予実管理とは
予実管理とは、企業が設定した予算と毎月や四半期ごとの実績の乖離差を分析する作業です。企業の多くは1年ごとに経営目標を定め、目標を達成するために予算を設定します。
しかし、予算を設定するだけでは企業目標を達成できるわけではありません。目標の数値と実績の乖離を分析し、事業の課題を改善していく必要があります。
実際に、予実管理を行う際には予実管理表にデータ入力していくことが一般的です。
- 予実管理表・・・予実管理を数値化し、可視化しやすくした表のこと。
予実管理表を上手に活用し、課題の抽出と改善策を打ち出すことが企業には求められます。予実管理の実践方法を正しく理解して、企業の経営力を底上げしましょう。
予実管理を行う3つの目的
予実管理を行う目的は3つあります。
- 予算と実績の乖離がある部分を改善する
- 来期の目標を設定する
- 運転資金や設備資金などを調達する
予実管理を行うことで企業の目標に対する成果を定量的に評価できます。予実管理は企業の未来をよくするために活用する手段なので、目的をしっかり押さえておきましょう。
予算と実績の乖離がある部分を改善する
予実管理をしておくことで、予算と実績状況の比較がひと目でわかります。予算と実績に乖離差がなければ、とくに問題はありません。
しかし、予算と実績に乖離差がある場合は注意が必要です。乖離差が大きいほど、何かしらの原因があり、改善余地があります。
企業の経営は常に安定しているわけではありません。企業の経理状況を把握することで軌道修正し、安定した経営を実現できます。つまり、経理状況を正確に把握するためにも予実管理を行うことが企業には求められているわけです。
来期の目標を設定する
来期の目標を設定する際に、予実管理を活用します。昨年度や今年度の成果はその年の予実管理を確認すればすぐに把握できます。
過去の実績から、来期の目標や予算を決められるのが予実管理を行う目的です。漠然とした目標よりも、数値化された目標のほうが具体的で社員もイメージしやすいでしょう。
「売り上げを昨年度より上回る」よりも「来年度は売り上げ1億円を達成する」のほうがゴールは明確です。
予実管理は、企業の未来設計をする上でも重要な役割があります。
運転資金や設備資金などを調達する
運転資金や設備資金を調達する際に金融機関などに予実管理を求められる場合があります。
すべての企業が金融機関から資金調達するわけではないでしょう。しかし、資金調達する企業は予実管理を実施することをおすすめします。
金融機関は貸し倒れリスクを回避するため、企業の経営状況を正確に判断しなければなりません。企業の経営状況を判断する際に、必要となるのが事業計画書です。事業計画書をもとに企業の信頼性や安定性などを金融機関は判断します。
しかし、経営能力が高いかどうかを判断するための材料として、事業計画書だけでは不十分なことがあります。そのときに求められるのが予実管理表です。
予実管理を適切にできている企業は経営能力が高いと判断してもらえる場合があるため、資金を調達しやすくなるでしょう。
適切に予実管理を行う5つの手順
適切に予実管理を行う5つの手順を解説します。
- 手順1.予算設定する
- 手順2.予算と実績のチェックをする
- 手順3.問題点と課題を抽出する
- 手順4.改善策を見つけ出す
- 手順5.改善策を実行に移す
初めて予実管理を行う企業は、何から手をつければいいかわからないと悩んでいることでしょう。予実管理は専用ツールやExcelで簡単に始められます。
まずはExcelで5つの手順に沿って始めてみましょう。
手順1.予算設定する
手順1.として、予算を設定しましょう。部署ごとに事業を棚卸して、それぞれの事業に予算配分を決めてください。
予算が決まらなければ、実績と比較して評価することは不可能です。実際に予算を決めるときには過去の実績などを勘案して設定しましょう。
手順2.予算と実績のチェックをする
手順2.に予算と実績をチェックしましょう。予算と実績を比較することで、乖離差が明確になります。
- 乖離差が小さい・・・概ね予算どおりで問題点はあまりない
- 乖離差が大きい・・・予算とズレがあり問題点がある
手順3.問題点と課題を抽出する
予実管理から、事業の状況が悪いものについては問題と課題を抽出しましょう。予算と実績に乖離があることには原因があるはずです。
(例)
- 予算の設定が間違っていたのではないか
- 事業にかかる人件費が多いのではないか
- 課題整理ができず事業の進捗が遅れている
