WBS(作業分解構成図)とは?
WBSとは「Work Breakdown Structure」の略称で、日本語では「作業分解構成図」と訳されます。
プロジェクトは、着手から完成まで複数のタスクで構成されています。そこで、プロジェクトの一連の流れを、一つひとつのタスクに細分化した図として可視化することで、誰が・いつまでに・何をやるべきか明確になります。
またWBSを作成することで、タスクの抜け・漏れを防ぐ効果もあります。すべてのタスクを洗い出して担当者を決めることで、円滑にプロジェクトを遂行できるでしょう。
わかりやすい例でたとえてみましょう。
「カレーを作る」というプロジェクトでWBSを作成すると
- 具材を切る
- 炒める
- 煮込む
- ルーを入れる
などとタスクを大きく分けることができます。さらに「具材を切る」を分解していくと
- 玉ねぎを切る
- にんじんを切る
- じゃがいもを切る
- 肉を切る
などと細分化できるでしょう。
このように、WBSを作成することで、プロジェクトの一連の流れを明確に可視化できるのです。
WBSのテンプレートはさまざまな種類がありますが、表形式で作られたWBSが多く見られます。また、ツリー構造の図として作成しているWBSもあります。プロジェクトの規模や業務フローなどに合わせて、使いやすい方を選びましょう。
WBSとガントチャートの違い
WBSを混同されやすいプロジェクト管理手法に「ガントチャート」があります。
ガントチャートとは「縦軸にタスクの内容や担当者名」「横軸に日にちや時間」を記載し、タスクの進行・完了に合わせて横棒にグラフを伸ばしていきます。横棒の長さによって直感的に進捗度がわかるため、スケジュール管理や進捗状況の把握などに役立ちます。
WBSで細分化したタスクの進捗を把握するのがガントチャート、という関係性になります。
WBSの種類
WBSは、目的に応じて2種類に分けられます。
- プロセス指向(プロセス軸)
- 成果物指向(成果物軸)
プロセス指向のWBSとは、プロジェクトをプロセスに区切って階層化し、タスクを細分化していく方法です。
成果物指向のWBSとは、プロジェクトのゴールとなる成果物から逆算してタスクを細分化していく方法です。
一般的に、以下のように使い分けられています。
- プロセス指向のWBS:「従業員のスキルアップ」など成果物が不透明、かつ中長期的なプロジェクト
- 成果物指向のWBS:「システム開発」「Webサイト制作」など成果物が明確、かつ短期的なプロジェクト
WBSを作成するメリットは?
プロジェクト管理でよく使われているWBSですが、作成することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。
主に、以下の3つのメリットが期待できます。
メリット1:タスクが明確になる
WBSを作成すると、プロジェクトを完遂させるためにやらなければならないタスクが明確になります。
WBSがないと、なし崩し的にプロジェクトを進めていくため、誰がどのタスクをやるべきかわからず「誰かがやっていると思った」などとトラブルが発生して、プロジェクトが遅延するリスクがあります。しかしWBSがあれば、誰がどのタスクをやらなければならないか明確になり、責任の所在も明らかにできます。
また、タスクを洗い出していく中で「このタスクも追加したほうがよい」「このタスクが抜けている」など、タスクの抜け・漏れに気づきやすくなります。すべてのタスクを可視化できて頭の中が整理されるので、「このタスクは、こっちにずらしたほうが効率的だ」といったアイデアも浮かびやすくなるでしょう。
メリット2:スケジュールが組みやすい
WBSでやるべきタスクや担当者が明確になっていれば、プロジェクトのスケジュールも組みやすくなります。また、プロジェクトの作業工程が可視化できるため、スムーズにプロジェクトが進むようスケジュールを組めます。
実際、ガントチャートはWBSで細分化したタスクを基にして作成するため、プロジェクト管理ではWBSを作成する工程が必須なのです。
メリット3:全体像が見える
WBSを作成すると、プロジェクトのタスクや作業工程、担当者や作業日数などが明確になり、プロジェクトの全体像が見えます。
プロジェクトの全体像を把握しないまま進めると、何がどこまで進んでいるのかわからなくなったり、ゴールがあやふやになったりして、プロジェクトが成功しません。
円滑にプロジェクトを進行するためにも、WBSで全体像をつかむことが重要なのです。
WBS(作業分解構成図)の正しい作り方は?
