内定者フォローにおけるメールコミュニケーションの重要性

売り手市場が続き、学生優位の採用活動が一般化する現代において、内定者フォローは企業の将来を左右する極めて重要なプロセスとなりました。特に、内定承諾から入社までの期間が数ヶ月に及ぶ新卒採用では、内定者の不安や迷いを解消し、入社意欲を維持・向上させるための継続的なコミュニケーションが不可欠です。その中でも「メール」は、最も基本的かつ効果的なコミュニケーションツールとして、その重要性を増しています。
電話ほど相手の時間を拘束せず、SNSほどプライベートに踏み込みすぎないメールは、採用担当者と内定者の双方にとって、心理的な負担が少ない最適なコミュニケーション手段と言えるでしょう。この章では、なぜ内定者フォローにおいてメールが重要なのか、その理由を3つの側面から詳しく解説します。
内定辞退の防止と入社意欲の維持・向上
内定承諾後、入社までの期間が長くなると、内定者は「本当にこの会社で良いのだろうか」「もっと自分に合う会社があるのではないか」といった、いわゆる「内定ブルー」に陥ることがあります。また、他社からの魅力的なオファーを受け、気持ちが揺らぐケースも少なくありません。
このような状況で企業からの連絡が途絶えてしまうと、内定者は孤独感や不安を募らせ、最悪の場合、内定辞退に至ってしまいます。定期的なメールでのフォローは、企業が常に自分を気にかけてくれているという安心感を与え、社会人になることへの期待感を醸成する上で非常に効果的です。会社の近況や先輩社員からの歓迎メッセージなどを通じて、企業との心理的なつながりを保ち続けることが、入社意欲の維持、ひいては内定辞退の防止に直結するのです。
企業へのエンゲージメントと帰属意識の醸成
内定者フォローの目的は、単に内定辞退を防ぐことだけではありません。入社後の活躍を見据え、内定者のエンゲージメント(企業への愛着や貢献意欲)を高めていくことも重要な目的の一つです。
メールを通じて、会社のビジョンや文化、事業の最新動向、活躍する社員の紹介といったポジティブな情報を継続的に発信することで、内定者は入社後の働く姿を具体的にイメージし、「この会社の一員になる」という帰属意識を自然と育むことができます。こうした入社前からのエンゲージメント醸成は、入社後のスムーズな立ち上がりや定着を促し、早期離職のリスクを低減させる効果も期待できます。
コミュニケーション手段としての有効性
内定者フォローには、メール以外にも電話や対面、SNSなど様々な手段がありますが、それぞれの特性を理解し、適切に使い分けることが重要です。その中でもメールは、多くの面でバランスの取れた優れたツールです。
以下の表は、主なコミュニケーション手段の特徴を比較したものです。
| 手段 | メリット | デメリット | 活用シーン |
|---|---|---|---|
| メール | ・時間や場所を選ばず送受信できる ・記録が残り、正確な情報伝達が可能 ・テンプレート活用で効率化できる | ・感情やニュアンスが伝わりにくい ・開封されない可能性がある | ・懇親会や手続きなどの一斉連絡 ・定期的な情報共有 ・個別面談の日程調整 |
| 電話 | ・声を通じて感情や熱意が伝わりやすい ・その場で疑問を解消できる | ・相手の時間を拘束する ・言った言わないのトラブルになりやすい | ・内定承諾直後のお礼 ・緊急性の高い連絡 ・内定者の不安が強い場合の個別相談 |
| SNS(LINEなど) | ・開封率が高く、気軽にやり取りできる ・親近感を醸成しやすい | ・公私の区別がつきにくい ・企業のブランドイメージを損なうリスク | ・内定者同士のコミュニティ形成 ・カジュアルなイベントの案内 |
表からも分かるように、メールは事務連絡の正確性と、定期的な情報発信による関係構築の両方を効率的に実現できるという大きなメリットを持っています。他の手段と組み合わせながら、コミュニケーションの軸としてメールを戦略的に活用することが、効果的な内定者フォローの鍵となります。
【シーン別】内定者フォローですぐに使えるメールテンプレート集

内定者フォローにおいて、メールは最も基本的かつ重要なコミュニケーションツールです。しかし、どのような内容を、どのタイミングで送ればよいか悩む採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
この章では、内定承諾直後から入社直前まで、様々なシーンでそのまま使えるメールテンプレートを7つご紹介します。コピー&ペーストして使えるだけでなく、各テンプレートの目的やカスタマイズのポイントも解説しますので、ぜひ自社の状況に合わせてご活用ください。
