STO(Security Token Offering)とは?
STOとは「Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)」の略称で、デジタル時代の新たな資金調達方法として注目されている手法です。
STOを簡潔に表すと、電子化して発行された有価証券いわば「デジタル証券」を、ブロックチェーン技術を活用して発行することで資金調達を行う方法と言えます。
有価証券とは、株式や社債、不動産や特許権など、企業が保有している財産です。こうした有価証券は投資の対象となるため、従来はIPO(Initial Public Offering)という新たに株式を一般投資家に向けて公開して資金調達を行う方法で用いられていました。
しかしビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)の登場により、「ICO(Initial Coin Offering)」と言われる暗号資産を用いた資金調達方法が注目されるようになったのです。ところがICOは、政府による審査や規制がないためリスクの高さが問題視されるようになり、さらに詐欺まがいの行為も見られるようになりました。
こうした背景から、企業の有価証券の価値をトークンとして発行し、発行に際して政府の承認を得なければいけないSTOが登場したのです。
実際、金融商品取引法および関連府令の改正により「電子記録移転権利・電子記録移転有価証券表示権利等」としてST(セキュリティ・トークン)が定められています。
不動産STOとは
従来の不動産投資は、不動産の一棟もしくは一室などの物件を購入し、第三者に貸し出して賃料を受け取る投資方法です。もしくは、購入した不動産を売却する際の差額を利益とする方法もあります。
さらに近年では、投資会社が投資家から集めた資金を元手にして不動産投資を行い、家賃収入や売却利益などを投資家たちに分配する不動産投資型クラウドファンディングも盛んになっています。
不動産STOとは不動産をセキュリティトークン化するもので、小口化できるため小額投資が可能になります。
ケネディクス株式会社は、2021年8月に日本初の不動産STOを行いました。2022年には第三弾として、国内最大級の約70億円の不動産STOを完了し、話題になりました。
参考:日本最大となる約70億円の不動産STOを完了、世界的にも大型|ケネディクス プレスリリース
STOが注目されている理由
STOが登場する前に、企業が新たな資金調達方法として取り入れたのが「ICO」です。ICOとは先述の通り暗号資産を用いた資金調達方法を指し「トークンセール」とも言われます。
しかしICOは、急激に資産価値が下落するかもしれないリスクの高さと、ICOに便乗した詐欺行為が露見されたことで、企業の資金調達方法としては適切ではないと問題視されるようになりました。
そこで、有価証券として発行することで法的な規制対象となる「ST(セキュリティトークン)」が登場し、STを活用した資金調達方法のSTOが注目されるようになったのです。
STOは、ICOとは違って法的な規制がされているため、投資家は安心して投資できます。また、IPOのように手間のかかる手続きも必要なく、今までは資金調達が難しかったスタートアップ企業やプロジェクト単位でも資金を調達できるようになっています。
STO(Security Token Offering)の特徴
STOとはどのようなものなのか、よく理解できていない方も多いかもしれません。そこで、本章ではSTOの特徴を3つにまとめました。
データの改ざんが難しい
STOの取引は、すべてブロックチェーン技術を用いて行われます。
ブロックチェーンとは、一つひとつの取引履歴を「ブロック」という単位で管理し、履歴をつなげて鎖(チェーン)状に保管していく手法です。 複数のブロックが連結してつながっているため、一つのデータ(ブロック)を改ざんしようとすると、他のブロックも改ざんしなければなりません。すべてのデータの改ざんには高度な技術と多大な時間を要するため、現実的には不可能です。
よって、STOはデータの改ざんが難しく、安全に取引できます。
時間を問わず取引ができる
従来通りの証券取引は、証券取引所の営業時間である平日の9時から15時の間しか取引できません。また、昼休憩に該当する11時半から12時半は株式の取引ができず、取引ができる時間帯が限定されています。
しかしSTOはオンラインでの取引のため、取引の時間に制約がありません。土日や早朝・夜間などの時間帯でも取引ができるため、今までは時間的に難しく投資できなかった人でも参入しやすくなったと言えるでしょう。
コストやリソースを抑えて資金調達ができる
IPOで取引を行う場合は上場しなければならず、すぐに資金を手に入れたいのに多大な時間と手間がかかります。仲介業者を介する場合は手続きが煩雑で、さらに仲介手数料も発生します。
しかしSTOの場合は、すべてオンラインで取引ができるため、取引に関するリソースを削減できます。オンラインでの取引により、資金調達のスピードが高速化するでしょう。
また、手数料についてはゼロもしくは少額になっているため、従来の方法よりも手軽に始められます。
少額投資ができる
国内株式の場合、売買の単位は100株とされています。(※)
しかしセキュリティトークンの場合は売買の単位が決められておらず、小口で販売することも可能です。
また、物理的に巨大な不動産や、実体のない特許権なども、小口化して販売できます。
小口化することで少額投資も可能になり、今までは投資が難しかった投資家も手を出しやすくなります。投資家が増えれば、企業の資金調達も容易になるでしょう。
(※)参考:売買単位の統一|日本取引所グループ
STO(Security Token Offering)の今後は?
STOは現在、海外を中心に動きが活性化しています。 著名な事例としては、米国の通販会社Overstockの子会社tZEROがTZROPを発行して1.34億ドルを調達した事例が挙げられます。(※)
日本でもSTOが注目されつつあり、1章で挙げたケネディクス株式会社による不動産STOが代表的な例でしょう。
STOの取引ができるプラットフォームや、自社のSTOを発行・管理できるWebサービスも登場しています。
とは言え、国内ではSTOはまだまだ認知度が低く、取引されている銘柄も多くありません。取引体制も充分に整っているとは言えず、現在は黎明期にあると言えるでしょう。
しかし海外での動きを見ていると、今後ますます日本国内でも活性化する可能性も高いため、STOに関心のある方は動向に注目しましょう。
(※)参考:金融市場とブロックチェーン~海外におけるSTO事例~|野村資本市場研究所
まとめ
デジタル化が進む現代で、STOは新たな資金調達方法として注目されている手法です。海外を中心に活性化しており、その波は日本にもやってくると予想されます。
投資家は小額投資ができるため、今まで投資に興味があってもなかなか手を出せなかった人でも、参入しやすくなるでしょう。また、企業にとっては資金調達の機会が増える可能性もあります。
デジタル化が発展していくこれからの時代、STOの今後の動向に注目しましょう。
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