契約社員とは?
ライフワークバランスが重視されるようになり、勤務形態を正社員以外で検討する人も多くなったのではないでしょうか?また、働きたい企業の求人が正社員ではなく「契約社員」しかない場合、メリットやデメリットを理解できておらず不安に感じ応募を迷う方も少なくないでしょう。
ここでは、以下の契約社員に対して2つの項目を徹底解説していきます。
- 契約社員と正社員の違いは?
- 契約社員は不安定な立場?
契約社員についての理解を深めて、ぜひ就職活動や転職活動に役立ててください。
契約社員と正社員の違いは?
まずは、契約社員と正社員の違いをわかりやすく以下の表にしてみました。
契約社員 | 正社員 | |
雇用期間 | 有期雇用 (原則最長3年) | 無期雇用 |
勤務地 | 原則転勤なし | 配属先により転勤の可能性あり |
給与 | 月給制が大半 (年俸制や時給制もあり) | 月給制か年俸制 |
賞与 | 企業による (正社員のみ対応の場合あり) | 企業による |
昇給・昇進 | なし | あり |
諸手当 | 企業による (正社員のみ対応の場合あり) | 企業による |
退職金 | 企業による (正社員のみ対応の場合あり) | 企業による |
また、契約社員と契約社員で同じ待遇面となる項目は以下です。
- 雇用主
- 勤務時間・勤務日
- 休日・休暇
- 社会保険
- 解雇予告
賞与や諸手当、退職金などは契約社員・正社員に関わらず「企業による」とされていますが、それぞれの制度がありながら正社員にのみ対応となる企業もありますので、採用情報や面接時にしっかり確認しておくことが大切です。
また、給与や休暇、社会保険など基本条件や福利厚生については、契約社員と正社員で大きな違いはないでしょう。さらに「パートタイム・有期雇用労働法」が施行されたことにより、同一労働同一賃金の考えが2021年4月より大手企業だけでなく中小企業にも取り入れられました。これにより、契約社員や派遣社員など非正規社員と正社員の待遇差の見直しが今後進んでいくでしょう。
契約社員は不安定な立場?
前述の契約社員と正社員の違いを見る中で「契約社員は不安定な立場ではないか?」と不安になる人も少なくないでしょう。
契約社員は原則有期雇用(最長3年)となり、無期雇用となる正社員と比べるとどうしても不安定な立場と感じてしまいがちです。しかし、正社員登用制度を取り入れている企業もありますので、企業ごとの契約条件の確認や制度の有無を確認しておきましょう。
- 未経験の業種にチャレンジしたい
- 3年後に留学を考えている
このような考えを持つ人には、最初から雇用期間が決まっている契約社員の働き方が向いていると考えられることからも、不安定な立場とは一概に言えません。
契約社員のメリット・デメリットは?
ここからは、契約社員のメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。契約社員へと就職や転職を考える上で、その後のキャリアの選択肢も考慮する必要があります。
- 正社員登用制度を活用し正社員へとステップアップ
- 無期契約社員となる(無期転換ルールの申込権)
- 契約期間満了後、別企業の正社員へ転職
- 無期契約満了後、別企業の契約社員となる
どの選択肢を選ぶかによって、採用条件で重視する項目が異なります。そのためにも、契約社員のメリット・デメリットをしっかり理解していきましょう。
契約社員のメリットは?
まずは、契約社員の3つのメリットについて詳しく解説していきます。
- 勤務時間を調節できる
- 希望する勤務地で働ける
- スキルを活かしやすい
メリット1:勤務時間を調節できる
生活のために働きたいけれど、子育てや介護などの事情から勤務時間の調節が必要であると感じている人も少なくないでしょう。勤務時間が正社員と原則的に同じと定められている場合が多いですが、企業によっては勤務時間を調節して契約を結ぶことができ、厚生労働省では労働条件について以下が定められています。
労働条件の明示等
使用者が労働者を採用するときは、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません。基準法
労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が、(1)合理的な内容の就業規則を(2)労働者に周知させていた場合には、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になります。契約法
また、勤務時間を調節することは可能ですが、原則として労働基準法32条により労働時間が「1日8時間、週40時間」と定められていることは前提として理解しておきましょう。また、雇用契約書に「残業をしない」と明記されてないと、会社からの残業命令を拒否することができませんので、あらかじめ確認しておく必要があります。
メリット2:希望する勤務地で働ける
希望する勤務地で働けることは、大きなメリットと感じる方も多いのではないでしょうか?正社員として企業に入社した場合、配属された部署によっては転勤となる可能性が高いです。また、営業や技術職の職種を選んだ場合は、転勤だけでなく短期の出向を命じられる可能性もあるでしょう。
(ア)労働者の募集を行う者は、その募集にあたって、労働者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。この場合において、次に掲げる事項については、書面の交付または電子メールにより行わなければなりません(職安法第5条の3)。
■労働契約の期間に関する事項
■就業の場所、従事すべき業務の内容に関する事項
■始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日に関する事項
■賃金の額に関する事項
■健康保険などの通用に関する事項
上記のように契約社員として企業との雇用契約を締結する際、就業場所に関しての事項が雇用契約書に明記しないといけないルールがあります。注意すべき点は、以下の表記の有無です。
- 地域限定
- 転勤なし
この表記がないと契約社員であっても企業からの転勤を命令された際、拒否することができませんのであらかじめ確認しておきましょう。
メリット3:スキルを活かしやすい
契約社員のメリットとして3つ目は、スキルを活かしやすいという点です。自分が持つ専門性の高いスキルや、知識を最大限に活かすことができます。また、以下も契約社員として働くことを検討する上で身につけておきたいスキルです。
- パソコンの基本操作
- コミュニケーション能力
- 人間関係構築のスキル
- 英語力
- マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
これらのスキルを身につけておくことで企業から求められる存在となりやすいだけでなく、その後のスキルアップにも繋げやすくなるでしょう。また専門性の高いスキルを身に付けたい、幅を広げたいという方には、契約社員として経験を積み、その後のライフプランに合わせてステップアップしていくことで理想の働き方へと近づくことができます。
契約社員のデメリットは?
