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企業がオフボーディングでやるべきことチェックリスト|円満な退職体験で優秀な人材とつながりを保つ

投稿日:2025年10月10日 /

更新日:2025年10月9日

企業がオフボーディングでやるべきことチェックリスト|円満な退職体験で優秀な人材とつながりを保つ
● 人材マーケティング

退職手続きを事務的に済ませていませんか?オフボーディングは、企業の評判向上や将来の再雇用(アルムナイ採用)につながる重要な人事戦略です。本記事では、オフボーディングが注目される5つの理由を解説し、退職申し出から退職後まで企業がやるべきことを網羅した実践チェックリストを提供します。円満な退職体験を演出し、退職者を企業の「未来の資産」に変える具体的な方法がわかります。

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オフボーディングとは?オンボーディングとの違いを解説

近年、人事領域で注目度が高まっている「オフボーディング」。この言葉を初めて耳にする方もいるかもしれません。オフボーディングとは、従業員が企業を退職する際に実施される一連のプロセスや体験設計のことを指します。単なる事務手続きに留まらず、退職する従業員との良好な関係を維持し、未来の資産へとつなげるための戦略的な取り組みとして重要視されています。

この概念をより深く理解するために、まずはその基本的な意味と、対義語である「オンボーディング」との違いから詳しく見ていきましょう。

オフボーディングの基本的な意味

オフボーディング(Off-boarding)とは、従業員が退職を申し出てから、最終出社日を迎え、退職後に至るまでの一連のプロセス全体を指す言葉です。具体的には、退職面談の実施、業務の引き継ぎ、貸与品の返却、社会保険などの事務手続き、そして退職後の関係性構築まで、非常に幅広い活動が含まれます。

従来、退職プロセスは必要な事務手続きを滞りなく済ませることが主な目的でした。しかし、オフボーディングでは、従業員が「この会社で働けて良かった」と感じ、ポジティブな印象を持ったまま円満に退職できるような「体験」を提供することに重きを置いています。この従業員体験(EX:Employee Experience)の最終フェーズを丁寧に設計することが、オフボーディングの核となる考え方です。

オンボーディングとの決定的な違い

オフボーディングを理解する上で欠かせないのが、対義語である「オンボーディング(On-boarding)」との比較です。オンボーディングは、新入社員や中途採用者が入社後、組織にスムーズに馴染み、早期に能力を発揮できるよう支援するプロセスを指し、多くの企業で導入されています。

オフボーディングとオンボーディングは、従業員のライフサイクルの両端に位置する重要な人事施策ですが、その目的や内容は大きく異なります。以下の表でその違いを整理してみましょう。

項目オフボーディングオンボーディング
対象者退職予定者新入社員・中途採用者
目的円満な退職、良好な関係の維持、企業の評判向上、組織課題の抽出、再雇用の促進早期離職の防止、組織への適応促進、即戦力化、エンゲージメント向上
期間退職の意思表示から退職後まで入社直後から数ヶ月〜1年程度
主な活動内容退職面談、業務引き継ぎ、貸与品返却、送別会、必要書類の送付、アルムナイコミュニティへの招待入社手続き、社内研修、OJT、メンター制度、1on1ミーティング、目標設定支援

このように、オンボーディングが従業員を組織に「迎え入れ、定着させる」ためのプロセスであるのに対し、オフボーディングは「感謝と共に送り出し、未来の協力者として関係を継続する」ためのプロセスであると言えます。どちらも従業員一人ひとりと真摯に向き合うという点では共通していますが、目指すゴールが明確に異なります。

単なる退職手続きではない!戦略的人事としてのオフボーディング

「退職者=会社を去る人」と捉え、関係が途切れてしまうのは非常にもったいないことです。現代の流動的な労働市場において、退職者は「企業の卒業生(アルムナイ)」であり、将来的に顧客やビジネスパートナーになったり、再び自社に戻ってきたり(再雇用)、あるいは優秀な人材を紹介してくれたりする可能性を秘めた、企業の貴重な資産です。

そのため、オフボーディングは単なる退職手続きとしてではなく、人的資本経営における「戦略的人事」の一環として捉える必要があります。従業員が在籍中に経験するすべての体験を「従業員体験(EX)」と呼びますが、その最後の瞬間である退職時の体験は、企業に対する最終的な印象を決定づけます。最高のオフボーディングを提供することは、企業文化の成熟度を示し、社内外に対する強力なブランディングとなるのです。