内定承諾直後に送るお礼メール
内定者が「この会社に決めてよかった」と感じるための最初の重要な一歩です。内定承諾の連絡を受けたら、できるだけ早く、できれば当日中に感謝の気持ちを伝えましょう。今後の流れを簡単に示すことで、内定者の安心にもつながります。
件名
【株式会社〇〇】内定承諾のお礼と今後のご案内
本文
〇〇様
株式会社〇〇 採用担当の〇〇です。
この度は、内定をご承諾いただき、誠にありがとうございます。
〇〇さんと一緒に働けることを、社員一同、心より楽しみにしております。
選考では、〇〇さんの「〇〇」というご経験や「〇〇」に対する熱意が非常に印象的でした。
その強みを活かして、当社でご活躍いただけることを確信しております。
さて、今後のスケジュールにつきましては、改めてご連絡いたしますが、
まずは内定者懇親会を〇月頃に予定しております。
詳細は決まり次第、改めてご案内いたします。
入社までの間、ご不安な点やご質問などがございましたら、
いつでもお気軽に私〇〇までご連絡ください。
これからどうぞよろしくお願いいたします。
(署名)
カスタマイズのポイント
画一的な文章だけでなく、選考過程で印象に残ったその人ならではのエピソードや評価している点に具体的に触れることで、「自分をしっかり見てくれている」という特別感が伝わり、エンゲージメント向上につながります。
内定者懇親会やイベントの案内メール
内定者同士や先輩社員との交流は、入社後のミスマッチを防ぎ、帰属意識を高める絶好の機会です。イベントの目的や楽しさが伝わるような、ポジティブな雰囲気のメールを送りましょう。
件名
【株式会社〇〇】内定者懇親会のご案内
本文
内定者の皆様
株式会社〇〇 採用担当の〇〇です。
秋風が心地よい季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、この度は、内定者の皆様同士の交流を深め、当社の雰囲気を感じていただくため、
ささやかながら内定者懇親会を企画いたしました。
当日は、皆様の同期となる仲間や、様々な部署で活躍する先輩社員も参加する予定です。
リラックスした雰囲気の中で、仕事のことや会社生活のことなど、何でも気軽に話せる機会にしたいと考えております。
詳細は下記をご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | 202X年〇月〇日(〇) 18:00~20:00 (受付開始 17:45) |
| 場所 | 〇〇(レストラン名など) 地図URL:http://… |
| 参加予定社員 | 〇〇(役職)、〇〇(役職)、若手社員数名 |
| 服装 | 自由(私服でお越しください) |
| 持ち物 | 特にございません |
ご多忙中とは存じますが、ぜひご参加いただけますと幸いです。
つきましては、準備の都合上、〇月〇日(〇)までに、下記のフォームより出欠のご連絡をお願いいたします。
出欠登録フォーム:http://…
皆様にお会いできることを、社員一同心より楽しみにしております。
(署名)
カスタマイズのポイント
参加予定の先輩社員の簡単なプロフィール(部署、入社年次、趣味など)を添えると、内定者が親近感を持ちやすくなり、当日の会話のきっかけにもなります。オンライン開催の場合は、使用するツールや参加URLを忘れずに記載しましょう。
個別面談の打診と日程調整メール
内定期間が長くなると、内定者は「本当にこの会社で良いのだろうか」という不安(内定ブルー)に陥りがちです。個別にコミュニケーションを取る機会を設け、一人ひとりの不安や疑問に寄り添う姿勢を示しましょう。
件名
【株式会社〇〇】人事担当との個別面談のご案内
本文
〇〇様
株式会社〇〇 採用担当の〇〇です。
お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、ご入社いただくにあたり、〇〇さんの現在の状況をお伺いしたり、
入社前の不安や疑問を解消したりするため、個別面談の機会を設けさせていただきたく、ご連絡いたしました。
配属先の希望やキャリアプランについてなど、どんなことでも結構ですので、
この機会にざっくばらんにお話しできればと思っております。
つきましては、下記の日程の中からご都合の良い日時をいくつかお選びいただき、
〇月〇日(〇)までにご返信いただけますでしょうか。
【面談候補日時】
・〇月〇日(〇) 10:00~17:00
・〇月〇日(〇) 13:00~18:00
・〇月〇日(〇) 10:00~15:00
上記日程でのご調整が難しい場合は、遠慮なくその旨をお知らせください。
