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裁量労働制と36協定とは?
そもそも「裁量労働制」と「36協定」とは、どのようなものなのでしょうか。内容をおさらいし、理解しておきましょう。
裁量労働制とは?
そもそも裁量労働制とは、どのような働き方を言うのでしょうか。
裁量労働制とは、実際の労働時間には関係なく、あらかじめ労使間で取り決めた労働時間分を働いたとみなし(みなし労働時間)、対価として賃金が支払われる制度です。
裁量労働制ができる職種は、業務の性質上、以下の2つに分けられています。
- 専門業務型裁量労働制
- 企画業務型裁量労働制
さらに「専門業務型裁量労働制」は全部で19種類に分けられるため、簡単に紹介します。
- 新商品・新技術の研究・開発または人文科学もしくは自然科学に関する研究
- 情報処理システムの分析や設計
- 新聞や出版の事業における記事の取材、編集業務/放送番組や有線ラジオ放送、有線テレビジョン放送の放送番組の制作のための取材、編集 衣服、
- 室内装飾、工業製品、広告等のデザイン
- 放送番組、映画等の制作プロデューサーまたはディレクター
- コピーライター
- システムコンサルタント
- インテリアコーディネーター
- ゲーム用ソフトウェアの創作
- 証券アナリスト
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発
- 大学における教授研究の業務
- 公認会計士
- 弁護士
- 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)
- 不動産鑑定士
- 弁理士
- 税理士
- 中小企業診断士
クリエイティブな職種から士業まで該当しますが、いずれも業務遂行の手段や方法、時間配分などが労働者の裁量次第の業務と言える職種です。
また「企画業務型裁量労働制」に関しては、事業運営についての企画・立案・調査・分析などを行う職種が該当します。基本的には、企業の本社や本店など事業の運営に大きな影響がある意思決定が行われる事業場が対象です。
※参照:裁量労働制の概要|厚生労働省
裁量労働制については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
36協定とは?
労働基準法では「法定労働時間」が定められており、企業は労働者に1日8時間・1週40時間以内しか働かせることができません。
残業(時間外労働)や休日労働などの法定労働時間外の労働に関しては、労働基準法第36条に基づいて労使間で協定を締結する必要があります。それが「36協定(サブロク協定)」です。
36協定では、時間外労働を行う業務の内容や、1日・1カ月・1年あたりの時間外労働の上限などを定めなければなりません。
なお、36協定を締結したとしても無限に時間外労働をさせて良いわけではなく、臨時的な特別な事情がない限りは月45時間・年360時間が限度時間として定められています。臨時的な特別な事情があっても、年720時間・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)・月100時間未満(休日労働を含む)を超えることは禁止されており、月45時間を超えることができるのは年間6カ月までです。
※参照:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省
36協定については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご参考ください。
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裁量労働制でも36協定の締結が必要なケース
裁量労働制では、みなし労働時間が8時間となっていれば、実際には6時間しか働いていない場合でも8時間働いたとみなされます。しかし逆に言うと、実際には10時間働いていたり休日労働をしたりしていても、企業側は労働者の労働時間を把握しにくいとも言えます。
そのため裁量労働制を導入している企業のなかには、36協定の締結が不要なのではないかと感じている方も多いのではないでしょうか。ところが、一定の条件の場合は36協定を締結する必要があります。
どのようなケースで締結が必要なのか、詳しく見ていきましょう。
※参照:専門業務型裁量労働制の適性な導入のために(9 時間外労働・休日労働・深夜業・休憩時間)
※参照:労働基準法
みなし労働時間が8時間を超えている
労使間で取り決めるみなし労働時間が、法定労働時間である1日8時間を超える場合には、時間外労働が発生していることが明らかです。そのため、36協定を締結する必要があります。
法定労働時間を超過した分は割増賃金が発生
法定労働時間を超えて労働をすると、時間外労働手当として賃金が割増しになります。みなし労働時間に対する賃金を取り決める際にも、1日8時間を超える分は割増賃金を適用しましょう。
なお、時間外労働に対する割増率は以下の通りになります。1カ月の時間外労働の時間によって割増率が異なるため、注意しましょう。
1カ月あたりの時間外労働の時間 | 割増率 |
60時間以下 | 25% |
60時間超 | 50% |