なぜ今オフボーディングが重要なのか?企業が注目する5つの理由

終身雇用の時代が終わり、人材の流動化が加速する現代において、オフボーディングは単なる退職手続きではなく、企業の未来を左右する戦略的な人事施策として重要性を増しています。

従業員が企業に在籍する期間全体を「エンプロイージャーニー」と捉え、その最終フェーズである「退職」の体験価値を高めることが、なぜ今、多くの企業から注目されているのでしょうか。ここでは、オフボーディングがもたらす5つの具体的なメリットを解説します。

企業の評判向上とブランディング強化

退職した従業員は、企業の「元」従業員であると同時に、外部の「一個人」として企業を評価する存在になります。特に近年は、SNSや転職口コミサイト(例:OpenWork、転職会議など)の影響力が増大しており、退職者が発信する情報は、企業の採用ブランドや顧客向けのブランドイメージに直接的な影響を与えます。

不満を抱えたまま退職した場合、そのネガティブな体験は瞬く間に拡散され、採用活動の妨げになったり、企業の社会的評価を損なったりするリスクがあります。一方で、感謝とともに円満に退職した従業員は、社外で企業の「アンバサダー(応援者)」となり得ます。彼らが語るポジティブな評判は、求職者にとって信頼性の高い情報源となり、優秀な人材を引き寄せる強力な磁石となるのです。「立つ鳥跡を濁さず」という言葉がありますが、現代では企業側にも「気持ちよく送り出す」姿勢が求められています。

アルムナイネットワーク構築による再雇用や協業

「アルムナイ」とは、企業の退職者や卒業生を指す言葉です。オフボーディングを通じて退職者と良好な関係を維持することは、彼らを「失われた人材」ではなく「社外の貴重な人的資産」として捉え、未来のビジネスチャンスにつなげる「アルムナイネットワーク」の構築を可能にします。

このネットワークは、企業に以下のようなメリットをもたらします。

  • 再雇用(カムバック採用): 他社で新たなスキルや経験を積んだ元従業員は、即戦力として非常に価値の高い存在です。企業の文化や事業内容を深く理解しているため、入社後のミスマッチが起こりにくく、採用コストや教育コストを大幅に削減できます。
  • ビジネスパートナーとしての協業: 退職者が転職先や起業した会社で、新たな取引先や協業パートナーになるケースは少なくありません。信頼関係が構築されているため、スムーズな連携が期待できます。
  • 情報交換: 業界の最新動向や新たな技術、他社の成功事例など、外部にいるからこそ得られる貴重な情報を共有してもらえる可能性があります。

退職者を敵対視するのではなく、長期的な視点で良好な関係を築くことが、企業の持続的な成長を支える基盤となります。

リファラル採用(紹介採用)の促進

リファラル採用とは、従業員や元従業員に知人や友人を紹介してもらう採用手法です。採用コストを抑えつつ、自社の文化にマッチした人材を獲得しやすいというメリットがあります。

このリファラル採用の成功において、オフボーディングの質が極めて重要な役割を果たします。「この会社で働けて良かった」「辞める時も丁寧に対応してくれた」というポジティブな退職体験は、元従業員が自社の魅力を自信を持って語る動機付けとなります。彼らは企業の内部事情を深く理解しているため、紹介する人材とのマッチング精度も非常に高くなります。

逆に、退職時の対応が悪ければ、リファラル採用に協力してくれる可能性はゼロに等しく、むしろ「あの会社はやめたほうがいい」というネガティブな口コミを広める原因にもなりかねません。丁寧なオフボーディングは、最も信頼性の高い採用チャネルの一つを活性化させるための重要な投資なのです。

退職理由の分析による組織改善

オフボーディングのプロセスに含まれる退職面談(イグジットインタビュー)は、組織が抱える課題を可視化するための絶好の機会です。退職を決意した従業員は、利害関係から解放されるため、在籍中には言えなかった率直な意見や本音を語ってくれる可能性が高まります。

退職者の声に真摯に耳を傾け、得られたフィードバックを分析することで、組織の根本的な問題点を特定し、具体的な改善策につなげることができます。これにより、他の従業員のエンゲージメント向上や、将来的な離職率の低下が期待できます。