前述では、契約社員のメリットについて詳しく解説してきましたが、デメリットにはどのような内容があるのか気になる方も多いでしょう。ここでは3つの点について詳しく解説していきます。
- 雇用が保証されていない
- 収入が不安定になりがち
- ローン審査が通りにくい
それぞれ、デメリットをお伝えする中で解決法などもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
デメリット1:雇用が保証されていない
契約社員は、最大3年の有期雇用であることが、正社員との違いであり大きな特徴です。(医師や薬剤師など高度な専門知識な職種に関してや定年後に継続雇用される場合は最長5年)
- 正社員登用制度
- 無期転換ルール(5年ルール)
この2つの制度やルールが定められている企業に入社したとしても必ずしも正社員への登用や無期雇用となれるわけではないことを理解しておきましょう。正社員登用制度については、以下で定義されています。
先ほど解説したパートタイム・有期雇用労働法13条に定められた、正社員転換措置の内容は、次の3つです。
- 通常の労働者の募集をするときに、その雇用条件などを非正規社員にも周知すること
- 通常の労働者の配置を新たに行うときに、非正規社員に希望を申し出る機会を与えること
- 通常の労働者へ転換するための試験制度、その他の転換推進措置
わかりやすくいうと、正社員を募集するときにはその募集内容を非正規社員に周知したり、正社員ポストを社内公募するときに非正規社員にも応募の機会を与えたり、試験制度を設けたりといった方法の中から、いずれかを実施することが義務となります。
ただし、法律上の義務として求められているのは、正社員転換措置を講ずることまでであり、結果として正社員へ転換することまで求めているわけではありません。そのため、転換措置を設けたけれども、結果的に正社員へ転換することがなかったとしても、その制度の実質を損なうような運用でない限り、必ずしも義務違反となるわけではありません。
また、契約社員として5年勤務を継続することで「無期労働契約」を申込むことのできる権利を得ることができます。通称「無期転換ルール」や「5年ルール」と呼ばれており、企業側はこの権利の申し出に対し拒否することはできません。
「一つの企業で長く安定して働きたい」と考える方には、雇用の保証の有無はデメリットとなります。しかし、「実績を積んでスキルアップしたい」や「2〜3年働いて留学を考えている」方には有期雇用での働き方がメリットであると言えるでしょう。
デメリット2:収入が不安定になりがち
契約社員は、最長で3年の有期雇用ですが、その更新頻度は企業ごとで異なっており契約期間満了時に更新されることなく「契約期間の満了」として契約が終了となる場合があります。そうなると、次の就業先が見つかるまで収入が減ってしまうなど、収入が不安定になりがちです。
また、賞与の制度があっても正社員への対応のみの場合となり、契約社員ではもらえないケースも少なくありません。さらに、昇給や昇進制度がある正社員に対し、契約社員の場合は雇用契約で定められた賃金からの昇給は原則ありません。
- 短期間でお金を貯めたい
- 経験を積んで転職を考えている
しかし上記のように、留学や専門学校で掛かる費用の資金を短期間で貯めたい場合や、スキルアップのためとして働きたい場合は、契約社員の働き方がおすすめです。
デメリット3:ローン審査が通りにくい
「契約社員は非正規雇用であるため、住宅ローンや自動車ローンなどの審査が通りにくい」と聞いたことがありませんか?ここまでのデメリットとしてお伝えした「雇用が保証されていない」や「収入が不安定になりがち」という内容からも不安に感じる人は多いでしょう。
現実からお伝えしますと、正社員と比較すると住宅ローンなど高額な借入に対してはどうしても不利となってしまう可能性があります。しかし、必ずしもローンが組めないわけではなく、下記の3つのポイントをしっかり押さえておくことで契約社員でも住宅ローンの審査が通るかもしれませんのでぜひ参考にしてください。
- 勤続年数を増やす
- 頭金を多く準備する
- 親子や配偶者とのペアローンを利用する
契約社員として働く上で確認しておくべきポイントは?
