契約書とは?
契約書とは、契約の締結を証明するための書類です。
契約にあたって取引内容や当事者をまとめて、内容に相違がないか確認を行い、当事者間で署名・捺印することで締結が完了します。
法令により書面の作成義務が定められている場合は、契約書を作成しなければ契約自体が無効になってしまうので注意しましょう。
また、それ以外の契約に関しては、民法522条2項により契約書を作成しなかった場合でも契約が成立します。
(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
ビジネスにおいても契約書は必要とされている書類ですが、作成していない場合「どちらが正しい主張なのか」分からなくなってしまいます。
こういったトラブルを防ぐためにも、取引内容の詳細を契約書に明記することが一般的です。
なぜ契約書を書く必要があるのか
次に、なぜ契約書を書く必要があるのか詳しく解説します。
- 確認するため
- 紛争を予防するため
- 証拠を残すため
ひとつずつ解説していきます。
確認するため
契約書を書く必要がある理由は、当事者が契約内容を確認するためです。
契約書を作成する目的には、下記の2つがあります。
- 当事者間で契約内容を理解する
- 契約の締結を最終的に吟味する機会を与える
お互いが納得して署名・捺印することで、「当事者の意思に基づいた成立」「成立の日付」が明確になります。
また、ビジネスで利益を得るためには、リスクを追わなければいけません。
取引にはそういったリスクが含まれているため、書き起こされた文章を読むことで、契約すべきかどうかを慎重に考えられる効果もあります。
紛争を予防するため
契約書を作成することで、紛争を予防する効果があります。
当事者が合意した内容が明らかになるので、口頭での合意における「言った・言わない」といった水掛け論を回避できるでしょう。
また、相手が契約書の内容に反論してきた場合に、その主張を却られます。
ちなみに紛争を予防するポイントとして、典型的な条項は下記の3つです。
- 民法の条文に則る内容
- 民法の条文と異なる処理を規定する内容
- 民法の条文にない事項について規定する内容
当事者でトラブルが発生した際は、契約書の内容を拠り所としながら交渉を行いましょう。
証拠を残すため
契約書を書く必要性として、証拠を残す効果があります。
契約書が証拠価値として認められるには、形式的証拠力と実質的証拠力が必要です。
それぞれの状態として、下記の2つがあげられます。
- 形式的証拠力:「文章が作成者の意思に基づいて作成されている」と認められている
- 実質的証拠力:文章が作成者によって示された内容であると信用できるかどうか
通常の契約書には署名・押印があり、民事訴訟法上は下記にあるように「真正に成立した」と見なされます。
(文書の成立)
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。
契約書と異なる内容の立証は不可能ではありません、立証が容易でない点を覚えておきましょう。
こちらの記事では、契約書をクラウド上で管理できる「クラウドサイン」の特徴や使い方などを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
契約書の書き方を要素別で解説します
ここまで、契約書の概要と書く必要性をお伝えしました。
続いて、契約書の書き方を要素別で解説します。
- 全体構成
- タイトル
- 前文
- 本文
- 後文
- 契約締結日
- 署名/記名・捺印
ひとつずつ解説していきます。
全体構成
契約書の全体構成は、タイトルと前文、本文、後文、契約締結日、署名/記名・捺印で成り立っています。
構成に順番はありませんが、上記の順番で行うと相手も読みやすいでしょう。
独自性の高い書き方ではなく、第三者が見ても理解できる内容や書き方がおすすめです。
タイトル
契約書のタイトルは、契約内容を端的に表す表題です。
法令などで定められたルールはなく、どういったタイトルでも基本的には問題ありません。
しかし契約書の場合は、取引内容がはっきり分かるように記載しましょう。
ビジネス上で使用される契約書のタイトル例は、下記の通りです。
- 株主間契約書
- 業務委託契約書
- 秘密保持契約書
- 株式譲渡契約書
- 不動産売買契約書
- 金銭消費貸借契約書
仮に複数の契約が含まれた契約書であれば、「株主間契約書等」と記載しましょう。
また、典型的なタイトルだけで取引内容を理解できない場合は、補足で説明するケースもあります。
前文
前文では、「どういった契約を誰と誰が結んだのか」「契約書の意義」を書きます。
契約書の前文を書く際は、権利義務が発生した場合の当事者を明確にすることが重要です。
その際にどちらが甲・乙なのかを定義しておきましょう。
また、当事者が3人以上いる場合は、丙や丁を活用します。
契約書の全文を書く際に記載すべき事項は、下記の通りです。
- 契約締結日
- 当事者の氏名
- 本文の内容で契約を締結する旨
- 当事者が予定している取引内容について
契約内容は「本契約」と省略されたり、重要なサービス名がある場合に「本サービス」と記載したり、略称を使う場面もあります。
本文
本文は契約書の中で最も重要な部分であり、契約の目的や定義を書きます。
本文を書く際の手順は、下記の通りです。
- 「条」を設けて、かっこ書きで内容を端的に表す
- 必要に応じて「項」「号」を設けて詳しい規定を定める
また、本文には下記の内容を正確に記載していきます。
- 取引内容
- 一般条項
- 報酬と支払い条件
- 相互の権利義務の内容
- 秘密保持や契約の解除、損害賠償について
- (業務委託の場合)誰にどんな業務を委託するのか
取引内容や権利義務の内容には、何を記載すべきか契約類型で異なるので、それぞれについて勉強しなければいけません。
一般条項は法令に規制がある場合を除いて、必ず記載する必要がないので覚えておきましょう。
後文
後文には契約書の通数や作成者、契約の締結方法を記載します。
