法定外福利厚生とは?
「法定外福利厚生」というワードに馴染みが少ない人も多いでしょう。
法律で定められているものを「福利厚生」と呼ぶのに対し、法律で定められていないものを「法定外福利厚生」と呼んでいます。
この記事では「法定外福利厚生」の種類や課税・非課税の線引きについてなど、それぞれ詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
また、記事の後半では「福利厚生」についても詳しく解説しています。
さらに現在、福利厚生サービスを導入する企業も増えています。そこで以下の記事「福利厚生サービスおすすめ17選!メリットや選定ポイントも徹底解説!」では、おすすめの福利厚生サービスを紹介するほか、導入するメリットや選定ポイントについて詳しく解説していますので、ぜひ合わせて一読ください。
法定外福利厚生の種類
まずは、法定外福利厚生の種類について見ていきましょう。
法定外福利厚生の種類には以下があり、全部で10種類あると言われています。
- 通勤・在宅
- 健康・医療
- レクリエーション
- 慶弔・見舞い
- 育児介護
- 財産形成
- その他
これまで当たり前のように感じていた福利厚生も実は法律で定められていなかったりと、しっかりと理解できている人は少なくないでしょう。
それぞれ詳しく説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
通勤・住宅
通勤に係る料金(バス・電車の定期、ガソリン代など)や独身寮や社宅の提供、住宅手当などは、法定外福利厚生の一つです。
ここで注意する点は、以下の2点です。
- (社宅の場合)賃貸料の50%以上を従業員から徴収していること
- (通勤費の場合)福利厚生に認められる金額には限度額が定められている
税法上、上記に該当しない場合は福利厚生に該当しません。
マイカーや自転車を利用する通勤費の限度額については以下の表となりますので、理解しておきましょう。
通勤距離(片道) 限度額(1ヶ月あたり) 2km未満 全額 2km以上10km未満 4,200円 10km以上15km未満 7,100円 15km以上25km未満 12,900円 25km以上35km未満 18,700円 35km以上45km未満 24,400円 45km以上55km未満 28,000円 55km以上 31,600円
また、通勤に電車やバスなどの交通機関だけを利用する場合には、運賃・時間・距離において最も経済的かつ合理的な経路の通勤方法が対象となり、以下の内容が定められています。
新幹線や特急列車を利用した場合の運賃等の額も、その通勤方法や経路が「最も経済的かつ合理的な経路および方法」に該当する場合には非課税の通勤手当に含まれますが、グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため含まれません。
最も経済的かつ合理的な経路および方法による通勤手当や通勤定期券などの金額が、1か月当たり15万円を超える場合には、15万円が非課税となる限度額となります。
健康・医療
健康・医療については、従業員全員が利用できるもののみ福利厚生の対象となります。
内容としては以下が挙げられます。
- 残業時の食事の提供
- ジム施設などを無料または割引価格で利用可能
- 人間ドックなど健康診断の費用の負担
- 定期的なメンタルヘルスケアの実施
ここで注意すべき点は「役員や一定以上の役職者を対象とする」内容に関しては、給与扱いとなります。
レクリエーション
レクリエーションに該当する項目については、以下になります。
- 社員旅行(国内・海外)
- 社内部活・サークル活動
- 交流会
- 親睦会
- 新年会・忘年会
従業員のコミュニケーションの活発化やリフレッシュのために導入する企業も多く、楽しみにしている従業員も多いでしょう。
しかし、以下のように福利厚生の範囲を超えてしまう場合は、給与扱いとなってしまいますので、注意しましょう。
新年会
忘年会親睦会 社員旅行
慶弔・見舞い
慶弔・見舞いに当てはまる具体例としては、以下が挙げられます。
- 結婚祝い
- 出産祝い
- 傷病見舞い
- 災害見舞い
- 死亡見舞い
- 昇進祝い
- 成人祝い
- 創立記念祝い
また「支給対象が一部の従業員のみ」や「金額が高額」となる場合には福利厚生の範囲を超えてしまいますので、策定時に注意する必要があります。
育児・介護
育児や介護を要する従業員に対し、福利厚生として企業独自の制度や支援を設けることができます。
具体例としては、以下となります。
- 保育所を企業内に設置する
- 職場環境を整える
- 育児休業・介護休業の延長
- ベビーシッター・介護費用の補助
財産形成
従業員の給与から福利厚生として、天引きや利息の上乗せを行うことができます。
具体例としては、以下となります。
- 財形貯蓄
- 社内預金
- 社内貸付制度
- 持株会
- ストックオプション制度
- マネー相談会
その他
そのほかにも、以下の項目を福利厚生として定めることができます。
- 職場環境
フレックスタイム制度・時差出勤、短時間勤務制度・ノー残業デー - 能力向上・スキルアップ
研修会・講習会の参加費用、書籍などを購入した場合の費用負担 - 自己啓発
セミナーや説明会の参加費用、自己啓発に関する活動の支援 - 休暇
有給休暇以外の独自で定めた休暇(リフレッシュ休暇・バースデー休暇・結婚、出産など)
従業員のワークライフバランス向上において企業独自に策定する必要があり、導入においては十分な検討を行いましょう。
また、以下の記事「ワークライフバランス」の使い方はもう間違わない!例文付き解説で完全マスター」では、正しいワークライフバランスの在り方について詳しく解説していますので、ぜひ合わせて参考にしてください。
法定外福利厚生の課税・非課税の線引きは?
