ポートフォリオとは?
ポートフォリオは、企業が事業戦略を達成するために、どういったスキルを持った人物が、どのタイミングで何人必要となるかを予測・分析する単語です。
人材開発や採用、評価、配置、モチベーションマネージメント、リタイアマネジメントなどの基礎情報として活用されます。
また、下記の雇用・労働形態もポートフォリオとして考えることが一般的です。
- 派遣社員
- 請負会社
- 個人事業主
企業がポートフォリオを作成することで、社内の人的資本を可視化したり、人材育成や採用、評価に役立てたりできます。
元々は「紙ばさみ」や「種類入れ」、「折りかばん」といった意味で使用されていました。
しかし、後述する就活や金融・投資用語、教育用語としても使用されるようになり、ポートフォリオはさまざまな場面で活用されている言葉といえるでしょう。
【シーン別】ポートフォリオの意味
次に、シーンごとのポートフォリオの意味を解説します。
- 就活
- 金融・投資用語
- 教育用語
- IT業界
それぞれ解説していきます。
就活
就活におけるポートフォリオは、自分の能力や履歴を伝えるための作品集として使用されます。
使用する場面は、主に就職の面接やクライアントへの売り込みです。
就活時のポートフォリオとして注目するべきポイントには、下記の4つがあります。
- 積極性
- 情報整理力
- 情報伝達力
- 倫理的説明力
- ワークスピード
自分を相手に売り込む役割を担うポートフォリオですが、ほかの応募者の中に埋もれてしまっては意味がありません。
そのため、自分のアピールポイントが最も分かりやすく伝える表現を考えたり、面接時に相手の印象に残る構成・企画を立てる必要があるでしょう。
金融・投資用語
金融・投資用語におけるポートフォリオは、投資家が保有している預金や現金、株式、債権、不動産などの金融商品を示す際に使用されます。
投資家は自身の資産を複数の金融商品にリスクヘッジすることがあり、分散もしくは分散して組み合わさった資産をポートフォリオと呼びます。
また、金融・投資する際のポートフォリオの種類は、下記の3つです。
- ローリスク・ローリターン
- ミドルリスク・ミドルリターン
- ハイリスク・ハイリターン
実際にポートフォリオを作成する際は、投資先を分散させてリスクを回避できる組み合わせを考えましょう。
金融商品を分散させることで、損失が発生した際の被害を最小限に抑えられます。
ほかには、資産の性質や期間、通貨、地域などの偏りをなくせた場合、リスク回避とリターンを同時に得られるはずです。
教育用語
教育用語におけるポートフォリオは、日々の勉強や課外活動を通して生徒の能力を正確に評価するためのツールです。
生徒たちが学習過程で残した試験や活動記録の写真・動画などを、ファイルにまとめて記録します。
教育用語としてポートフォリオを活用する理由は、下記の通りです。
- 成果や学習方法をこまめに確認するため
- ポートフォリオ作成そのものが学びになるため
- プロセスや過程を評価するので、その人が持っている本来の能力が発揮できるため
また、指導者も自身の指導を改善する目的でポートフォリオを活用します。
活用する際に保存する成果物は、生徒が提出した作文やレポート、試験結果、ノート、ワークシートなどです。
ただ成果物を眺めるだけでなく、学習の目的に応じて成果を分類したり、関連を検討したりして分析・整理しましょう。
IT業界
IT業界におけるポートフォリオとは、WebサイトやWebデザインなどのクリエイティブ関連の作品集です。
特にクリエイターにとって、名刺代わりとなる存在であるといえるでしょう。
IT業界でポートフォリオの提出を求められる理由は、下記の3つです。
- 実績紹介の仕方で技術力が分かる
- 今までどういった作品を作成してきたのか分かる
- どのようなこだわりを持って、作品作りに臨んでいるのか分かる
そのため実績や作成した案件が多いほど、ポートフォリオは充実しています。
しかし、「携わった企業の機密事項や著作権に触れていないか」「公開して問題ないか」を事前に確認しましょう。
企業が人材ポートフォリオを作るメリット
ここまで、ポートフォリオの概要やシーンごとのポートフォリオの意味をお伝えしました。
続いて、企業が人材ポートフォリオを作るメリットを解説します。
- 最適な人材配置ができる
- 自社人材の能力が明確になる
- 人材の過不足を把握できる
- 従業員のキャリアパスを支援できる
それぞれ解説していきます。
最適な人材配置ができる
企業が人材ポートフォリオを作成するメリットは、最適な人材を配置できる点です。
一言で「企業が求める人材」といっても、組織が求める行動や役割は全て同じではありません。
人材ポートフォリオが人材配置に適している理由は、下記の通りです。
- 従業員一人ひとりの能力やスキル、示向性、強みを可視化できる
- 事業に方向性に適した人材をアサインできる
また、従業員も自身の経験や強みを活かして働けるので、生産性やモチベーションの向上が期待できるでしょう。
結果として人材育成につながるだけでなく、企業の士気も上がるので、離職率の低下や事業目標の達成に寄与するはずです。
