非正規雇用とは?
非正規雇用とは、正規雇用ではない方法で雇用することです。
一般的には、「パート」「アルバイト」「業務委託」「契約社員」「派遣社員」などが挙げられます。正規雇用とは異なり、上記のような雇用をされている労働者は、必ずしもフルタイムで勤務する必要がなく、1日3~4時間程度の勤務時間であったり、1週間の出勤日数も2~3日など、自由度が高いのが特徴です。
しかし、一方で正規と比べて安定性が低く、「人件費削減のために雇用契約を切られやすい」といった問題点もあります。
実際、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、正規雇用している人材を維持しながら、非正規雇用の社員を減らす動きが見られました。非正規雇用は無期雇用ではない分、長い目で見ると不安定さが懸念されています。
なぜ企業は非正規雇用を採用しているのか
非正規雇用を採用する企業は、どのような理由なのでしょうか。
ここからは、非正規雇用を採用する企業の理由について解説します。
人手が不足している
企業が非正規雇用を採用している理由として、まず挙げられるのが「人手不足」です。
繁忙期の時期や、事業拡大のタイミング、急な異動・退職など、企業はさまざまな理由で人手不足に陥ります。
また、業種や業界によっては慢性的に人手不足に陥っているケースも多く、人が足りていないといった問題は非常に深刻です。そのような事態に非正規雇用の採用が選択肢として挙がります。正規雇用と比べて、非正規雇用は人件費を削減しやすく、雇いやすいのが魅力。すぐにでも働いてほしいときに、非正規雇用はピッタリの雇用形態なのです。
また、近年はライフスタイルの多様化に伴い、非正規としての働き方を選ぶ求職者も少なくありません。いずれにせよ、人手を確保しやすいのが、企業が非正規雇用を採用する理由として挙げられるでしょう。
人件費を節約する
前項でも軽く触れましたが、非正規雇用は人件費の節約につながります。正規雇用では必須となる「ボーナス」「退職金」などの支払いですが、非正規雇用に対しては不要です。
また、給料も正規よりも安価な場合が多いため、人件費にコストをかけられない方にとって、非正規雇用は現実的な選択肢となります。
解雇が比較的簡単にできる
企業が非正規雇用を採用する背景には、解雇しやすいといった点が挙げられます。
正規雇用はほぼ無期雇用を意味するため正当な理由がなければ簡単に解雇することができません。しかし、非正規雇用の場合は、有期雇用の意味合いが強く企業の事情で解雇しやすいといえます。
たとえば、冒頭で触れたような2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴い、売り上げが下がったときには、真っ先に非正規雇用の人数を減らす動きが見られます。
また、繁忙期のみ人手が欲しいと考えている企業であれば、定期的に契約更新を行う非正規雇用を選べば自社の都合に合わせたタイミングで契約更新を行わないといった選択ができるのです。
長く自社で抱え続けることを想定していない企業ほど、非正規雇用を積極的に採用している傾向にあります。
正社員雇用とは?
正社員雇用とは、何らかの事情がない限りは入社したその会社で定年まで働ける雇用形態です。
フルタイムで働くことが前提であり、非正規雇用よりも福利厚生が充実していたり、収入が高かったりするなど、働き手にはメリットの大きい雇用形態です。
また、企業側にもメリットがあり、人手不足の現場の人材流出を防げるうえに、長く働くことを前提としているため企業にとっての戦力を育てやすくなります。企業の成長において、即戦力の数は重要であることから、正社員雇用は企業にとって必要なポイントといえるでしょう。
企業が非正規雇用者を採用するデメリットは多い?