ここまで、契約社員と正社員の違いや、契約社員のメリット・デメリットなどを詳しく解説しました。しっかり理解した上で、ここからお伝えする契約社員として働く上で確認しておくべき5つのポイントをぜひ参考にして希望条件に合う企業探しを行なってみてください。
- 給与形態
- ボーナスの有無
- 労働時間・残業手当
- 社会保険の加入項目
- 労働条件通知書の更新有無
ポイント1:給与形態
正社員と同様の「月給制」が契約社員の給与形態として大半を占めていますが、契約社員の給与形態として以下の3つがあり、それぞれのメリットやデメリットをしっかり理解しておく必要があります。また、契約社員に限りとして「月給制」以外で定められている企業もありますので、しっかり確認しておきましょう。
- 月給制
- 年俸制
- 時給制
「年俸制」は契約した時点で1年間でに支払われる賃金が確定するため、契約期間内の収入の安定さを感じることができますが、その1年間で成果を残せなかったり欠勤や遅刻が多い場合は、翌年減額してしまう可能性や契約の継続の有無に関わりかねません。
また「時給制」は、会社によって1分〜30分単位でばらつきはありますが、働いた分しっかりと賃金が支払われます。さらに時給制の場合は、遅刻や早退がしやすいメリットもあるでしょう。しかし「月給制」と比べると毎月の給与にばらつきがあるため、毎月支払額が決まっている「月給制」の方が安定していると言えます。
ポイント2:ボーナスの有無
給与形態と同じく確認したいポイントが「ボーナスの有無」です。企業によっては、ボーナスの支給は正社員のみの対応としている場合が多い現状です。また、ボーナスは「雇用側から労働者への恩給的に支払うもの」であるとされているため、法律で義務付けられていません。
しかし、前述でも紹介したように働き方改革の一つでもある「同一労働同一賃金」の制度が施行が開始されたことにより契約社員でもボーナスの支給が行われるよう改善されていくのではないでしょうか。
同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。
※パートタイム・有期雇用労働法(2021年4月1日より全面施行)、労働者派遣法(2020年4月1より施行)
ここで注意すべき点は、契約社員としての就業規則にボーナス支給の旨が記載されているかどうかです。事前にしっかり確認し、記載がなければ面接時に聞いてみるのもいいでしょう。
ポイント3:労働時間・残業手当
契約社員として働くメリットとして前述した「勤務時間を調節できる」に関してですが、正社員と同様の労働時間や、残業ありとしている企業も多いので、就業規則をしっかり確認することが大切です。
また、残業の有無だけでなく下記のように残業手当についての確認も重要となります。
- 月給制の場合、みなし残業が含まれているか
- 給与形態問わず残業手当は支給されるのか
- 残業ありとする場合、平均的な残業時間はどのくらいか
ライフワークバランスを重要視する上でも労働時間や残業の有無については重要となってきますので、ぜひ参考にしてください。
ポイント4:社会保険の加入項目
契約社員でも、以下の条件を満たす場合は社会保険の加入義務が発生します。
- 1ヶ月の所定労働日数と1週間の所定労働時間が、正社員の4分の3以上である
さらに勤務時間の調節などから短時間勤務となる場合でも、以下の条件を満たすことで社会保険に加入することができます。
- 所定労働時間が週20時間を超える場合
- 月額の賃金が8.8万円以上であり、年収106万を超えている
- 雇用期間が1年を超える
注意すべき点は、この2つの条件には残業時間や残業代、ボーナスの支給は含まれません。
ポイント5:労働条件通知書の更新有無
労働基準法上、労働規則の内容について明示した「労働条件通知書」の発行が法律で決められています。有期雇用である契約社員は、その内容が曖昧となっているケースが少なくないため、企業とのトラブルにつながりやすいと言われています。そのためにも雇用契約を交わす際、以下の3点を確認しておくことが重要です。
- 雇用期間の終了日の記載(原則上限3年)
- 自動更新となっていないか
- 更新する場合がある際は、更新する条件が明記されているか
労働者がその条件で働くかどうかを決定する上でも重要となりますので、必ず確認し希望条件との相違がある場合には申し出ましょう。
まとめ
契約社員としての働き方を考えている人のためにこの記事では、契約社員のメリットデメリットや働く上で確認しておくべきポイントなどを詳しく解説しました。この記事で解説した内容をしっかり理解し条件などの確認を行うことで、条件面などでの企業とのトラブル防止にもつながるでしょう。
働き方の多様化やライフワークバランスを重視する上でも、ぜひお役立てください。
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