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【法人向け】社員の成長を促すリスキリングプログラムとは?導入メリットやスキル例を紹介

投稿日:2025年9月30日 /

更新日:2025年9月30日

【法人向け】社員の成長を促すリスキリングプログラムとは?導入メリットやスキル例を紹介
● 人材育成

DX推進や人材不足を背景に、企業の持続的成長には戦略的な人材育成が不可欠です。本記事では、注目を集める「リスキリングプログラム」について、その重要性から導入による5つのメリット、学ぶべきスキル例、失敗しないための具体的な導入手順までを網羅的に解説します。この記事を読めば、自社の競争力を高める効果的なプログラムを設計・実行する方法がわかります。

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リスキリングプログラムとは

リスキリングプログラムとは、企業が主導し、従業員に対して新しいスキルや知識を習得させるための体系的な教育・研修制度のことです。現代の急速な技術革新や市場の変化に対応し、企業の持続的な成長を実現するための重要な人材戦略として位置づけられています。

単なる研修とは異なり、企業の経営戦略や事業戦略と密接に連携し、将来的に必要となるスキルを計画的に育成する点に大きな特徴があります。

そもそも「リスキリング」とは

経済産業省では、リスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること/させること」と定義しています。これは、単なる「学び直し」を意味するものではありません。

リスキリングの核心は、デジタル化やGX(グリーン・トランスフォーメーション)といった技術革新によって生まれる新しい業務や、変化する事業モデルに対応するためのスキルを意図的に習得することにあります。既存の業務を効率化するためのスキルアップ(アップスキリング)だけでなく、これまでとは全く異なる職務を担うためのスキルの獲得も含まれる、戦略的な人材開発の手法です。

リカレント教育やOJTとの明確な違い

リスキリングは、しばしば「リカレント教育」や「OJT」といった他の人材育成手法と混同されがちです。しかし、それぞれの目的や主体は明確に異なります。企業の担当者として適切なプログラムを設計するためにも、これらの違いを正確に理解しておくことが不可欠です。

項目リスキリングリカレント教育OJT
定義技術革新や事業戦略の変化に対応するため、将来必要となる新しいスキルを習得すること。労働者がキャリアの中断を選択し、教育機関などで学び直した後、再び職に就くこと。実務を通じて、業務に必要な知識や技術を計画的に習得させること。
目的企業のDX推進や新規事業創出など、新たな価値創造に貢献するため。個人のキャリアアップやキャリアチェンジのため。現在の担当業務を遂行する能力を高めるため。
主体企業(企業が主導し、従業員に学習を促す)個人(個人の意思で学びの場を選択する)企業(現場の上司や先輩が指導役となる)
学習内容データ分析、AI活用、クラウド技術など、将来の業務で必要となる先進的なスキルが中心。個人の興味やキャリアプランに応じた専門知識や教養など、内容は多岐にわたる。現在担当している業務に直結する実践的なスキルやノウハウ。

このように、リスキリングは企業が主体となり、経営戦略に基づいて将来必要となるスキルを従業員に提供する点で、個人主体のリカレント教育や、現在業務の習熟を目的とするOJTとは一線を画します。

リスキリングプログラムが重要視される背景

近年、多くの企業がリスキリングプログラムの導入を急いでいます。その背景には、日本企業が直面する深刻な課題と、ビジネス環境の劇的な変化があります。

DX推進と人材不足の深刻化

リスキリングが注目される最大の理由は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展と、それを担うデジタル人材の深刻な不足です。AI、IoT、クラウドコンピューティングといったデジタル技術は、あらゆる産業でビジネスモデルの変革を迫っています。しかし、これらの先端技術を使いこなし、新たな価値を創造できる人材は社会全体で不足しており、採用市場での獲得競争は激化する一方です。

このような状況下で、外部からの採用だけに頼る戦略には限界があります。そこで、自社の事業内容や文化を深く理解している既存社員を再教育し、社内でDX人材を育成する「リスキリング」が、最も現実的かつ効果的な解決策として重要視されているのです。

