キャリアアンカーとは?
キャリアアンカーとは、自身のキャリアを選択する際に「仕事において何を最も大切にしているか」といった価値観です。
1970年代に、アメリカの組織心理学者であるエドガー・シャイン氏によって提唱されました。
キャリアアンカーの概要は、下記の通りです。
- 価値観は周囲の環境や瞬間的な好み、ライフステージでは変化しない
- 生涯に渡り、自身の働き方の軸となる
つまり、なるべく早いタイミングでキャリアアンカーを理解することは、満足度の高い働き方やキャリアを形成するうえで有利に働くといえます。
また、従業員の能力・特性を測定するためのアセスメントツールとしても活用が可能です。
自社の人事異動や人員配置、採用活動の際にキャリアアンカーを活かすことで、従業員の生産性やエンゲージメントの向上につなげられるでしょう。
キャリアアンカーの分類
シャイン氏によると、「キャリアアンカーでは犠牲にできない3つの要素(コンピタンス・動機・価値観)が組み合わさっている」とされています。
その要素のなかでも、下記に挙げる8種類のカテゴリーに分類できます。
- 管理職
- 自律と独立
- 専門能力・職人
- 奉仕・社会貢献
- 安全・安定
- チャレンジ
- 起業家的創造性
- 生活様式
ひとつずつ解説していきます。
管理職
管理職には、「組織をまとめたい」「キャリアアップしたい」といった思いを持つ傾向があります。
主な特徴は、下記の通りです。
- 大きなプロジェクトに関わる
- リーダーに抜擢されることを好む
しかし最初から立場を求めているわけではなく、自身のキャリアステップのために積極的に人事異動や配置転換も受け入れます。
また自己研鑽や資格取得などに取り組む人材も多いです。
自律と独立
自立と独立を重要視している人材は、自分のライフスタイルや働き方を大切にする傾向があります。
ルールに縛られることを好まず、仕事を自分のペースで行いたいと考えるケースが多いです。
そのため、のびのびとマイペースで働ける環境の場合、熱心に仕事に取り組んだりアイディアを発揮したりできるでしょう。
一方で厳しい上司やルール、環境との相性はよくないので、組織内の雰囲気・上司の性格などは考慮する必要があります。
専門能力・職人
専門能力・職人には、特定の職種・分野を追求したい人材が多いです。
研究職や技術職に向いている場合が多く、技術や知識を地道に磨きながら自身のスキルアップに取り組みます。
しかし、人事異動で環境が変化したり職種が変わったりする際は、モチベーションが下がるため注意しなければなりません。
そのため「能力・スキルを発揮できる」「専門性が追求できる環境」といった配慮が必要です。
奉仕・社会貢献
奉仕・社会貢献を重要視している人材は、「企業や社会に貢献したい」「人の役に立ちたい」と考える傾向があります。
そのため人のために貢献できる、下記の仕事を好む傾向があります。
- 介護
- 医療
- 教育分野
- サービス開発
- 福利厚生担当
さらに不正・よくない仕事ぶりを嫌う傾向が強いため、人事や監査などでも活躍できるでしょう。
安全・安定
安全・安定に分類される人材は、挑戦やリスクよりも安定的で堅実なキャリアを求める傾向があります。
公務員や大手企業への就労を求めるケースが多く、安定した環境下で働き続ける場合が多いです。
また、できるだけリスクは回避したいので、リスクマネジメントや危機管理業務に適している人材もいます。
ただし人事異動の際に不満やストレスを感じやすいため、配慮が必要です。
チャレンジ
チャレンジをキャリアアンカーとしている人材は挑戦を好み、そこから受ける刺激に喜びを感じる傾向があります。
難しいプロジェクトに選任されたり、新規事業・商品・サービスを生み出したりする際に、本領を発揮するでしょう。
そのため企業を考えたり、新しい環境に飛び込んだりして、前向きに刺激のある環境へ進んでいきます。
人事異動や配置転換にも前向きに受け入れられるので、幅広い事業を展開する企業では、さまざまな挑戦ができるでしょう。
起業家的創造性
起業家的創造性を重要視している人材には、新しいものを生み出すことを好む傾向があります。
主に、芸術家や起業家、発明家に見られるタイプです。
また、下記の業務に関心がある場合が多いです。
- 既存事業の再建
- 新規事業の立ち上げ
- 新商品・サービスの開発
企業に就職したあとも、将来的に起業や独立を目指すケースが見られます。
刺激的な仕事が好きなため、変化が激しい状況や困難な課題に立ち向かいながらモチベーションを見出せるでしょう。
生活様式
生活様式をキャリアアンカーに置いている人材は、仕事とプライベートの両立を重視している傾向です。
生活スタイルが確立されており、仕事に真面目に取り組む一方で、私生活を犠牲にすることはありません。
そのため予定にない残業・会社のイベントは、断る場合が多いです。
プライベートが充実できれば仕事のモチベーションも上がるので、育児休暇やフレックスタイム、在宅勤務といった福利厚生が整っている職場環境が適しているでしょう。
こちらの記事では、チームを構築するうえで欠かせない「チームビルディング」のやり方や具体例、7つの目的を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
キャリアアンカーの活かし方は?
