます。
Salesforceやkintoneと連携すれば、請求書作成や入金管理などもスムーズに行えるようになるのもポイントです。もともとこれらのシステムを使っている企業であれば、より有効的に活用できるでしょう。
PROKAN
PROKANは、わかりやすい・導入しやすい・使いやすい、中小企業のための生産管理システムです。
システムの構成や操作はシンプルで、導入時の負担も少なく済みます。覚えやすく効果が出るのが早いのが特徴です。受注や出荷、発注、仕入れの他、作業指示や日報などをすべてデジタル化し、業務の流れをスムーズにします。
Plaza-i
Plaza-iは、日本の中堅・中小企業、海外進出企業、外資系企業向けのオリジナルERPパッケージです。
統合型ソリューションであり、業態が混在する事業体や類似するようなビジネスモデルを持たない事業者で特に威力を発揮します。すべての画面や帳票をワンタッチで日本語・英語に切り替えられるため、上司が外国の人であっても問題ありません。
Clovernet ERP クラウド
Clovernet ERP クラウドは、財務会計から販売在庫、給与勤怠までオールインワンで効率化できるクラウド型ERPです。
中小企業のバックオフィス全体の業務効率化に加え、経営状況の可視化、IT運用負荷の低減を実現します。経営層、経理や人事部門、情報システム部門それぞれが持つ課題を支援し、悩みを解決します。
【業界特化型】おすすめのERP
次に、業界特化型でおすすめのERPを紹介します。
特殊な業界は、業務に対応できる機能を搭載していることが必須条件となります。最適なシステムを見つけ、失敗のない導入につなげてください。
クラウドERP GEN
クラウドERP GENは、さまざまな業種に対応できる自由自在なクラウド型ERPです。
販売も生産も在庫も、あらゆる業務をクラウド上でどこからでもスムーズに進められるように開発されています。自由自在な操作性と変幻自在な拡張性が特徴です。
商社・メーカー・アパレル・化粧品/食品・IT・工場・プロジェクトの7つのサービスを用意しており、事業に近いものを選んで使えます。
クラウドERP ZAC
クラウドERP ZACは、案件・契約・プロジェクト単位で業務を進行する業種におすすめのERPです。
経営管理や商慣習、機能要件など、業種に特化したソリューションを提供します。広告業やソフトウェア開発業、コンサル業、PR業など、案件やプロジェクト型のビジネスに特化しているため、業界特有の商慣習にうまくフィットします。
クラウド型かつパッケージ化されたサービスなので、メンテナンスコストが排除されるのも嬉しいポイントです。
MA-EYES
MA-EYESは、企業の業務全般をサポートする統合型基幹業務ERPパッケージです。
プロジェクト型企業向けと広告業界向けの2つのパッケージで構成されているのが特徴です。プロジェクト型企業向けは、プロジェクト管理を中心とした機能を多数搭載し、広告業界向けは売上やコストを可視化することで経営基盤を強化します。
業界別・機能別にソリューションを準備し、業界固有の業務フローに適したものを提供しています。
Reforma PSA
Reforma PSAは、クリエイティブ業のための案件管理システムです。
業界特化型の設計で、販売管理と工数が連携し、プロジェクト損益管理を実現しています。必要な機能だけを選んで利用できるため、人数の増加が見込まれる企業や部門での導入におすすめです。
サポートツールで導入支援を受けられるため、「難しくて使えない」ということなくしっかりと運用できます。
Infor SyteLine
Infor SyteLineは、世界中の中堅組み立て製造業向けに開発されたERPです。
計画機能や製品設計、受発注などに加え、工程実績や原価管理、会計管理まで、製造業が必要とするあらゆる機能を基本パッケージで提供します。複雑な生産プロセスを簡素化・自動化しており、多くの企業で採用されています。
オンプレミス・クラウドを選択でき、自社に合わせて設定できるのも魅力です。
【オープンソース】おすすめのERP
最後に、オープンソースでおすすめのERPを紹介します。
オープンソース型は構成プログラムを無償で公開しており、基本的に無料で利用できます。
Odoo
Odooは、売上促進やサービスの統合、業務効率化、財務管理など、企業のあらゆる需要に対応できるソフトウェアです。
個々のソフトウェアを統合することで、新しい視点からビジネスの全体を把握できるようになります。さまざまなアプリを連携させて、ワンストップのソリューションの導入が可能です。
いつでも、どこでも、どんなデバイスからでもオンラインで連携されたアプリを利用でき、シームレスに一元化されているのでとても使いやすくなっています。
iDempiere
iDempiereは、業務アプリケーションを開発するためのフレームワークです。