面談は30分~1時間程度、オンライン(Google Meetを使用予定)で実施いたします。
お忙しいところ恐縮ですが、ご返信をお待ちしております。
(署名)
カスタマイズのポイント
「面談」という言葉に堅苦しさを感じる内定者もいるため、「カジュアル面談」「フォロー面談」「お話会」など、目的や相手に合わせて表現を和らげると良いでしょう。日程調整ツール(TimeRex、YouCanBook.meなど)を活用すると、やり取りの手間を削減できます。
入社前の研修や課題を連絡するメール
入社後のスムーズなスタートを目的として、研修や課題を課す場合の案内メールです。なぜこれを行う必要があるのか、目的を丁寧に説明し、内定者のモチベーションを高めることが重要です。
件名
【株式会社〇〇】入社前研修(e-ラーニング)のご案内
本文
〇〇様
株式会社〇〇 採用担当の〇〇です。
この度は、皆様がご入社後、スムーズに業務をスタートできるよう、
入社前研修としてe-ラーニング講座をご用意いたしましたので、ご案内いたします。
本研修は、社会人としての基礎となるビジネスマナーや、当社の事業理解を深めていただくことを目的としております。
ご自身のペースで学習を進めていただけますので、学業等と両立しながら取り組んでいただけますと幸いです。
詳細は下記をご確認ください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研修内容 | e-ラーニング講座「〇〇(講座名)」 |
| 受講方法 | 下記URLよりログインしてください。 ID:〇〇 パスワード:〇〇 |
| 受講期間 | 本日より〇月〇日(〇)まで |
| 想定学習時間 | 約〇時間 |
研修を進める中でご不明な点がございましたら、いつでも担当の〇〇までお問い合わせください。
本研修が、皆様にとって有意義なものとなることを願っております。
(署名)
カスタマイズのポイント
内定者の学業やプライベートの時間を尊重し、過度な負担にならないよう配慮する一文を添えることが大切です。「あくまで入社後のスタートダッシュを支援するためのもので、選考ではありません」といった言葉を加え、心理的なプレッシャーを軽減する工夫も有効です。
入社手続きの案内メール
事務連絡は、正確さと分かりやすさが最も重要です。提出が必要な書類や期限を箇条書きや表で示し、誰が読んでも一目で理解できるようにしましょう。件名に【重要】などを入れると、見落とし防止につながります。
件名
【重要・株式会社〇〇】ご提出ください:入社手続き書類のご案内
本文
〇〇様
株式会社〇〇 採用担当の〇〇です。
入社にあたり、必要な手続きと提出書類についてご案内いたします。
重要な内容となりますので、必ず最後までご確認をお願いいたします。
ご提出いただく書類は以下の通りです。
同封しております返信用封筒にて、〇月〇日(〇)必着でご返送ください。
| 提出書類 | 備考 |
|---|---|
| 入社承諾書 | 記名・捺印をお願いします。 |
| 身元保証書 | 保証人様の記名・捺印が必要です。 |
| 住民票記載事項証明書 | 発行から3ヶ月以内のものをご用意ください。 |
| 給与振込口座届 | ご本人様名義の口座をご記入ください。 |
| 年金手帳・雇用保険被保険者証 | お持ちの方のみご提出ください。(コピーではなく原本) |
各書類の記入方法について、ご不明な点がございましたら、
いつでも担当の〇〇(内線:〇〇)までお問い合わせください。
お手数をおかけしますが、ご対応のほどよろしくお願いいたします。
(署名)
カスタマイズのポイント
書類の送付と合わせてメールを送ることで、より丁寧な印象を与え、提出漏れを防ぐ効果があります。専門用語(例:源泉徴収票、被扶養者異動届など)には簡単な説明を加えるなど、内定者の目線に立った分かりやすい表現を心がけましょう。
定期的な会社の情報共有メール
入社までの期間、定期的に連絡を取ることで、内定者のエンゲージメントを維持します。社内報やブログ、社員インタビューなど、会社の「今」が伝わるポジティブな情報を共有し、入社への期待感を高めましょう。
件名
【〇〇だより】新サービス「〇〇」がメディアで紹介されました!/株式会社〇〇
本文
内定者の皆様
株式会社〇〇 採用担当の〇〇です。
〇〇大学では卒業式のシーズンかと思いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、本日は皆様に嬉しいニュースをお届けします。
当社の新サービス「〇〇」が、Webメディア「〇〇」に取り上げられました!
