トライアル雇用とは?
トライアル雇用とは、就職が難しい求職者に対して原則3ヶ月間の使用期間を設けて、常用雇用を前提として行われる制度です。
企業側は3ヶ月間の間に、仕事への適性を見極めたうえで正式採用するか判断します。
トライアル雇用の対象者となるケースは、下記の通りです。
- 紹介日時点で、45歳未満のニートやフリーター
- 紹介日の前日時点で、離職期間が1年を超えている人
- 紹介日時点で就職援助を行うにあたり、特別な配慮が必要な人
- 紹介日の前日から、過去2年以内に2回以上の転職・離職がある人
- 離職理由が妊娠・出産・育児であり、紹介日の前日時点で安定した職業についていない期間が1年を超えている人
ちなみに「紹介日」とは、ハローワークが職業を紹介した日を指します。
企業と労働者が、お互い理解したうえで無期雇用へ移行できるため、ミスマッチを防ぐ効果があります。
トライアル雇用の種類
トライアル雇用には一般トライアルコースと障害者トライアルコースの2種類があり、それぞれの特徴は下記の通りです。
特徴 | |
一般トライアルコース |
|
障害者トライアルコース |
|
また障害者トライアルコースには、障害者短時間トライアルコースもあります。
障害者短時間トライアルコースの対象は、発達障害者・精神障害者です。
希望する障害者が、週20時間以上の就業を難しいとする場合に利用できます。
トライアル雇用と試用期間の違い
トライアル雇用と試用期間の違いとして、下記の3つが挙げられます。
トライアル雇用 | 試用期間 | |
期間の長さ | 原則3ヶ月 | 一般的に1ヶ月〜6ヶ月 (企業により異なる) |
助成金の有無 | 助成金を受けられる | 助成金は受けられない |
雇用継続義務 | 有期雇用契約 | 企業側で自由に契約を終了できない |
ちなみに試用期間は本採用を前提とした雇用のため、解雇する際は通常と同じ手続きが必要な点を覚えておきましょう。
こちらの記事では、応募者の適性を見極めるために欠かせない「適性検査」の選び方や特徴、おすすめの検査を16個紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
企業がトライアル雇用を導入するメリットは?
ここまでトライアル雇用の概要や種類、試用期間との違いをお伝えしました。
続いて、企業がトライアル雇用を導入するメリットを解説します。
- 採用ミスマッチが減る
- 採用コストが削減できる
- 契約解除が容易にできる
- 助成金を受け取れる
- 迅速に採用活動を行える
ひとつずつ解説していきます。
採用ミスマッチが減る
トライアル雇用の導入には、採用ミスマッチを減らせるメリットがあります。
実際に採用のミスマッチを防ぐには、下記の確認が必要です。
- 職場に対応できる人材であるかどうか
- 労働者のスキルが一定基準に達しているか
履歴書や面接の際には適正であると判断しても、採用後にミスマッチが発生するケースは少なくありません。
そのため労働者を一定期間雇用して、自社に適した人材であるか判断できる点がトライアル雇用のメリットといえるでしょう。
採用コストが削減できる
トライアル雇用には、採用コストを削減できるメリットがあります。
通常の採用活動の場合、求職者を募集する際に下記のコストがかかります。
- 人件費
- 掲載費用
- 人材紹介手数料
- 採用サイトの制作費用
しかし、トライアル雇用ではハローワークを介して労働者を紹介してもらえるため、採用コストの削減が可能です。
契約解除が容易にできる
トライアル雇用を企業が導入するメリットは、契約解除が容易にできる点です。
トライアル雇用終了後の常用雇用は義務ではないため、企業側の意向によって契約を解除できます。
そのため、企業と労働者のミスマッチによる早期離職を事前に防ぐ効果があります。
ただしトライアル雇用期間中に退職してしまうと、さまざまなデメリットもあるので注意しましょう。
助成金を受け取れる
企業がトライアル雇用を導入するメリットは、助成金を受け取れる点です。
一般的な採用活動では助成金が支給されないため、採用コストへの負担は少なくありません。
しかし「トライアル雇用助成金」を活用することで、人件費や採用、人材育成に充てられます。
迅速に採用活動を行える
トライアル雇用は、企業が求める労働者をハローワークから紹介されるため、迅速に採用活用が行えます。
例えば一般的な書類選考では、労働者を1週間〜2週間かけて選びます。
場合によっては1ヶ月ほど時間を要するケースもあるので、企業と労働者への負担は大きいです。
しかしトライアル雇用の導入によって、採用活動を面接だけで完了できる点はメリットです。
企業がトライアル雇用を導入するデメリットは?
