広告運用で自動化できる業務は？
広告業務は、一般的に入札調整、予算配分、分析、レポーティングの4つの主要な業務に大別されます。その中でも、主に自動化が可能な業務は、キーワードの抽出、入札・予算配分、そしてレポート作成です。これらの業務を自動化することにより、広告運用の効率が向上し、時間とリソースを節約できます。
以下にて、それぞれどのような業務内容を自動化できるのか、詳しく紹介します。
キーワード抽出
キーワード抽出は、広告運用において自動化できる重要なプロセスです。特にリスティング広告では、ユーザーがよく検索するキーワードや各キーワードのクリック単価を踏まえて広告を出稿する必要があります。こうした作業を、ツールの使用により自動化することができます。
具体的には、広告出稿すべきキーワードを抽出し、その月間の検索ボリュームやクリック単価の一覧を生成することができます。これにより、広告運用の効率が向上し、適切なキーワードを選定するプロセスがスムーズに行えます。
入札・予算配分
Web広告はオークション形式で出稿され、日々の予算配分に応じて入札を調整することが必要です。入札はリアルタイムで行われるため、常に入札の管理が必要となりますが、この業務をツールに任せることで自動化することができます。
広告の入札管理を自動的に行い、目標達成のための入札単価の最適化と予算の適切な配分が実現します。
レポート作成
広告運用において、指標や効果の定期的な計測とレポート作成は重要なタスクです。これには、アカウント全体のデータを表示したサマリーレポートから、キャンペーン別や広告グループ別、さらには日別や時間帯別、性別・年齢などデモグラフィックで区切ったものまで、さまざまなタイプのレポートが含まれます。
通常、手動でレポートを作成する場合、各広告媒体の管理画面を開き、必要なデータをダウンロードし、グラフや表にまとめるという作業が必要です。また、複数の広告媒体を運用している場合、それぞれの媒体に対して同じ作業を繰り返さなければならず、大きな人的リソースを消費することになります。
こうしたレポート作成業務を自動化することで、時間の削減や手作業によるミスの削減が実現できます。さらに、ツールによっては、必要なデータが分析しやすく作成されたテンプレートを保有しているものもあります。こうした機能を活用することで、広告運用の効率性を向上させ、円滑な運用改善を進めることができるでしょう。
自動化のデメリットとは
広告運用で自動化できる業務について詳しく見てきました。自動化することで、工数削減や業務効率化、複数の広告アカウントを一元管理できるなど、数々のメリットを享受することができます。
一方で、自動化することによって生じるデメリットもあります。広告運用の基礎知識が必要であったり、運用ノウハウが蓄積しづらい、運用が意図しない方向に進んでしまう、といった面が考えられます。これらの点は、何も対策をせずツールに任せきりになることで生じるものばかりです。懸念されるデメリットを把握し、事前に対策を打つことができるよう、それぞれのポイントについて下記で詳しく見ていきましょう。
広告運用の基礎知識が必要
広告自動化ツールは初心者でも簡単に扱えるものではありません。広告運用を効率化し、成果を向上させることが目的であるため、ツールを効果的に利用するためには、広告運用に関する基礎知識が不可欠です。
広告のターゲティングやキーワードの設定、予算配分など、広告運用には様々な要素が絡んでいます。基本的な知識を持っていなければ、ツールを適切に設定できず、広告の効果を最大限に引き出すことが難しいでしょう。管理が難しくなり、逆に負担が増えてしまう、という懸念もあります。したがって、広告運用を自動化する前に、適切な基礎知識を身につけることが大切です。
運用ノウハウが蓄積しづらい
自動化できる作業は便利な反面、なぜその方法を選び、どのように実施するのかといった運用ノウハウが蓄積されず、広告運用においてツールがないと成り立たない状況が生まれがちです。この状況では、さらなる改善や効果的な施策の発見が難しく、現状の維持に留まってしまいます。
