コンプライアンスとは「法令遵守」
コンプライアンスとは「法令遵守」を意味しますが、単に法律に従えば良いというものではありません。
なぜなら、実際には企業の倫理観や社会道徳の要素が含まれているからです。
企業に求められるものは「公平・公正」であり、従業員にとって偏りのない会社を目指し、社会の中で信頼されながら価値提供できる経営をしなくてはなりません。
そうした目的から、コンプライアンスには、道徳観や倫理観などの社会における人として守るべき規準が必要です。
コンプライアンスの目的を達成するためには、会社の業務に対して従業員が公平に従事できる環境作りをし、従業員が自ら企業の法令遵守に従う行動が必要です。
コンプライアンスの3つの対象
コンプライアンスは、法令を含む以下3つの要素を対象としています。
- 法令
- 社内規範
- 社会規範
順に見ていきましょう。
法令
法令とは「法律」と「命令」を合わせて一つにした言葉であり、法律は国会で定められ、命令は国などの行政機関で定められます。
そして、企業が法令に従い経営するのは、社会的信用と企業価値を高める目的があるからです。
例えば、従業員が不祥事を起こした場合でも、企業がコンプライアンスに従い経営していれば、会社の信用価値は存続でき、再発防止に向けた取組強化として次に活かせます。
そうした背景から、法令に基づいたコンプライアンスの提示が必要となってくるのです。
社内規範
社内規範とは「就業規則」のことで、従業員が会社で働く上でのルールであり、法令に基づいたものです。
就業規則の提示により、従業員は社内規範を守らなければならない立場にあるので、企業の信用は従業員個人が創っていかなければなりません。
そうした企業価値を高める経営には、コンプライアンスに基づいた社内規範の提示が不可欠といえるでしょう。
社会規範
社会規範とは「社会の中で、人として守るべきルール」ですが、法令には含まれていないので、強制力はありません。
しかし、企業が社会規範を取り入れることで、会社としての道徳観や倫理観を大切にでき、取引先の信用が得られるメリットがあります。
従業員の行動一つ一つが企業の看板であり、企業価値が左右されるので、社会規範はコンプライアンスに必要な要素です。
コンプライアンスが重要視される2つの背景
2000年代半ばからコンプライアンスが重要視されるようになりましたが、その背景には以下2つの理由があります。
- 企業不祥事の増加
- インターネットの普及
それでは順番に見ていきましょう。
企業不祥事の増加
1つ目の理由は、不祥事を起こす企業が増えた背景があります。
1990年代にバブルの崩壊が起こり、日本企業の経営状況は悪化。そんな中起きたのが、相次ぐ企業の不祥事でした。
当時は、企業を守るためなら何でもする風潮があり、売り上げの虚偽申告をするなど「粉飾決算」の不祥事が目立ちました。
【粉飾決算】 会社が不正な意図をもって、経営成績および財政状態を実際より過大または過少に表示するように人為的操作を加えた決算。 出典元:weblio「粉飾決算」 |
このように、相次ぐ企業の不祥事は増加するばかりで収まる気配がなかったため、歯止めをかけるために憲法の改正が行われ、2000年代半ば頃からコンプライアンスが注目されるようになりました。
インターネットの普及
2つ目は、インターネットが急速に普及し、SNS社会が生まれたことです。
現代は誰もがスマートフォンを持ち気軽に情報発信できますが、情報モラルを理解していないと社会規範から外れた行動を取ってしまいます。
そうなれば、会社にとって不利益になる行動や発言がコンプライアンス違反となり、瞬く間にSNSで拡散されてしまうでしょう。
SNSの拡散スピードは速く、あっという間に会社の信用や価値は低下してしまい、場合によってはマスメディアなどに取り上げられるケースに繋がりかねません。
このような背景から、企業価値を維持させるために、コンプライアンスが重要視されるようになりました。
コンプライアンスに似た2つの言葉
コンプライアンスに似た言葉には、以下の2つがあります。
- コーポレートガバナンス(企業統治)
- CSR(企業の社会的責任)
順に見ていきましょう。
コーポレートガバナンス(企業統治)
コーポレートガバナンスとは「企業統治」と言われますが、コンプライアンスとの大きな違いは企業を守るための仕組みです。
①コンプライアンス |
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②コーポレートガバナンス |
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コンプライアンスは自社内で法令を守ることを指しますが、一方でコーポレートガバナンスは、社外の管理者が企業の不祥事を防止するために、企業を監視することを指します。
CSR(企業の社会的責任)
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任を指しますが、この中にコンプライアンスが含まれています。
CSR |
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企業の社会的責任は広範囲なため、会社の価値を向上させ、且つ存続していくためには、社会での企業がもたらす影響を考慮した意思決定する責任があります。
