今回はKPIとKGIの設定方法についてご紹介します。
ここでは、
- KPIとKGIの設定方法(メリット、手順、注意点、失敗例)
- KPIの候補(営業部門、管理部門、Webマーケティング、システム開発部門、製造業)
という流れで解説していきます。
※「そもそもKPIって何?」という方はまずはこちらの記事をご参考ください。
①:組織のパフォーマンスを高める「KPI」とは?メリットや基本的な概念をわかりやすく解説!
②:KPI・KGI・KSF・OKRの違いとは?それぞれの関係性や設定するメリットをわかりやすく解説します!
KPIとKGIの設定方法
それでは、KPIとKGIの設定方法を手順からコツ、注意点まで解説しています。
KPI設定のメリットをおさらい
KPIは、目標を達成するために注力すべき指標のことです。KPIの達成率からは、目標達成までの進捗が見えてきます。
メリット①:優先度の高い課題を見極められる
KPIを設定することで、現状優先的に取り組むべき課題が明確化されます。例えば、KGI(最終目標)が月売上1億円、KPI(プロセス目標)が資料請求数200件の場合、資料請求数を増やすためにサイトへのアクセスを増やしたり、メールマーケティングを実施したりことが取り組むべき課題として見えてきます。
このように課題を見極められないと、具体的な戦略を立てられません。経験と勘に頼った業務遂行では、PDCAサイクルが回らないでしょう。仮設立案、実行、学習、軌道修正を繰り返し、目標達成に向けて加速することが重要になります。
また、取り組むべき課題を見極められれば、無駄な業務が増えたり重要度が低い業務に高いコストを割いたりする事態を防げます。
メリット②:適切にリソースを確保できる
KPIを正しく設定することで、達成に必要なリソースを正確に把握できます。KPIで定めた目標と現在の状況を分析し、確保すべき人員数と予算を導き出しましょう。適切にリソースを確保できれば、最短で最大の利益を挙げられます。
メリット③:組織力が向上する
最終目標の成果を測る指標であるKGIだけ設定しても、具体的にどんな行動をすれば目標を達成できるのかがわからず、従業員のパフォーマンスを十分に発揮できません。KPIの達成がKGIの達成に繋がることがわかれば、従業員としてもやるべきことが明確になり、パフォーマンスが発揮されやすくなります。
また、チーム一丸となって1つの目標の達成に向けて業務に打ち込めるようになるでしょう。
KPIとKGIの設定の手順
まず前提として、KPIやKGIは正解が用意されているわけではなく、業種や会社の業務プロセスによって最適なKPI指標は変わってきます。
それを踏まえたうえで、KPIとKGIの設定方法は次のとおりです。
手順①:KGIを明確にする
まずは、KGIから設定しましょう。KGIは「売上高」や「成約数」など、数値化が可能な経営レベルで達成したい目標を設定しましょう。
手順②:KGI達成までのプロセス(KSF)に分解する
次に手順①で出したKGIをプロセス単位に分解しましょう。
たとえば、「ブランディング」「顧客獲得」「インサイドセールス」「サービスの品質」「顧客単価」などです。
手順③:そのプロセスを測るための指標をKPIとする
KPIを設定するためにはそれが数値化可能である必要があります。手順②で出したプロセスの成果を数値化する指標を洗い出しましょう。これがKPIの候補となります。
たとえば、「ブランド推奨度」「新規獲得顧客数」「既存顧客維持率」「商談数」「商談成約率」「品質スコア」「平均顧客単価」などです。
これらを高めるための施策をさらに行動レベルまでに分解すれば、優先的に取るべき行動が明確となります。
手順④:KPIの期限と目標値を設定する
KGIを達成するために、いつまでにどの水準まで到達する必要があるのかの具体的な数値を決定しましょう。
期限と目標値が明確になっていることで現状の進捗度合いをすぐに確認することができるようになります。
KPIを設定するときの注意点
KPIを設定するときは、次の注意点を守りましょう。
ポイント①:現場の担当者が活動によってコントロールできる指標のみをKPIに定める
KPIを設定するときは、実際に行動する担当者の活動範囲内でコントロールできる指標のみを採用しましょう。
ポイント②:客観的に計測可能な指標のみをKPIに定める
解釈が人によって変わらない客観的に計測可能な指標をKPIに採用しましょう。
ポイント③:現実的な数字を設定する
KPIは、実現可能な数字に設定しなければ、メンバーのモチベーションが上がりません。また、目標達成の進捗が予想以上に遅れて、企業全体の目標に支障をきたすでしょう。設定するときはメンバーに数値の妥当性を確認したり理解を求めたりすることが大切です。
数字に不満を感じているメンバーがいれば、その理由を尋ねたうえで変更を検討してください。
ポイント④:KPIの数を増やしすぎない
KPIは、KGIの達成に必須な項目だけを設定しましょう。KPIを厳選することで、チームリーダーがメンバーをマネジメントしやすくなります。
ポイント⑤:ビジネスの状況に応じてKPIをアップデートする
ビジネスの状況に応じて設定するKPIを変えてマネジメントをしていくことでチームの方向性も明確になり、やるべきことに集中できます。
KPIとKGI設定の失敗例
それでは、KPIとKGIの設定でよくある失敗をみていきましょう。
失敗例①:現実的ではないKPIを設定している
達成が難しい項目をKPIに設定している場合があります。
