「従業員満足度」とは
「従業員満足度」とは、英語で「Employee Satisfaction(ES)」といい、従業員の企業に対する満足度のことです。
従業員満足度は、従業員の給与や昇給の仕組みだけではなく、福利厚生や職場環境、社風、評価方法、上司や同僚との相性などが要因として関係してきます。
日本では、従業員満足度よりも「顧客満足度(CS)」が優先的に考えられがちです。しかし、従業員満足度を高めることが結果的に顧客満足度の向上に繋がります。従業員満足度が上がれば、従業員はいきいきと仕事に取り組むことができ、結果として顧客に提供するサービスや商品の質向上、提案力の向上などが期待できます。
顧客満足度の向上に苦労している企業は、従業員満足度に目を向けてみることが大切です。
従業員満足度を高めるメリットや意義
従業員満足度を向上させることにより、組織は次のような効果を期待できます。
メリットや意義①:従業員の労働生産性が向上する
従業員満足度が高く、仕事や会社、職場環境に満足していれば、自然と従業員のモチベーションは向上し、高いパフォーマンスを発揮するようになります。
たとえば、元々のスキルを存分に発揮できるだけではなく、従業員は主体性を持って自ら考えて行動するようになり、業務上の無駄がなくなったり、成果の時間効率が向上します。また、自身の成長のための新たなスキル習得に積極的になり、個々のスキルアップや適材適所の配置転換もスムーズになります。そして、より多くの管理職候補が生まれ、企業の体制が盤石なものになります。
従業員の満足度を高めることは、組織力の強化にもつながるといえます。
メリットや意義②:世間からの評価が高まる
従業員満足度が高い企業は、世間からホワイト企業として信頼性が高まります。
働き方改革が推進される中、待遇が悪く従業員満足度が低い企業は時代に逆行していると思われかねません。従業員満足度が高まり世間から評判がいい企業になれば、売上アップにも繋がるでしょう。
メリットや意義③:新しいアイデアが創出されやすくなる
従業員満足度が高い状況では、積極的な提案と思考により、新しいアイデアが創出されやすくなります。
多くの従業員の満足度が向上すれば、それだけ多数の新しいアイデアが生まれ、企業の明るい未来に一歩近づけるでしょう。
メリットや意義④:優秀な人材が定着しやすい
優秀な人材は、自分を正当に評価して適切な待遇と環境で迎えてくれる企業を求めます。従業員満足度が高いと、優秀な人材が定着しやすいため、企業の収益が大きく向上することも期待できます。また、従業員満足度が高い企業との評判が広まれば、優秀な人材が集まりやすくなります。
上の図は、厚生労働省が公表している従業員満足度を重視する企業とそうでない企業の人材確保の状況です。これによると、従業員満足度を重視する企業はそうでない企業に比べて、実際に量・質ともに確保できる傾向があるといえます。
従業員満足度が低いことで抱えるリスク
従業員満足度が低い状態を放置しておくことには次のようなリスクを孕んでいます。
抱えるリスク①:優秀な人材は確保できず、すでにいる人材も流出しやすい
従業員満足度が低い状況では、従業員が短期間で退職します。高額な教育費や採用コストをかけて雇用した人材が退職すれば、企業は大きな打撃を受けるでしょう。また、従業員満足度が低い企業には、優秀な人材の紹介数が減少します。
さらに、短期間で多数の従業員が退職している事実が発覚すれば、採用希望者も減少するでしょう。従業員満足度が低い状況が続くと、人材不足で企業の存続が危ぶまれる恐れがあります。
抱えるリスク②:従業員の主体性を損なう
待遇や職場環境に満足していない従業員は、主体的に行動しようというモチベーションが得られず、積極的な提案ができません。特に、待遇が低いと、給与分しか働きたくないと考え、与えられた仕事の完成度すら低下する可能性があります。このような状態で主体性を発揮しようと思ってもすぐにガス切れになってしまい長くは続きません。
抱えるリスク③:従業員のパフォーマンスが低下し、業績に影響する
主体性とも関連しますが、モチベーションが下がることで、本来のスキルを発揮できなくなります。
人材配置が適切でも、パフォーマンスが低下していると期待通りの結果が出ません。パフォーマンスが低いことを指摘しても、従業員満足度が高まらない限り状況は改善しないでしょう。
従業員満足度に影響する主な因子
それでは、なにが従業員満足度に影響を及ぼしてくるのでしょうか?