企業にとって非正規雇用者を採用することは、金銭的なコストや人員整理のしやすさなどの観点からメリットが大きいと考えられています。
しかし、非正規雇用を重視すると、企業の存続に関わる場合もあるため注意が必要です。
具体的に、企業が非正規雇用を採用するデメリットは何なのかを見ていきましょう。
人材育成が難しい
企業が非正規雇用者を採用するデメリットとして、深刻であるのが「人材育成の難しさ」です。
非正規雇用者は、正規雇用の社員と比べて離職率が高く、その会社に長くはとどまらないことが多い傾向にあります。そのため、人材育成に力を入れることが難しく、結果的に社内に戦力となる人材が少なくなってしまうといった事態に陥ってしまうのです。
また、非正規で雇用された労働者も、将来的なキャリアアップを望めないことを理由に自主的な学習に進まなかったり、成長意欲が低かったりするなど、さまざまな事情で人材が育たないといった問題に直面します。
人材が流出してしまう恐れがある
非正規雇用は離職率が高い傾向にあり、せっかく採用コストをかけて得た人材が流出してしまうリスクがあります。
正規の社員であれば、福利厚生が手厚かったり、労働基準法によって特別な事情がない限りは定年まで在籍できるよう定められていたりしますが、非正規雇用者はそうではありません。そのため、より良い条件の求人があれば、入社1年未満であっても簡単に転職してしまう事例があります。
人材コストを抑えるために非正規雇用者を雇ったにも関わらず、またコストをかけて新しい人材を確保しなければならなくなり、結果的に損失となってしまうことも考えられるのです。
なるべく長く働いてほしいと考えている場合は、非正規雇用での採用は慎重な検討が必要と言えるでしょう。
依頼できる仕事が限定されてしまう
正規雇用の社員と比べて、非正規雇用の社員には依頼できる仕事が限定されてしまいます。
現場の考え方によって実際の状況は異なるものの、非正規雇用の社員に責任の重い仕事を任せることは少なく、基本的に重要な役割は正規社員が担います。
そのうえ、非正規雇用の社員に対して人材教育も不足していることから、必然的に「できる仕事」も範囲が狭くなる傾向にあるのです。
限定的な仕事しか任せることができないため、配置する環境によっては人手不足の解消にならない場合もあります。
企業が非正規雇用によるデメリットを軽減させるには?
非正規雇用は、企業によってはデメリットとなってしまいます。しかし、社内の制度や待遇などの工夫次第では、企業における非正規雇用のデメリットを軽減させることは十分に可能です。
では、具体的に、どのような軽減策があるのでしょうか。
教育制度そのものを見直す
企業が非正規雇用によるデメリットを軽減させるにあたり、まず見直すべき部分であるのが「教育制度」です。
正規雇用の社員とは異なり、非正規雇用者に対する教育はおろそかになりがちといえます。もちろん、離職率の高さを鑑みると時間やコストをかけて教育していくことにメリットを感じられないといった意見もあるでしょう。
しかし、教育制度を見直し、正規雇用者と非正規雇用者との間の技術・知識の差が縮まることで、社内で任せられる仕事が広がります。また、モチベーションアップにもつながることが期待できるので、結果的には離職率が下がる可能性もあるでしょう。
一度社内の教育制度を見直してみて、改善すべき点があるようなら非正規雇用者にもメリットのある教育制度へアップデートしてみてはいかがでしょうか。
待遇を改善する
非正規雇用を採用しつつ、企業に対するデメリットを軽減したい場合には「非正規の従業員に対する雇用の改善」が重要です。
近年、働き方改革や女性の活躍推進などに伴い、正規と非正規の社員間の待遇の差は小さくなりつつあるものの、全体的に見るとまだまだ待遇に差が生じている状況です。
非正規雇用の採用におけるデメリットを解消したいのであれば、まずは「同一労働同一賃金」を掲げることをおすすめします。非正規雇用にありがちな「正規の社員と同等の働きをしているにも関わらず給料も待遇も差がある」といった不満は人材流出を招きます。
非正規雇用の社員に対し、満足度を向上させることは人材不足解消につながるので、現時点の待遇に問題がないかを確認し、必要に応じて改善を進めていきましょう。
新型コロナにより非正規雇用の問題点が浮き彫りに
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大は、非正規雇用の問題点を浮き彫りにする事態となりました。
コロナ禍の真っ只中となった2021年の2月時点では、非正規雇用者(パート・アルバイト)の実質的な失業者が、男女合わせて146万人にも及んでいることが明らかになったのです。
「手厚い保障がないこと」「人員整理で対象となりやすいこと」などさまざまな問題を抱えた雇用形態であることは、採用される労働者はもちろんのこと企業もきちんと認識をしておかなければなりません。
まとめ
本ページでは、企業が非正規雇用を採用する理由や、企業が注意すべき非正規雇用の採用デメリット、デメリットの改善策などについて解説しました。
人材コストを抑制しやすい点や、社内の事情で労働者を減らせることなど、企業における非正規雇用のメリットはよく話題に挙がります。しかし、一方でデメリットも存在するため、安易に人手不足の解消に非正規雇用を選ぶことは好ましくありません。
現在、新しい人材確保の方法として、非正規雇用を視野に入れている担当者の方は、今回ご紹介した内容を参考にしながら人手不足の解消を目指していきましょう。