退職面談では、以下のような多角的な視点から情報を収集し、分析することが重要です。

退職面談におけるヒアリング項目例
カテゴリ主なヒアリング内容改善アクションの例
業務内容仕事のやりがい、裁量権、業務量の適切さ職務分掌の見直し、権限移譲の促進
人間関係上司との関係性、チーム内のコミュニケーションマネジメント研修の実施、1on1ミーティングの導入
評価・報酬評価制度への納得感、給与や待遇への満足度評価基準の明確化、報酬制度の改定
労働環境労働時間、休日、福利厚生、働く場所の柔軟性残業時間の削減、リモートワーク制度の拡充
キャリアパス成長機会の有無、キャリアプランとの整合性キャリア面談の定期実施、社内公募制度の導入

単に話を聞くだけでなく、収集したデータを組織全体で共有し、具体的なアクションプランに落とし込むことで、オフボーディングは強力な組織開発ツールとなり得ます。

情報漏洩などセキュリティリスクの防止

従業員の退職は、企業の重要な情報資産を守る上で、潜在的なリスクを伴います。意図的であるか否かにかかわらず、顧客情報や技術情報、営業秘密といった機密情報が外部に流出する可能性はゼロではありません。

体系化されたオフボーディングプロセスは、こうしたセキュリティリスクを管理し、コンプライアンスを遵守するための重要な防衛線となります。具体的には、以下の対応を確実に行うことで、情報漏洩や不正アクセスといったインシデントを未然に防ぎます。

  • 情報資産の返却・削除の徹底: PC、スマートフォン、社員証といった物理的な貸与品の返却はもちろん、個人所有のデバイスに保存された業務データの削除を徹底します。
  • アカウントの確実な削除: 社内システム、各種クラウドサービス、メールアカウントなど、退職者がアクセスできるすべてのアカウントを最終出社日をもって速やかに停止・削除します。
  • 秘密保持義務の再確認: 退職時に改めて秘密保持契約(NDA)の内容を確認し、署名をもらうことで、退職後も企業の機密情報を保持する義務があることを本人に再認識させます。

これらの手続きをチェックリストに基づいて漏れなく実施することで、企業は自社の知的財産と社会的信用を守ることができるのです。

【実践】オフボーディングで企業がやるべきことチェックリスト

オフボーディングは、退職の意思表示から退職後の手続きまで、一連のプロセスを指します。このプロセスを体系的かつ丁寧に行うことで、退職者は「この会社で働けて良かった」というポジティブな印象を抱き、企業にとっても多くのメリットが生まれます。

ここでは、オフボーディングを3つのフェーズに分け、企業が具体的に何をすべきかを網羅的なチェックリスト形式で解説します。人事担当者やマネージャーの方は、このチェックリストを活用し、自社のオフボーディングプロセスを見直してみてください。

退職申し出から最終出社日までのフェーズ

従業員から退職の申し出があった瞬間から、オフボーディングは始まります。この期間は、業務の引き継ぎを円滑に進めると同時に、退職する従業員との信頼関係を維持するための最も重要なフェーズです。事務的な対応に終始せず、一人ひとりに寄り添ったコミュニケーションを心がけましょう。

退職面談の実施と退職届の受理

退職の申し出を受けたら、まずは1対1での面談(退職面談)の場を設けます。この面談は、単なる意思確認の場ではありません。従業員が安心して本音を話せる環境を整え、組織改善につながる貴重な意見を引き出す機会と捉えることが重要です。

退職面談のポイント

  • 傾聴の姿勢:まずは従業員の話を真摯に受け止め、共感を示します。強い引き止めや詰問は、かえって従業員の気持ちを頑なにし、ネガティブな印象を与えてしまうため避けましょう。
  • 退職理由のヒアリング:「なぜ退職を決意したのか」を深掘りします。人間関係、業務内容、評価制度、労働環境など、具体的な退職理由をヒアリングすることで、組織が抱える潜在的な課題を発見できます
  • 感謝の伝達:これまでの会社への貢献に対して、必ず感謝の言葉を伝えます。これにより、従業員は自分の働きが認められていたと感じ、円満な関係を維持しやすくなります。
  • 今後の手続きの説明:退職日までのスケジュール、業務の引き継ぎ、有給休暇の消化、必要な手続きなどを明確に説明し、従業員の不安を解消します。

面談で退職の意思が固いことを確認した後、正式な「退職届」を提出してもらいます。提出方法や書式については、社内規定(就業規則)に従って案内しましょう。

関係部署への通知と業務の引き継ぎ計画

退職日と最終出社日が確定したら、関係者への通知と業務の引き継ぎを計画的に進めます。このプロセスが滞ると、残された従業員の負担が増大し、業務に支障をきたす可能性があるため、上司が責任を持って管理する必要があります。