ここからは、WBSの作り方について具体的に解説します。
作り方1:必要な作業を洗い出す
最初に、プロジェクトを完遂するにあたり、必要な作業を洗い出していきます。まずは大まかなタスク(親タスク)に分けてから、細かなタスク(子タスク)に分解していくとよいでしょう。
この時点では作業工程などはひとまず考慮せず、箇条書きや付箋などでタスクを洗い出しましょう。タスクの抜け・漏れがないよう洗い出すことを重視してください。
この時、各タスクの工数も洗い出しておくと、後の工程でスケジュールを組みやすくなります。
ただし、タスクを細分化しすぎると、管理が煩雑になるためおすすめできません。
たとえば、先に挙げた「カレー」の例で言うと、「玉ねぎを切る」というタスクは「玉ねぎの皮をむく」「まな板に置く」「包丁で切る」とさらに細分化できます。しかし細かすぎるとややこしくなるため、ここまで細分化する必要はないでしょう。
タスクの粒度に注意して、一つずつ細分化して洗い出すことがおすすめです。
作り方2:作業順序を決める
洗い出したタスクを、実際の作業工程に落とし込んで順番を決めていきます。
このとき注意すべきなのが、他のタスクとの関連性や、プロジェクト全体への影響度などから、優先順位を見極めることです。
「タスクAが終わらなければタスクBとタスクCができない」「タスクDが遅延するとプロジェクト全体も大きく遅延してしまう」といった、重要度の高いタスクを優先して順番を決めることで、プロジェクトがスムーズに進みます。
作り方3:構造化して期日を決める
作業工程に沿って、各タスクを構造化していきます。先に決めていた順番を参考にして、親タスク・子タスクを関連付けて構造化すると、直感的にプロジェクトの全体像を把握しやすくなります。
順番通りに構造化できたら、各タスクの期日を設定していきます。思わぬトラブルが発生して多少の遅延が起きる可能性もあるため、バッファを設けて期日を組みましょう。
作り方4:担当者を決める
最後に、それぞれのタスクの担当者を決めていきます。
一人の担当者が複数タスクを担当する場合は、担当者の無理のないように、タスクや期日が重ならないよう調整しましょう。
また、一つのタスクを複数の担当者で作業する場合も、すべての担当者を記載しておくことで、差プロジェクトをスムーズに進行できます。
WBS(作業分解構成図)を作成するときの注意点は?
WBSを作成しておくことで、タスクが明確になりプロジェクトの全体像が可視化できます。
プロジェクト管理に便利なWBSですが、作成する際には下記のポイントに注意しましょう。
注意点1:タスクは明確に細分化する
大まかなタスクだけでWBSを作成すると、担当者は具体的に何をすべきかわからなくなり、タスクの抜け・漏れや遅延が発生しかねません。
また、不明確なタスクも担当者の混乱を招きます。
先に挙げた「カレー」のプロジェクトを例にすると、「玉ねぎを切る」というタスクを、どう切ったらよいのかわからないという場合もあるでしょう。薄切りにするか、輪切りにするか、くし切りにするかでも完成形が変わります。
ビジネスのプロジェクトにおいても、表現方法があいまいだと担当者によって認識が異なり、成果物に大きく影響しかねません。担当者間で共通認識を持ち、やるべきことを明確にするためにも、タスクを詳細に設定する必要があります。
注意点2:ツールを導入し効率化する
WBSは、ExcelやPowerPointなどで作成することができます。また、インターネットで調べると、さまざまなテンプレートも見つかるでしょう。
しかし、タスクを洗い出して構造化したり、期日や担当者を決めたりするには、多くの手間と時間がかかります。さらに、WBSで細分化したタスクをガントチャートなどに落とし込む作業も発生するでしょう。
そこで、WBS作成ツールを活用して、タスクの洗い出しやWBSの作成を効率化することをおすすめします。 ツールによっては、カンバン形式でタスクを並べたり、WBSからガントチャートに自動で変換したりする機能も搭載されています。また、Googleカレンダーとの連携や、別のプロジェクトやチームと横断してスケジュールを組む機能が搭載されているツールもあります。
自社の運用に合わせて、使いやすいツールを導入しましょう。
なお、プロジェクト管理で活用できるツールはこちらの記事で詳しく紹介しているので、ぜひご参考ください。
注意点3:スケジュールがタイトにならないようにする
期日を設定する際には、スケジュールがタイトにならないようにしましょう。タイトスケジュールだと、万が一トラブルが発生した際に調整が難しく、最終的な期日に間に合いません。
また、各タスクにバッファを設けるのではなく、プロジェクト全体でバッファを設ける「CCPM」の手法がおすすめです。
タスクごとにバッファを設けると、担当者は「まだ余裕がある」という気持ちになり、期日ギリギリまで作業をしないこともあります。全タスクがギリギリになると、最終的な期日にもギリギリになるため、バッファの意味がなくなります。
そのため、各タスクの工数通りに期日を設定し、全タスクの終了予定日のあとにバッファを設けることで、プロジェクト全体が余裕をもって進みます。
まとめ
WBSは、プロジェクトを円滑に進めるために欠かせません。プロジェクトのタスクを明確にし、作業工程や担当者を可視化できるため、タスクの抜け・漏れを防いで作業をスムーズに進められます。
WBSを作成する際には、タスクの細分化やスケジュールを意識し、ツールを活用して効率的にプロジェクトを管理しましょう。
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