サテライトオフィスとは?
サテライトオフィスとは、企業の本社や本拠地から離れた場所に設置できるオフィスを指します。
本拠地となるオフィスを中心として、衛生(satellite「サテライト」)のように設置される点から、サテライトオフィスと名付けられました。
サテライトオフィスには、下記にあげる2つの意味があります。
- 従業員によって、本社より通勤しやすい場所
- 本社と同じような仕事ができるオフィス
そのため数人で働けるスペースと、通信環境が用意されているサテライトオフィスも多く存在しています。
支社や支店、営業所は、業務や事業の観点から見た呼び方ですが、サテライトオフィスは、従業員の働き方を重要視した呼び方といえるでしょう。
またサテライトオフィスは、政府が推進している「働き方改革」との親和性も非常に高いです。
サテライトオフィスの種類
サテライトオフィスは、設置場所によって3つの種類に分かれます。
- 都市型サテライトオフィス
- 郊外型サテライトオフィス
- 地方型サテライトオフィス
それぞれの特徴を解説していきます。
名称 | 特徴 |
---|---|
都市型サテライトオフィス |
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郊外型サテライトオフィス |
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地方型サテライトオフィス |
|
社員は在宅勤務のようにサテライトオフィスで業務ができるので、非常に便利でしょう。
サテライトオフィスが注目されている背景
サテライトオフィスが日本に初めて設置されたのは、1988年と言われています。
しかし、「サテライトオフィス」という言葉を初めて知った方も少なくないはずです。
サテライトオフィスが注目されている背景は、下記の3つです。
- オフィスを構えるよりもコスト削減につながる
- 新型コロナウィルスの流行で、企業の多くがテレワークを導入した
- 働き方改革が施行されたことで、柔軟な働き方へのニーズが高まった
今までは会社通勤が当たり前とされてきましたが、近年では新型コロナウィルスの感染症対策として、多くの企業がテレワークを導入しました。
しかし、社員の中には「作業するための設備やインターネット環境が整っていない」といった、テレワークを弊害に感じる方もいます。
こういった問題を解決するために、サテライトオフィスの導入を検討する企業が増えています。
そもそもサテライトオフィスは必要なのか
現代の日本では、生産年齢人口の減少や少子高齢化の加速が問題になっています。
そういった問題を抱える中、育児と介護の両立や働き方の多様なニーズに応えることが企業の課題です。
サテライトオフィスは、これまで抱えてきた問題や課題を解決できる方法のひとつと考えられています。
具体的な解決例は、下記の通りです。
- 多様化する働き方に対応できるようになるので、人材確保につながる
- 従業員満足度が向上して、離職率が抑えられる
- 地方型サテライトオフィスを作った場合は、地方創生(CSR)に寄与できる
社会と企業の問題や課題を解決する方法として、サテライトオフィスは必要といえるでしょう。
サテライトオフィスを活用するメリットは?
ここまで、サテライトオフィスの概要をお伝えしました。
続いて、サテライトオフィスを利用する5つのメリットを解説します。
- メリット①:移動コスト削減
- メリット②:離職防止
- メリット③:地方の優秀な人材確保
- メリット④:事業継続計画(BCP)対策
- メリット⑤:地方創生
ひとつずつ解説していきます。
メリット①:移動コスト削減
サテライトオフィスを活用するメリットは、移動コストの削減です。
移動コストの削減によって、社員の生産性向上につなげられます。
具体的なメリットは、下記の通りです。
- 通勤時の混雑によるストレスの軽減
- 自由時間が増えるのでワークライフバランスが向上する
- オフィスと勤務先、またはオフィスと住居の移動が最小限になる
結果として、生産性の向上や仕事に対するモチベーションのアップに期待できるでしょう。
また、外回りが中心の営業職にとっても、顧客のオフィスから近い場所にサテライトオフィスがあった場合、本社へ帰社せずに迅速かつスムーズに対応できます。
企業にとっても通勤交通費をカットできるので、固定コストの削減によって、人材確保や設備投資に資金を活かせるでしょう。
メリット②:離職防止
サテライトオフィスは、離職を防止するメリットがあります。
結婚や出産、育児、介護といったライフイベントに対応しやすくなるので、社員の長期勤続が期待できるでしょう。
時間を割かなければならないライフイベントの例は、下記の通りです。
- 子供が急に熱を出す
- 足の悪い親から買い物を頼まれた
急な依頼の際にサテライトオフィスがあれば、柔軟に対応しやすくなります。
企業にとって、経験豊富な人材が退職してしまうことは大きな損失です。
つまり、「優秀な社員に働き続けて欲しい企業」と「働きたくても働けない社員」双方の利害が一致しています。
サテライトオフィスの設置は、介護中または育児中の社員が働きやすい環境を作るために必要だといえるでしょう。
メリット③:地方の優秀な人材確保