この記事では、開発を担当した〇〇部の〇〇さん(入社3年目)のインタビューも掲載されており、
サービスに込めた想いや開発の裏話を知ることができます。
ぜひご覧いただき、当社の事業や働く社員の雰囲気を感じていただければ幸いです。
記事URL:http://…
入社後、皆様とも一緒に新しい価値を創造していけることを楽しみにしています。
季節の変わり目ですので、どうぞご自愛ください。
(署名)
カスタマイズのポイント
一方的な情報提供で終わらせず、内定者に簡単な感想を求めるなど、双方向のコミュニケーションを意識すると効果的です。例えば、「記事を読んでみて、どんな点に興味を持ちましたか?」「皆さんが最近気になっているニュースなどもあれば教えてください」といった一文を加えてみましょう。
内定者からの質問に返信するメール
内定者からの問い合わせには、迅速かつ丁寧に対応することが信頼関係の構築につながります。質問への回答だけでなく、プラスアルファの情報提供や、いつでも相談できるという安心感を与える一言を添えましょう。
件名
Re: 〇〇(質問内容)に関するご質問の件
本文
〇〇様
株式会社〇〇 採用担当の〇〇です。
ご連絡いただき、ありがとうございます。
お問い合わせいただいた配属先の件について、ご回答いたします。
配属先につきましては、ご本人の希望と適性、そして社内の人員計画を総合的に判断し、
入社後の新入社員研修期間中(〇月下旬頃)に決定し、皆様にお伝えする予定です。
〇〇さんからは選考の段階で〇〇職へのご希望を伺っておりますので、そちらも十分に考慮した上で検討を進めてまいります。
その他、ご不安な点やご不明な点がございましたら、
どんな些細なことでも構いませんので、いつでもお気軽にご連絡ください。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
(署名)
カスタマイズのポイント
質問に対する回答は、曖昧な表現を避け、明確に伝えることが重要です。すぐに回答できない場合は、「確認の上、〇月〇日までにご連絡します」といったように、いつまでに回答できるかの目処を伝え、まずは一次返信をすることで、内定者に安心感を与えることができます。
効果的な内定者フォローメールにするための3つのコツ

内定者フォローのメールは、テンプレートをただ送るだけでは十分な効果は得られません。内定者のエンゲージメントを高め、入社への期待感を醸成するためには、いくつかの重要なコツがあります。ここでは、内定辞退を防ぎ、入社意欲を高めるための効果的なメール作成のポイントを3つご紹介します。
件名は分かりやすく簡潔に
内定者は就職活動を終えた後も、大学の連絡や他社からのメールなど、日々多くのメールを受け取っています。数多くのメールに埋もれてしまわないよう、件名だけで「誰から」「何の」連絡なのかが一目で分かるように工夫することが非常に重要です。
件名を作成する際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 【会社名】を必ず記載する
- 「ご案内」「ご確認のお願い」など、メールの目的を明確にする
- 長すぎず、スマートフォンでも全体が表示される20〜30文字程度に収める
具体的な件名の良い例と悪い例を以下に示します。
| シーン | 良い件名の例 | 悪い件名の例 |
|---|---|---|
| 懇親会の案内 | 【株式会社〇〇】内定者懇親会のご案内(2025年卒) | 懇親会のお知らせ |
| 日程調整 | 【株式会社〇〇 人事部】個別面談の日程調整のお願い | 日程の件 |
| 入社手続き | 【重要・要返信】株式会社〇〇より入社手続きのご案内 | ご連絡 |
悪い例のように件名が曖昧だと、後回しにされたり、最悪の場合開封されずに見逃されたりする可能性があります。誰からの何のメールか、そして重要度が瞬時に伝わる件名を心がけることで、スムーズなコミュニケーションを実現できます。
内定者一人ひとりに向けたメッセージを添える
一斉送信の事務的なメールは、内定者に「自分はその他大勢の一人」という印象を与えかねません。内定から入社までの期間は、内定者が孤独や不安を感じやすい「内定ブルー」に陥ることもあります。そこで効果的なのが、テンプレートの文章に加えて、個人に宛てた一言を添えることです。