ここまで、企業がトライアル雇用を導入するメリットをお伝えしました。
続いて、企業がトライアル雇用を導入するデメリットを解説します。
- 人材育成に時間がかかる
- 教育体制を用意する必要がある
- 即戦力は採用できない
- 申請手続きが負担になる
- 助成金受給のスケジュールを管理しなくてはならない
ひとつずつ解説していきます。
人材育成に時間がかかる
トライアル雇用を企業が導入するデメリットは、人材育成に時間がかかる点です。
トライアル雇用の対象者は、離職期間が長い労働者・障害者なので、指導や教育にかける時間が長くなる傾向があります。
人件費や教育、時間といったコストが発生する点は避けられません。
そのためトライアル雇用を導入する際は、受け入れるための態勢を整えておきましょう。
教育体制を用意する必要がある
トライアル雇用は、教育体制を最初から用意する必要のある点がデメリットです。
採用の際は未経験者だけでなく、就業自体に慣れていない求職者からも応募があるでしょう。
つまり人材育成の長期化が予想されるため、教育担当の選任と教育体制の構築は必要です。
採用コストは削減できますが、育成コストが発生する点は覚えておきましょう。
即戦力は採用できない
企業がトライアル雇用を導入するデメリットは、即戦力を採用できない点です。
厚生労働省によると、トライアル雇用について下記のように述べています。
職業経験の不足などから就職が困難な方が、試行雇用を経て無期雇用に移行することを支援する制度があります。
つまり制度の目的が、業界未経験社や就労困難社の早期就職なので、即戦力採用には向いていません。
仮に即戦力採用を目指す場合は、求める人材を要件定義に定めて中途採用を実施しましょう。
申請手続きが負担になる
トライアル雇用を導入する際は、段階的な事務手続きが発生する点がデメリットです。
助成金を受け取る際には、申請手続きや計画書、終了報告書といった手続きを行います。
つまり労働者の数が増えるほど、人事・採用担当への負担が増えてしまいます。
そのためトライアル雇用を導入する場合は、雇い入れる労働者数を慎重に検討しましょう。
助成金受給のスケジュールを管理しなくてはならない
企業がトライアル雇用を導入するにあたって、助成金受給のスケジュールを管理しなければならない点がデメリットです。
助成金の受給には合計3回の書類提出を済ませなければならず、そのうち2回は期限が設けられています。
具体的な手続き方法は、下記の通りです。
- 求人票:ハローワークに提出
- トライアル雇用実施計画書:トライアル雇用開始から、2週間以内に労働者を紹介した機関に提出
- トライアル雇用奨励金支給申請書:トライアル雇用終了日の翌日から、2ヶ月以内に労働局へ提出
そのため求職者の数が増えるほど、スケジュール管理も煩雑になるので注意しましょう。
こちらの記事では、使用期間中に内定を出した人材を解雇できるかについて解説しています。解雇する際の注意点や手順も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
トライアル雇用補助金とは?
