タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、社員の持つスキルや能力、経験値といった情報を経営資源として考え、横断的に組織の経営戦略や人事配置、人材開発を行う人材マネジメントです。
今までは優秀な人材を対象とした人事戦略でしたが、タレントマネジメントの普及によって、社員全員が対象になります。
タレントマネジメントの定義は、人材マネジメント協会と米国人材開発協会が公表している「SHRM」「ASTD」の2つが有名です。
それぞれの概要と定義は、以下の表をご覧ください。
名称 | 概要・定義 |
---|---|
SHRM |
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ASTD |
|
SHRMとASTDは、細かな概要や定義に違いはありますが、人材開発や採用を通した組織の成長が目的になっている点は、同じ方向性といえるでしょう。
次に、タレントマネジメントの目的と注目される背景を解説していきます。
タレントマネジメントの目的は?
タレントマネジメントを行う目的のひとつとして、人材採用の定着があげられます。
今までの人材採用は、新卒の一括採用によるポテンシャルの高い人材の獲得が主流でした。
しかし、企業を取り巻く環境の劇的な変化により、タレントマネジメントが必要とされています。
タレントマネジメントを導入して、人材採用の定着が期待できる理由は、下記の通りです。
- 必要なスキルや能力、経験値を持った人材を採用しやすくなる
- 適材適所な人材を配置できる
また、社内で優秀な人材を育てることも目的といえるでしょう。
タレントマネジメントは、それぞれの社員が考えているキャリアビジョンを把握して、育成に役立てる効果があります。
タレントマネジメントが注目される背景は?
タレントマネジメントが注目されている理由として、様々な背景が関係しています。
そのため、急速に変化している時代の変化に対応して、現状の問題点を見極めなくてはいけません。
ここからは、タレントマネジメントが注目されている背景を解説します。
- 背景1:慢性的な人材不足
- 背景2:人材の多様化
- 背景3:急速な市場の移り変わり
ひとつずつ解説していきます。
背景1:慢性的な人材不足
現代の日本では、少子高齢化に伴う慢性的な人材不足に陥っており、人材獲得に向けた競争が激化しています。
そのため、企業は限られた人材の中で生産力を向上・維持しながら、事業を成長させなければいけません。
パーソル総合研究所の調査によると、「2030年には644万人の人材が不足する」をされています。
人材不足が招くデメリットは、下記の通りです。
- 残業時間の増加
- 休暇取得の減少
- 売り上げの減少
- 新商品・サービスの開発機会の減少
上記の打開策として、タレントマネジメントを導入することで、現在の人材を大切にして、効果的で適切な人材育成や人材配置が期待できるでしょう。
背景2:人材の多様化
タレントマネジメントが注目される背景として、人材の多様化があげられます。
人材の多様化によって、仕事へのやりがいや社会的な意義を考える人が増えており、様々な価値観が生まれています。
具体的な例は、下記の通りです。
- 産休や育休などの時短勤務
- ライフワークバランスを大切にする
- 在宅勤務やサテライトオフィスといった柔軟な働き方
また、人材の多様化は組織に下記にあげる効果をもたらします。
- 顧客の共感が生まれやすい
- イノベーションが生まれる
- 優秀な人材の流出を防げる
外国人や女性社員の活躍やテレワークの普及といった、人材以外にも様々な多様化が見られるようになりました。
そういった背景からも、タレントマネジメントに注目が集まっています。
背景3:急速な市場の移り変わり
昨今の新型コロナウイルスやテクノロジーの変化により市場が急速に移り変わっており、それに伴ってタレントマネジメントが注目されています。
企業を取り巻く環境や市場も、大きく変化したといえるでしょう。
株式会社矢野経済研究所の調査によると、2020年におけるタレントマネジメントの市場規模は、22.1%上昇した180億9,400万円にのぼります。
調査結果からも、タレントマネジメントが注目度の高さが伺えるでしょう。
また、今後は下記が要因となり市場が伸びていくと予想されています。
- DX推進
- 業務の効率化
- 戦略人事の実現
そのため、一人ひとりのスキルや能力などを最大限に活用できるタレントマネジメントへ、更に注目が集まるでしょう。
タレントマネジメントを導入するメリットは?
