目標管理制度(MBO)とは?
目標管理制度(MBO)とは、社員自身で個人目標を決めて達成度合いや進捗によって人事評価を決定するマネジメント方法です。
社員と企業の方針を擦り合わせた上で、成果までの道のりを管理します。
現代経営学を手掛けたピーター・ドラッガー氏の提唱により、誕生したマネジメント概念です。
目標管理制度を導入する際に重要なポイントとして、下記の2つがあげられます。
- 社員目標は社員本人が決めること
- 社員目標と企業目標がリンクしていること
成果までの道のりを社員自身が管理することで、具体的な道筋が見えるだけでなく業務効率の向上につながります。
さらにモチベーションも高められるため、企業の業績向上にも寄与するでしょう。
次に、下記の3つについて解説します。
- 目標管理制度とOKRの違い
- 目標管理制度が広まった理由
- 目標管理制度の種類
それぞれ解説していきます。
目標管理制度(MBO)とOKRの違い
目標管理制度と比較した際のOKRの特徴は、下記の3つです。
- 進捗の指標や目標は、100%の達成を前提としていない
- 目標を振り返るスパンが1〜3か月と短い(目標管理制度(MBO)は1年ごと)
- 目標が全社に公開・共有される
つまり、OKRは企業全体の目標達成を目指す個人の金銭的評価に直結しない点が特徴といえるでしょう。
社員の成果を厳しく判断して、成果によって社員を優遇する場合は、目標管理制度(MBO)を活用します。
一方で、企業として社員ごとのペースで目標達成を検討している場合は、OKRを導入しましょう。
目標管理制度(MBO)が広まった理由
目標管理制度が広まった理由として、成果主義の導入があげられます。
これまでの日本は、目標管理制度を導入する企業として下記の2つが特徴としてあげられていました。
- 業績の向上
- 事業拡大に見合った人材の育成
しかし実際に導入している企業は一部に限られており、1990年のバブル崩壊が転換期とされています。
そのほかにも、下記の4つが目標管理制度が広まった理由とされています。
- 長期的な事業計画を実行するための組織を構成するため
- 目標管理制度を繰り返すことで、継続的な改善が実現されるため
- 社員が目標を持つことで、目標を達成するための積極的な取り組みが促せる
- 企業が公開しなければならない情報量が増えて、さらに厳しい目標設定が求められるようになった
また上場企業の場合は、上場を維持するために厳しい事業運営が求められるでしょう。
2000年以降になると、結果に加えてプロセスを評価する企業も誕生しています。
目標管理制度(MBO)の種類
目標管理制度は、目的に応じて3つの種類に分けられます。
それぞれの種類は、下記の通りです。
種類 | 特徴 |
組織活性型 |
|
人事評価型 |
|
課題達成型 |
|
それぞれの特徴は異なりますが、目標を達成したかどうかよりプロセスを重視している点は同じということを覚えておきましょう。
こちらの記事では、従来の働き方を見直して仕事を効率化する「工数管理ツール」選び方やおすすめのツールを20個を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目標管理制度(MBO)を導入するメリット・デメリット
ここまで、目標管理制度の概要や広まった理由、種類をお伝えしました。
続いて、目標管理制度を導入するメリット・デメリットを解説します。
- 目標管理制度(MBO)を導入するメリット
- 目標管理制度(MBO)を導入するデメリット
それぞれ解説していきます。
目標管理制度(MBO)を導入するメリット
まずは、目標管理制度を導入するメリットを解説します。
- 従業員の能力開発につながる
- 従業員のモチベーションがアップする
- 人事評価がしやすくなる
ひとつずつ解説していきます。
従業員の能力開発につながる
目標管理制度を導入するメリットとして、従業員の能力開発につながる点があげられます。
従業員が自ら目標を立てて業務を行うので、誰かから強制的に仕事をするわけではありません。
そのため、従業員の自立性や主体性といった能力がアップするでしょう。
これからの社会は自身の価値観と照らし合わせながら業務を遂行して、成果や目標を達成できる「自立型人材」が求められる時代です。
企業側は意欲的な能力開発を従業員に促せるので、企業全体としてスキルをアップできます。
従業員のモチベーションがアップする
個人が立てた目標は組織の目標とリンクしているので、「個人目標の達成=企業に対する貢献性」を図れるでしょう。