変化に対応する組織づくりの必要性

現代は、市場や技術、価値観が目まぐるしく変化する「VUCAの時代」と呼ばれています。このような予測困難な環境で企業が生き残り、持続的に成長していくためには、組織全体が変化に柔軟に対応できる能力を持つことが不可欠です。

リスキリングプログラムは、従業員に新しいスキルを提供するだけでなく、常に学び続け、自律的にキャリアを形成していく「学習する組織文化」を醸成する効果も期待できます。従業員一人ひとりが変化を前向きに捉え、新しい挑戦を恐れないマインドセットを育むことは、組織全体のレジリエンス(回復力・適応力)を高め、企業の競争優位性を確立するための重要な基盤となります。

企業がリスキリングプログラムを導入する5つのメリット

リスキリングプログラムの導入は、単なる人材育成に留まらず、企業の持続的な成長を支える経営戦略そのものです。ここでは、企業がリスキリングプログラムを導入することで得られる5つの具体的なメリットを、多角的な視点から詳しく解説します。

生産性の向上と業務効率化

リスキリングプログラム導入の最も直接的なメリットは、従業員一人ひとりのスキルアップによる生産性の向上です。特にデジタル技術の習得は、既存業務の進め方を根本から変革し、組織全体の業務効率化に大きく貢献します。

例えば、これまで手作業で行っていたデータ集計や資料作成といった定型業務を、RPA(Robotic Process Automation)やプログラミングスキルを活用して自動化できるようになります。また、BIツールを使いこなせるようになれば、膨大なデータから瞬時にインサイトを抽出し、データに基づいた迅速な意思決定が可能になります。これにより、従業員は単純作業から解放され、より創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになるのです。

具体的な業務改善のイメージは以下の通りです。

業務内容従来の方法リスキリング後の方法
月次売上報告各部署のExcelファイルを手作業で集計し、PowerPointで資料を作成(数時間〜数日)BIツールが各システムと連携し、リアルタイムで更新されるダッシュボードを共有(数分)
顧客への提案担当者の経験や勘に基づいて提案内容を検討CRM/SFAのデータを分析し、顧客の潜在ニーズに基づいたパーソナライズ提案を実施
情報共有メールや口頭での断片的な情報伝達が中心クラウドツールやビジネスチャットを高度に活用し、プロジェクト情報を一元管理・可視化

このように、リスキリングは個人のスキルアップに留まらず、組織全体のオペレーションを最適化し、競争優位性を確立するための重要な鍵となります。

新規事業の創出とイノベーション促進

市場環境が目まぐるしく変化する現代において、既存事業の維持だけでは企業の持続的な成長は困難です。リスキリングは、社内に新しい知識や視点をもたらし、イノベーションを促進することで、新規事業創出の土壌を育みます。

AI、IoT、データサイエンスといった先端技術に関するスキルを従業員が習得することで、自社の持つアセット(技術、顧客基盤、データなど)と掛け合わせ、これまでになかった新しいビジネスモデルを発想できるようになります。例えば、製造業の技術者がデータ分析スキルを身につければ、製品の稼働データから故障を予測する「予知保全サービス」を事業化できるかもしれません。また、営業担当者がUI/UXの知識を学べば、顧客視点に立った新しいオンラインサービスを企画できる可能性が広がります。

リスキリングによって、従業員は「待ち」の姿勢から、自ら課題を発見し、新しい価値を創造する「攻め」の姿勢へと変革します。 このような主体的な人材が増えることで、組織内に挑戦を推奨する文化が醸成され、企業全体としてイノベーションが生まれやすい体質へと変わっていくのです。

従業員エンゲージメントと定着率の向上

リスキリングプログラムは、従業員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)を高め、優秀な人材の定着率を向上させる効果も期待できます。