【具体実例】4つのコンプライアンス違反
コンプライアンス違反事例は多くありますが、その中でも代表的なものが以下4つです。
- 不正会計
- 労働問題
- 法令違反
- 情報漏えい
一つずつ順に解説していきます。
不正会計
代表的な事例として、2004年9月期の決算報告での虚偽申告が大事件となったライブドア「粉飾決算事件」があります。
実際には、3億円の経常赤字だったにもかかわらず53億円の利益を計上し、50億円の経常黒字として偽った報告で、当時の関係者は逮捕されました。
この事件では、会社の社会的信用や価値を著しく失い、多くの関係者が被害を受ける結果となりました。
不正会計は当事者のみならず、周りの多くの関係者に多大なる損害を与えてしまうリスクがあるのを忘れてはなりません。
労務問題
2つ目の労務問題には、以下の内容があります。
- 超過労働
- 各種ハラスメント
これらには、従業員が企業側から受けた不当な扱いによって精神的・身体的苦痛を受け、労働できなくなってしまう問題があります。
超過労働を強いて不幸を招いたり、各種ハラスメントに遭い職場を辞めざるを得なかったりと、こうした問題はコンプライアンス違反として、従業員側から訴えられる場合があります。
この労務問題は表面上に出にくい分、根本の解決が重要となるので、時間と職場の風土づくりが重要です。
法令違反
3つ目の法令違反には、以下の内容が含まれています。
- 食品の産地偽装表示
- 画像などの無断転送による著作権の侵害
法令違反の特徴には、大丈夫だと思っていた小さな積み重ねが、気付いた時には取り返しのつかない事態となり、企業の信用失墜に繋がるケースもあります。
例えば、食品の産地偽造表示では、食に対する安全や安心を抱いていたメーカーへの信頼が一転し、最悪は廃業する事態となるでしょう。
法令違反は、企業側が定めた法令に違反することですので、社内のコンプライアンスを熟知しておく必要があります。
情報漏えい
4つ目の情報漏えいには、以下が含まれます。
- 個人情報の流出
- インサイダー取引
情報漏えいの問題は、メディアで大きく取り上げられるケースが多く、コンプライアンス違反になった場合には大きな問題として取り上げられます。
例えば、個人情報の流出では、情報機器などの持ち出しから発生しますが、その多くが個人間の不注意に起因するものです。
こうした思い込みが企業の信用を傷つけ、場合によっては二次被害・三次被害へと拡大し、損害賠償の対象も拡大してしまいます。
こうした情報の漏えいを防ぐために、近年ではセキュリティの強化に力を入れる企業が増えています。コンプライアンス違反に当たらないよう、各自の意識の持ち方が問われる問題です。
コンプライアンス遵守に必要な3つの取組
企業がコンプライアンスを強化し、一人ひとりが法令を守るためには、企業の管理体制の構築と、正しい知識を身につけた行動が必要です。
コンプライアンス遵守に必要な以下の取組3つを順に解説していきます。
- 社内規則(マニュアル)の作成
- 法令や対応に関する情報のアップデート
- 相談窓口の設置
社内規則(マニュアル)の作成
先述のとおり、社内規則とは就業規則とも言い換えられますが、従業員が会社のルールに従って働くのに必要なマニュアルのことも指します。
この社内規則には、コンプライアンスを遵守するための必要事項を記載する必要があります。
それは、コンプライアンスに違反しないための禁止事項を従業員に伝えることで、法令遵守の義務を与えられるからです。
法改正などに合わせて規定内容を改定し、従業員一人ひとりにコンプライアンスの重要性を伝えていきましょう。
ただし、法令に関する表記に誤りがないかどうかは、専門知識のある弁護士に判断してもらう必要があります。
法令や対応のアップデート
コンプライアンスに関する法改正に合わせた情報のアップデートは、企業の社会的信頼に直結します。
なぜなら、法改正の新しい情報をいち早く入手し、法令に基づいた就業規則を刷新するのは、社内のコンプライアンス遵守には欠かせないからです。
情報のキャッチアップ対応は、随時必要となります。
相談窓口の設置
コンプライアンス違反の背景には、誰にも相談できずに風通しが悪くなっている場合があります。そうした問題を解決するためにも、相談窓口の設置がコンプライアンス遵守には有効です。
こうした取組は、ハラスメントを未然に防ぐなどのコンプライアンス違反防止に繋がります。
ただし、設置にあたって検討しなければならないのは、誰でも相談できる環境づくりです。例えば、外部専門家など中立な立場の人間を配置し、誰が通報したのか外部に情報が漏れない工夫が必要です。
様々な視点をもって社内の課題改善がどこにあるのかを共有し、社内の風土にあった相談窓口の設置が望ましいでしょう。
【kyozon編集部おすすめ】コンプライアンス遵守に便利なサービス
コンプライアンス遵守に便利な人気のビジネスサービスを5つ紹介します。
- 漏洩チェッカー
- SUPPORT+iA
- jinjer勤怠
- マネーフォワード クラウド勤怠
- 奉行Edge 労務管理電子化クラウド
それぞれのサービス内容や特徴について解説していきます。
【情報漏洩を未然に防止】漏洩チェッカー