ほんの一文でも、パーソナルなメッセージがあるだけで、「自分のことを気にかけてくれている」「会社に歓迎されている」と感じ、帰属意識や入社意欲の向上につながります。
個別メッセージの具体例
個別メッセージを添える際は、以下のような内容が効果的です。
- 面接時のエピソードに触れる
例:「面接でお話しいただいた〇〇への情熱は、今でも鮮明に覚えています。入社後にその力を発揮していただけることを楽しみにしています。」 - 内定者の状況を気遣う
例:「卒業論文の執筆も大詰めかと思いますが、進捗はいかがでしょうか。無理せず頑張ってくださいね。」 - 次に会う機会への期待を伝える
例:「来月の懇親会で、〇〇さんとまたお会いできることを社員一同心待ちにしています。」
特に、採用担当者や面接官など、内定者がすでに関わりのある人物の名前でメッセージを送ると、より親近感が湧き、ポジティブな関係性を築くことができます。手間はかかりますが、その一工夫が内定辞退の防止に大きく貢献します。
ポジティブな情報で会社の魅力を伝える
内定承諾後も、内定者は「この会社を選んで本当に正しかったのだろうか」という不安を抱えています。その不安を払拭し、入社への期待感を高めるためには、定期的に会社のポジティブな情報を発信し、魅力づけを行う”mark>ことが欠かせません。
事務的な連絡だけでなく、会社の「今」が分かる活気ある情報を共有することで、内定者は入社後の自分の姿を具体的にイメージできるようになります。
共有すべきポジティブな情報の例
- 会社の最新ニュース
新サービスのリリース、メディア掲載実績、業界での受賞歴など、会社の成長や社会貢献度が分かる情報。 - 社員の紹介
若手社員や配属予定部署の先輩社員へのインタビュー記事、一日の仕事の流れなどを紹介。働く人々の顔が見えることで、親近感が湧きます。 - 社内の雰囲気
社内イベント(忘年会、社員旅行など)の様子や、部活動の紹介。和気あいあいとした雰囲気を伝えることで、人間関係への不安を和らげます。 - 制度に関する情報
新しい福利厚生制度の導入や、入社後の研修制度の詳細など、働く環境や成長機会に関する情報。
これらの情報をメールマガジンのような形式で定期的に配信することで、内定者は社会人になる準備をしながら、自然と会社への理解を深め、入社を心待ちにするようになります。長文にならないよう、詳細は社内報や公式ブログへ誘導する形も有効です。
内定辞退につながる可能性のあるNGなメール対応
内定者フォローのメールは、入社意欲を高める強力なツールになる一方で、一歩間違えれば内定者の心象を悪化させ、内定辞退の引き金にもなりかねません。特に、近年問題視されている「サイレント辞退」は、企業側の無意識なNG対応が原因となっているケースも少なくありません。ここでは、内定者の信頼を損ない、入社への不安を煽ってしまう可能性のあるNGなメール対応を3つのポイントに分けて具体的に解説します。
事務的な連絡ばかり送る
内定承諾後、入社までに必要な手続きの連絡は不可欠です。しかし、その内容が終始事務的なものに偏ってしまうと、内定者は「自分はただの手続き対象の一人に過ぎない」という疎外感を抱いてしまいます。人間関係や社風を重視する内定者にとって、このような機械的なコミュニケーションは入社後の働き方に対する大きな不安材料となります。
メールを受け取った内定者は、「この会社は人間関係が希薄なのかもしれない」「歓迎されていないのではないか」と感じ、他社の温かみのあるフォローと比較して入社意欲が低下してしまう恐れがあります。事務連絡に加えて、一言でも良いので個性を感じさせるメッセージを添えることが重要です。
| 項目 | NG例 | 改善例 |
|---|---|---|
| 件名 | 【株式会社〇〇】入社手続き書類のご提出について | 【株式会社〇〇】入社手続きのご案内と近況について(〇〇様) |
| 本文 | 〇〇様 株式会社〇〇 採用担当です。 先日ご案内いたしました入社手続き書類につきまして、提出期限が迫っておりますのでご連絡いたしました。 期日までに必ずご提出ください。 【提出期限】〇月〇日(金)必着 以上、よろしくお願いいたします。 | 〇〇様 株式会社〇〇 採用担当の田中です。 学生生活も残りわずかとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 さて、本日は入社手続き書類のご提出について、改めてご案内させていただきます。 ご多忙のところ恐縮ですが、下記期日までにご提出いただけますと幸いです。 【提出期限】〇月〇日(金)必着 先日、社内では〇〇様が配属予定の部署で歓迎会の話が持ち上がっていました。チーム一同、〇〇さんと一緒に働けることを心から楽しみにしています。 何かご不明な点があれば、いつでもお気軽にご連絡くださいね。 |
