今、生成AIを利活用できるAI人材が必要
2022年に「ChatGPT」がリリースされてから、ビジネスでの生成AIの利活用が注目されています。
生成AIとは、テキスト・画像・音声・動画などのクリエイティブを自動で生成できるAIのことで、ChatGPTはテキストの生成を得意とするツールです。
そのため、近年は「生成AIの利活用を得意とするAI人材」がさらに求められています。
ChatGPT以外にも、Microsoftの「Copilot」やGoogleの「Gemini」など、さまざまな企業が生成AIツールを開発しています。
今後も生成AIはさらなる盛り上がりを見せると予測できるため、企業は生成AIを利活用できるAI人材の獲得が課題となるでしょう。
本記事では生成AIの利活用を得意とするAI人材について解説します。
AI人材とは
AI人材の二つのカテゴリー
AI人材とはどのような人材を指すのでしょうか。
大きく二つのカテゴリーに分けられます。
プロンプトエンジニアリング人材…AIを使うことに強い人材
AI技術を最大限活用するための能力を持つ人材を指します。
特定のタスクや問題解決のためにAIの潜在能力を引き出すための指示(プロンプト)を設計する技術を持っています。
AIの応答を向上させるための効果的なプロンプト作成には、技術的知識だけでなく、創造性も必要です。
AIの機能と限界を深く理解し、それをビジネスや研究での革新的な応用に繋げることができます。
AIプロダクト開発人材…AIプロダクトをつくることに強い人材
人工知能を用いた製品やサービスの企画、設計、開発に秀でたスキルを持つ人材です。
AI技術の最新動向を理解し、それを実用的なプロダクトに応用する能力を持っています。
データサイエンス、機械学習、プログラミング、ユーザーインターフェース設計などの専門知識を兼ね備え、
ユーザーのニーズに応える革新的かつ実用的なAIソリューションの開発を行います。
AI活用に必要な具体的なスキルなど、より詳しく知りたい方は以下の記事がおすすめです。
AI人材獲得に役立つサービスも掲載していますので、ぜひご参考ください。
AI人材とIT人材・SNS人材の違い
AI人材と混同されやすいのが「IT人材」や「SNS人材」です。
それらの人材とどのような点が異なるのか解説します。
IT人材との違い
ITとは「情報技術」のことを指しているため、IT人材とは主にコンピューターやインターネットを利活用できる人材を指します。
具体的には、ITシステム・ITツールの構築や開発ができる人材や、ITを運用できる人材、ITを活用した情報管理に長けている人材などが該当するでしょう。
ITに関する知見やスキルは豊富ですが、AIを活用できるかどうかという点は考慮されません。
実際、同じ「エンジニア」という職種でも、システムエンジニアとAIエンジニアは区分されています。
AIも広義ではITに含まれていると言われていますが、AIを活用するにはAIの仕組みや学習方法などを理解しなければなりません。
そのため、既存の「IT人材」とは異なるのです。
SNS人材との違い
SNS人材とは、X(旧Twitter)やInstagram、Facebook、TikTokなどのSNSを活用してビジネスを推進できる人材です。
SNSによりユーザー層や特色が異なるため、それぞれのSNSを理解したうえで最適な投稿を行う必要があります。
また、SNSに投稿するだけでなく、ユーザーの反応を分析してネクストアクションを立案したり、SNS広告を出稿したりするスキルも必要です。
このようにSNSマーケティングを実行できる人をSNS人材と表現するため、AIツールを利活用できるかどうかは関係ありません。
ただし、生成AIを活用すると、それぞれのSNSに最適化したテキストや画像などを自動生成してくれます。
そのためSNS人材がAIスキルを身につけることで、SNSマーケティングをさらに加速できるでしょう。
AI人材がいることのメリット
生成AIを利活用できるAI人材が企業にいることで、どのようなことを実現できるメリットが期待できるのでしょうか。
個人にとってのメリット
経験が少なくてもクオリティの高いアウトプットが出せる
メールやプレゼンテーション、レポートなどのビジネス文書を作成する際や、
カスタマーサポートの回答を行う際、
経験が少ないメンバーは、経験豊富なメンバーよりも知識やノウハウが少ないのは自然なことです。
しかし、ハイパフォーマーのメンバーが考えたプロンプトを活用することで、
ハイパフォーマーと変わらないアウトプットが可能です。
生成AIを業務にうまく取り入れることで、経験年数に左右されずにクオリティの高いアウトプットを生み出すことができます。
つまり、ボトム層人材のスキルを底上げすることができます。
ただし、生成AIが生成したアウトプットの正誤や品質などを見極められるスキルが必要です。
チームにとってのメリット
チームのリソースを最適化できる