企業が従業員のスキルアップに投資するという姿勢は、「会社は自分の成長を支援してくれている」という強いメッセージになります。これにより、従業員は会社への信頼と帰属意識を高めます。また、新しいスキルを習得することで、担当できる業務の幅が広がったり、より責任のあるポジションに挑戦できたりと、社内でのキャリアパスが明確になります。自身の市場価値が高まっているという実感は、仕事へのモチベーションを大きく向上させるでしょう。

特に、成長意欲の高い優秀な人材ほど、学習機会の有無を重視する傾向にあります。自身のキャリアの将来性を会社が示してくれることは、待遇面だけでは得られない強い魅力となり、離職率の低下に直結します。 これは、政府が推進する「人的資本経営」の観点からも極めて重要であり、従業員と企業が共に成長する好循環を生み出します。

採用競争力の強化

労働人口が減少する中、優秀な人材の獲得競争は激化の一途をたどっています。このような状況において、充実したリスキリングプログラムは、採用市場における強力な武器となります。

現代の求職者、特にデジタルネイティブ世代は、給与や福利厚生といった条件面に加え、「その会社で自分がどう成長できるか」を非常に重視しています。採用活動において、具体的なリスキリングプログラムの内容や、スキルアップした社員のキャリア事例を提示することで、成長意欲の高い優秀な人材に対して強力にアピールできます。

「未経験の分野でも、入社後にしっかり学べる環境がある」「常に最先端のスキルを学び続けられる」というメッセージは、特に獲得が難しいとされるDX人材や若手層にとって、企業の大きな魅力として映ります。 結果として、応募者の質の向上や母集団の形成に繋がり、採用活動全体を有利に進めることが可能になります。これは、外部から専門人材を採用するコストや手間を削減する効果も期待できる、戦略的な採用手法と言えるでしょう。

企業価値とブランドイメージの向上

リスキリングへの取り組みは、社内だけでなく、社外のステークホルダー(投資家、顧客、取引先など)に対するポジティブなメッセージとなり、企業価値やブランドイメージの向上に貢献します。

近年、企業の持続可能性を評価する上で、財務情報だけでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが重視されています。中でも「人的資本」への投資は、将来の成長性を示す重要な指標と見なされています。リスキリングに積極的に取り組む企業は、「従業員の成長を大切にし、未来への投資を惜しまない先進的な企業」として、投資家から高く評価される傾向にあります。

また、顧客や取引先にとっても、従業員が常に新しいスキルを学び、変化に対応し続けている企業は、信頼できるパートナーとして映ります。DX化が進む社会において、質の高いサービスや製品を安定的に提供し続けてくれるだろうという期待感に繋がるのです。このように、リスキリングは社会的な評価を高め、企業の無形資産であるブランド価値を向上させる、効果的な広報・IR活動の一環とも言えるのです。

リスキリングプログラムで学ぶべきスキルの具体例

リスキリングプログラムで習得すべきスキルは、企業の経営戦略や事業目標、そして対象となる社員の職種や役職によって大きく異なります。ここでは、企業の持続的な成長に不可欠なスキルを「全社員向け」「DX推進を担う専門人材向け」「次世代リーダー向け」の3つの階層に分けて、具体的なスキル例を解説します。

全社員に求められるデジタルリテラシー

DX(デジタルトランスフォーメーション)を全社的に推進するためには、一部の専門人材だけでなく、全社員がIT技術やデータを活用する基礎的な素養、すなわち「デジタルリテラシー」を身につけることが不可欠です。これにより、組織全体の生産性向上や業務効率化、そしてデータに基づいた文化の醸成が期待できます。