こちらの記事では、離職率の定義や平均値、調べ方について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
自社人材の能力が明確になる
人材ポートフォリオは、自社人材の能力を明確にできます。
実際に人材ポートフォリオを作成する際は、ジョブローテーションやアセスメントを行いながら、従業員一人ひとりのスキルや適正などを明らかにしなければいけません。
つまり人材ポートフォリオを作ることで、自社に必要な人材の能力を明確にできるでしょう。
例えば、アセスメントを通して下記の気づきを得られる可能性があります。
- 従業員の考え方の偏りや特性
- これまで見えてこなかった従業員の能力
人材ポートフォリオの作成は、従業員への新しい発見の機会にもなるでしょう。
人材の過不足を把握できる
人材ポートフォリオを作成することで、人材の過不足を把握できるようになります。
そもそも人材を適正に配置するには、どのように組織が構成されているか把握しなければいけません。
把握する際に意識するポイントは、下記の通りです。
- どのようなタイプの人材が多い・不足しているか把握する
- 不足しているタイプの人材を育成・採用するか検討する
- 過剰なタイプの人材の再配置を検討する
ほかには有期雇用・無期雇用社員の割合や、それぞれの役割を明確にすることで、無駄な配置をなくして人件費を削減できます。
従業員のキャリアパスを支援できる
人材ポートフォリオを作成することで、従業員のキャリアパスを支援できます。
時代の変化に伴い、従業員一人ひとりの働き方や価値観は多様化しています。
具体的には、「専門性を身につけたい」「たくさんの経験を積みたい」「マネジメント力を身につけたい」人などさまざまです。
そのため人材ポートフォリオを通して、下記を実施できます。
- 従業員ごとの志向や適正の把握
- 従業員の希望を考慮したキャリアパスの提案
従業員のキャリアを予測できれば、事業戦略の立案・計画にも良い影響を与えるでしょう。
人材ポートフォリオの正しい設計手順
ここまで、企業が人材ポートフォリオを作るメリットをお伝えしました。
続いて、人材ポートフォリオの正しい設計手順を解説します。
- 人材をタイプごとに分類する
- 自社人材をタイプに当てはめる
- 人材配置が必要かどうかを判断する
- 人材を増員・減員する方法を考える
ひとつずつ解説していきます。
人材をタイプごとに分類する
まずは、人材をタイプごとに分類していきます。
その際は、どのように分類すれば有効に活用できる結果につながるかを意識しましょう。
- 業務性質で分類する
- 雇用形態で分類する
上記の分類方法を例に、解説していきます。
業務性質で分類する
最も一般的で汎用性が高いとされる分類は、「個人で行う仕事」「組織で行う仕事」「新しく創造する仕事」「既にあるものを運用する仕事」といった2軸・4象限の方法です。
例えば、個人で新しく創造する仕事を行う場合は、下記の4つに定義できます。
- 組織×運用=定型業務型(オペレーション)
- 組織×創造=経営幹部候補(マネジメント)
- 個人×運用=専門職(エキスパート)
- 個人×創造=経営参謀(オフィサー)
どういった人材が適しているかは事業内容によって異なるので、自社に必要な人材を明確に定義する必要があるでしょう。
雇用形態で分類する
分類する際は、人材を「総合職・専門職」「常時雇用・臨時雇用」といった雇用形態で分ける方法もあります。
実際に分類する際は、2軸・4象限もしくは表などの形にまとめましょう。
雇用形態や職種の分類方法は、企業によって「総合職(経営幹部候補)」「全国転勤が可能な総合職」「エリア限定の総合職」などさまざまです。
また雇用形態で分類する際は、例えば「5年ルール」で登用する場合「何名まで契約社員を雇用するか」、「契約社員が多くてもマネジメントできる正社員は足りているか」といった分析も行えます。
自社人材をタイプに当てはめる
人材を業務性質・雇用形態で分類したら、全従業員を対象にどのタイプに該当するか当てはめていきます。
とはいえ、例えば雇用形態を「正社員」だけに限定してしまうと従業員の活用は不十分です。
また評価者の主観が入らないように、客観的かつ信頼できるデータに基づいて分類されなければいけません。
実際に人の記憶や認知には限界があり、目立ちやすい特徴に引きずられて他の評価が歪んでしまう「ハロー効果」も働いてしまいます。
そのため従業員の能力や知識、適性検査の結果などのデータを準備しておきましょう。
こちらの記事では、要素別のおすすめ適性検査や比較・検討する際のポイント、注意点を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
人材配置が必要かどうかを判断する
タイプごとに自社人材を当てはめたら、本来の人数や構成比に対して人材配置が必要かどうかを判断します。
例えば、前述した「定型業務型(オペレーション)」より「経営幹部候補(マネジメント)」の人数が少ない場合、下記の状況が見えてくるかもしれません。
- 「経営幹部候補(マネジメント)」の平均年齢が高く、10年〜20年後には人材候補が不足する恐れがある
- 「経営幹部候補(マネジメント)」には総合職が多く、各事業に精通した「専門職(エキスパート)」の人数が少ない
