試用期間とは?
試用期間とは、採用された社員が業務を遂行する能力や適性を持っているか、企業が判断するための期間です。
期間が終了して、企業と社員の双方が問題ないと判断した場合に、本採用となります。
そんな試用期間の特徴は、下記の通りです。
- 試用期間の長さは1ヶ月〜6ヶ月を設定する企業が多い
- 試用期間を設ける際は、労働契約書や就業規則に明記する必要がある
企業としては、履歴書や面接だけで社員の能力・適性を把握できないので、試用期間の設置によって的確に判断できるでしょう。
また長期の正社員雇用を前提に設置されているため、「試用期間=仮採用試用」とする企業が多いです。
試用期間を設ける理由
試用期間を設ける理由は、企業側と従業員側で理由が異なります。
それぞれの理由は、下記の通りです。
理由 | |
企業側 | 履歴書や職務経歴書、面接だけでは把握できない応募者の特性や能力を見極められる |
従業員側 |
|
つまり試用期間を設ける理由は、お互いのミスマッチを防ぐためといえるでしょう。
ちなみに試用期間を設定する際は、正社員だけでなくアルバイトやパート、契約社員にも適用できます。
試用期間とよく似た言葉
試用期間とよく似た言葉として、下記の5つがあります。
- 仮採用
- 研修期間
- 見習い期間
- インターンシップ
- トライアル雇用
それぞれ解説していきます。
仮採用
「仮採用」は「本対象」と異なるケースで使用されますが、試用期間の類語として使われます。
ちなみに、「採用自体が仮の決定」といった意味で使用されるケースもあるので覚えておきましょう。
ただし雇用契約を内定や内々定後で結ぶまでの期間は、試用期間とみなされないので注意しなければなりません。
研修期間
研修期間とは、入社後に独り立ちして業務に取り掛かれるようにトレーニングする期間です。
例えば、上司・先輩から指導を受けながら仕事を学ぶ期間が該当します。
研修期間を設ける目的は、業務に対する必要なスキル・知識の取得です。
ただし、試用期間は企業と従業員のマッチングを確かめる期間なので、研修期間と意味を混在させないように注意しましょう。
見習い期間
見習い期間とは、業務を行ううえで必要な技術や知識を身につける期間です。
業種・業界によっては、すべての雇用契約を「見習い」と呼称する場合もあります。
例えば職場内で実習学生が顧客に対して、「見習いです」と説明するケースが考えられます。
インターンシップ
インターンシップとは、学生が在学中に企業内で一定期間行う就業体験プログラムです。
主な目的として、下記の2つがあります。
- 未経験の業界・業種を知るため
- 学生が社会経験や業界研究を行うため
インターンシップで雇用契約を結ぶ際は、一般的に継続雇用を前提としていません。
そのため試用期間がインターンシップと異なる点は、継続雇用の有無であると覚えておきましょう。
トライアル雇用
トライアル雇用とは、ハローワークなどから紹介された求職者を原則として3か月間雇用して、能力と適性を見定めてから、正式に雇用するかどうかを決める仕組みです。
原則として3ヶ月間の期間が設けられており、ミスマッチの少ない採用を実現できるでしょう。
試用期間とトライアル雇用の異なる点は、下記の3つです。
- 雇用継続の義務がない
- 雇用期間が設定されている
- 一定の条件を満たせば、助成金を受け取れる
また、トライアル雇用の種類や対象者によって助成金の種類が異なります。
継続雇用の有無は、トライアル雇用期間が終了したタイミングで判断するので覚えておきましょう。
こちらの記事では、トライアル雇用と特徴やメリット・デメリット、トライアル雇用補助金について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
企業が試用期間を設けるメリット・デメリットは?
