源泉徴収とは?
源泉徴収とは、給与や報酬から予め納めるべき税金を支払い者が天引きして、納税者本人の代わりに納付する制度です。
源泉徴収された税金は、それぞれ納付先が異なります。
- 所得税=事務所
- 住民税=市町村
- 社会保険料=社会保険事務所
また事業を行う全ての企業は、源泉徴収を行う義務があるので覚えておきましょう。
ちなみに源泉徴収対象である給与所得者は、給与から所得税が差し引かれるので、原則として確定申告を行う必要はありません。
ただし、下記の場合は確定申告が必要です。
- 給与所得が2,000万円を超える
- 副業での所得が20万円を超える
- 給与を2ヶ所以上からもらっている
- 住宅ローン控除を初めて受ける
- 医療費が10前円以上かかり、医療費控除を受けたい
そのほか所得税では、退職手当や配当、利子、公的年金、生命保険契約に基づく年金などの支払いも源泉徴収の対象です。
こちらの記事では、給料から天引きされる保険や企業が使うべきWeb給料明細システムを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
源泉徴収の対象となる収入
源泉徴収の対象となる収入は、下記の通りです。
源泉徴収の対象となる収入 | 対象者の例 |
毎月の給与・賞与・退職金 | 会社員・公務員・団体職員(学校職員、病院職員) |
原稿料・講演料・デザイン料 | 作家・コピーライター・イラストレイター・ 大学教員が講演を行った場合 |
特定資格保有者に支払う報酬 | 弁護士・司法書士・公認会計士など |
社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬 | 医師・薬剤師など |
プロスポーツ選手に支払う報酬 | プロ野球選手・プロサッカー選手など |
芸能関係者に支払う報酬 | 歌手・映画俳優・演奏家・ダンサー・漫才師など |
外交員に支払う報酬 | 保険会社・不動産会社のセールス担当者 (報酬が商品の販売高に応じて定められている場合) |
ほかには、「懸賞応募作品の入選者への賞金(1回5万円以下)」は源泉徴収の対象外です。
また個人事業主(フリーランス)に支払われる報酬に関しては、業界によって源泉徴収が行われる場合があるので覚えておきましょう。
源泉所得税の納付時期・納付方法
次に、源泉所得税の納付時期・納付方法について解説します。
- 納付時期
- 納付方法
それぞれ見ていきましょう。
納付時期
源泉所得税の納付時期は、原則として給与・賞与をを支払った月の翌月10日までに税務署や各市区町村へ納付しなければいけません。
ただし、納付期限の当日が「日曜・祝日」などの場合は、休日明けの支払いになります。
ほかにも給与支払い対象者が常時10人未満の場合は、納付手続きを簡易化するため、下記のように半年分をまとめて支払うことができる特例を設けています。
- 1月〜6月までに源泉徴収した所得税額の納付期限:7月10日まで
- 7月〜12月までに源泉徴収した所得税額の納付期限:翌年1月10日まで(※)
上記の特例を受けるには、所轄の税務署長に対して「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出・承認を受ける必要があるので覚えておきましょう。
(※)「納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」を前年の12月20日までに提出すると、納付期限を1月10日から1月20日に延長する特例が受けられます。
納期限までに納付がない場合、延滞税や加算税を負担しなければならないので注意が必要です。
納付方法
源泉所得税の納付方法には、現金納付とクレジットカード納付、ダイレクト納付、インターネットバンキング納付があります。
それぞれ納付ごとの特徴は、下記の通りです。
納付方法 | 特徴 |
現金納付 |
|
クレジットカード納付 |
|
ダイレクト納付 |
|
インターネットバンキング納付 |
|
ほかには、納税決済Webサイトから納付できる「スマホアプリ納付」もあります。
源泉徴収税額の計算方法
源泉徴収税額の計算方法は、所得内容によって異なります。
例えば、支払い金額が100万円以上・以下の計算式は下記の通りです。
- 100万円以上:支払い金額×10.21%
- 100万円以下:(支払い金額-100万円)×20.42%+102,100円
また、退職所得に対する源泉徴収税額の計算は、「課税退職所得の金額×所得税率×復興特別所得税率」で算出できます。
【収入別】源泉徴収の方法
ここまで、源泉徴収の概要や対象となる収入、源泉所得税の納付時期・納付方法などをお伝えしました。
続いて、収入別の源泉徴収の方法を解説します。
- 給与
- 賞与
- 退職金
- 給与以外の源泉徴収
それぞれ解説していきます。
給与
源泉徴収を毎月の給与から行う方法は、扶養親族の数を考慮して「給与所得の源泉徴収税額表」を活用して算出します。
表には「甲・乙」の区分があり、それぞれの意味は下記の通りです。
- 甲:1社から給与を受け取っている対象者
- 乙:複数の企業から給与を受け取っている対象者
甲には扶養親族数ごとの税額が記載されており、扶養親族数と社会保険料を差し引いた手取り給与から税額が算出されます。
非課税対象の給与
給与として支払われる金額には、源泉徴収の対象とならない非課税となる給与が存在します。
非課税となる区分と金額の上限は、下記の通りです。
区分 | 非課税対象の上限額(1ヶ月あたり) | |
有料道路や交通機関の利用者に支給する通勤手当 | 1ヶ月あたりの合理的な運賃などの額 (最高限度額:150,000円) | |
自動車や自転車の利用者に 支給する通勤手当 | 通勤距離が片道55km以上 | 31,600円 |