たとえば、翌月に売上を2倍にするというKGIを設定した場合、新規顧客数やサイト訪問者数、客単価などを上げなければなりません。この中から、現実的に達成できる可能性がある項目をKPIに設定することが大切です。
達成できる可能性が低い項目までKPIに設定すると、リソースが分散されてKGIの達成がかえって困難になります。
失敗例②:KPIの数が多すぎて現場が混乱する
設定するKPIの数が多すぎると、どのKPIに注力すべきかわからず、現場が混乱します。KPIの設定数の目安はひとつの組織で3つが理想です。多くても5つでしょう。
仮に複数のKPIを設定する場合は、それぞれの達成にかかるコストと負担を考慮し、現実的な範囲にすることが大切になります。
理想としては、1つのKPIの達成を目指すことでおのずと他のKPIに相当する指標の達成にもつながることが理想です。
失敗例③:数字以外の要素を考慮していない
数字ばかりに追われて、質や顧客の購買意欲などを考慮していないケースがあります。例えば、成約件数を増やすためにメールマーケティングを実施する場合、メールの内容に問題があれば成約件数は増えないでしょう。
また、購買意欲が低く、興味を持たれない商品やサービスを提案しても、それは提案していないのと同じです。数字以外の要素まで考慮して、KPIを設定しましょう。
KPIの具体例
KPIは、営業部門や管理部門、Webマーケティング、製造業など、部門や業種を問わず設定できます。
それでは、KPIの具体例を詳しくみていきましょう。
例①:営業部門
営業部門で設定するKPIの候補は次のとおりです。
顧客エンゲージスコアを満たした商談の数
成約を見込める商談の数をKPIに設定します。成約を見込めるかどうかは「顧客エンゲージスコア」で判別し、これを満たした商談の数のみをカウントします。
成約を見込める商談の数が多いほどに、成約件数が多くなりKGIにつながるわけです。
成約率
成約率を上げることで、営業件数に対する成約数が増加します。
営業可能件数
営業可能件数が多いほど、成約数が増加します。ただし、成約の見込みがあるかどうか営業先を精査しなければなりません。成約の見込みがない営業先に行くと時間が無駄になるでしょう。また、営業可能件数が少ないと、1日の中で手持ち無沙汰な時間ができてしまいます。
平均顧客単価
平均顧客単価が上がることで、成約件数が目標に達していなくても、売上目標をクリアしやすくなります。
複数商品の成約(クロスセル)と高額商品の成約(アップセル)を目指しましょう。他のKPIの達成も一緒に目指すことで、目標達成にかかる期間を短縮できます。
受注期間
営業をかけてから成約に至るまでの期間もKPIに設定できます。受注期間を短縮できれば、それだけ多くの営業活動が可能になるでしょう。ただし、営業可能件数を十分に確保できていることが必須です。
※上記のKPI指標についてはSFAというツールを利用すれば簡単に可視化することができます。
例②:Webマーケティング
Webマーケティングでは、次の指標がKPIの候補となります。
- アクセス(PV)数
- ユニークユーザー(UU)数
- コンバージョン率(CVR)
- クリック単価(CPC)
メールマーケティングや広告の出稿によるアクセス数増加、SEO対策で検索上位獲得によるアクセス数増加など、チャネルを分解してKPIを設定してもよいでしょう。
例③:システム開発
システム開発では、次の指標がKPIの候補となります。
- 稼働率
- エラー件数
- 進捗率
- 生産性
システム開発は、品質の基準を満たした成果物を納期までに仕上げる必要があります。そのうえで、予算内に抑えなければなりません。エラー件数が多いと進捗が悪くなったりコストが高くなったりします。また、開発者の稼働率が低いと、進捗が悪くなり納期に間に合わなかくなるリスクが高まります。
システム開発における「品質」、「納期」、「コスト」の3つを満たすことを目的に、KPIを設定しましょう。
例④:製造業
製造業では、次の指標がKPIの候補となります。
- 原価率
- 時間稼働率
- 不良品数
- 事故発生件数
原価率と時間稼働率を高めることで、結果的に利益が増えます。
また、不良品数は利益の増加だけではなく、取引先からの信頼関係にも関わります。さらに、事故発生件数は工場の機械の修理コストや労災などに関連しているでしょう。
これらをKPIに設定することで現場の課題が見えてきます。
例⑤:管理部門
ミスを0件にするといった管理部門として当然のことをKPIに設定すると、批判される可能性があるでしょう。管理部門では、コスト削減に繋がる指標をKPIに設定するのがよいです。
たとえば、給与計算にかける時間を20時間以内に抑えるといったKPIを設定すれば、コスト削減によって企業へ貢献できます。
管理部門の目的は、営業部門や製造部門などの支援です。管理部門に求められていることを踏まえたKPIを設定しましょう。
まとめ
KPIとKGIの設定を誤ると、従業員のモチベーションやパフォーマンスが下がるばかりか、KPIを達成したとしても最終的な目標であるKGIの達成につながらなくなります。
正しく設定できれば、組織力の向上やコストの削減、収益アップなどが期待できます。設定方法の手順や注意点を守って、最小の努力で最大の成果を挙げられるKPIとKGIを設定しましょう。
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記事執筆:加藤 良大
記事設計・編集:中條 優