通知のタイミングと範囲

退職に関する情報は、社内の混乱を避けるため、適切なタイミングで、適切な範囲に公表することが不可欠です。一般的には、直属の上司からまずチームメンバーに伝え、その後、関係部署や取引先へと段階的に通知を広げていきます。公表のタイミングは、業務の引き継ぎ期間を考慮し、退職日の2週間~1ヶ月前が目安となります。

引き継ぎ計画の策定と実行

後任者が決まっている場合は、退職者と後任者、上司の三者でミーティングを行い、詳細な引き継ぎ計画を立てます。後任者が未定の場合でも、業務が属人化しないよう、誰が見ても分かる形で情報をドキュメント化することが重要です。

  • 引き継ぎ資料の作成:担当業務の一覧、業務フロー、マニュアル、関連資料の保管場所、関係者の連絡先リストなどを作成してもらいます。
  • スケジュール管理:「いつまでに」「何を」引き継ぐのかを明確にしたスケジュールを作成し、上司が進捗を定期的に確認します。
  • OJTの実施:可能であれば、後任者が退職者と並走して業務を行う期間を設け、実践的なノウハウを継承します。

貸与品のリストアップと返却準備

最終出社日にスムーズに返却手続きが行えるよう、事前に会社からの貸与品をリストアップし、退職者本人と共有しておきます。認識の齟齬を防ぎ、返却漏れによる後のトラブルを回避するためです。

主な貸与品の例

  • 健康保険被保険者証(本人・被扶養者分)
  • 社員証、入館証、セキュリティカード
  • 名刺(自身のもの、受け取ったもの)
  • 業務用PC、スマートフォン、タブレット
  • 社用車の鍵
  • 制服、作業着
  • 経費精算用の法人クレジットカード
  • その他、会社から支給された備品や資料

特に健康保険被保険者証は退職日以降使用できないため、最終出社日に確実に回収する必要があります。紛失している場合は、再発行の手続きについても案内しておきましょう。

最終出社日に行うこと

最終出社日は、従業員にとって会社で過ごす最後の一日です。この日の過ごし方ひとつで、会社に対する最終的な印象が大きく変わります。感謝の気持ちを込めて、温かく送り出すための配慮が求められます。

最終挨拶の機会設定

朝礼や終礼、チームミーティングなどの場で、退職者本人から挨拶をする時間を公式に設けることが望ましいです。これにより、本人はお世話になった同僚へ直接感謝を伝えることができ、他の従業員も気持ちよく送り出すことができます。リモートワークが中心の組織であれば、オンライン会議やチャットツールで挨拶の場を設定しましょう。会社として感謝を伝える場を設けることは、退職者を尊重する企業文化の表れでもあります。

貸与品の最終確認と返却

事前に作成した貸与品リストに基づき、人事担当者や上司が立ち会いのもと、返却物の確認を行います。返却漏れがないか、一つひとつチェックしましょう。PCやスマートフォンなどのデバイスは、内部に保存されている私的なデータがないか本人に確認してもらった上で、情報システム部門にて初期化などの適切な処理を行います。全ての貸与品の返却が完了したら、受領書や確認書にサインをもらうと、後のトラブル防止に繋がります。

社内システムのアカウント削除

情報漏洩などのセキュリティリスクを防止するため、退職者が利用していたすべての社内システムのアカウントは、最終出社日の業務終了後、速やかに削除または停止する必要があります。これはオフボーディングにおける極めて重要なセキュリティ対策です。

対象となるアカウントの例

  • 電子メールアカウント
  • ビジネスチャットツール(Slack, Microsoft Teamsなど)
  • グループウェア、社内SNS
  • 勤怠管理システム、経費精算システム
  • 各種業務システム(CRM, SFAなど)
  • クラウドストレージサービスのアカウント

人事部門と情報システム部門が連携し、退職者リストを共有して削除漏れがないよう、徹底した管理体制を構築することが不可欠です。退職日付でのアクセス権限の停止を確実に行いましょう。

退職後に行う手続き

従業員が退職した後も、企業が行うべき手続きは残っています。これらの手続きを迅速かつ正確に行うことは、企業の信頼性を示す最後の機会です。退職者の新しいスタートを円滑にするためのサポートを最後まで行いましょう。