地方型サテライトオフィスの設置は、都市部で働けず地方にいた優秀な人材を獲得できます。
UターンやIターン、Jターンで地方に移住して、働きたい人を積極的に採用できるでしょう。
退職や転職はせずに同じ会社で働きながら、地方での勤務も可能です。
さらに総務省は、「おためしサテライトオフィス」を推進しています。
おためしサテライトオフィスの概要は、下記の通りです。
- 移住交流フェアに参加できる
- 37道府県の中からお試しでサテライトオフィスに勤務できる(2023年1月時点)
地方でのビジネスや人材を確保するにあたって、生活・執務環境の違いを把握して、何が必要なのか知る必要があります。
おためしサテライトオフィスは、全国各地の地方公共団体が参加しているので、自社のビジネスに合った環境を選べるでしょう。
メリット④:事業継続計画(BCP)対策
サテライトオフィスの設置は、事業継続計画(BCP)対策につながります。
事業継続計画(BCP)対策とは、停電や地震、システムエラーといった緊急事態が発生した場合に、被害を最小限に留めて事業の復旧と継続を行うための計画立案です。
仮に、事業継続計画(BCP)を策定する場合は、下記のステップを行わなければいけません。
- 策定の目的設定
- 重要な業務とリスクの洗い出し
- リスクに優先順位をつける
- 実現可能な具体策を決める
予期せぬ事態が起きた場合に、事業の継続は簡単ではありません。
しかし、地方や郊外にサテライトオフィスを設置していれば、本社が被害を受けたとしても、違う拠点で事業を継続できます。
サテライトオフィスは事業の継続だけでなく、天災時に発生するリスク分散としても活躍するでしょう。
メリット⑤:地方創生
サテライトオフィスは、社会や地域の発展といった地方創生につながります。
地方自治体が、サテライトオフィスの誘致活動を実施するメリットは、下記の通りです。
- 新しい企業進出の誘発
- 空き家や有給施設の活用
- 交流人口や関係人口の拡大
- イベント交流による地域の活性化
- 地元の自治体と近隣住民との連携の強化
- 地元企業と連携して地域産業の成長に寄与
- UターンやIターン、Jターン者の雇用受け皿の拡大
人口が都市部に集中してしまうため、地方では職場の人材不足や地場産業の衰退が進んでいます。
そのため、地方にサテライトオフィスが設置されることで、社会や地域の発展に貢献できます。
企業が地方への進出を検討する場合は、安定したネット環境と電源設備が整っているといった点を、事前に確認しておきましょう。
ちなみに、こちらの記事ではWeb会議のメリットや日常業務に組み込んだ際に実現する5つのポイントを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
サテライトオフィスを活用している企業事例3選
ここまで、サテライトオフィスを活用するメリットをお伝えしました。
続いて、サテライトオフィスを活用している企業の事例を3つ紹介します。
- 導入事例①:KDDI株式会社
- 導入事例②:株式会社ニチレイ
- 導入事例③:株式会社日立製作所
ひとつずつ紹介していきます。
導入事例①:KDDI株式会社
KDDI株式会社は、2020年2月から約1万人の社員がサテライトオフィスで勤務できる環境を整えました。
サテライトオフィスを導入する背景は、下記の通りです。
- 「自然豊かな環境で働きたい」といった地方移住への関心の高まり
- 人々の多様な働き方を実現する一助になるかを検証するため
またサテライトオフィスの設置によって、リモートワーク時の労務や業務管理、コミュニケーション課題の解決を目的としています。
社員全員がテレワークのメリットを実感して、サテライトオフィスを導入したことで、恩恵を感じ取れる仕組みづくりが成功の秘訣と言えるでしょう。
導入事例②:株式会社ニチレイ
株式会社ニチレイは、2020年9月に多様な働き方の実現を推進するために、サテライトオフィスを設置しました。
サテライトオフィスを設置した目的は、下記の通りです。
- 社員の通勤時間の短縮
- ワークスタイルの自由度を高めることによる働きがいの向上
- 異なる複数の部署の社員による交流から、新しい発想が生まれる効果への期待
また各部署での時差出勤やテレワーク、サテライトオフィスの設置など、社員の勤務方法や安全確保に大きく貢献しています。
将来的には、物流センター事務業務のテレワーク化も視野に入れているようです。
導入事例③:株式会社日立製作所
株式会社日立製作所は、1999年から一部の社員を対象として、サテライトオフィスを利用した勤務を開始しました。
タイム&ロケーションフリーワークの一環として、社内外で61拠点のサテライトオフィスを設置しています(2019年6月時点)。
日立グループ全体の50,000人以上の社員がサテライトオフィスを利用しており、通勤時間の削減や移動時間の有効活用に活かされています。
またIT環境も整備されており、ウェブ会議に備えて下記のツールが配布されているのが特徴です。
- ヘッドセット
- 液晶ディスプレイ
株式会社日立製作所は、社員が生き生きと能力を発揮できる環境作りに取り組んでいるといえるでしょう。
サテライトオフィスを活用するときの注意点は?
