よくあるRPA導入・運用の失敗事例は?
RPAツールを導入後の運用でよくある失敗事例について詳しく解説していきます。
- 活用し切れていない
- 依存しすぎてしまう
- メンテナンスに時間を取られてしまう
- 担当運用者が決まっていない
- 業務範囲を把握し切れていない
- 運用ルールが決まっていない
業務効率化や生産性の向上の効果だけでなく、事業拡大や売上向上の効果も期待できるRPAツールの導入ですが、導入後の運用方法によっては効果が得られないなど失敗となってしまうケースも多いようです。失敗事例や対策についてしっかり理解しておくことで、RPAツール導入による効果を得られる可能性も高まりますので、ぜひ参考にしてください。
失敗1:活用し切れていない
業務効率化などの効果を期待し、導入したRPAツールを活用し切れず失敗となってしまうケースが最も多い失敗と言えるでしょう。
- 都度判断が必要な業務に対してRPAツールを導入する
- 作業ルールが多く複雑
- 作業ルールが変わりやすい
- 例外が生じる可能性がある業務
- 物理的な操作が必要
RPAツールは、人工知能のAI機能とは異なるため上記のような業務では活用し切れず失敗へと繋がってしまうでしょう。RPAツールの導入には向き不向きがありますので、しっかり理解し判断することが重要となります。
失敗2:依存しすぎてしまう
RPAは業務自動化において便利なツールですが、依存しすぎてしまうことが導入失敗の要因となるケースもあります。一度自動化が上手くいくと、つい依存してしまいがちですので注意しておきましょう。
- 予期せぬトラブルに対し時間や人員を割く必要がある
- RPAへの指示内容に漏れがありミスが量産されてしまう
- RPAの設定に誤りがあり処理内容が異なってしまう
初めての導入の際は、RPA業者のサポートを利用するなど慎重に設定や指示を行っていくと思いますが、その後の結果確認や分析を怠って依存しすぎてしまわないよう注意しておく必要があります。
失敗3:メンテナンスに時間を取られてしまう
業務効率化においてRPAツールの導入は効果的と言われていますが、一度の設定で自動化が完璧というわけではなく、定期的なメンテナンスを実施する必要があります。
- メンテナンス手順が作成されていない
- メンテナンス業務に属人性がある
- ルールの変更が頻繁に起こる
上記のような要因からメンテナンス頻度が高くなってしまうと、業務の自動化で削減できた工数よりメンテナンスにかかる時間が上回ってしまうなど失敗のケースとなってしまうでしょう。
また、RPAツールのほとんどは操作が簡単なものが多いですが、業務の経験年数や社員のスキルによっては時間がかかってしまう場合があることも併せて理解しておきましょう。
失敗4:運用担当者が決まっていない
近年RPAを導入する企業は増えていますが、まだまだ浸透していないツールであることから内容や操作を理解できていない人も多いでしょう。運用担当者を決めていない場合や操作方法を理解していない社員が、設定やメンテナンスを行なってしまうと作業に膨大な時間がかかってしまうだけでなく、設定ミスなどが起こりうる可能性があります。
そもそも運用担当者が決まっていないと、RPAツールの導入自体が進まない可能性も十分にあります。その結果、導入したものの活用できずに失敗となってしまうケースもあることを理解しておきましょう。
失敗5:業務範囲を把握し切れていない
RPAツールを導入する際、業務範囲を把握し切れていない状態で導入してしまうことで以下の問題から失敗となってしまうケースがあります。
- 無駄な作業が発生する
- 業務抜けや漏れが発生する
- 物理的な作業が発生する
また、業務範囲を把握していない状態でRPAツールを導入した場合、担当者が変わった際に操作やメンテナンス作業に関する業務が引き継がれずに失敗となるケースもあります。
失敗6:運用ルールが決まっていない
RPAツールは、業務効率化などに効果的と言われていますが運用ルールが決まっていない状態で、ただ導入しただけではその効果を得ることができない点を大前提として理解しておく必要があります。下記の問題が発生した際の対応など、運用ルールをあらかじめ決めておくことがRPA導入の効果を得る上で重要と言えるでしょう。
- RPAツールが予期せぬエラーとなる
- パソコンの不調からうまく作動しない
- エラーごとの対処法がわからず修復に時間がかかる
あくまでRPAツールは業務自動化のサポートするためのツールであることを理解しておきましょう。
よくあるRPA導入・運用の失敗への対策は?