ここまで、タレントマネジメントの概要をお伝えしました。
続いて、タレントマネジメントを導入するメリットを解説します。
- メリット1:人材育成を促進できる
- メリット2:公正な人事評価ができる
- メリット3:タレントのモチベーション・エンゲージメントが向上する
- メリット4:採用コストを削減できる
ひとつずつ解説していきます。
メリット1:人材育成を促進できる
タレントマネジメントを導入することで、企業の貴重な人材を効率的に育成できます。
社員が抱えている課題の解決に向けて、育成や教育をスムーズに行えるでしょう。
具体的なメリットは、下記の2つです。
- 社員の強みや弱みを適切にマネジメントできる
- 社員一人ひとりに合った課題が可視化されるので、直接アプローチできる
また育成データの蓄積によって、育成プランの立案や引き継ぎがやりやすくなる点も特徴といえます。
人材育成を行う際は、「定量的な目標」「期日の明確化」「チームもしくは会社の目標」などを意識しましょう。
メリット2:公正な人事評価ができる
タレントマネジメントを導入するメリットとして、公正な人事評価ができるようになります。
不明確な評価基準を設けていれば、社員は会社に対して不信感を抱いてしまうでしょう。
そのため、人事評価には明確な基準が必要です。
人事評価を公正化するメリットには、下記の3つがあります。
- 社内が活性化する
- 新しいアイデアが生まれやすくなる
- 社員のモチベーションアップにつながる
タレントマネジメントによって、自社に適した人材の成果や活動を公正に評価できるようになるでしょう。
一元管理されたスキルや能力、経験値をキャリアビジョンといったデータを基にスコアリングして人事評価できるはずです。
メリット3:社員のモチベーション・エンゲージメントが向上する
タレントマネジメントには、社員のモチベーション・エンゲージメントを向上させるメリットがあります。
適した人材育成や人材配置が期待でき、働きやすい環境を作れるでしょう。
企業側も、主体的かつ優れた生産性を発揮してくれるモチベーション・エンゲージメントが高い社員を求めています。
モチベーション・エンゲージメントが向上するメリットは、下記の通りです。
- 定略率の向上
- 離職率の低下
- 周りの社員に好影響を与える
- ワークライフバランスの実現
また、社員が職場や仕事を通してモチベーション・エンゲージメント向上につながる経験「エンプロイーエクスペリエンス」にも注目が集まっています。
こういった時代の流れを見ても、今後はタレントマネジメントが導入する企業が増えてくる可能性が高いです。
メリット4:採用コストを削減できる
タレントマネジメントの導入によって、採用コストの削減を期待できます。
現代の企業の人材は、人材の新陳代謝が非常に激しく、優秀な人材を確保しながら、適していない人材の退出を促すことは難しいです。
そのためタレントマネジメントの導入によって、ハイパフォーマーもしくはローパフォーマーを特定でき、人材の整理が容易になるので、結果として採用コストを削減できます。
採用コストを削減するメリットは、下記の通りです。
- 企業の増益が期待できる
- 業務の効率化が期待できる
- 企業価値を高められる可能性がある
採用コストの削減によって生まれた余剰資金を、新規事業の開発や他の分野へ投資することもできます。
採用にかかる無駄なコストを改善できれば、業務の効率化にもつなげられるでしょう。
ちなみに、こちらの記事では採用コストを削減する7つの方法を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
タレントマネジメントの導入方法は?
ここまで、タレントマネジメントを導入するメリットをお伝えしました。
続いて、タレントマネジメントの導入方法を紹介します。
- 導入1:マネジメントの現状を把握する
- 導入2:現状から課題を洗い出す
- 導入3:目標・ゴールを設定する
ひとつずつ紹介していきます。
導入1:マネジメントの現状を把握する
まずは、タレントマネジメントを導入する前段階として、自社のマネジメントの現状を把握しましょう。
現状を把握する理由は、人事戦略と比較してマネジメントの「できている・できていない」を知るためです。
そのため、人材管理に関する下記の情報を可視化しておきましょう。
- 氏名
- 経歴
- 目標
- 顔写真
- スキル
- 自己評価
これらの数字やデータを可視化しておきます。
また、最新の情報に常にアップデートできるように、関係部署間における情報共有の実施が重要です。
可視化された情報をもとに、採用もしくは育成の対象となる社員を特定していきます。
タレントマネジメントは中長期の時間をかけて実施されるので、社員へのヒアリングやデータ共有をスムーズに行えるように、事前に根回ししておきましょう。
導入2:現状から課題を洗い出す
マネジメントの現状を把握したら、「できている・できていない」から取り組むべき課題を洗い出しましょう。
課題の洗い出しは、社員や人事部だけではなく、経営陣を巻き込んでの取り組みが必要です。
具体的に課題を洗い出す方法は、下記の通りです。
- フレームワークを活用する
- うまくいっている企業を分析する
- 将来的にどんな目標を実現したいのか話し合う
- 中長期的なビジョンもしくはプロジェクトを共有する
また、洗い出した課題に対しては優先順位をつけておきましょう。
複数の課題があった場合に、緊急度や重要度を見極めたり、優先順位をつけたりしながら効率的に進める必要があるためです。
例えば、様々な課題の中から緊急かつ重要な課題を見つけた場合は、最優先で解決策を立てなければいけません。
人材を十分に確保できておらず、将来的に社員が枯渇する可能性がある場合は、タレントマネジメントの導入を検討するべきでしょう。
導入3:目標・ゴールを設定する
現状から洗い出した課題をもとに、目標・ゴールを設定していきます。
目標・ゴールを設定する理由は、人材をどのように配置するべきか判断したり、何が不足しているか現状を把握したりするためです。
また、目標・ゴールを設定する際は、下記のポイントを意識しましょう。
- 目標とゴールは関連性を持たせる
- 背伸びしなければ届かない目標・ゴールを設定する
- モチベーションが維持できる目標・ゴールを設定する
上記に加えて、具体的かつ期限付きの目標・ゴールに落とし込むことで、逆算した設定が組めます。
まずは各部署に目標・ゴールと課題のヒアリングを行い、KPIや人事施策などを詳細に決めていきましょう。
ちなみに、こちらの記事では組織のパフォーマンスを高める目標設定「KPI」について分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、タレントマネジメントの概要や導入するメリット、導入方法を解説しました。
タレントマネジメントが注目されている背景として、下記の3つがあげられます。
- 慢性的な人材不足
- 人材の多様化
- 急速な市場の移り変わり
また、導入することで「人材育成を促進できる」「採用コストを削減できる」など、様々なメリットがあります。
本記事でお伝えしたタレントマネジメントの導入方法を参考にしながら、自社の経営戦略や人事配置、人材開発に活かしてください。
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