契約内容に関係があるわけではなく、契約書に法的な影響を与えるわけでもありません。
しかし、仮に紛争に発展した訴訟があった場合に、証拠として契約書が提出される可能性が高くなります。
その際に重要となるポイントは、下記の2つです。
- 契約書は何部作成したのか
- 原本は誰が所持しているのか
近年は電子契約が採用されるケースも増えているため、原本の考え方や電子契約書ファイルの保管方法も併せて記載しておく必要があります。
ちなみに契約書の作成部数と所持者は、前文に記載される場合もあるので覚えておきましょう。
契約締結日
契約締結日には、実際に当事者が契約を締結した日を書きます。
言い換えると、双方の署名・捺印が揃った日といえるでしょう。
また、契約書の中に契約開始日が定められていない場合は、効力の発生日が無効になるので記載漏れに注意が必要です。
契約締結日を決める際のポイントには、下記の4つがあります。
- 最後に署名した日
- 契約開始日に合わせる
- 当事者が契約内容に合意した日
- 当事者が最初に契約書へ署名した日
もしトラブルに発展した場合に、「契約がいつ締結されたのか」「契約書はいつ作成されたのか」といった情報は重要なので、必ず記載しましょう。
署名/記名・捺印
署名/記名・捺印は、前文で記載した当事者の同意を得られた際に書きます。
署名/記名・捺印の区別は、下記の通りです。
- 署名:名前を手書きで書くこと
- 記名:名前を手書き以外で書くこと
- 捺印:印鑑を押すこと
法人の場合は、代表者もしくは委任された担当者が署名/記名・捺印を行います。
また、その際にはどういった立場の人物であるか明確にしなければいけません。
会社の代表であれば「代表取締役」と記載したり、売買契約であれば売主と買主以外に「連帯保証人・媒介業者・立会人」が関与したりします。
そのため、当事者が複数人いる場合の署名/記名・捺印は注意しましょう。
契約書を書く上で押さえておくべきポイント
ここまで、契約書の書き方を要素別でお伝えしました。
続いて、契約書を書く上で押さえておくべきポイントを解説します。
- 第三者に見せてわかりやすいように書く
- 数量は具体的に書く
- 曖昧な解釈となる表現は避ける
- 想定リスクは細かく書く
- 法律に基づいた内容を書く
それぞれ解説していきます。
第三者に見せてわかりやすいように書く
契約書を書く上で押さえておくべきポイントは、第三者に見せてわかりやすく書く点です。
当事者間で認識できる言葉だったとしても、業界用語を使用したり言葉を省略したりすると、他業界や裁判所へ契約書の内容が誤った解釈をされてしまうかもしれません。
契約書はビジネスでのトラブルを解決するためのものでもあるので、最終的に裁判所が意味や内容を理解できるように想定して作成する必要があります。
仮に裁判になれば、契約書で使用されている用語の意味について相手と争う可能性もあるでしょう。
相手からの思わぬ主張を避けるためにも、第三者が分かる言葉を使って作成するべきです。
数量は具体的に書く
契約書の中に報酬や納品に関する記載を行う際は、「いつまでに・いくつ・いくら」といった数量を具体的に書きましょう。
ほかには業務内容や商品名なども明確に分かりやすく記載しなければいけません。
曖昧な解釈となる表現は避ける
契約書を書く際に押さえるべきポイント、曖昧な解釈となる表現は避けましょう。
曖昧な表現は、トラブルが発生した際に「そのような解釈はしていない」と主張されるリスクがあります。
契約書は裁判の場面で重要な書面になるので、複数の解釈ができる言葉や表現は避けるべきです。
想定リスクは細かく書く
契約書を書く際は、事前に想定リスクを細かく書いて洗い出しておきましょう。
リスクを想定しておかなければ、トラブルが発生した際に議論がまとまらない可能性があります。
そのため、事前に考えられるリスクを洗い出す必要があります。
リスクを洗い出す際に必要な視点は、下記の通りです。
- 時系列で考える
- 損害の性質ごとに考える
- 契約当事者もしくはそれ以外でのトラブルなのか考える
「取引を継続している際に発生する」「物損が発生する可能性がある」といったリスクを細かく記載して、対処方法を事前に決めておきましょう。
法律に基づいた内容を書く
契約書を書く際は、法律に基づいて内容が書かれているか確認しなければいけません。
契約内容は当事者間で決められますが、法律上の制限により公序良俗や強行法規に反した内容を定めてはいけません。
世の中には数えきれないほどの法律があるので、実際に発見するのは並大抵のことではないでしょう。
そのため法律違反を発見するには、下記の観点で確認しましょう。
- 法律で規制されていることはないか
- 書面の作成は法律で義務付けられているか
- 契約書に定めるべき事項は、法律に定められているか
もし契約書を内製する際は、司法書士や弁護士といった専門家の最終確認フローを設けておけば安心です。
こちらの記事では、使いやすい電子契約サービス10選と正しい選び方を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、契約書の概要や書き方、契約書を書く際に押さえておくべきコツを解説しました。
契約書とは、契約の締結を証明するための書類です。
契約書を書く必要性として、下記の3つをお伝えしました。
- 確認するため
- 紛争を予防するため
- 証拠を残すため
また、契約書を書く際の要素として全体構成やタイトル、前文などさまざまです。
本記事でお伝えした「曖昧な解釈となる表現は避ける」「想定リスクは細かく書く」などのポイントを参考にして、契約書を作成する際の参考にしてください。
【SNSフォローのお願い】
kyozonは日常のビジネスをスマートにする情報を毎日お届けしています。
今回の記事が「役に立った!」という方はtwitterとfacebookもフォローいただければ幸いです。
twitter:https://twitter.com/kyozon_comix