AI人材が一人存在するだけで新しい思考と解決策が生まれ、AIを組み込んで業務フローを再編成したり、作業にAIを取り入れて効率化することができます。
削減された作業ステップや、短縮された時間で、チームのリソースが最適化できるでしょう。
人手不足解消につながる
リソースを最適化することは人手不足解消にもつながります。
また、ライティングや画像作成などができる人材が不足していても、生成AIを活用することでクリエイティブを生み出すことができ、人手不足を解消できます。
生成AIをうまく活用することで、企業の人手不足解消が期待できるでしょう。
組織にとってのメリット
組織の成長速度を加速できる
AI人材が組織にいることで、成長速度を加速できることが期待されます。
AI人材による革新的なアプローチで、従来のビジネスモデルを見直して新しい価値提供が可能になるため、ビジネスモデルを変革できます。
また、AIの洞察により未開拓の市場やニーズを発見し、新しい市場を開拓するチャンスにもつながるでしょう。
AI人材育成のステップとゴール
上記のようなメリットを享受するためには、AI人材の育成が必要不可欠です。
生成AIを活用できる人材を育成するには、以下のようなステップで進めましょう。
ステップ1 生成AIに慣れる:基本操作と反応に慣れる
ステップ2 活用・応用できる:高度なアウトプットを出せるようになる
ステップ3 組織へ浸透させる:業務フローにAIを取り入れる/メンバーが生成AIを活用できるよう促す
生成AIでクオリティの高いアウトプットを出すためにはコツが必要なため、実践を重ねながら育成することが重要です。
そしてもう一つ重要なのが、AI人材個人のスキルアップの先に「組織としての成長」がゴールにあることです。
そのため、AI人材を育成するだけでなく、AI人材を活用して組織の生産性をいかに向上させていくかをゴールとして捉えましょう。
AI人材育成の課題
前章でAI人材を育成する方法とゴールを紹介しましたが、日本ではAI人材を育成するにあたっていくつかの障壁があります。
経営層のAIに関する知識が不足している
AI人材の育成にはコストも時間もかかるため経営層の理解が必要ですが、経営層がAIについての知識が乏しいと「時間をかけるのはもったいない」といった思考に陥りやすくなります。
「そもそも自社にとってAI人材は必要なのか」と、AI人材を育成しようという方針にならないことも少なくありません。
そのため、生成AIによって自社の課題をどのように解決できるのか、生成AIによって自社にどのようなメリットがあるのか、という点を経営層に伝えて理解を促す必要があります。
AI人材を育成するリソース(人員・時間)が足りない
AI人材を育成するために必要なリソースが不足していることも課題です。
生成AIがビジネスに活用されるようになってまだ日が浅いため、そもそもAI人材を育成できるほどの知識をもつ人材が不足している企業も多く見られます。
また、他の業務と並行して人材育成を行う必要があるため、コア業務を優先すると育成の時間が取れないという企業も少なくありません。
参考になる企業事例が少ない
AI人材を育成したくても、AI人材の育成に特化した企業の成功事例は多くありません。
そのため「何から始めたら良いのかわからない」「どのように育成すべきなのか」と一歩を踏み出せない企業もあります。
育成プログラムの設計が難しい
人材育成では適切なプログラム設計が必要となりますが、先述した通り、そもそも企業にはAI人材の育成ができるほどのAIスキルを持つ人材が不足しています。
何をゴールにしてどのようなプログラムで進めていけば良いのかわからないために、最適なプログラムを設計できないという企業も少なくありません。
AI人材を育成する具体的な方法
前章のようにAI人材の育成には課題が少なくありませんが、企業にとっても従業員にとっても負担にならない方法で人材育成を進めていくことは可能です。
具体的には以下のような方法があります。
実際に利活用する
生成AIを使いこなせるようになるためには、実際に使ってみることがもっとも重要です。
生成AIを使う業務を割り振るなど、現場でたくさん使うよう促しましょう。
また、現場で「自分の業務に生成AIを活用できるか」「どのような業務に生成AIを活用できるのか」と自主的に考え、積極的に取り入れることで人材育成が促進できます。
生成AIを簡単に現場で活用する方法が知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
自主学習を促す
AI人材の育成には、個人の主体的な学習が不可欠です。
自主学習を促すために、以下のような学習コンテンツを準備しましょう。
eラーニング
eラーニングとは、動画やテストなどのコンテンツをオンラインで受講して学習を進める方法です。
パソコンだけでなく、スマホやタブレットでも学習できるため、通勤時間などのスキマ時間を有効に活用して学習できる点がメリットです。
学習の進捗度やテストの点数なども分析できるため、一人ひとりの習熟度に合わせてフォローできます。