人材タイプの「本来の人数や構成比」に対する考え方は、企業によって異なります。
非常に難しい考え方ですが、人事ポリシーや人材要件定義とも呼ばれている人事において重要なポイントです。
人材を分類したうえで、「課題が分からない」「必要な人材を要件定義できない」などの問題が発生した場合は、今後の経営方針について経営陣も交えて話し合うべきでしょう。
人材を増員・減員する方法を考える
人材ポートフォリオの現状分析と目標設計によって、多い人材タイプと少ない人材タイプを明確にできたら、目標の人材ポートフォリオに近づける方法が考えられます。
成果を上げる人材を増やす・成果を上げない人材を減らすための方法は、下記の4つです。
- 採用:新卒採用、中途採用、アルバイト採用、派遣社員活用
- 退出・解雇:早期退職の推奨、役職定年制度
- 育成:研修、人事管理、目標管理
- 配置転換:部署異動、転勤、出向
人事はこれらの施策を活用して、タイプごとに人材を増員・減員する人材マネジメントを行います。
ちなみに「成果を上げない人材を減らす」と聞くと、過激な施策をイメージする方も少なくないかもしれません。
本記事では、「適材適所に配置されていない人材を減らす」といった意味で捉えましょう。
こちらの記事では、人材マネジメントに注目度が高まる背景や6つの切り口について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
増員・減員する方法
人材を適材適所に配置するために増員・減員する方法は、例として下記があります。
- 人材を新しく採用する
- 現場にヒアリングして、業務や採用を拡大・縮小する
- 専門スキルや業務経験が豊富な人材を即戦力として採用する
- 人材候補となる人材がいない場合、新卒・第二新卒などを採用する
- 年齢が高い人材に早期退職や役職定年を推奨して、若手人材のポストを確保する
自社の課題を明確にしたうえで、増員・減員する方法を選定しましょう。
人材ポートフォリオを活用するときの注意点
ここまで、人材ポートフォリオの正しい設計手順をお伝えしました。
続いて、人材ポートフォリオを活用するときの注意点を解説します。
- 現場の声・考えを重視する
- 組織・事業変化に対応できるようにする
- 順位付け・優遇へ転用しない
- 作成にはコストがかかる
ひとつずつ解説していきます。
現場の声・考えを重視する
人材ポートフォリオを活用する際は、現場の声・考えを重視しましょう。
どんなにデータに基づいて人材配置を行っても、従業員の要望や意向が反映されていない場合、下記のリスクが考えられます。
- 生産性の低下
- モチベーションの低下
また、人材ポートフォリオの主役は従業員の一人ひとりなので、できるだけ要望や意向を取り入れましょう。
従業員の能力を最大限に発揮するには、多角的な視点でポートフォリオを作成しながら定期的なヒアリングを行います。
現場を重視した人材ポートフォリオは、働き方やキャリアプランの実現につながるので、長期的に人材を育成できるでしょう。
組織・事業変化に対応できるようにする
人材ポートフォリオは、組織・事業変化に対応できるようにしなければいけません。
一度作成して終わりではなく、景気や市場の変化に合わせて事業戦略も変化します。
そのため、人材ポートフォリオも迅速な対応が求められるでしょう。
順位付け・優遇へ転用しない
人材ポートフォリオを活用する際は、従業員を順位付け・優遇へ転用してはいけません。
組織にはさまざまなタイプの人材がいるので、それぞれの能力を最大限に活かすことは大切です。
しかし、人材ポートフォリオは従業員の優劣を測る材料ではないので注意しましょう。
本来は、モチベーションを向上させるためのものなので、従業員を順位付けしたり、特定の人物の優遇につながらない配慮が必要です。
作成にはコストがかかる
人材ポートフォリオの作成には、時間や予算といったコストがかかります。
人事担当者をはじめとした、さまざま人物を巻き込むプロジェクトになるため負荷は大きいです。
実際にかかるコストとして、下記があります。
- 社員の理解を得ること
- 採用・制度作りの見直し
これらのコストがかかる点も理解したうえで、人材ポートフォリオの検証を何度も重ねながら長い期間で作成・運用しましょう。
まとめ
今回は、ポートフォリオの概要や作成するメリット、企業が作るべき人材ポートフォリオについて解説しました。
ポートフォリオは、企業が事業戦略を達成するために、どういったスキルを持った人物が、どのタイミングで何人必要となるかを予測・分析する単語です。
就活や金融・投資用語、教育用語、IT業界によって、それぞれ意味が異なります。
また、企業が人材ポートフォリオを作成するメリットは、下記の通りです。
- 最適な人材配置ができる
- 自社人材の能力が明確になる
- 人材の過不足を把握できる
- 従業員のキャリアパスを支援できる
本記事でお伝えした正しい設計手順や活用するときの注意点も参考にして、自社に適した人材ポートフォリオを設計しましょう。
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