人材不足が深刻化している日本。そうした時代の救世主とも言えるのが「スキマバイト」という新しいはたらき方だ。
今回はスキマバイトに特化したサービス「シェアフル」を運営するシェアフル株式会社の代表取締役である横井氏に、詳しい話をうかがった。
<福谷氏>
本日は、シェアフル株式会社の代表取締役社長の横井聡さまにお話をうかがいたいと思います。よろしくお願いいたします。初めに、自己紹介をお願いできますでしょうか?
<横井氏>
もともと私はエンジニアからキャリアを始めておりまして、アプリケーションやWebサービスなどを手がけてきました。以前は「ランサーズ」というクラウドソーシングサービスを行う会社で執行役員を務めており、シェアフルの立ち上げ期から参画しております。シェアフル株式会社では、2023年4月より代表取締役社長として就任しました。人材業界には10年以上携わっております。
人材業界の中でも、「流動化する人材」という領域とデジタルテクノロジーをかけ合わせたビジネスを主軸としています。
<福谷氏>
業界のプロとも言える方にお話をうかがえるのは非常に嬉しく思っております。
スキマバイトを「お試し」として活用する
<福谷氏>
実際、多くの企業様が人材不足という課題を抱えているとお聞きするのですが、やはり日本の人材不足は深刻化している状況ですよね?
<横井氏>
背景にはさまざまな問題があるかと思うのですが、ひとつは「少子高齢化」ですね。就労人口自体が減っているという、マクロ視点での問題です。
もうひとつは、個人の選択肢が増えているという背景もあります。かつては、学生がアルバイトを探す際に飲食店やコンビニなどが主流でしたが、今ではほかにも多様な業界やはたらき方が可能です。多くの人がはたらきたい業界・職業で仕事ができるのは喜ばしいことですが、もともと少なくなっている人材が分散してしまっている状況のため、人材を必要としている業界が手薄になっていますね。
ただし、解決の糸口はあると思っています。我々は「スキマバイト」に特化したサービスである「シェアフル」を提供しているのですが、こうしたスキマバイトをきっかけにして、人材不足で悩んでいる業界に改めて人材が流動してきているように感じます。
たとえば、コンビニエンスストアの仕事はマルチタスクのためやりがいのある仕事ではあるのですが、そのぶん「大変そう」というイメージが先行しがちです。そこで、まずはスキマバイトで「1日だけやってみよう」とコンビニの仕事をしてみていただくと、「予想より大変ではない」「意外とやりがいがある」と気づいてくださるきっかけになります。実際、スキマバイトをきっかけにして、その後に正式に採用されて長期的にはたらいてくださっている方も少なくありません。
やはり最初から「半年以上はたらいてください」というように制約があるとなかなか踏み出せませんが、スキマバイトは1日単位なので「お試し」のようなかたちではたらける点がメリットですね。
<福谷氏>
ユーザーはお試しとしてはたらけるのでハードルが下がりますし、合わなければ別の業界や職種にチャレンジできるので魅力的ですね。
<横井氏>
我々はシェアフルのサービスを開始して5周年を迎えるのですが、立ち上げ当初は、世間一般でイメージする「スキマバイト」をベースにして事業を展開しようと思っておりました。たとえば、人材が足りなくてお店が回らなくて「お皿を下げる業務だけでもやってほしい」「忘年会・新年間シーズンだけ手伝ってほしい」という飲食店などを対象に考えていたのです。
しかし、シェアフルを提供していく中で、はたらく個人や企業側の実態が見えてきました。当社のサービスをご利用いただいているユーザーの方に対してアンケートを取ったところ、半数以上が長期的な雇用を希望していました。もちろん、企業側にとっても、スキマバイトではたらいていただける方々には長期的にはたらいてほしいと思っているのは当然です。こうした実情を鑑みて、もしスキマバイトでお互いに相性が良ければそのまま長期雇用に転換してくださって構わないという方針を取っております。現在、このように長期雇用のきっかけとしてシェアフルを使ってくださっている事例は少なくありません。
<福谷氏>
シェアフルは、双方にとってメリットのある、Win-Winのサービスですね。
「はたらいてみないとわからない部分」を理解し合えるきっかけに
<福谷氏>
今後、スキマバイトを活用したいと思う企業様も増えていくかと思います。
これからスキマバイトの活用を検討している企業様が、注意すべきポイントなどはありますか?