ツールを活用しつつ、運用ノウハウを蓄積するためには、成果に対して常に要因を考え、なぜ自動化ツールがその運用を実施したのか、どのような運用をすべきなのかを積極的に検討することが不可欠です。ツールを単なる手段とせず、知識をキャップアップし続ける姿勢が、広告運用の成果向上につながります。
運用が意図しない方向に進む可能性
広告アカウントの運用において、自動化ツールを導入すると、意図しない方向に進むことがあります。例えば、CPA（Cost Per ActionまたはCost per Acquisition／顧客獲得単価）の高い広告文に配信が偏り、広告予算の大部分を消費してしまったり、気づかないうちに特定のキーワードに予算が消化されてしまったり、といったことが起こり得ます。さらに、自動運用ツールが提案した最適化案には、ネガティブなキーワードや理解しづらい広告文案が含まれていることもあります。
これらの課題を回避するためには、自動運用を導入しても、常に自身の目で運用内容を確認し、意図しない方向に進んでいないかを注意深く監視することが重要です。自動運用ツールは効率化に寄与する一方で、人間の判断と組み合わせて運用することが成功の鍵となります。
広告運用の自動化で成果を上げるコツ
ここまで、自動化におけるデメリットについて見てきました。では、広告運用の自動化でうまく成果を上げるには、どのようなことをすれば良いのでしょうか？
初期設計やデータの種類や量、運用内容の把握など、自動化のメリットを享受しながらより運用を効率化させるコツがあります。具体的にどのような対応が効果的なのか、それぞれ見ていきましょう。
初期設計を行う
広告運用の手法において、従来は、広告キャンペーンをキーワードやターゲティングごとに詳細に分割するのが一般的でした。しかし、現在では人工知能（AI）の活用が増え、キャンペーンの成功においてデータの量と質が重要視されています。多種多様のデータをAIに学習させるようなキャンペーン設計をすることで、自動化機能のポテンシャルを最大限引き出すことができます。
そのためにも、初期設計段階でシンプルなアカウント設計を心がけることが大切です。キャンペーン数を必要以上に増やさず、一つのキャンペーンに対してなるべく多くのデータが貯まりやすい設計にしましょう。
データの種類と量を増やす
先述した通り、効果的な広告運用を実現するためには、データの種類と量を増やすことが重要です。
まず、多様なキーワードや広告文を用意し、学習材料となるデータをツールに提供します。バリエーション豊富なデータを準備することで、機械学習アルゴリズムがアカウント内のデータを自動的に分析し、改善を進めやすい環境を構築できます。
また、1つの広告グループ内にデータを集中させることで、ツールが十分な情報量をもとに、運用改善のタイミングや改善点を検討することができるようになります。このように、データを豊富に準備し集約させることで、広告運用最適化の促進ができると言えます。
定期的に運用内容の見直しを
広告運用を自動化していても、運用内容を定期的に見直すことは非常に重要です。
2週間から1カ月に1度のペースを目安に、広告アカウントをチェックしましょう。機械学習アルゴリズムが「なぜその運用判断をしたのか」を分析し、特定の運用が行われた背景や理由を把握するようにします。必要に応じて、入札価格や入札戦略の変更など、マニュアルでメンテナンスを行いましょう。
このように、自動化に頼りすぎず、定期的な見直し・修正作業を行うことで、広告運用の方向性をコントロールすることができます。人の手によって運用方針を舵取りしつつ、運用の効率化はツールに委ねる、という切り分けをすることで、より良い運用結果を得ることができるでしょう。
まとめ
広告運用で自動化できる業務や、自動化によって生じるデメリット、そして自動化によって成果を上げるためのコツについてご紹介してきました。
広告運用の自動化は、手動では面倒で時間のかかる作業を大幅に効率化できるという魅力があるものの、ツールに任せすぎることで生じるデメリットもあります。自動化ツールをうまく活用しつつ効果も伸ばすためには、定期的に人の目で観測して調整したり、分析を行ったり、運用担当者がきちんとコントロールすることが大切です。
自動化で業務リソースの削減を進めつつ、運用知識やノウハウを取り入れ続け、日々の運用に活かし続けることで、業務効率化と運用成果の両立を実現できるでしょう。