スキル分野具体的な学習内容期待される効果
IT基礎知識ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データベースなど、ITの基本的な仕組みの理解。ITパスポート試験で問われるレベルの知識習得が目安となります。社内のエンジニアや情報システム部門との円滑なコミュニケーション、IT関連のニュースや情報の正確な理解。
情報セキュリティパスワードの適切な管理、標的型攻撃メールの見分け方、個人情報保護法や関連法規の理解、情報資産の取り扱いルールなど。サイバー攻撃による情報漏洩や事業停止といった経営リスクの低減、顧客や取引先からの信頼性向上。
ツール活用スキルMicrosoft 365やGoogle Workspaceの高度な機能活用、SlackやMicrosoft Teamsなどのビジネスチャットツール、プロジェクト管理ツール(Asana, Trelloなど)の習熟。定型業務の自動化による作業時間短縮、チーム内の情報共有の円滑化、場所にとらわれない柔軟な働き方の実現。
データ活用基礎Excelのピボットテーブルや関数を用いたデータ集計・分析、BIツール(Tableau, Power BIなど)の基本的な操作、データの可視化(グラフ作成)スキル。経験や勘だけに頼らない、データに基づいた客観的な意思決定-mark>の促進、営業成績やマーケティング施策の効果測定の精度向上。

DXを推進する専門スキル

企業の競争優位性を確立し、新たなビジネスモデルを創出するためには、DXを牽引する専門人材の育成が急務です。これらのスキルを持つ人材は労働市場での需要が非常に高く、採用競争も激化しているため、計画的な社内育成が企業の将来を左右します

データサイエンスとAI活用スキル

膨大なデータを分析し、ビジネスに有益な知見を引き出すためのスキルです。需要予測や顧客行動分析、製品の品質管理など、あらゆるビジネスシーンでの活用が期待されています。統計学の基礎から、PythonやRといったプログラミング言語、SQLによるデータ抽出、機械学習モデルの構築・評価、そしてAI技術をビジネス課題の解決に結びつける企画力まで、幅広い知識と実践力が求められます。

クラウドコンピューティング技術

自社でサーバーを保有せず、インターネット経由でシステムを利用するクラウド技術は、現代のビジネスインフラの根幹をなします。AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、GCP(Google Cloud)といった主要なクラウドプラットフォームの知識は、IT部門のエンジニアだけでなく、事業開発担当者にとっても必須の知識となりつつあります。インフラの構築・運用スキルに加え、コスト最適化やセキュリティ管理のスキルも重要です。

UI/UXデザインスキル

UI(ユーザーインターフェース)は製品やサービスと顧客との接点、UX(ユーザーエクスペリエンス)は顧客が製品やサービスを通じて得る体験全体を指します。顧客満足度を高め、選ばれ続けるサービスを提供するためには、ユーザー視点に立った設計思想(デザイン思考)が不可欠です。ペルソナ設計やカスタマージャーニーマップの作成、Figmaなどのツールを使ったプロトタイピング、ユーザーテストといった一連のプロセスを実践するスキルが求められます。

先端IT技術に関するスキル

IoT(モノのインターネット)、5G(第5世代移動通信システム)、ブロックチェーン、xR(AR/VR/MRの総称)など、将来のビジネスを大きく変える可能性を秘めた先端技術に関する知識です。これらの技術が自社の事業にどのような変革をもたらすかを理解し、新たな事業機会を創出するための企画・実装スキルが重要となります。例えば、製造業におけるスマートファクトリー化や、小売業における新たな顧客体験の創出などが考えられます。

次世代リーダーに必要なマネジメントスキル

テクノロジーを導入するだけではDXは成功しません。変化の激しい時代において、テクノロジーを活用して組織を導き、新たな価値を創造できる次世代リーダーの育成が不可欠です。従来のマネジメントスキルに加え、DX時代特有の新たなリーダーシップが求められます。

  • DX推進リーダーシップ:組織のデジタル化に関する明確なビジョンを示し、部門の壁を越えて変革を牽引する力。
  • ピープルマネジメント:リモートワークなど多様な働き方に対応し、部下一人ひとりの成長を支援し、エンゲージメントを高めるスキル。
  • アジャイル・スクラム開発の理解:不確実性の高い状況下で、計画の変更に柔軟に対応しながら、迅速に価値を提供していくプロジェクト推進手法の知識。
  • データドリブンな意思決定能力:収集・分析したデータに基づいて、客観的かつ論理的に戦略や方針を決定するスキル。
  • チェンジマネジメント:組織変革に伴う現場の不安や抵抗を乗り越え、新しいプロセスや文化を組織に定着させるためのコミュニケーション能力と実行力。