ここまで、企業がトライアル雇用を導入するデメリットをお伝えしました。
続いて、トライアル雇用補助金について解説します。
- トライアル雇用補助金の流れ
- トライアル雇用補助金の応募条件
- トライアル雇用補助金の申請方法
それぞれ解説していきます。
トライアル雇用補助金の流れ
トライアル雇用補助金の流れは、下記の通りです。
- トライアル雇用求人票を作成して、ハローワークに提出する
- 求職者の選考
- 採用日から2週間以内に、トライアル雇用実施計画書をハローワークに提出する
- トライアル雇用終了後に、勤務継続可否を判断する
- 助成金の支給申請を行う
支給申請の期限は2ヶ月と短いので、計画的に手続きを行いましょう。
トライアル雇用補助金の応募条件
企業がトライアル雇用補助金へ応募するには、26項目の条件があります。
応募条件の一部は、下記の通りです。
- 対象者に係る紹介日時より前に、該当者を雇用すると訳していない事業主
- トライアル雇用に係る事業所が、基準期間に雇用保険被保険者を事業主都合で退職させたことがない事業主
- トライアル雇用開始日の前日から起算して、トライアル雇用に係る対象者を過去3年間雇用していない事業主
- トライアル雇用を実施した事業主の事業主または、取締役の3親等以内の親族以外で対象者を雇い入れた事業主
また、「対象者の雇用がすでに決まっている」「近親者のトライアル雇用もしくは同一人物の再トライアル雇用が行われていない」なども前提になるので覚えておきましょう。
トライアル雇用補助金の申請方法
トライアル雇用補助金を申請するには、ハローワークに下記の2つを提出する必要があります。
- トライアル雇用実施計画書(トライアル雇用開始後)
- 結果報告書兼支給申請様式(トライアル雇用期間終了後)
それぞれの様式は、「厚生労働省の公式サイト」からダウンロード可能です。
また申請期限であるトライアル雇用の終了日翌日から起算して、2ヶ月を過ぎると助成金を支給できないので注意しましょう。
トライアル雇用補助金が減額されるケースは?
ここまで、トライアル雇用補助金についてお伝えしました。
続いて、トライアル雇用補助金が減額されるケースを解説します。
- 1ヶ月に満たない月がある
- 休暇・休業がある
それぞれ解説していきます。
1ヶ月に満たない月がある
トライアル雇用補助金は、雇用期間が1ヶ月に満たない月がある場合に減額されてしまいます。
具体的には、下記が該当例として挙げられます。
- 本人都合による退職・死亡の場合
- 支給対象者に故意の過失がある場合
- 天災などのやむを得ない理由により、事業継続ができず解雇となった場合
さらに継続雇用の労働者に移行した場合も、トライアル雇用期間中の就労日数に応じて減額となるのです。
仮に対象者が失踪した場合は離職日がわからないので、給与支払い最終日の期間で、実際の就労日数に応じた額が支給されます。
休暇・休業がある
休暇・休業があった場合は、「支給対象者が1ヶ月間に就労した日数÷支給対象者が当該1ヶ月間で就労を予定していた日数」に当てはめて計算します。
算出された数値が75%以上の場合は、全額が支給されます。
75%未満の場合は、パーセンテージに応じて支給額が異なるので覚えておきましょう。
まとめ
今回は、トライアル雇用の概要や導入するメリット・デメリット、助成金申請の流れを解説しました。
トライアル雇用とは、就職が難しい求職者に対して原則3ヶ月間の使用期間を設けて、常用雇用を前提として行われる制度です。
またトライアル雇用には、一般トライアルコースと障害者トライアルコースの2種類があり、それぞれのメリット・デメリットは下記の通りです。
- 採用ミスマッチが減る
- 採用コストが削減できる
- 契約解除が容易にできる
- 助成金を受け取れる
- 迅速に採用活動を行える
- 人材育成に時間がかかる
- 教育体制を用意する必要がある
- 即戦力は採用できない
- 申請手続きが負担になる
- 助成金受給のスケジュールを管理しなくてはならない
本記事でお伝えしたトライアル雇用補助金の概要や減額されるケースも参考にして、トライアル雇用を活用してください。
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