従業員満足度に影響する因子は、次の5つがあります。
因子①:企業のビジョンに共感できるか
企業が掲げるビジョンに共感できれば、「会社の役に立ちたい」、「会社の将来が楽しみ」といった感情が生まれます。
取り扱うサービスや商品が顧客にとって本当に良いものである場合も同じ効果が期待できるでしょう。
自分が置かれている環境や属している組織に対する満足度は、従業員満足度に大きく関係しています。
因子②:マネジメントへの納得感があるか
マネジメントの質は、従業員満足度に関わります。
上司は、部下を適切にマネジメントし、モチベーションを高めたり良いアイデアを創出しやすくしたりすることが仕事です。部下が結果を出したときは褒め、結果が出ないときは一緒に原因を考えるなど、適切なマネジメントができていれば従業員満足度が向上します。
因子③:自分が与える業績への影響度を感じれるか
自分が会社の業績に影響を与えている度合いが大きいほどに自分の居場所を見い出せるため、従業員満足度が向上します。
会社の業績に影響を与えていることがわかるように、データを従業員に共有することが大切です。
個々の従業員に関心を持たない企業では、業績への影響度が不透明になるため、従業員満足度は上がりにくいでしょう。
因子④:企業風土に馴染めるか
従業員同士のコミュニケーションが少なかったり、1人あたりの業務量が多すぎたりする企業風土では、従業員が孤独感を覚えるでしょう。正当な評価や適切なマネジメントを受けられないことで従業員満足度が低下する可能性があります。
従業員同士でコミュニケーションをとったり関心を持ちあったりする企業風土が望ましいでしょう。
因子⑤:職場環境に満足しているか
労働時間や福利厚生、備品、設備などが充実していれば、従業員満足度が高まります。
どれだけ企業風土が良かったり企業への貢献度が可視化されていたりしても、職場環境に問題があれば従業員満足度は低下するでしょう。法令違反を犯すような職場では、従業員満足度の低下が顕著です。
ほかの指標との相関
従業員満足度は、顧客満足度や売上など他の指標に関連しています。どのような相関があるのか詳しくみていきましょう。
従業員満足度が顧客満足度に及ぼす影響
2010年にブリッジポート大学で行われた研究によれば、従業員満足度と顧客満足度には正の相関関係があることが示されています。このことから、上の図のように、従業員満足度が高まることで従業員のロイヤリティ及び生産性が向上し、それによりサービス品質も向上し、その結果として顧客満足度が向上するという因果関係を考えることができます。
企業業績との相関
上の図は、厚生労働省が公表している従業員満足度と売上高の関係を示すデータです。これに基づくと、従業員満足度を重視する企業はそうでない企業に比べて業績が好調な傾向があることが見えてきます。
したがって、従業員満足度が向上すれば、従業員のパフォーマンスやスキル、顧客対応の質が向上し、さらに質の高い人材も確保できているため、その結果として売上高の増加に繋がっているのではないかと考えられます。
これは、さきほどの循環する因果関係の図ともつじつまが合います。
まとめ
従業員満足度の向上は顧客満足度の向上に繋がり、結果的に企業の収益が増加します。反対に、従業員満足度の低下は企業の収益低下に繋がるのです。従業員満足度を向上させるべく、「企業のビジョンへの共感」、「マネジメントへの納得感」、「業績への影響度」、「企業風土」、「職場環境」の5つを見直してみてはいかがでしょうか。
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記事執筆:加藤 良大
記事編集:中條 優