失敗しないリスキリングプログラムの導入手順

リスキリングプログラムの導入は、単に研修を用意するだけでは成功しません。企業の成長戦略と連動させ、計画的かつ段階的に進めることが不可欠です。ここでは、プログラム導入を成功に導くための具体的な5つのステップを、失敗例も交えながら詳しく解説します。この手順に沿って進めることで、投資対効果の高いリスキリキングを実現できるでしょう。

ステップ1:経営戦略に基づいた目的と目標の設定

リスキリングプログラム導入における最初のステップは、なぜリスキリングを行うのかという「目的」と、どのような状態を目指すのかという「目標」を明確にすることです。ここが曖昧なまま進めてしまうと、プログラムが形骸化し、期待した成果を得られません。重要なのは、企業の経営戦略や事業戦略と完全に連動させることです。

例えば、「DXを推進して新規事業を創出する」という経営目標がある場合、リスキリングの目的は「新規事業開発に必要なデジタルスキルを持つ人材の育成」となります。その上で、目標をより具体的に設定します。ここでは、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-bound)を意識した「SMARTの法則」を用いると効果的です。

SMARTの法則を用いた目標設定の例
要素悪い目標例良い目標例
Specific(具体的)DX人材を増やすPythonとSQLを活用してデータ分析ができるマーケティング担当者を育成する
Measurable(測定可能)スキルアップを目指すデータサイエンティスト協会が定義するスキルレベル「アシスタント」相当の社員を10名育成する
Achievable(達成可能)全社員をAIエンジニアにするまずは営業部門の希望者30名を対象に、BIツール活用研修を実施する
Relevant(関連性)流行のスキルを学ぶ顧客データの分析による営業効率15%向上という事業目標達成のため、データ分析スキルを習得する
Time-bound(期限)いつか育成する2年後の2026年3月末までに育成を完了する

このように、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を明確にすることで、プログラムの進捗と成果を客観的に評価できるようになります。

ステップ2:対象者と現状スキルの可視化

次に、「誰に」「どのようなスキルを」習得してもらうのかを具体化するため、対象者と現状スキルを正確に把握します。全社員に画一的なプログラムを提供しても、スキルレベルや職務内容の違いから非効率になりがちです。まずは、ステップ1で設定した目的に基づき、リスキリングの対象となる部署、役職、社員層を絞り込みます。

対象者が決まったら、現状のスキルレベルを「可視化」することが重要です。アセスメントツールやスキルサーベイ、上長との面談などを通じて、社員一人ひとりが持つスキル(As-Is)を客観的に評価します。そして、目標達成に必要なスキル(To-Be)とのギャップを分析します。このスキルギャップこそが、リスキリングプログラムで重点的に育成すべき内容となります。

スキルマップを作成し、全社、部門、個人単位でスキル保有状況を可視化することで、より戦略的な人材育成計画の立案が可能になります。

ステップ3:学習プログラムの選定と設計

スキルギャップが明確になったら、それを埋めるための具体的な学習プログラムを選定・設計します。学習方法は一つではなく、目的や対象者、コストに応じて最適なものを組み合わせることが成功の鍵です。

学習方法の選定

主な学習方法には、以下のようなものがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、複数を組み合わせる「ブレンディッドラーニング」が効果的です。

主な学習方法と特徴
学習方法メリットデメリット
eラーニング時間や場所を選ばず学習できる。コストが比較的安い。進捗管理が容易。受講者のモチベーション維持が難しい。実践的なスキルの習得には不向きな場合がある。
集合研修(Off-JT)講師や他の受講者と対話しながら学べる。実践的な演習(ワークショップ)が可能。コストが高い。参加者のスケジュール調整が必要。
OJT(On-the-Job Training)実務を通じて直接的にスキルを習得できる。学習内容が定着しやすい。指導者のスキルや経験に成果が左右される。体系的な知識の習得が難しい。
外部セミナー・講座最新の専門知識や技術を学べる。社外のネットワークを構築できる。自社の状況に合わない場合がある。コストがかかる。