※参照:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省
法定労働時間を超過した分は時間外労働の上限規制が適用
みなし労働時間を取り決める際に、1日8時間の法定労働時間を超過する内容にする場合、時間外労働の上限規制が適用されます。 前章で解説した通り、上限は「月45時間」となっています。
特別な事情があると超過することも可能ですが、前章の通り、一定の条件があるため注意が必要です。
そうとは言っても、働き方改革の広がりや、ワークライフバランスが重視されている現代の状況を鑑みると、安易に月45時間以上のみなし労働時間を設定することはおすすめできません。従業員の心身の健康を守る意味でも、適切なみなし労働時間を設定しましょう。
休日労働を行った
休日労働が行われた場合にも、36協定の締結、そして割増賃金の支払いが必要となります。
なお休日労働とは、労働基準法第35条に定められた以下の法定休日に労働を行うことです。
- 毎週、少なくとも1日の休日
- もしくは、4週間を通じて4日以上の休日
法定休日に労働が発生した場合には、35%の割増賃金を支払わなければなりません。
さらに、休日労働の際に時間外労働を行った場合には、休日分の割増率35%に加えて、時間外労働分の割増率25%(もしくは50%)がプラスされます。
深夜労働を行った
労働基準法第37条において、午後10時から午前5時の間の労働は深夜労働に該当します。深夜労働に対し、25%の割増賃金の支払いが義務付けられています。
たとえば、法定休日に深夜労働を行った場合には、休日労働分と深夜労働分の割増率がどちらも加算されます。
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裁量労働制の時間外労働に関する注意点
裁量労働制では実際の労働時間に関係なく、あらかじめ取り決められたみなし労働時間が適用されます。ただし、前章のような条件のもとでは、時間外労働・休日労働・深夜労働に該当し、36協定の締結が必要となります。
この際、以下の注意点について覚えておきましょう。
専門業務型と企画業務型では制度の管理方法が異なる
専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制では、導入や継続の方法が異なります。
専門業務型の場合、労使間での取り決めとなっています。そのため、みなし労働時間の決定や36協定の手続きなどは労使間で行うこととなります。また、労働者の同意や撤回に関する記録は、労使協定に追加しなければなりません。
一方、企画業務型の場合には、まずは労使委員会を組織することが義務付けられています。そのうえで、労働者の同意や、みなし労働時間の取り決めなどは、労使委員会の決議が必要です。さらに、定期的に労使委員会を開催し、実施状況の把握や運用改善をしていきます。
※参照:裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です|厚生労働省
実働時間とみなし労働時間にズレがないか確認する
裁量労働制ではみなし労働時間を取り決める必要がありますが、実際の労働時間とズレが生じている例が少なくありません。中でも多いのが、みなし労働時間よりも実際には多く働いている事例です。
たとえばみなし労働時間を8時間と規定していても、実際には10時間ほど働いているという場合、時間外労働の対象となりません。そもそも10時間の労働時間が見込まれている場合は、みなし労働時間も10時間と規定する必要があるでしょう。
裁量労働制を導入する際には、あらかじめどのくらいの労働時間が発生しそうか細かく算出し、実際の労働時間とズレがないようにみなし労働時間を設定することが重要です。また、制度導入後は、定期的に労働者との面談を行って、実際の労働時間を確認しましょう。
労働者が安全に働ける環境を守る
裁量労働制の場合、業務を遂行する手段や時間配分などに関して、企業側は労働者に具体的な指示をしてはいけないとされています。
※参照:専門業務型裁量労働制の適正な導入のために(3 対象業務を遂行する手段、時間配分の決定等に関し、対象労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと)
そのため、企業側は「裁量労働制の労働者がどのくらい働いているのかわからない」「いつ働いているのは把握できていない」という状況に陥りやすくなります。
しかし、裁量労働制だからと言って、企業側は労働者が安全に働ける環境を維持しなければなりません。
特に近年は、長時間労働や休日労働などを原因とする「過労死」「心身の不調」「離職・休職」などの課題が深刻化しています。したがって、企業側は労働者の労働時間を把握し、適切に指示・監督を行って労働者の心身の安全を確保しましょう。
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まとめ
裁量労働制では長時間労働などが関係ないと思われがちですが、実際には時間外労働や休日労働なども適用されます。その際には36協定の締結が必要となるため、適切な対応が求められます。
まずは裁量労働制の労働者の実働時間を把握し、客観的に管理することが必要です。
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