ここまで、試用期間の概要や設ける理由、よく似た言葉をお伝えしました。
続いて、企業が試用期間を設けるメリット・デメリットを解説します。
- 企業が試用期間を設けるメリット
- 企業が試用期間を設けるデメリット
それぞれ解説していきます。
企業が試用期間を設けるメリット
企業が試用期間を設けるメリットは、下記の2つです。
- 採用ミスマッチを回避できる
- 人材配置がしやすい
ひとつずつ解説していきます。
採用ミスマッチを回避できる
企業が試用期間を設けるメリットは、採用ミスマッチを回避できる点です。
仮に採用のミスマッチが発生した際に、企業に与える影響として下記が考えられます。
- 離職率が高くなり、企業イメージが悪くなる
- 早期離職によって、採用コストが無駄になる
- 企業ノウハウが蓄積できず、生産性の低下につながる
応募書類と面接だけで、正確に応募者の能力と適性を判断することは難しいです。
特に社風や社員との相性などは、実際に働かなければわかりません。
しかし試用期間の設置により、企業と従業員の間で起こる認識の違いをなくせるはずです。
人材配置がしやすい
企業が試用期間を設けるメリットとして、人材配置のしやすさが挙げられます。
試用期間を通じて従業員の能力・適性を詳しく知れるため、試用期間終了後の人材配置や業務分担を行いやすくなります。
例えば「業務の作業スピード」「コミュニケーションの取り方」「提案内容」などは、面接ではアピールできないポイントです。
企業が試用期間を設けるデメリット
企業が試用期間を設けるデメリットは、下記の4つです。
- 適性や資質の見極めが難しい
- 採用工数やコストが発生する
- 本採用辞退のリスクが生じる
- 能力不足を改善させるための伝え方が難しい
ひとつずつ解説していきます。
適性や資質の見極めが難しい
企業が試用期間を設けるデメリットは、従業員の適性や資質の見極めが難しい点です。
試用期間が3ヶ月〜6ヶ月と限られているため、従業員を正確に見極められるかどうかは、評価者に委ねられてしまいます。
評価者が根拠のない評価や判断をしてしまう例として、下記が挙げられます。
- 「こういった考え方の傾向があるかもしれない」
- 「試用期間は行わなかったが、おそらくこちらの業務も向いているかもしれない」
上記の考えは、従業員に適していない場合にモチベーションや生産性の低下につながるでしょう。
また試用期間中の様子だけで判断した場合、ほかの適性を見落としてしまう恐れもあります。
そのためまずは、応募者を見極めるポイントを明確にして、評価者が適切に評価できる仕組みづくりを実施しましょう。
採用工数やコストが発生する
採用工数やコストが発生する点も、企業が試用期間を設定するデメリットです。
試用期間中に従業員を見極めるには、先輩社員や上司、人事担当者が常に様子を観察しなければなりません。
教育スケジュールの管理やフロー構築も欠かせないため、大きな負担です。
そのため採用工数を改善する方法として、下記の4つを検討してみましょう。
- HR Techの活用
- 採用チャネルの厳選
- アウトソーシングの活用
- 採用活動のオンライン化
採用工数の改善によって、既存社員への負担やコスト削減を実現できるはずです。
本採用辞退のリスクが生じる
企業が試用期間を設けるデメリットは、本採用を辞退するリスクが生じる点です。
従業員は、実際には採用されていないため、下記のような不安を抱えています。
- 「無事に採用されるだろうか」
- 「どのように評価されるのだろうか」
- 「採用されたとして、この会社でやっていけるだろうか」
上記の不安は、モチベーション低下を引き起こす可能性があります。
そのため試用期間中に先輩や上司へ不満や不安、不信感を抱いた場合、試用期間終了後に辞退される点がリスクです。
リスクを回避するために、人事担当者は既存社員への教育フローやフィードバックなどを行い、離職につながるリスクを防がなければなりません。
能力不足を改善させるための伝え方が難しい
能力不足を改善させるための伝え方が難しい点も、企業が試用期間を設けるデメリットのひとつです。
誤った対応をしてしまう例として、下記があります。
- 従業員への定期的なフィードバックを怠る
- 自社に合わないという理由で、正当な理由もなく一方的に解雇する
上記の例は、従業員との関係性を悪化させたり、モチベーションを低下させたりします。
最悪の場合、トラブルの要因にもつながるでしょう。
また上司や人事担当者がストレスを抱えてしまうと、社内のモチベーションが下がるだけでなく、自社に適した従業員が育たない恐れもあります。
企業が試用期間を設ける際の注意点は?