多くの企業では企業やチーム、上司が目標を決めています。
しかしそういった目標の立て方では、従業員のモチベーションを削いでしまうでしょう。
モチベーションを削いでしまう理由は、下記の2つです。
- 自社に利益をもたらしている実感を得づらい
- 自分の行動で会社に貢献できているか分からない
しかし目標管理制度を導入すれば、会社や上司から称賛を得られるだけでなく、従業員の自存心も満たされます。
つまり、会社の中での自分の存在価値と明確な役割を見出せるでしょう。
人事評価がしやすくなる
人事評価型の目標管理制度では、人事評価を下しやすくなる点がメリットとしてあげられます。
目標達成度やプロセスへの評価を決める際に数値を取り入れることで、客観的な目標設定が可能です。
そのため透明性が高いだけでなく、人事評価までのプロセスが分かるので、従業員も評価の結果に納得できます。
また、客観的な目標設定を取り入れるメリットは下記の2つです。
- 目標の達成・未達成項目が明確になる
- 従業員に誰が見ても理解できる評価を下せる
さらにフィードバックを受けた従業員は、自身の改善点を理解しやすくなるでしょう。
目標管理制度(MBO)を導入するデメリット
ここまで、目標管理制度を導入するメリットをお伝えしました。
続いて、目標管理制度を導入するデメリットを解説します。
- 管理職側の負担が増える
- 従業員のモチベーションを下げてしまうことがある
- 自由な目標を設定できないことがある
ひとつずつ解説していきます。
管理職側の負担が増える
目標管理制度を導入するデメリットは、管理職側の負担が増えてしまう点です。
管理職は通常の業務に加えて、下記を追加で行わなければいけません。
- 部下の目標の確認
- 部下が設定した目標の達成度合いの確認・面談
そのため企業規模やチームメンバーが多い場合は、評価すべき対象者が増えるため、必然的に管理職への負担も大きくなります。
管理職側の負担を減らす方法は、下記の2つです。
- 目標管理を効率化するためのツールやアプリを活用する
- 評価者のマネジメント能力を育ててから、目標管理制度を導入する
従業員への評価によっては、モチベーションの低下につながる可能性があるので、管理職側の精神的な負担への考慮も必要になるでしょう。
従業員のモチベーションを下げてしまうことがある
目標管理制度は評価の判断基準が一様ではないので、管理職の人事評価スキルが適正でない場合に、従業員のモチベーションを下げる可能性があります。
適正な評価を下すために管理職に求められるスキルは、下記の2つです。
- 対人能力
- 概念形成能力
さらに、管理職には自分だけで業務を遂行するための知識だけでなく、チーム全体をマネジメントするスキルも求められます。
そのため企業は、管理職にフィードバック・評価スキルが習得できる教育や研修を施しましょう。
自由な目標を設定できないことがある
目標管理制度は社員が自ら目標を設定する制度ですが、自由な目標設定できない点には注意が必要です。
特に下記の場合は、目標設定を自由にできないので覚えておきましょう。
- 企業のビジョンや理念が社員に浸透していない
- 目標管理制度の目的・意味が社員に正しく理解されていない
目標管理制度を導入するにあたって、「企業目標=社員が掲げる個人目標」を意識する必要があります。
企業と個人が共通の目標を持つことが、意識の周知徹底を行う際の重要なポイントです。
こちらの記事では、企業の目標を達成するために必要な指標「KPI」を活用するメリットや設定方法を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目標管理制度(MBO)を導入する手順
ここまで、目標管理制度を導入するデメリットをお伝えしました。
続いて、目標管理制度を導入する手順を解説します。
- 理念・利益に沿った目標を設定する
- 目標を達成するまでの計画を設定する
- 計画を実行する
- 目標達成状況の振り返り・評価をする
ひとつずつ解説していきます。
理念・利益に沿った目標を設定する
目標管理制度を導入する手順として、まずは自社の理念・利益に沿った目標を設定しましょう。
目標を設定する際は、目標設定研修や管理職研修、MBO説明会を実施します。
研修や説明会で決定もしくは確認する項目は、下記の通りです。
- 自社の理念
- 制度の趣旨
- 組織の目標
その際に社員一人ひとりには、個人目標を設定してもらいます。
また、「設定目標は理念・利益に沿っているか」「達成可能かつ社員が成長できる目標であるか」といった点を、管理職側で確認しましょう。