ここまで、キャリアアンカーの概要や種類をお伝えしました。
続いて、キャリアアンカーの活かし方を解説します。
- 個人のケース
- 企業のケース
それぞれ解説していきます。
個人のケース
キャリアアンカーを個人で活かす際は、自己理解を深めるための参考材料のひとつとして捉えましょう。
結果によっては、自分の予想にそぐわない診断で驚く方がいるかもしれません。
しかしキャリアアンカーによる自己分析は、あくまでも適職を知るためのきっかけになります。
そのため自分自身への洞察を深めて、建設的なキャリアアップを実現するための施策として活用しましょう。
企業のケース
キャリアアンカーを企業で活かす場合に得られるメリットは、下記の通りです。
- 従業員が希望する働き方や価値観を知れる
- 従業員の意見を考慮したうえで人事異動や人材育成、採用活動に活かせる
従業員は自分に適した仕事を探求できるので、企業側もサポートしやすくなります。
またキャリアアンカーに沿って人事異動を行うことで、企業側と従業員側の要望・ニーズのマッチングが図りやすい点もメリットです。
そのため従業員のエンゲージメントが向上されて、離職率の低下につながるでしょう。
キャリアアンカー活用の上での注意点は?
ここまで、キャリアアンカーの活かし方をお伝えしました。
続いて、キャリアアンカーを活用するうえで注意すべき点を解説します。
- 診断結果だけを考慮しない
- 良い・悪いではない
- 社内で共有する
ひとつずつ解説していきます。
診断結果だけを考慮しない
キャリアアンカーを活用する際は、診断結果だけで従業員の価値を決めつけないようにしましょう。
診断結果に対して、「どのタイプも当てはまらない」「しっくりこない」と感じる方も少なくありません。
実際にシャイン氏は、「多くの人が8つの分類のどれかに当てはまるが、それらと異なるキャリアアンカーを持つ人もいる」と言及しています。
そのため従業員の仕事に対する価値観を測る指標として、活用しましょう。
良い・悪いではない
キャリアアンカーは仕事に対する価値観を示す指標であり、タイプによって良い・悪いを判断するものではありません。
また企業の規模や課題などで、求める人材も異なります。
そのためキャリアアンカーの診断結果のみで、「管理職タイプの人材だけを採用する」「リーダー職に推薦するのは、チャレンジタイプの人だけ」と判断することは望ましくありません。
「どういったタイプの人材が入社すると、自社の発展につながるか」といった視点を持って、人材獲得に注力しましょう。
社内で共有する
キャリアアンカーを活用する際は、従業員がどのタイプに分類されているか社内で共有しましょう。
自身のタイプを知るだけでは、キャリアアンカーを十分に活かせていません。
異なるキャリアアンカーの従業員同士で共有することによって得られる効果は、下記のとおりです。
- お互いの強みを高め合える
- 足りない部分を補い合える
一人ひとりの特徴を伝えやすくするために、「上位3つまで紹介する」「自身の言葉で上位3つについて言語化する」などの工夫を取り入れると、さらにお互いの強みを活かせるでしょう。
まとめ
今回は、キャリアアンカーの概要の分類、企業での活かし方を解説しました。
キャリアアンカーとは、自身のキャリアを選択する際に「仕事において何を最も大切にしているか」といった価値観です。
分類されるキャリアアンカーとして、下記の8つがあります。
- 管理職
- 自律と独立
- 専門能力・職人
- 奉仕・社会貢献
- 安全・安定
- チャレンジ
- 起業家的創造性
- 生活様式
また活用する際の注意点として、「診断結果だけを考慮しない」「良い・悪いではない」「社内で共有する」があるとお伝えしました。
本記事でお伝えした個人・企業での活かし方も参考にして、自社の人事異動や採用活動に活かしてください。
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こちらの記事では、人材を採用する際の業務を効率化する「採用管理ツール」の特徴や主な機能、おすすめの採用管理ツールを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。