内容 | |
提供会社 | 株式会社スタメン |
価格・プラン | 1台:100円~ ※詳細は要見積もり |
無料トライアル | 〇あり |
主な特徴 |
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従業員による情報漏洩はコンプライアンス上大きなリスクとなるため、セキュリティ方面での対策も欠かせません。漏洩チェッカーは、人的ミスなどを原因とする情報漏洩を防ぎ、企業の機密情報を管理できるセキュリティサービスです。
フォルダーやスクリーン、USBドライブやごみ箱などのデータ持ち出しを監視するシステムに加え、ハードウェアを管理する機能も提供されています。使用する機能やPCの台数で料金が変わるため、まずは資料請求で検討してみましょう。
【プロレベルのバックオフィス業務代行】SUPPORT+iA
経理に関わる複雑なバックオフィス業務アウトソーシングサービス SUPPORT+iA
内容 | |
提供会社 | グランサーズ株式会社 |
価格・プラン |
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無料トライアル | ×なし |
主な特徴 |
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SUPPORT+iAはバックオフィスの業務を代行可能なサービスです。経理・会計・財務の分野に強みを持ち、事務業務全般を依頼できます。コンプライアンスを維持しながら効率よく業務を遂行することに向いているサービスです。
バックオフィス業務のコンプライアンス対策を改善したいという場合には、コンサルティングサービスの利用も検討してみましょう。豊富な経験からアドバイスを受けることができるため、こちらもおすすめです。
【勤怠管理を正確に】jinjer勤怠(ジンジャーキンタイ)
内容 | |
提供会社 | jinjer株式会社 |
価格・プラン |
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無料トライアル | 〇あり |
主な特徴 |
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jinjer勤怠は労働時間の自動集計やシフト・休暇管理や申請承認など労務管理業務に必要な機能が一元化されているシステムです。超過労働などの未然の防止に役に立つサービスでとなっています。誰にでも扱いやすい操作性であることもポイントです。
労務関係の情報は入力と同時にリアルタイムで関連システムに反映されるため、業務に必要な情報を抜けや漏れ、遅延もなく管理できます。書類のペーパーレス化や業務の電子化にも役割を果たすことができるでしょう。
【労務管理をクラウドで完結】マネーフォワード クラウド勤怠
内容 | |
提供会社 | 株式会社マネーフォワード |
価格・プラン |
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無料トライアル | 〇あり |
主な特徴 |
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マネーフォワード クラウド勤怠は労務管理のワークフローをすべてWeb上で完結できるクラウド式のサービスです。CSVエクスポート・インポート機能による連携機能があるため、ソフトから乗り換えや、自社給与ソフトへの取り込みも可能です。
異常な打刻や残業時間が一定時間を超えた場合などはアラートされる機能もあるため、勤怠管理や36協定の限度時間の遵守などのコンプライアンス管理に役に立つサービスといえるでしょう。
【セキュリティ性の高い労務管理】奉行Edge 労務管理電子化クラウド
内容 | |
提供会社 | 株式会社オービックビジネスコンサルタント |
価格・プラン | 月額利用料:15,000円(年間契約) ※従業員20名で労務担当者1名の場合 |
無料トライアル | 〇あり |
主な特徴 |
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奉行Edge 労務管理電子化クラウドは、従業員の入社から退職までに発生する労務管理の手続きをすべてデジタル化できます。導入から稼働までしっかりサポートがあるため、IT関係に不慣れな人手も簡単に利用できます。
世界的に運用されているクラウドコンピューティングサービスであるMicrosoftAzureを採用しており、信頼性も高いものとなっています。従業員の個人情報の漏洩もコンプライアンス上のリスクとなりますが、奉行Edgeは暗号化でデータを保護できます。
まとめ
本記事では、コンプライアンスの意味や重要な要素、遵守するために必要な取組をお伝えしました。ただ単に法令を遵守するだけがコンプライアンスではありません。
コンプライアンスを重視する上では、人としての良心ある対応も不可欠ですので、企業側も従業員に対し、社内規範の提示をするなど、企業の信頼や価値の向上に繋がる取組が必要です。
そうした取組が、従業員一人ひとりの意識改革に繋がり、会社に貢献する循環が生まれていきます。
この記事をきっかけに、法令遵守に向けた取組ができれば幸いです。