予算管理とは?
予算管理とは「企業の数値目標の管理」として経営管理の一つです。目標達成のため、決算に合わせて1年ごとに予算を作成していますが、基本的に短期・中期・長期に分けて目標を決めていく企業が多いです。企業において利益を出すためにも、予算管理を行うことは経営を行う上で重要と言えるでしょう。
ここからは、予算管理を行う上で以下の点について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
- 予算管理と経営管理の違い
- 予算管理に必要な予算とは
予算管理と経営管理の違い
予算管理は経営管理の一つであることを前述で触れましたが、実際にはどのような違いがあるのでしょうか。経営管理は以下の5つの種類があり、その内の1つとして予算管理があることをまずは理解しておきましょう。
- 生産管理
- 販売管理
- 労務管理
- 人事管理
- 財務管理
また、経営管理は企業が経営資源(人・モノ・お金・情報など)を使用し、利益を上げるという目的を達成するために調整や統合を効率よく行っていくことを指しています。売上予算や利益予算などの目標を明確に算出することが予算管理の役割でもあるため、経営管理の中でも重要であると言えます。
予算管理に必要な予算
ここからは、予算管理を行う上で必要な予算について解説します。まずは予算管理の目的は以下であり、目的をしっかり理解した上でそれぞれの予算を管理していきましょう。
- 明確に数値を決めることで社内共通の目標とする
- 目標の達成向けて正確に現状把握する
- 経営安定に繋げる
また、必要な予算には下記の4つが該当します。それぞれ目標数値を設定していくことが重要となりますので、ぜひ参考にしてください。
- 売上予算
- 原価予算
- 経費予算
- 利益予算
予算1:売上予算
売上予算は売上目標と同じ意味を指し「営業活動によって生じる売上の期待値を提示する予算」です。一般的には、売上予測として以下のデータを分析しながら組み立てられます。
- 市場分析
- 過去の傾向分析
- 事業開発の情報や顧客データ
- 受注データ
売上予算を策定する際には、営業部以外にもマーケティング部や技術部、生産部とも連携しながら、市場動向に柔軟に対応していく必要があることを理解しておきましょう。
予算2:原価予算
原価予算とは、経営企画の基礎となる当期の販売計画やそれに関係する各部門の予算を基礎として算出される製品原価のことです。関係する各部門とは以下のことであり、一般的には販売計画から生産数量を決定し、その生産計画を実現するために必要な資源計画を策定します。
- 調達計画
- 生産計画
- 在庫計画
原価とは主に製品の原材料の価格を指すことから売上予算と同様、市場動向にに注意しながら柔軟に対応していく必要があります。
予算3:経費予算
経費予算は「企業が継続していくために必要な費用の予算」であり、前述した売上予算や原価予算とは違うことをあらかじめ理解しておきましょう。
- 販売費
- 一般管理費
- 家賃
- 人件費
- 広告宣伝費
上記のように、事業活動に関わる経費であることから、市場動向などの影響はほとんど受けることがありません。そのため、予算と実績の比較がしやすいのが経費予算の特徴となります。
経費予算を策定する上で、経費に対し理解を深めたい方は以下の記事「経費とは?計上可能な範囲や個人事業主と法人の違いを日本一わかりやすく解説!」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
予算4:利益予算
利益予算は「売上から原価と経費を差し引いた数値予算」です。企業活動を行う上で重要である利益を出すためには、売上を大きくする必要があることはすでに理解しているでしょう。
しかし、売上が予算達成とならない場合でも原価と経費が大幅に削減できれば、利益予算が達成となる場合もあります。そこで、次年度の計画や投資予定などから利益予算を決めることも重要と言えるでしょう。
予算管理を行う手順
ここまで予算管理について経営管理との違いや必要な予算について解説しました。では実際に予算管理を行う際、どのような手順が必要となるのでしょうか。ここからはそれぞれの手順を詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
- 予算計画を立てる
- 予算を実行する
- 予算実績を分析する
- 予算管理を改善する
手順1:予算計画を立てる
手順として、まず初めに予算計画を立てましょう。予算計画を立てる際に重要なのが、経営目標を明確にすることであり、明確にした目標に対して必要な予算や経営資源を策定していきましょう。
また、予算計画を立てることは予算管理を行う上でも最も重要な要素となり、方法としては以下の2種類があります。
- トップダウン方式
- ボトムアップ方式
この2種類の方式について、メリットデメリットなど詳しく解説していきますのでぜひ参考にしてください。
方法1:トップダウン方式
トップダウン方式とは、経営陣が主導権となり策定した予算計画をもとに会社全体で予算管理を行なっていく方式です。下記のようなメリットのほか、経営資源の効果的な配分が可能です。
- 意思決定から実行までの判断を迅速に行える
- トップと現場の信頼関係があれば組織全体に一体感が生まれる
- 一気に成長市場を捉え急成長の可能性が高い
一方でトップダウン方式のデメリットとしては、経営陣が一方的に決定した予算に対し現場の負担が大きくなってしまう場合、従業員のモチベーション維持が難しくなってしまいます。
方法2:ボトムアップ方式
ボトムアップ方式とは、企業内の各部署が予算を積み上げ企業の予算を決定する方式です。トップダウン方式とは異なり、現場の状況を知る各部署の担当者が予算計画の策定に関わることで、以下のようなメリットがあります。
- 現実的な予算計画が立てられる
- 現場の意見を汲み取りやすい
- 社員のモチベーションを維持しやすい
しかしデメリットとして、ボトムアップ方式は予算計画の完成までに時間が掛かってしまうことや、全社的な利益とは関係ない思惑が含まれてしまう可能性があります。策定した予算計画が適正かどうかを十分に確認する必要があることを理解しておきましょう。