社会保険や雇用保険の手続き

退職に伴い、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険の資格喪失手続きが発生します。これらの手続きは法律で定められており、期限内に正確に行う必要があります。特に、失業手当の受給に必要な「離職票」は、退職者が希望する場合、速やかに発行しなければなりません。

退職後の主な社会保険・雇用保険手続き
手続きの種類企業が行うこと退職者に渡す書類手続きの期限
健康保険・厚生年金保険「被保険者資格喪失届」を年金事務所へ提出健康保険被保険者資格喪失証明書(希望者のみ)退職日の翌日から5日以内
雇用保険「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークへ提出離職票-1、離職票-2退職日の翌々日から10日以内

これらの手続きは退職者のその後の生活に直接影響するため、遅延やミスがないよう、細心の注意を払って進める必要があります

源泉徴収票など必要書類の送付

退職者は、転職先での年末調整や自身での確定申告のために「源泉徴収票」が必要となります。所得税法により、企業は退職者に対して、退職後1ヶ月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。最後の給与計算が確定次第、速やかに作成し、退職時に確認した送付先住所へ郵送しましょう。また、退職者から「退職証明書」の発行を求められた場合も、速やかに対応する必要があります。

アルムナイコミュニティへの招待

すべての手続きが完了した後、ポジティブな関係を継続するための最終ステップとして、アルムナイ(退職者)コミュニティへの招待を検討しましょう。アルムナイネットワークは、再雇用(カムバック採用)やリファラル採用、さらにはビジネスパートナーとしての協業に繋がる貴重な人材プールとなります。

招待する際は、メールや手紙で、退職後も良好な関係を築いていきたいという企業の想いを伝えます。FacebookグループやLinkedIn、専用のアルムナイツールなどを活用し、退職者が気軽に参加できる場を提供しましょう。参加はあくまで任意であることを伝え、企業の都合を押し付けない配慮が大切です。アルムナイとの繋がりは、企業の評判を高め、持続的な成長を支える無形の資産となります。

質の高いオフボーディングを実現する3つのポイント

オフボーディングのチェックリストをただ消化するだけでは、退職者との良好な関係を築くことは困難です。重要なのは、手続きの先にある「従業員体験」をいかに質の高いものにするかという視点です。

ここでは、退職者を貴重な財産と捉え、未来の協力者へとつなげるための3つの重要なポイントを解説します。これらのポイントを実践することで、オフボーディングは単なる事務処理から、企業の未来を豊かにする戦略的人事施策へと昇華します。

感謝を伝えポジティブな従業員体験を創出する

退職者に対する最後の印象は、その後の企業イメージを大きく左右します。在籍期間の長短にかかわらず、企業の成長に貢献してくれたことへの感謝を真摯に伝えることが、ポジティブな従業員体験(EX)を創出する上で最も重要です。

人は最後の記憶が最も強く残る傾向があります(ピーク・エンドの法則)。たとえ在職中に不満があったとしても、最終出社日までの期間に丁寧で温かい対応を受けることで、「この会社で働けて良かった」というポジティブな感情を抱きやすくなります。この感情が、退職後の企業の評判を左右する口コミや、アルムナイとしての協力的な関係につながるのです。

感謝を伝える具体的なアクションには、以下のようなものが挙げられます。

  • 直属の上司からの感謝のメッセージ:業務上の関わりが最も深かった上司から、具体的なエピソードを交えて感謝と労いの言葉を伝えます。
  • 経営層や役員からの声かけ:可能であれば、経営層からも「今までありがとう。今後の活躍を期待しています」といった言葉をかけることで、会社全体として退職者を大切に思っている姿勢が伝わります。
  • 送別会やランチ会の実施:本人が望む場合、部署のメンバーでささやかな送別会を開き、リラックスした雰囲気で感謝を伝える場を設けます。
  • 感謝を伝える手紙や記念品の贈呈:手書きのメッセージカードや、会社のロゴが入った記念品などを贈ることで、形に残る思い出を提供します。

「立つ鳥跡を濁さず」ということわざがありますが、これは退職者だけでなく、送り出す企業側にも求められる姿勢です。誠意ある対応を最後まで貫くことが、企業のブランドイメージを守り、未来のファンを一人増やすことにつながります。

退職面談で本音を引き出し組織改善に活かす

退職面談(エグジットインタビュー)は、組織が抱える潜在的な課題を明らかにするための絶好の機会です。退職を決意した従業員は、利害関係から解放されるため、在職中には言えなかった率直な意見や本音を語ってくれる可能性が高まります。この貴重なフィードバックを真摯に受け止め、組織改善に活かすことが、質の高いオフボーディングの鍵となります。