RPAツールの導入・運用において、前述したような失敗事例を避けるためには、どのような対策方法があるのでしょうか。失敗への対策として以下が挙げられますので、それぞれ詳しく解説していきます。
- 導入の目的を明確化する
- 自動化の対象を決めておく
- メンテナンス方法を決めておく
- 運用担当者を決める
- テスト運用からスタートする
- サポート会社に運用を依頼する
対策1:導入の目的を明確化する
前述の失敗事例の中にある「活用し切れていない」や「業務範囲を把握し切れていない」という失敗を生まないためにも、RPAツールの導入の目的を明確化することが重要です。導入する目的を明確にすることで、自動化する業務の選定や運用をスムーズに行うことができるでしょう。
企業がRPAの導入を検討する場合、以下のような目的が挙げられますので、ぜひ参考にしてください。
- 定型業務の自動化による業務効率化・生産性の向上
- ペーパーレス化による紙やインク代のコスト削減
- 定型業務のヒューマンエラーの防止
また、導入目的に対して成功となる目安も決めておくと良いでしょう。成功となる目安は「作業時間を何時間削減」や「残業代を何時間削減」などというように数値目標で表しましょう。このように目的の明確化や目標設定を行うことは、RPAツールだけでなく他の「仕事効率化ツール」を検討する上でも役立ちます。
以下の記事「なぜ仕事効率化ツールが必要?ツールを目的別に20個紹介!」では、RPA以外の業務効率化ツールの種類やポイントについて詳しく解説していますので、合わせて参考にしてください。
対策2:自動化の対象を決めておく
前述した「業務範囲を把握し切れていない」という失敗に対して有効な対策でもあり、RPAツールの導入検討時においても重要なのが、自動化の対象となる業務を決めておくことです。
RPAツールはそもそもロボットであり、AI(人工知能)とは異なります。そのため考えて行わなければいけない作業など、RPAの導入に向かない業務があることも理解しておきましょう。では、RPAの導入に向かない業務とはどのような業務でしょうか。例を以下に挙げますので、ぜひ参考にしてください。
- 判断や決断が都度必要な業務
- 複雑な処理が必要な業務
- 考える業務
- 企画など新しものを生み出す業務
- 来客・電話対応
- デザインや文章の校正
対策3:メンテナンス方法を決めておく
RPAを導入し設定を行うと同時にツールのメンテナンス方法も決めておきましょう。メンテナンスの頻度が高い場合やメンテナンスが複雑で時間がかかってしまっては、業務効率化や生産系効果の向上の効果を得られず失敗となってしまう場合もあります。
業務手順や取引先とのルールが変わると、その都度RPAに対しても変更設定を行わなければいけないことや、定期的なメンテナンスが必要であることをしっかり理解し、導入の検討を進めていきましょう。
対策4:運用担当者を決める
前述した「自動化の対象を決めておく」や「メンテナンス方法を決めておく」と合わせて、導入したRPAツールの運用担当者の人選も行いましょう。この時、気をつけたいのが「RPA担当」で一括りにするのではなく、運用に関する役割ごとに担当者を設定する必要があります。
以下に、RPAの運営に関して担当者の設定が必要といえる役割を挙げてみましたので、ぜひ参考にしてください。
- 推進担当者…RPA導入を進めるためタスクの実施・管理・運用方法の策定などを行う
- 推進責任者…RPA導入に関して全体統括や最終的な意思決定を行う
- 開発責任者…RPAか対象業務のロボの開発・設定など技術的な業務を担当
- 現場担当者…RPA対象業務の情報提供や、推進担当者の決めた導入に関するタスクを行う
- 現場責任者…RPA導入部署において、ロボ導入可否の最終判断を行う
運用担当者を決めて役割を明確にすることで、導入の進捗管理や問題発生時のフロー作成などRPAのスムーズな導入に役立てることができます。
対策5:テスト運用からスタートする
RPAツールの本格導入する前にまずはテスト運用からスタートしてみましょう。RPA導入においてテスト運用(スモールスタート)が成功のカギと言われています。
やり方として、まずは簡易な業務から導入を実施していき、徐々に処理で扱うデータの量を増やしたり他部署との連携など段階的に行なっていきましょう。
対策6:サポート会社に運用を依頼する
RPAツールの導入は、プログラミングなどの専門知識が不要でも利用することができますが、精通しているエンジニアが社員にいない場合、トラブル時などが不安と考える企業も少なくないでしょう。その場合は、RPAを提供している企業のサポート体制を重視するといいでしょう。
また、RPAツールを提供している企業とは別に外部のサポート会社に運営を依頼することも可能です。運用に時間をかけたが、運用していく中でトラブル対応などで今までよりさらに工数がかかってしまい効果が得られなかったというリスクも低減することができます。
自社にRPAツールに精通するエンジニアが在籍していない場合には、手厚いサポートを行ってくれるサービス会社の導入も併せて検討していきましょう。
RPAで失敗しないための導入手順は?