「法定外福利厚生」の種類については理解できたものの、いざ導入を検討する際に課税・非課税の線引きをどのように行うべきか迷う担当者も多いでしょう。
そこで、以下の3つの法定外福利厚生の線引きについてそれぞれ詳しく説明していきます。
- 住宅手当・借り上げ社宅
- 社員食堂・食事補助
- 国内旅行・国外旅行(社員)
住宅手当・借り上げ社宅
まずは、住宅手当と借り上げ社宅の違いについて解説します。
- 住宅手当:自社で働く従業員の住宅に関する補助
- 借り上げ社宅:会社が借り上げた住宅を「社宅」として貸し出す
「住宅手当」として補助を行う場合は、全額が給与となり課税対象となることをまずは理解しておく必要があります。
一方「借り上げ社宅」においては、賃貸料相当額の50%以上を従業員から徴収することで、残りの企業負担分を「非課税」として計上できます。
なお、賃貸相当額とは以下の合計額となります。
- その年度の建物の固定資産税課税標準額×0.2%
- 12×その建物の総床面積(平方メートル÷3.3平方メートル)
- その年度の敷地の固定資産税課税標準額×0.22%
社員食堂・食事補助
「社員食堂」と「食事補助」は一見、同じ意味ではないかと感じる人も多いでしょう。
しかし、提供方法によって課税・非課税が分かれるため、しっかり理解しておく必要があります。
- 食事手当での金銭の補助:課税対象(全額が給与)
- 社員食堂での提供:非課税
また、社員食堂での提供は「非課税」ですが、以下の2つの条件を満たさなければいけません。
- 従業員が食事の価格の半分以上を負担している(役員も含む)
- 会社負担額が1ヶ月あたり3,500円以下である(税抜)
国内旅行・国外旅行(社員)
社員旅行を福利厚生として導入している企業も多いでしょう。
「国内旅行」でも「海外旅行」でも条件は同様となりますが、福利厚生とするには以下の条件を満たす必要があることを理解しておきましょう。
- 期間が4泊5日以内であること(海外の場合旅行先での滞在日数)
- 参加者が企業全体の50%以上である
(事業所ごとの実施の場合はそれぞれで50%以上であること) - 費用が少額(目安として会社負担額が10万円以下)
法定福利費とは?
法定福利費とは、福利厚生の中に含まれる要素であり、法定で定められた「福利費」のことを指します。
「福利厚生」の種類として分類され、事業主が負担する保険料を納めるときに使う勘定項目です。
ここからは、法定福利費について詳しく解説していきます。
法定福利費に該当するもの
まずは、法定福利費に該当するものは以下の4つであり、法定福利費の従業員負担分は「預かり金」または「立替金」で処理します。
- 健康保険料
- 労働保険料
- 厚生年金保険料
- その他
それぞれ詳しく見ていきましょう。
健康保険料
健康保険とは、日常生活において怪我や病気などで病院を受診した際に使う保険料のことです。
保険料については、会社と従業員で折半し、事業主負担分が「法定福利費」に当てはまります。
都道府県別で毎年保険料率が異なるため、必ず確認する必要があります。
労働保険料
労働保険料とは、労災保険料・雇用保険料の総称のことを指します。
従業員に支払われた給与額と交通費(通勤)の合計額に対し、決められた保険料率を掛けて算出を行います。
労災保険料は、危険度が高い業種においては保険料率が高いなど業種によって異なりますので、必ずどの料率に当てはまるかしっかり確認する必要があります。
また、労働保険料においても健康保険料と同様、会社と従業員で折半を行います。
厚生年金保険料
厚生年金保険料とは、老後の所得保障の役割となる保険です。
老齢厚生年金や障害厚生年金、遺族厚生年金などの種類があります。
よく耳にする「年金制度」は、厚生年金保険と国民年金を合わせた制度となります。
その他
そのほかにも、法定福利費には以下の種類があり、それぞれ法律で定められています。
- 雇用保険料:事業主が一定割合負担
- 介護保険料:事業主と従業員で折半
- 労災保険料:事業主が全額負担
- 児童手当拠出金(子供・子育て拠出金):事業主が全額負担
- 身体障害者給付金
福利厚生費は上手に活用することで企業の節税対策に効果的とされていますが、度がすぎる場合は給与として課税されることになりますので、注意が必要です。
まとめ
この記事では「法定外福利厚生費」「法定福利費」について詳しく説明しました。
それぞれ種類が多いため、混乱してしまう企業や担当者も少なくないでしょう。
しかし、法で定められている内容ですので、担当者だけでなく役員側でもしっかり理解しておく必要があります。
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