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裁量労働制とは?
裁量労働制は実際の勤務時間とは関係なく、企業と社員間の労使協定で定めた時間を労働時間とみなし、その時間分の賃金が支払われる制度です。
みなし労働時間制のひとつで、労働時間は社員の裁量で決定する労働契約を指します。
例えば、以下の場合に支払われる賃金を計算してみましょう。
- みなし労働時間:8時間
- 実際の労働時間:9時間
- 支払われる賃金:8時間分
つまり1時間の残業時間分は、支払われない仕組みです。
反対に、実際の労働時間が7時間の場合でも、8時間分の賃金が支払われます。
そのため時間外労働といった概念がないので、労働者保護の観点から適用される職種や労働時間に関する取り決めが必要といえるでしょう。
次に、下記の3点について解説します。
- みなし残業制度と裁量労働制の違い
- フレックスタイム制度と裁量労働制の違い
- 事業場外みなし労働時間制と裁量労働制の違い
- 裁量労働制の種類と職種
ひとつずつ解説していきます。
みなし残業制度と裁量労働制の違い
みなし残業制度と裁量労働制では、働いたとみなされる労働時間の範囲が異なります。
それぞれの違いは、下記の通りです。
- みなし残業制度:所定の労働時間部分が残業代支払いの対象
- みなし残業制度:所定の労働時間を超えた残業時間部分が残業代支払いの対象
一方で2つの制度は、実際に働いていない時間があった場合でも、働いたとみなされる点が共通しています。
みなし残業制度の特徴は、下記の通りです。
- 社員の業務効率が上がる
- 人件費の見通しが立ちやすくなる
- 立ちやすくなる残業代を計算する手間が省ける
つまりみなし残業制度は、残業時間にかかわらず契約にある残業時間を働いたとみなす制度であると覚えておきましょう。
ちなみに、こちらの記事ではみなし残業の計算方法や導入する際のポイント、違法になるケースを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
フレックスタイム制度と裁量労働制の違い
フレックスタイム制度と裁量労働制は、所定の労働時間を働く必要があるかどうかといった点が異なります。
そもそもフレックスタイム制度とは、仕事を開始する時間と終了する時間を自由に設定できる制度です。
1日単位で残業時間を算出することはできませんが、一定期間内で労働するべき時間「総労働時間」は定められています。
総労働時間を実際の勤務時間が超えた場合は、超過時間分の残業代が発生します。
また、フレックスタイム制度が裁量労働制と違うポイントは、下記の働き方が存在している点でしょう。
- コアタイム:1日の中で出勤しなければならない時間帯がある
- フレキシブルタイム:社員自身が労働の裁量を決められる時間帯
フレックスタイム制度と裁量労働制は、社員側で就業時刻をある程度決められますが、限定的な自由といった点が異なる点です。
こちらの記事では、フレックスタイム制を導入するメリットやデメリット、導入時の注意点を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
事業場外みなし労働時間制と裁量労働制の違い
事業場外みなし労働時間制と裁量労働制の違いは、下記の通りです。
- 事業主の指揮監督が及ばない業務に対して残業代が支払われるかどうか
- 休日労働や深夜労働、時間外労働に対して割増賃金が支払われるかどうか
そもそも事業場外みなし労働時間制とは、会社以外の指揮監督がいない労働時間に対して、賃金の算定が困難な場合の制度を指します。
指揮官がいない労働時間の例として、下記の2つがあげられるでしょう。
- 直行直帰の営業
- 在宅勤務やサテライトオフィスでの時間外労働
会社以外の労働時間の算定が困難な場合は、なるべく労使協定の締結が望まれています。
また事業場外みなし労働時間制は、対象範囲が特定の職種に限定されていないので、在宅勤務やテレワークを導入した場合でも、全社員へ適用が可能です。
裁量労働制の種類と職種
裁量労働制には、企画業務型と専門業務型の2種類があります。
それぞれの違いは、下記の通りです。
- 企画業務型:事業運営の企画や立案、調査、分析の知識・経験を持つ社員を就労させた際に適用される制度
- 専門業務型:専門性の高い職種に労使協定を締結した上で適用される制度
また、専門型業務として扱われる職種は、下記の19種類が該当します。
- 弁護士
- 税理士
- 弁理士
- 建築士
- 大学教授
- デザイナー
- 公認会計士
- 不動産鑑定士
- コピーライター
- 証券アナリスト
- 金融商品の開発
- 中小企業診断士
- 記事の取材・編集
- システムコンサルタント
- 新商品・技術の研究開発
- インテリアコーディネーター
- ゲーム用ソフトウェアを捜索
- 情報処理システムの設計・分析
- 放送番組や映画のプロデューサー・ディレクター
以上の職種は、労使協定によってあらかじめ決められた時間で働いた方が効率よく能力を発揮できるとされています。
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裁量労働制がやばいといわれる理由
ここまで、裁量労働制の概要やそれぞれの制度との違いなどをお伝えしました。