ただし、形式的な面談では本音を引き出すことはできません。退職者が安心して話せる環境を整え、質問を工夫する必要があります。

本音を引き出すための環境づくり

  • 面談者の選定:直属の上司は、退職理由に直接関係している可能性があるため、人事担当者や他部署の管理職など、客観的な立場の従業員が面談を担当することが望ましいです。
  • タイミングと場所:最終出社日の数日前など、業務の引き継ぎが一段落した落ち着いた時期に設定します。また、会議室などプライバシーが確保された空間で、1対1で実施します。
  • 面談の目的の事前共有:「評価や引き留めのためではなく、今後の会社をより良くしていくための貴重なご意見をお伺いしたい」というポジティブな目的を明確に伝え、心理的安全性を確保します。

質問の工夫

単に「退職理由は何ですか?」と聞くだけでなく、具体的な事実や改善点につながるような質問を投げかけることが重要です。オープンクエスチョン(自由回答形式の質問)を中心に、対話を深めていきましょう。

退職面談における質問例
避けるべき質問(クローズドクエスチョン)推奨される質問(オープンクエスチョン)
会社に不満はありましたか?当社で働いてみて、特に「もっとこうだったら働きやすいのに」と感じた点はどのようなことでしたか?
人間関係は良好でしたか?チームや部署のコミュニケーションで、良かった点や改善が必要だと感じた点を教えていただけますか?
業務内容は合っていましたか?ご自身のスキルやキャリアプランと、担当されていた業務内容との間に、どのようなギャップを感じていましたか?
当社の制度に満足していましたか?もしあなたが人事部長だったら、従業員のエンゲージメントを高めるために、どのような制度を導入・改善しますか?

得られた意見は個人が特定されないように配慮しながらデータとして蓄積・分析し、経営陣へ定期的にレポートします。これらの生きた声こそが、離職率の低下、従業員エンゲージメントの向上、そして働きやすい職場環境の実現に向けた、何よりの道しるべとなるのです。

手続きをシステム化し担当者の負担を軽減する

オフボーディングには、社会保険の手続き、貸与品の返却、機密情報に関する誓約書の取り交わしなど、多くの煩雑な事務手続きが伴います。これらの手続きに漏れや遅延があると、退職者に不信感や不満を抱かせる原因となり、これまで築いてきた良好な関係を損ないかねません。

スムーズで間違いのない手続きこそが、会社への最後の信頼を形作ります。そこで有効なのが、HRテックツールなどを活用した手続きのシステム化です。

システム化によって、以下のようなメリットが期待できます。

  • 業務効率化とミスの防止:必要なタスクをチェックリスト化し、進捗状況を可視化することで、担当者による対応漏れやミスを防ぎます。アラート機能を使えば、期限管理も容易になります。
  • 人事・労務担当者の負担軽減:定型的な書類作成や申請業務を自動化することで、担当者は本来注力すべき退職者とのコミュニケーションや、退職データの分析といった付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
  • 退職者体験の向上:退職者自身がスマートフォンやPCから必要な情報を入力したり、書類を提出したりできるシステムを導入すれば、何度も会社に足を運ぶ手間を省くことができます。

現在では、「SmartHR」や「freee人事労務」といった多くのクラウド型人事労務ソフトが、入退社手続きを効率化する機能を提供しています。また、専用ツールを導入せずとも、「Asana」や「Trello」のようなタスク管理ツールでオフボーディング専用のテンプレートを作成し、関係者間で進捗を共有するだけでも、業務の属人化を防ぎ、効率を大幅に向上させることが可能です。

テクノロジーを賢く活用し、誰もがミスなくスムーズに手続きを完了できる仕組みを整えること。それが、退職者に「最後までしっかりした会社だった」という良い印象を残し、円満な関係を維持するための基盤となります。

まとめ

本記事では、オフボーディングの重要性と具体的な実践方法を解説しました。オフボーディングは、企業の評判向上やアルムナイネットワーク構築、リファラル採用の促進など、多くのメリットをもたらします。

退職はネガティブなイベントではなく、退職者との良好な関係が将来的な再雇用や協業につながる貴重な資産です。チェックリストを活用し、感謝を伝える姿勢で円満な退職体験を創出することが、企業の持続的な成長の鍵となります。

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