これまで、RPAの導入においての失敗事例や対策について詳しく解説しました。実際にRPA導入で失敗しないための導入手順をここから詳しく説明していきます。手順は全部で以下の6つとなり、それぞれの手順をしっかり理解した上で実践していくことが重要となるため、ぜひ参考にしてください。
- RPAで自動化する業務を選定する
- 予測工数を洗い出す
- RPAツールを選定する
- RPA運用ルールを決める
- RPAのテスト導入・運用を開始する
- RPAを本格導入・運用する
手順1:RPAで自動化する業務を選定する
まずは、あらかじめ決めたRPAツール導入の目的や目標を考慮しながらRPAで自動化する業務を選定していきましょう。選定する際は以下の手順で行うことで、部署を跨いだRPAの利用を検討する際にも失敗することなく、役立てることができるでしょう。
- 全ての部署で業務内容の洗い出しを行う
- 各部署での非効率・無駄な業務を抽出する
- 自動化すべき業務かを検討する
- RPAで代替えできる業務かを判断する
手順4のRPAで代替えできる業務化を判断する際には、前述した「自動化の対象を決めておく」の内容をぜひ参考にしてください。
手順2:予測工数を洗い出す
選定したRPAで自動化する業務それぞれに対し、予測工数を明確にしておきましょう。対象となる業務に現在どれだけの工数がかかっているかを把握し、RPA導入後はどのような工数となるか予測することで削減できる工数が明確になります。
さらに削減できる工数に時間をかけることで、削減できる人件費も明確になるでしょう。費用対効果をしっかり把握しておくことは、RPA導入の効果を実感する上で重要なポイントとなります。
手順3:RPAツールを選定する
RPAツールで自動化する業務の選定や工数が把握できたら、導入するRPAツールを選定していきましょう。RPAツールを選定する際のポイントは下記です。
- 自社の規模や導入目的に合う機能・価格であるか
- 自社向けにカスタマイズする必要があるか
- 長期的な運用が可能か
- クラウド型・オンプレミス型どちらで利用できるか
- デスクトップ型かサーバー型か
データ量や自動化する工程の量、複雑さで「クラウド型」と「オンプレミス型」のどちらか最適な方を選ぶ必要があります。その際、2つの違いについてしっかり理解しておく必要がありますので、以下の記事「クラウドとオンプレミスの違いを比較!ハイブリッドクラウドについても解説」もぜひ参考にしてください。
手順4:RPA運用ルールを決める
自社に最適なRPAツールの選定が完了後、申し込みや契約と並行してRPA運用ルールを決めていく必要があります。前述した「RPA運用担当者」の選定や運用におけるルールを決めておくことで、導入をスムーズに行うことができるでしょう。
また、RPAツールを提供する企業によってサポート体制の手厚さが異なりますので、確認し必要によっては外部のサポートサービスの利用も検討していきましょう。
手順5:RPAのテスト導入・運用を開始する
RPAツールの本格導入の前に、まずはRPAのテスト導入・運用を開始しましょう。この際、着目する点は自動化する業務とRPAツールの相性です。手順2で予想した工数と大きな差異がないかや事前に決めたルールに不備がないかなども確認していきましょう。
テスト導入や運用時に確認しておくことで、無駄なコストや時間の捻出を最小限に抑えることができるでしょう。
手順6:RPAを本格導入・運用する
一定期間のRPAのテスト導入・運用を行い、工数削減の実現や予測した費用対効果の確認後、RPAツールの本格導入・運用を行っていきましょう。事前に決めた運用ルールを元に、着実にRPAツールでの業務を定着させていくことが、運用開始後の重要なポイントとなります。
導入時に決定した目的・目標に対するRPAツールの導入による効果が実現できるよう、本格的な運用開始後も定期的なメンテナンスやルールの見直しを行っていきましょう。
まとめ
この記事では、RPAツールの導入に関する失敗事例や対策の解説だけでなく、失敗しないための導入手順についても詳しく説明しました。
失敗やトラブルは、導入後の運用時に起こることがほとんどです。そこで、自社にあったRPAツールの選定やサポート体制、運用ルールの決定など慎重に行うことが重要であることを理解した上で、最適なRPAツールを選定しましょう。
【SNSフォローのお願い】
kyozonは日常のビジネスをスマートにする情報を毎日お届けしています。
今回の記事が「役に立った!」という方はtwitterとfacebookもフォローいただければ幸いです。
twitter:https://twitter.com/kyozon_comix