ここまで、サテライトオフィスを活用している企業の事例をお伝えしました。
続いて、サテライトオフィスを活用するときの注意点を解説します。
- 注意点①:コミュニケーションが難しくなる
- 注意点②:セキュリティ対策が必要になる
- 注意点③:コストがかかる
ひとつずつ解説していきます。
注意点①:コミュニケーションが難しくなる
サテライトオフィスを設置すると、社員との物理的な距離が生じるため、コミュニケーションが難しくなります。
同じオフィスで仕事をするわけではないので、下記のような問題が起こるでしょう。
- 社員の業務中の勤務態度が把握しづらくなる
- プロジェクトの進捗を管理しにくくなる
そのため、オンラインでのやりとりを円滑に進めるツールとして、「Web会議システム」「ビジネスチャットツール」があります。
また業務連絡だけでなく、社員同士で雑談できる時間も重要です。
業務におけるコミュニケーションを深めるためにも、雑談できる機会を定期的に設けてみましょう。
注意点②:セキュリティ対策が必要になる
サテライトオフィスを設置する際は、セキュリティー対策が必要になります。
特にレンタルオフィスを利用する場合は、多くの利用者が出入りする可能性が高いです。
仮に、社内の機密情報が入ったパソコンやタブレットが盗難された場合、情報漏洩につながるでしょう。
サテライトオフィスを利用する際に、行うべきセキュリティー対策は、下記の通りです。
- 周囲に不審な人物がいないか確認した上で利用する
- OSやファームウェアの定期的なアップデートを行う
- セキュリティソフトを活用して外部からの攻撃対策を行う
- 自社で構築したネットワーク接続以外は、暗号化通信を必ず行う
また、Web会議の際の話し声が情報漏洩につながる可能性もあります。
個室型スマートワークブースが会議室を活用して、外に話し声が漏れない工夫も必要になるでしょう。
注意点③:コストがかかる
サテライトオフィスを設置するにはコストがかかり、立地や規模、設備なので価格帯が異なります。
さらに、「都市型」「郊外型」「地方型」サテライトオフィスによっても、導入や運用にかかる費用が異なるでしょう。
サテライトオフィス設置時のコストを軽減できる助成金や補助金、相談事業の例は、下記の通りです。
- IT導入補助金
- テレワークマネージャー相談事業
- サテライトオフィス設置等補助事業
- 働き方革新推進支援助成金(テレワークコース)
それぞれの制度をうまく活用して、導入や運用コストの軽減につなげましょう。
ちなみに、こちらの記事ではWeb会議システムを導入する際のポイントやおすすめのWeb会議システムを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、サテライトオフィスの概要や活用するメリット、注意点を解説しました。
サテライトオフィスが注目されている背景として、下記の3つがあげられます。
- オフィスを構えるよりもコスト削減につながる
- 新型コロナウィルスの流行で、企業の多くがテレワークを導入した
- 働き方改革が施行されたことで、柔軟な働き方へのニーズが高まった
また、離職の防止や地方創生、移動コストの削減など、企業・社員・地方にとってメリットが大きいです。
本記事でお伝えしたサテライトオフィスを活用している企業の事例を参考にして、自社への導入を検討してください。
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