手順2:予算を実行する
適切な予算計画が立てられたら、それぞれ予算に基づいて管理を実行していきましょう。前述した「予算管理に必要な予算」の種類ごとに日々予算を管理していく必要があります。実行する際に重要なのは、計画とのずれが発生していないか都度確認していくことです。そのため、実行の際には以下の手順を行い進捗管理を行っていきましょう。
- 1年間の予算計画を各月に割り振る
- 月ごとに目標を設定する
- さらに週・日に割り振り進捗率を算出する
また、日々の業務内で予算管理に対する意識を高めることも必要となるでしょう。
手順3:予算実績を分析する
実行後は、日々の予算管理を行いながら期末に予算実績の分析を行いましょう。下記のように定期的に分析することで、予算と実績の大きなズレの発生の防止となるでしょう。
- 1ヶ月・3ヶ月ごとに予算計画に対しての進捗率を分析する
- 予算と実績に差異が発生している場合には原因を特定する
予算と実績に差異が発生している場合「誤差が5%以内」であれば、大きな問題はありませんが「誤差が15%以上」である場合は、予算編成の部分で問題がある可能性が考えられますので、原因の特定をしっかり行う必要があります。
手順4:予算管理を改善する
前述した予算実績の分析の結果によって乖離が発生している場合は、その原因に対し対策や改善を行う必要があります。その際に、予算編成に問題はないが売上や経費の部分で予算計画と実績の差異が大きい場合などは以下の点から改善策を検討していく必要があります。
- 予算管理の数値・データから事業撤退の是非を判断する
- 予算策定と管理についてのルールを設け管理を徹底する
- 予算と実績の管理を支援するシステム導入を検討する
後述の予算管理を行うときの注意点も参考にしながら、分析・改善を行っていきましょう。
予算管理を行うときの注意点
ここからは、予算管理を行うときの注意点について詳しく見ていきましょう。予算管理において実現可能な目標を立てることは重要である一方、難しいと感じる方も少なくないでしょう。そこで下記の4つの注意点を詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
- 数値の根拠を明確化する
- 外部要因を意識する
- 粒度を適切にする
- 予算管理システムを導入する
注意点1:数値の根拠を明確化する
予算管理を行う上で、目標数値の根拠を説明できることが重要となるため、数値の根拠を明確にしておきましょう。また、トップダウン方式で予算を作成する場合には以下の内容に注意しながら予算管理を行う必要があることも理解しておきましょう。
- 各部門の目標値により経営計画が達成できるか
- 現場に無理な負担がかからない目標であるか
一方でボトムアップ方式を採用した場合にも、以下のような注意点がありますので併せて理解しておくことも大切です。
- 経営計画に対し目標設定が低すぎないか
- 利益とは関係ない思惑により過剰な金額を積み上げてないか
注意点2:外部要因を意識する
予算目標を策定する際、昨年度との対比を用いる場合はその年に発生した外部要因がないかを確認することが重要です。もし外部要因がある場合は、その影響した金額を考慮して目標設定を行う必要があります。また、この先起こりうる外部要因に対しても意識し予測できる場合は、予算計画を立てる際に反省させましょう。
また、外部要因の他にも季節性があるかどうかも確認し、あらかじめその影響も考慮した実現可能な目標を設定しましょう。
注意点3:粒度を適切にする
予算計画を立てる際には、目標の粒度を適切にするという点にも注意しておきましょう。予算目標が細かすぎると管理も細かく行わなければいけないことから、工数がかかりすぎてしまうケースが発生する可能性があります。企業の経営において予算管理は重要であると話してきましたが、だからと言って工数がかかりすぎるのは避けたい課題ですので、あらかじめどこまでの粒度で管理するか設定しておきましょう。
また、粒度が細かすぎる目標を設定してしまうと「会社の利益を上げる」という本来の目的を見失ってしまう可能性もあります。一方で粒度が粗すぎてしまうと、漠然とした目標となりゴールに辿り着くことが難しくなるでしょう。目標に対する粒度を適切にし、適正な予算計画を立てましょう。
注意点4:予算管理システムを導入する
予算管理を実行する上で、分析・改善は企業にとって重要なポイントとなりますが、分析する項目や内容が多く管理が大変だと感じる企業も少なくないでしょう。また、日々の進捗管理や業務フローを効率化したいと考える企業も多いでしょう。
そこで、予算管理システムを導入することで予算管理に対する業務を自動化・簡略化できます。予算管理システムを導入することで、分析の効率化や精度の向上だけでなく、経営戦略と予算目標の関係が可視化され従業員のモチベーションアップにも繋がる効果が期待できるでしょう。
以下の記事「おすすめの予算管理システム9選を紹介!3つの特長で徹底比較」では、おすすめの予算管理システムの紹介だけでなく、導入するメリットや予算管理システムを選ぶポイントについて詳しく解説しています。また、導入の際によくある質問などにも回答していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
この記事では、予算管理を行う上で手順や注意点などを詳しく解説しました。予算管理は、経営管理の中でも最も重要となりますので慎重に行っていく必要があることを理解しておきましょう。この記事で解説した注意点をしっかり理解した上で、適切な予算目標の策定や分析・改善を行うことで経営の安定化につながるでしょう。
また適切な予算管理によって、費用や物資、人件費などの配分や運用も無駄なく行えます。その結果、コスト削減や生産性向上にもつながりますのでしっかり取り組んでいきましょう。
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