開発フレームワークの一面がありながら、プラグインによる機能拡張で業務アプリケーションの実行基盤も担えます。開発者は作ったプラグインを公開でき、ユーザーはダウンロードして導入できる仕組みです。
購買管理や在庫管理、販売管理、生産管理など一連の機能がすでに実装されており、商用のERPと比較しても遜色ないほどの業務管理機能を有しています。
ERP5
ERP5は、世界中の銀行や官公庁、一般企業などに採用されている、革新的な統合型システムです。
Resource・Item・Node・Movement・Pathの5つの要素で構成されており、これらを理解して利用することで柔軟なシステムを構築できます。つまり、自社のニーズに適したERPを構築することができるのです。
汎用性が高く、パッケージ型のERPが利用しにくい特殊な業種や業界でも利用しやすい点が魅力です。
Compiere
Compiereは、ERPとCRMを統合したオープンソースのシステムです。
CRMを統合したERPで、主に物販・物流業やサービス業を営む中小企業向けのコンパクトな設計です。オープンソースなので、インストールしてからじっくりと試せます。
Webのインターフェースとウィンドウズインターフェースの2つのインターフェースがあり、ユーザーの利用環境によって選択が可能です。
ERPNext
ERPNextは、ビジネスを運営する上で役に立つ1,000以上のソリューションを提供するERPです。
SlackやDropbox、shopifyなどさまざまなアプリと連携でき、ユーザー数の制限もなく無料で利用できます。シンプルなダッシュボードも使いやすいポイントの一つと言えるでしょう。
製品保証やアドオンが提供される有料プランもあるため、自社にあったプランを選択できるのも魅力です。
【kyozon編集部ピックアップ】あわせて活用したい経営管理サービスをご紹介
ERPは業務を効率的に行い、事業の成長を促すことができるサービスですが、ERP以外にも経営管理に役立つサービスが存在します。
ここからは、合わせて活用したい経営管理サービスをご紹介します。
SUPPORT+iA
経理に関わる複雑なバックオフィス業務アウトソーシングサービス SUPPORT+iA
内容 | |
提供会社 | グランサーズ株式会社 |
価格・プラン | 75,000円~/月 ※詳細は要問い合わせ |
無料トライアル | なし |
主な特徴 |
|
SUPPORT+iAは「お客様に一番近い距離で一緒に伴走するパートナー」をモットーとして、ハイレベル人材チームで業務をサポートするオンラインアシスタント・秘書代行サービスです。
SUPPORT+iAには、公認会計士や税理士などが多数在籍。プロフェッショナル人材が企業をサポートする体制が整っており、会計や財務など専門性の高い業務を安心して任せることができます。
月々75,000円から利用が可能で、必要な業務だけを依頼することもできます。社内のリソースを有効活用しながら、企業がコア業務に集中できる環境を作り出します。
プロカン
内容 | |
提供会社 | 株式会社シービーティー |
価格・プラ |
|
無料トライアル | あり |
主な特徴 |
|
プロカンはIT・システム業、イベント・広告・クリエイティブ業、仕業・コンサルティング業界など、売上原価が変動しやすく、管理業務が煩雑になりやすい業界におすすめのシステムです。
プロカンはプロジェクトごとの収支管理に特化したクラウド型基幹業務システム。受注後の管理会計、収支管理などを強力にサポートします。担当者が作業しやすい、直感的なUIも特色のひとつです。
利用料金とアカウント費を合計したシンプルな料金プランなので、リーズナブルに導入が可能。電話やメールによるサポート体制も整っています。
IPOコンサルティング【グランサーズ】
内容 | |
提供会社 | グランサーズ株式会社 |
価格・プラン | 要問い合わせ |
無料トライアル | なし |
主な特徴 |
|
IPOコンサルティングは、IPOに至るまでに必要とされる監査関連業務、資本政策の策定、管理体制の整備をはじめとして、会計支援やガバナンス支援、各種の専門アドバイザリー業務などを提供するサービスです。
「IPOを実現するためのパートナー」として、監査法人や証券会社が入る前に課題を抽出し、IPOまでのロードマップを作成、スムーズな進行を実現します。
豊富なIPO支援&達成の実績をもとにして、クライアントの成長ステージに合わせた成長支援も可能。将来のインハウス化を見据えたニーズにも対応できます。
まとめ
ERPの導入は、業務を効率化する他、企業経営の全体を可視化し、事業の成長を促します。
導入を検討する際は、ERPで行う業務範囲を明確にし、搭載機能やサポート体制を比較しながら選ぶことが大切です。
業務全体を統合するものであることから、機能や形式はシステムごとに大きく異なります。それぞれのシステムの機能や価格、サポート、操作性などを総合的に比較し、自社に適したものを見つけてみてください。