書籍やテキスト
書籍やテキストも自主学習に活用できます。AIに関する書籍やテキストは多岐にわたるため、基本的な知識から実践的な内容まで体系的に学べます。
外部企業と提携する
自社にAI人材を育成するリソースが不足している場合、外部企業と提携するのも一案です。
コンサルタントやアドバイザーの起用
AI人材の育成に関するコンサルティングやアドバイスをしている企業を活用することで、自社のAI人材育成のプログラムを設計してもらったり、講義などを行ってもらったりすることが可能です。
外部企業のセミナー受講
生成AIの使い方や活用方法などに関するセミナーの受講も効果的です。会場で開催するセミナーのみでなく、オンラインで開催するウェビナーも多いため、メンバーの負担のない方法で受講させましょう。
AI人材育成に関するポイント
AI人材を育成するにあたって、成功するためのポイントをまとめました。
レベルに合わせた育成プログラムを設計する
人によってAIの理解度やリテラシーのレベルが異なるため、全員に一律の育成プログラムを展開しても成果につながらない場合があります。
そのため、一人ひとりのレベルに合わせて育成プログラムを設計し、着実にレベルアップできるようにすることが重要です。
場数を踏める環境を用意する
生成AIを使いこなせるようになるため、なるべく多くの場数を踏める環境を用意しましょう。
実際の業務の現場で生成AIを使うようにすることで、個人のスキルアップが促進されます。
継続的に育成する
生成AIは常にアップデートしているため「このレベルまで育成したら終わり」ということはありません。
常に最新情報をキャッチアップし、継続的に育成することがポイントです。
ソフトスキルも育成する
AI人材にとって生成AIを利活用できる技術的なスキルは重要ですが、その他にもソフトスキル(チームワーク、問題解決力、コミュニケーション能力など)も求められます。
- チームワーク:AIを社内に浸透させる
- 問題解決力:自社の課題に対してどのように生成AIを活用するか考えて実行する
- コミュニケーション能力:人間の感情やニュアンスを的確にAIに伝える
技術的スキルを習得させながら、ソフトスキルの育成も進めましょう。
AI人材の活用ためには人事評価制度の見直しも必要
時間をかけて優秀なAI人材を育成できたら、定着するように人事評価制度の見直しも行いましょう。
生成AIを活用して自社に貢献した人材に対しては成果に見合うだけの待遇を用意して、優秀なAI人材を定着させます。
優秀なAI人材が新たなAI人材の育成も手がけることができ、社内に優秀なAI人材が増えるでしょう。
企業事例をご紹介!AI人材育成のためのキャリアプログラム
生成AI人材にするためのキャリアプログラムとして参考になる企業事例を紹介します。
事例1|株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、2023年11月より全社員を対象にした「生成AI徹底理解リスキリング」に取り組んでいます。「全社員」「エンジニア」「機械学習エンジニア」の3階層に分け、eラーニングを用いたオリジナルのプログラムや試験を実施し、全社員の生成AIリテラシーの向上を目指しているそうです。
階層に分けることで、一人ひとりに最適化した細やかな育成ができているようです。
参照:サイバーエージェント、全社的なAI人材育成に向けて「生成AI徹底理解リスキリング」をスタート|株式会社サイバーエージェント
事例2|KDDI株式会社
KDDI株式会社は、2023年5月から社員1万人を対象にして、生成AIを活用したチャットサービス「KDDI AI-Chat」を実業務で利用しています。
クリエイティブ業務やリサーチ業務、アイデア出しなどの業務で生成AIを活用することで、社員のAIスキル向上や業務効率の最大化などを目指していると言います。
「まずは使ってみる」を実践している事例と言えるでしょう。
参照:社員1万人が「KDDI AI-Chat」の利用を開始|KDDI株式会社
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AI人材の育成が難しい場合は新たな人材獲得も視野に
自社の既存メンバーだけでAI人材の育成が難しい場合は、新たな人材獲得も視野に入れましょう。
獲得方法に関しては以下の記事で紹介しています。AI人材獲得に役立つサービスも掲載していますので、ぜひご参考ください。
まとめ
AI人材の育成は時間やコストがかかりますが、現代の企業にとってAI人材の活用は欠かせません。
適切な育成プログラムを設計し、目的を持ってAI人材を育成しましょう。
●kyozonでは、生成AIやAI人材に関する記事を掲載しておりますので、以下の記事もぜひ読んでみてください●
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執筆 :西 並子
編集・図解:平山 理沙