通勤距離が片道45km以上、55km未満 | 28,000円 | |
通勤距離が片道35km以上、45km未満 | 24,400円 | |
通勤距離が片道25km以上、35km未満 | 18,700円 | |
通勤距離が片道15km以上、25km未満 | 12,900円 | |
通勤距離が片道10km以上、15km未満 | 7,100円 | |
通勤距離が片道2km以上、10km未満 | 4,200円 | |
通勤距離が片道2km未満 | 0円(全額課税) | |
交通機関利用者に支給する通勤用定期乗車券 | 1ヶ月あたりの合理的な運賃などの額 (最高限度額:150,000円) | |
「交通用具の使用者」かつ「交通機関や有料道路の利用者」に支給する 通勤手当や通勤用定期乗車券 | 「交通用具利用者に支給する通勤手当」および「1か月あたりの合理的な運賃」の合計額 (最高限度額:150,000円) |
旅費や交際費、宿日直料、結婚祝金品、葬祭料、見舞金などは、「特殊な給与」として扱われます。
また一定の条件を満たした場合の特殊な給与は、課税対象外です。
賞与
賞与の源泉徴収を計算するには、国税庁が発表している「賞与に対する給与所得の源泉徴収税額の算出率の表」を基に算出します。
給与とは違い、扶養親族を考慮して「前月の社会保険料等控除後の給与等の金額」を参照して、賞与金額に乗ずるべき率を計算します。
退職金
退職金は、「源泉徴収のための退職所得控除額の表」「課税退職所得金額の算式の表及び退職所得の源泉徴収税額の速算表」を参照して計算します。
退職金を算出するには、勤続年数による退職所得控除を差し引いて、1/2を乗じた額に課税されます。
こちらの記事では、従業員が企業に在籍しているタイミングで支払う「退職金前払い制度」の背景やメリット、デメリットを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
給与以外の源泉徴収
給与以外では、「配当所得」「利子所得」「報酬・料金」が源泉徴収の対象です。
配当所得は一部を除いた株式の20.315%が源泉徴収されます。
また利子所得も、20.315%が銀行預金で受け取る利子に対して課税され、源泉徴収されます。
報酬・料金の源泉徴収の割合は、下記の通りです。
- 支払額が100万円以下:10.21%
- 支払額が100万円以上:20.42%
報酬・料金の源泉徴収額の計算方法は、業種によって異なるので注意しましょう。
源泉徴収の流れ
ここまで、収入別の源泉徴収の方法をお伝えしました。
続いて、源泉徴収の流れを解説します。
- 従業員の扶養親族数を確認する
- 社会保険料などを差し引き所得税額を算出する
- 所得税を源泉徴収した後の給与額を算出する
- 徴収した所得税を納付する
- 年末調整を行う
ひとつずつ解説していきます。
従業員の扶養親族数を確認する
まずは、従業員の扶養親族数を確認していきます。
扶養親族の確認方法は、従業員が提出する「給与所得者の扶養控除等申告書」を準備して、扶養親族数を申告書で確認します。
社会保険料などを差し引き所得税額を算出する
源泉徴収額は、従業員の所得金額によって異なります。
そのため、給与から社会保険料などを差し引いた金額を算出しましょう。
そして源泉徴収税額表を確認して、所得税額を算出します。
従業員に控除が適用されるか確認するために、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいましょう。
提出してもらうことで、下記の確認と控除額が適用されるかが分かります。
- 扶養親族の有無
- 控除対象配偶者の有無
- 従たる給与(本業以外の給与)に該当するか否か
適用となる「甲欄」、提出しない従業員が適用となる「乙欄」があるので確認します。
所得税を源泉徴収した後の給与額を算出する
適用される控除が分かったら、所得税を源泉徴収した後の給与額を算出します。
給与は、源泉徴収額と社会保険料を差し引いた金額です。
徴収した所得税を納付する
従業員から徴収した所得税を、翌月10日までに税務署に納付します。
所得税を納付する際は、「源泉所得税の所得税徴収高計算書(納付書)」を使用します。
計算書には源泉徴収税額や対象となる従業員の人数、給与の総額などを記入する欄があるので、間違えず書けるように準備しておきましょう。
年末調整を行う
年末調整を行って、納税所得分の過不足を計算します。
過不足は、従業員の給与が通年変わらなければ年末調整する必要がありません。
しかし、下記の場合は過不足が発生するので手続きしましょう。
- 昇給・減給した場合
- 扶養家族の人数が変わった場合
また、生命保険料控除等、各種控除の有無によって変わる場合もあります。
過不足調整を行った際に、源泉徴収税額が年税額より少ない場合は税金還付の対象です。
反対に年税額が多かった場合は、不足税金分を追加で徴収することになります。
こちらの記事では、人事・経理向けに年末調整と源泉徴収票について分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回は、源泉徴収の概要や納付時期、納付方法・流れを解説しました。
源泉徴収とは、給与や報酬から予め納めるべき税金を支払い者が天引きして、納税者本人の代わりに納付する制度です。
納付時期は「1月〜6月」と「7月〜12月」で納付期限が異なり、原則として翌月10日までに納めなければいけません。
また納付方法には、下記の5つがあるとお伝えしました。
- 現金納付
- クレジットカード納付
- ダイレクト納付
- インターネットバンキング納付
- スマホアプリ納付
本記事でお伝えした源泉徴収の方法や流れを参考にして、給与計算や納付制度への理解を深めましょう。
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