ここまで、企業が試用期間を設けるメリット・デメリットをお伝えしました。
続いて、企業が試用期間を設ける際の注意点を解説します。
- 長さ
- 給料
- 各種保険
- 雇用形態
ひとつずつ解説していきます。
長さ
企業が試用期間を設ける際には、期間の長さを設定します。
長さを設定する際のポイントは、下記の3つです。
- 従業員と社内のエンゲージメントに影響するので、期間は最大でも1年以内に設定する
- パート・アルバイトは、正社員より業務や責任範囲が狭いので、雇用形態によって長さを考慮する
ちなみに独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、正社員の試用期間の長さは「3ヶ月程度」が最も多いことがわかっています。
仮に無尽蔵に長い期間を設定してしまった場合、労働者は不安定な状態に置かれてしまい「長い期間不安定な状態が続くなら、転職した方がいい」と考えてしまうので、期間は最大でも1年を目安にしましょう。
出典:従業員の採用と退職に関する実態調査-労働契約をめぐる実態に関する調査(Ⅰ)-
給料
企業が試用期間を設ける際に注意すべきポイントは、給料の設定です。
厚生労働省によると、都道府県労働局長の認可を受ければ、下記の設定を行えます。
- 最低賃金減額の個別設定
- 最低賃金以上の給料の設定
ちなみに賞与は企業側が支払う義務はないため、試用期間中であっても未支給で違法とはなりません。
ただし労働契約書・就業規則等には、賞与を支給しない旨を規定もしくは明記する必要があります。
一方で残業や深夜勤務が発生した際は、手当を支払う点は注意しましょう。
出典:最低賃金制度の概要
各種保険
労働保険や社会保険といった各種保険も、試用期間を設けるうえで注意しなければならない点です。
労働保険・社会保険は、強制加入の保険として法で定められています。
そのため各種保険に関しては、下記2点を留意しておきましょう。
- 「加入する・加入しない」の基準は、雇用契約内容や条件、就労実態で判断する
- 勤務途中の場合でも要件を「満たせば加入」「外れると脱退」の手続きを行う
企業の判断により、加入・脱退を決定できないので注意しましょう。
雇用形態
試用期間中と試用期間後では、雇用形態が変化しない点も設ける際に気をつける点です。
仮に「一時的に有期雇用で契約して、そのあとは正社員として雇用したい」場合は、下記の方法があります。
- 雇用形態が変わるタイミングで、改めて雇用契約書を結ぶ
- 紹介予定派遣の仕組みを活用して、自社に適した人材を募集する
ちなみに、有期雇用契約の更新には上限規制があります。
あくまでも試用期間は、雇用契約の期間内に限られるので、上限通算期間にカウントされる点は注意しなければなりません。
試用期間中に解雇することはできる?
試用期間中であっても、通常より広い範囲の理由で従業員を解雇できます。
また労働基準法によると、14日以内であれば「試みの使用期間」として、通常の解雇手続きを行わずに解雇できます。
もし試用期間中に一方的に解雇してしまうと、「企業側が従業員に与えるべき試用期間を十分に与えていない」と判断されて、不当解雇扱いとなる可能性が高いです。
そのため「指導・教育しても全く態度を改めない」「正当な理由もなく、従業員が休み続けている」などの理由がなければ解雇できないので注意しましょう。
こちらの記事では、試用期間中に解雇する手順や解雇できるケースなどを、さらに詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、試用期間の概要や設けるメリット・デメリット、注意点などを解説しました。
試用期間とは、採用された社員が業務を遂行する能力や適性を持っているか、企業が判断するための期間です。
設けるメリット・デメリットとして、下記が挙げられます。
- 採用ミスマッチを回避できる
- 人材配置がしやすい
- 適性や資質の見極めが難しい
- 採用工数やコストが発生する
- 本採用辞退のリスクが生じる
- 能力不足を改善させるための伝え方が難しい
また、企業が試用期間を設ける際の注意点として「ながさ」「給料」「各種保険」「雇用形態」があります。
本記事でお伝えした試用期間中の解雇についても参考にして、自社の採用活動に活かしてください。
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こちらの記事では、労働者にとって非常に厳しい処分とされる「懲戒解雇」の特徴や企業が準備すべきポイント、注意点などを解説しているので、ぜひ参考にしてください。