返信を催促する
内定者はまだ学生の身であり、卒業論文や学業、プライベートの予定で多忙な日々を送っています。そのような状況を考慮せず、企業側の都合で一方的に返信を催促するメールは、内定者に大きなプレッシャーを与えてしまいます。「まだ入社前なのに束縛が強い」「個人の事情を尊重してくれない会社だ」というネガティブな印象を与え、不信感を募らせる原因となります。
特に、高圧的な表現や何度も繰り返し送られる催促は、内定者を精神的に追い詰めてしまいます。丁寧なリマインドは必要ですが、相手の状況を気遣うクッション言葉を使い、あくまで「お願い」ベースで連絡することが、良好な関係を築く上で不可欠です。
| 項目 | NG例 | 改善例 |
|---|---|---|
| 件名 | 【要返信】内定者懇親会への出欠確認の件 | 【リマインド】内定者懇親会の出欠確認について(株式会社〇〇) |
| 本文 | 〇〇様 先日お送りした内定者懇親会の出欠確認ですが、まだご返信をいただいておりません。 会場予約の都合上、本日中に必ずご回答ください。 | 〇〇様 株式会社〇〇 採用担当の田中です。 先日は内定者懇親会のご案内をお送りしましたが、ご確認いただけましたでしょうか。 卒業論文などでお忙しい時期かと思いますので、もしメールが埋もれてしまっていたらと思い、念のため再度ご連絡いたしました。 会場準備の都合上、〇月〇日(〇)頃までにご出欠をお知らせいただけますと大変助かります。 もしご都合が悪い場合や、日程のことでご相談があれば、遠慮なくお申し付けください。 |
情報提供が遅い・漏れがある
入社に向けた手続きやイベントに関する情報提供が遅れたり、必要な情報が不足していたりすると、内定者は「自分は大切にされていないのではないか」「この会社の管理体制は大丈夫だろうか」と強い不安を覚えます。特に、提出書類の案内が二転三転したり、イベントの開催場所の連絡が直前になったりするケースは、企業の信頼性を著しく損ないます。
このような対応は、内定者に入社後のサポート体制への懸念を抱かせ、入社意欲の低下に直結します。内定者フォローにおいては、以下の点に注意し、計画的で丁寧な情報提供を徹底することが求められます。
- スケジュールの明確化: いつ、どのような情報を、どのタイミングで連絡するのか、あらかじめ年間のフォロー計画を立てておく。
- 情報の一貫性: 複数の担当者が関わる場合でも、提供する情報に齟齬が出ないよう、社内での情報共有を徹底する。
- 送信前のダブルチェック: 宛名、日時、場所、持ち物、添付ファイルなどに誤りや漏れがないか、送信前に必ず別の担当者が確認する体制を整える。
- 迅速なレスポンス: 内定者からの質問には、可能な限り迅速かつ丁寧に回答する。もしすぐに回答できない場合でも、まずは連絡を受け取った旨を伝え、いつ頃までに回答できるか目安を伝える。
一つひとつの連絡を丁寧に行うことが、結果的に内定者の安心感と企業への信頼感を醸成し、内定辞退を防ぐ最も効果的な方法と言えるでしょう。
まとめ
本記事では、内定者フォローで活用できるメールテンプレートを、懇親会や面談といったシーン別に詳しくご紹介しました。内定承諾から入社までの期間、メールを通じて適切なコミュニケーションを継続することは、内定者の不安を解消し、入社意欲を高め、内定辞退を防ぐ上で極めて重要です。テンプレートを活用することで、担当者の負担を軽減しながら、効果的なフォローを実現できます。
効果的なフォローメールにするためには、「分かりやすい件名」「一人ひとりに向けたメッセージ」「会社の魅力を伝えるポジティブな情報」という3つのコツを押さえることが結論として挙げられます。一方で、事務的な連絡に終始したり、返信を催促したりするNG対応は、内定者に不信感を与え、内定辞退の引き金になりかねません。
ご紹介したテンプレートやポイントを参考に、ぜひ自社の状況に合わせて内容をカスタマイズしてみてください。丁寧で心のこもったコミュニケーションを積み重ねることが、内定者との良好な関係を築き、優秀な人材の確保と入社後の活躍へとつながります。