<横井氏>
数時間単位や1日単位で人を雇用したいと考えた際、企業様は「1日単位で人を集め続けなければならない」というポイントと「一人ひとりを1日単位で労務管理しなければならない」というポイントがあります。特に後者のポイントは企業様にとって大きな課題になりまして、たとえば1日単位の給与計算の場合は所得税の計算方法が特殊なため、企業様にとって負担になりかねません。
一方、我々は「1日単位の人材紹介」という方針ですので、労務契約管理や給与計算、給与振り込みなども代行させていただいております。
また、企業様が新たにスキマバイトを採用するとしたとき、人事部門の人事システムとの紐づけや管理などに課題を抱える場合もあります。我々はそのようなシステム連携の事例もございますので、そのような課題にも対応させていただくことが可能です。
<福谷氏>
サポートしてくださるのであれば、スキマバイトの活用にもハードルが下がりますね。
シェアフルを活用したい場合は、Webサイトに掲載するかたちになるのでしょうか?
<横井氏>
アプリとWebで掲載が可能です。そのため、シェアフルのアプリをダウンロードしていない個人の方でも、検索エンジンやSNSなどを経由してWebサイトから求人情報を閲覧できます。
企業様の掲載料は不要で、成果報酬型となっておりまして、1日はたらいた給与(時給×時間+交通費)の30%を手数料としていただいております。
<福谷氏>
企業様にとって気になるのが「どのような方が登録されているのか」という点もあるかと思います。スキマバイトというと学生や主婦の方をイメージしますが、実際にはいかがでしょうか?
<横井氏>
確かに、学生や主婦といった層は多いですね。学生は全体の20%近くいらっしゃいます。実は、正社員・契約社員・派遣社員などの「社員」という属性の方が全体の40%程度いらっしゃるんです。幅広い層の方が登録してくださっているので、その点もシェアフルの強みですね。
先ほどの「長期移行」の話で言うと、学生さんが長期的に安定してはたらけるアルバイトを探しているという事例も多いのですが、転職を検討している社員属性の方が「まずは1日はたらいてみて相性を見てみよう」という事例も少なくありません。
<福谷氏>
そのような活用方法もあるのは素晴らしいですね。
<横井氏>
企業側にとっても、スキマバイトを「お試し」として活用することは効果的だと考えています。
今までは、履歴書・職務経歴書をベースとして採用していたため、性格や人柄などのパーソナルな部分は書類では判断できていませんでした。しかし、1日一緒にはたらくことでどのような人となりか理解でき、書類だけではわかりにくい部分で判断できるようになります。
また、求人媒体経由で多くの個人の方に応募してほしいと思ったら、膨大な掲載料や広告費が必要となります。そのため、従業員を大切にしていて職場環境が素晴らしい企業様であっても、コストをかけられないために他の求人情報に埋もれてしまうという事態になっていました。
しかしシェアフルは掲載料をいただいていないためすべての求人情報をフラットに掲載しておりますので、個人の方の目に留まる機会を増やすことができます。そこで興味をもっていただいて1日だけはたらいてくださると、職場環境のすばらしさに気づいていただくこともできるのです。
<福谷氏>
確かに、企業側にとっても個人の方にとっても「はたらいてみないとわからない」という部分が、スキマバイトだと解消できますね。
スキマバイトが新しい「選択肢」に
<福谷氏>
実際にシェアフルを活用した企業様の声をお聞かせください。
<横井氏>
掲載してから1時間以内に数件の応募が入る企業様もいらっしゃるので、応募件数の数やスピードを評価してくださる企業様は多くいらっしゃいます。たとえば、今まで求人媒体に掲載しても成果がなかった企業様が、シェアフルに掲載してくださって多くの応募があったという事例もございます。
また、応募してくださったユーザーの方が長期転換を希望するケースも少なくないため、シェアフルをきっかけに長期雇用のアルバイトを採用できたというお声もいただきます。
<福谷氏>
今後ますます需要が高まりそうですね。御社の今後の展望もお聞かせいただけますか?
<横井氏>
我々のミッションとして「誰もの『はたらく』を広げ、新しい『はたらく』を作る」を掲げております。たとえば、今までは「ちょっと時間ができたからはたらきたい」「副業したい」というニーズがあっても叶えるのが難しかった方に対して、我々のシェアフルによって「スキマバイト」という選択肢を広げられるようになれればと思っております。
また、企業様にとっては「必要なときに必要な人たちがいる」という状態が望ましいですが、それが叶わないときに、スキマバイトという選択肢があればメリットになると思いますし、そこから長期雇用へ転換もできます。
シェアフルユーザーの就業実績を活用した人材紹介機能「シェアフルエージェント」も2月より開始し、当社が手がけるSaaS型シフト管理サービス「Sync Up」との連携も進めておりますので、企業様はシフトの作成から労務管理まで一気通貫でお任せいただけるようになります。
<福谷氏>
人材不足の解消だけでなく、その後の労務関連も依頼できるのは魅力的ですね。
本日は非常にためになるお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。