乖離している原因を洗い出しましょう。原因を把握することで、状況の悪い事業の弱点が浮き彫りになり対策案を考えられます。
とはいえ、いきなり問題点を探そうといわれても難しいと思う方もいるでしょう。そういう方は、疑問に思うことや感じたことなど些細なことでいいので列挙するようにしてください。
列挙したなかに問題点が含まれていることもあります。
手順4.改善策を見つけ出す
事業の原因と問題点を把握できたら、軌道修正できそうな改善策を考えましょう。改善策は事業を担当しているグループで模索することをおすすめします。
事業を主に担当しているのは特定の社員かもしれませんが、問題をグループで把握することが重要です。もしも、別の事業で問題が起きたときに、過去の経験から対策をスムーズに提案できることもあるでしょう。
担当者だけで事業の責任を負うのではなく、グループや部署など全体で情報を共有しながら解決しましょう。
手順5.改善策を実行に移す
最後の手順として、改善策をグループ全体で共有できたら実行に移しましょう。そして、改善策の状況を定期的にチェックしてください。
事業の改善が見られるのであれば継続で問題ありませんが、改善の効果が薄い場合はさらなる修正が必要になります。予実管理とは手順1.から手順5.を繰り返し行うことです。
適切な予実管理を行うには、PDCAサイクルを回し続けることが重要だと覚えておきましょう。
予実管理を行う際に気をつけるべき3つのポイント
予実管理を行う上で、気をつけるポイントが3つあります。
- 予算にこだわりすぎない
- PDCAサイクルを止めない
- 何かしらの課題を挙げる
予実管理を行うことで企業が得られるベネフィットをこの記事の「予実管理を行う3つの目的」で説明しました。しかし、予実管理における注意点を知っておくことも大切です。
注意するべきポイントを把握しておけば、不測のトラブルに陥ったときでも慌てずに対処できるようになります。
予算にこだわりすぎない
予実管理をする上では、予算にこだわりすぎないことが大切です。予実管理のスタートは予算を設定することです。しかし、予算設定に時間をかけすぎて予実管理を思うように進められないという失敗例もあります。
予算を細かく設定することで融通が効かなくなることもあるため、ある程度余裕をもたせておくようにしましょう。
イメージとしては鉛筆(100円)と消しゴム(50円)を買うときに150円ちょうど渡すのではなく、不測の事態を想定して200円渡しておくようなイメージです。
PDCAサイクルを止めない
PDCAサイクルを止めないことこそ、予実管理を成功させる鍵です。予実管理は予算を決めて終わり、予算と実績を比較して終わりではありません。
予算と実績を適切に評価し、改善策を見つけ、よりよい企業経営を目指す必要があります。そのため、予実管理においてPDCAサイクルを止めてはいけません。
- 「課題を見つけ改善する」
常に上記の考え方を持ち、繰り返すことで精度の高い予実管理ができるようになります。そして、今以上に企業の規模も成長させられるでしょう。
何かしらの課題を挙げる
予算と実績を評価したときに、乖離差があまりなく事業が順調に進んでいることもあります。どれほど順調に事業が進んでいても、評価はするようにしましょう。そして、何かしら課題や気になるポイントを洗い出すよう心がけてください。
例えば、プランAが順調に進んでいるなら、プランA’へ改良を加えたら、さらに事業規模が大きくなるのではないかと考えることです。
現状に満足するのではなく、さらに成長させられるような課題と改善策を見つける努力をしましょう。
まとめ:予実管理で企業の経営基盤が強化される
予実管理は企業を成長させるためには必要不可欠です。なかには予実管理は「不要」と考える方もいるでしょう。
しかし、予実管理する目的は確実に存在します。
- 予算と実績の乖離がある部分を改善する
- 来期の目標を設定する
- 運転資金や設備資金などを調達する
単に予実管理するのではなく、PDCAサイクルを繰り返すことが重要です。また、一部の担当で評価するのではなく、グループもしくは部署単位で議論し状況把握しましょう。
正直な話、ゼロから予実管理を始めるのは大変かつ面倒な作業に感じるかもしれません。しかし、Excelや予実管理ツールを活用すれば誰でも実践可能です。
予実管理を適切に行うことで企業の経営は間違いなく強化できます。予実管理を実践して企業の価値を今以上に高めていきましょう。