学習プラットフォームの活用

近年では、質の高いオンライン学習プラットフォームが数多く存在します。Udemy BusinessやCoursera for Business、国内サービスではAidemyやSIGNATEなど、DX人材育成に特化した法人向けサービスを活用するのも有効な手段です。これらのプラットフォームは、学習進捗を管理するLMS(学習管理システム)機能を備えていることが多く、効率的なプログラム運用を支援します。

ステップ4:社員の学習意欲を高める環境整備

どんなに優れたプログラムを設計しても、社員が主体的に学ばなければ意味がありません。特に、通常業務と並行して学習を進める社員にとって、モチベーションの維持は大きな課題です。企業は「学びやすい環境」と「学びたくなる動機付け」の両面からサポートする体制を構築する必要があります。

経営層からのメッセージ発信

まず、経営トップが自らの言葉で、なぜ今リスキリングが必要なのか、会社として社員の成長をどう支援していくのかを全社に繰り返し伝えることが重要です。これにより、リスキリングが単なる人事施策ではなく、全社的な重要プロジェクトであるという認識が浸透します。

学習時間の確保と評価制度との連動

「忙しくて学ぶ時間がない」という課題を解決するため、業務時間内に学習時間を設けたり、学習のための休暇制度を導入したりするなどの具体的な支援が不可欠です。さらに、習得したスキルを昇進・昇格、報酬に反映させるなど、人事評価制度と連動させることで、学習への強力なインセンティブとなります。

伴走支援とコミュニティ形成

学習途中で挫折しないよう、上司やメンターが定期的に面談を行い、進捗確認やアドバイスをする「伴走支援」も効果的です。また、受講者同士が情報交換したり、教え合ったりできる社内SNSや勉強会といったコミュニティを形成することで、孤独感をなくし、切磋琢磨する文化を醸成できます。

ステップ5:効果測定と継続的な改善

リスキリングプログラムは「導入して終わり」ではありません。定期的に効果を測定し、その結果に基づいて改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことが、プログラムの質を高め、投資対効果を最大化するために不可欠です。

効果測定の手法として、教育研修の評価モデルである「カークパトリックの4段階評価モデル」が広く用いられています。

カークパトリックの4段階評価モデル
レベル評価項目具体的な測定方法
レベル1:反応(Reaction)受講者の満足度研修後の満足度アンケート
レベル2:学習(Learning)知識・スキルの習得度理解度テスト、スキルチェック、レポート提出
レベル3:行動(Behavior)職場での行動変容上司や同僚へのヒアリング、行動観察、360度評価
レベル4:結果(Results)組織・業績への貢献度生産性、売上、顧客満足度などのKPIの変化、ROI(投資対効果)の算出

特に重要なのは、レベル3「行動」とレベル4「結果」の評価です。学習した内容が実務で活かされ、最終的に企業の業績向上に繋がっているかを検証します。これらの測定結果や受講者からのフィードバックを分析し、プログラムの内容や提供方法、サポート体制などを常に見直し、より効果的なものへと改善し続けていくことが、リスキリングプログラムを成功させる最後の鍵となります。

まとめ

本記事では、法人向けのリスキリングプログラムについて、その重要性や導入メリット、具体的なスキル例を解説しました。変化の激しい時代において、企業の持続的成長にはリスキリングが不可欠です。生産性向上や新規事業創出といった経営課題の解決に直結するため、戦略的な導入が求められます。成功には明確な目的設定と社員が学びやすい環境づくりが重要です。

この記事を参考に、自社の人材育成戦略を見直してみてはいかがでしょうか。

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