目標を達成するまでの計画を設定する
理念・利益に沿った目標を設定できたら、目標を達成するまでの計画を設定します。
目標達成に向けた計画を設定する際のポイントは、下記の通りです。
- 無理せず達成できる目標を立てる
- 目標達成が疎外されるリスクを想定する
- 計画案を複数用意しておく
計画を設定する際には、期日から逆算したうえで策定しましょう。
目標を管理する際には、GoogleスプレッドシートやExcel、専用ツールを活用します。
計画を実行する
目標達成までの計画を設定できたら、計画を実行していきましょう。
目標管理シートを活用して、目標の達成度合いや進捗を確認します。
また確認しながら実行していき、問題点や障害が発生した場合は、その都度上司に相談して計画を修正しましょう。
その際に管理職側が注意するポイントは、下記の通りです。
- 個人目標の達成が難しい場合は、下方修正も検討する
- 部下のモチベーションを把握して、必要に応じて精神的なサポートも行う
ほかには達成が遅れているメンバーがいた場合、相互に協力できる風土作りも重要です。
目標達成状況の振り返り・評価をする
目標の期日になったら、目標達成状況の振り返り・評価をしていきます。
評価する際の手順は、下記の通りです。
- 上司と部下で目標を達成するまでの行動と成果を共有する
- 部下が自己評価を行い、上司は客観的な評価とフィードバックを行う
フィードバックでは、達成できたことを褒めて不足した部分は指摘しましょう。
その際に上司は、下記の点に注意が必要です。
- 部下の業績を客観的に評価して、評価結果を説明する
- フィードバックを行った後にはアフターフォローを行う
評価が良かった場合は、来年度もモチベーションが維持できる激励の言葉をかけます。
反対に評価が悪かった場合は労いの言葉をかけて、モチベーションの向上に努めましょう。
目標管理制度(MBO)の注意点
ここまで、目標管理制度を導入する手順をお伝えしました。
続いて、目標管理制度の注意点を解説します。
- モチベーションを低下させないようにする
- 業務効率が下がることがある
- プロセスが考慮されにくい
それぞれ解説します。
モチベーションを低下させないようにする
目標管理制度における注意点は、モチベーションを低下させないことです。
目標管理制度は目標の達成・未達成が明確なので、結果ばかり注目されてしまう特徴があります。
注目される場面は、下記の通りです。
- あまりにも簡単な目標を設定した
- 管理職が社員の目標と行動計画を決めた
- 自分の実力と乖離した目標を立ててしまい、目標達成が湧かない
社員の実力や主張を無視して目標設定してしまうと、モチベーションを下げてしまうでしょう。
また、新入社員や目標管理制度を導入して間もない企業は、目標の適切な立て方が分かりません。
適切なフィードバックを管理職から受けられない点も、モチベーション低下につながるので注意が必要です。
業務効率が下がることがある
目標管理制度で設定することが目的になってしまうと、手段が目的になってしまうため業務効率の低下につながるでしょう。
本来の目標管理制度は、社員が自らの目標を管理して目標や成果を達成する手段です。
しかし、目標管理や面談を行うことが目的になってしまうと、下記の業務負担が大きくなります。
- 面談の実施
- 成果の達成状況の把握
そうなると、かえって業務効率を下げてしまう危険があるでしょう。
プロセスが考慮されにくい
目標管理制度は定量的な目標設定ばかりになると、プロセスが考慮されづらくなる可能性があります。
社員一人ひとりが自分で設定した目標達成に向かって、行動することは大切です。
しかし、「目標未達=悪い」と評価してしまうには誤りがあります。
目標管理制度では、結果とプロセスの指標を比較しながら評価を適切に下さなければいけません。
まとめ
今回は、目標管理制度の概要やメリット・デメリット、注意点を解説しました。
目標管理制度とは、社員自身で個人目標を決めて達成度合いや進捗によって人事評価を決定するマネジメント方法です。
同じ制度でも、目的によって下記の3つに分類されるとお伝えしました。
- 組織活性型
- 人事評価型
- 課題達成型
また、「従業員の能力開発につながる」や「管理職側の負担が増える」などのメリット・デメリットもあります。
本記事でお伝えした目標管理制度を導入する手順や注意点を参考にして、自社への導入を検討してください。
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