続いて、裁量労働制がやばいと言われる理由を解説します。
- 理由1:ブラック企業を助長してしまう
- 理由2:企業が悪用しているケースがある
- 理由3:残業代が支払われないケースがある
ひとつずつ解説していきます。
理由1:ブラック企業を助長してしまう
裁量労働制がやばいと言われる理由のひとつとして、ブラック企業を助長してしまう可能性がある点です。
本来であれば裁量労働制は、社員が時間の制約を受けずに仕事を効率的に行うための制度です。
ですが実態は、企業が残業代を抑制するために活用されている事例が見受けられます。
企業側にとって、裁量労働制を導入するメリットは下記の2つです。
- 人件費を削減できる
- 社員の生産性が向上する
しかし長時間労働を強いられる職種の場合、裁量労働手当を超えて働いている社員は一定数いるでしょう。
そういった社員が抱えている問題は、下記の通りです。
- 出勤・退勤時間が上司に決められている
- 自分の裁量によって業務を効率化できても、長時間残業から抜け出せない
近年の「裁量労働制=ブラック企業」といわれている理由からも、裁量労働制への心象は悪くなっています。
これを受けて厚生労働省が2019年1月に、裁量労働制を悪用している企業に対して「企業名公表」のペナルティーを課すとともに、同様の違反事例を抱えている企業に間接的に運用の適正化を求める措置を設けました。
次に、裁量労働制を悪用していた事例を紹介していきます。
出典:裁量労働制の不適正な運用が認められた企業への指導及び公表について
事例1:野村不動産株式会社
2017年12月に、野村不動産株式会社では社員約600名に裁量労働制が適用されていました。
その中の50代の男性社員が、長時間労働が原因で自殺して、労災認定されたと報道されています。
報道を受けて企業側は、「中堅社員であれば、裁量を持たせた上で企画提案が他の事業を推進できると判断した」と説明しています。
裁量労働制の適用が認められない社員に対しても、制度が適用されていました。
野村不動産株式会社の一件は、ブラック企業を助長させる事例といえるでしょう。
事例2:日本メドトロニック
裁量労働制を導入していたアメリカ大手医療機器メーカーである「メドトロニック」の日本法人が、時間外労働に対する残業代が未払いであると、社員の申告によって発覚しました。
申告を受けた労働基準監督署は、2016年と2017年に2度の是正勧告を日本メドトロニックに行っています。
その後速やかに人事制度が変更されて、社員に対して残業代は支払われたそうです。
事業主の下で仕事をしていながら、残業代や割増賃金などが支払われていない場合は違法になります。
実際に、労働基準監督署への勧告や訴訟も増えている点から、ブラック企業を助長する事例といえるでしょう。
理由2:企業が悪用しているケースがある
企業によって悪用されているケースがある点が、裁量労働制はやばいといわれる理由です。
前述したように、株式会社野村不動産や日本メドトロニックなど、裁量労働制が悪用されている事例が見受けられます。
そのため、裁量労働制を導入している企業は、下記の点を確認しておきましょう。
- 残業代が支払われているか
- 割増賃金が支払われているか
- 長時間労働になっていないか
- 他の業種にも適用されていないか
仮に適切な運用がされていなかった場合の対処法として、みなし労働時間の見直しが必要です。
裁量労働制を導入すると、設定されているみなし労働時間と実際の労働時間がかけ離れている場合があります。
問題を解決するには、労使協定にある苦情処理措置手続きに従って、労働組合もしくは社員の代表者に相談する必要があるでしょう。
理由3:残業代が支払われないケースがある
裁量労働制がやばいとされている理由は、残業代が支払われないケースがある点です。
裁量労働制であっても、下記の場合に賃金が支払われるようになっています。
- 休日労働や深夜労働をした場合
- みなし労働時間が8時間を超えた場合
法定休日に出勤した場合は、労働時間に応じて割増賃金が支払われます。
ただし、会社規定による法定外休日は法定休日とみなされるので、労使協定によってはみなし労働時間に扱われてしまう可能性がある点を覚えておきましょう。
さらに深夜労働に関しては、12時間分の割増賃金が支払われます。
上記であげた賃金が支払われるケースを確認して、企業と社員間でトラブルが発生しないように注意しましょう。
ちなみに、こちらの記事では法定休日や法定休日労働、36協定について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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裁量労働制が違法となるケース
ここまで、裁量労働制がやばいといわれる理由をお伝えしました。
続いて、裁量労働制が違法となるケースを紹介します。
- ケース1:裁量労働制の要件を満たしていない
- ケース2:裁量がない
- ケース3:実態とかけ離れている
ひとつずつ紹介していきます。
ケース1:裁量労働制の要件を満たしていない
裁量労働制の要件を満たしていない場合は、違法とみなされます。
要件を満たすための条件は、下記の4つです。
- 労使協定を締結している
- 就業規則に定められている
- 労使委員会を設置している
- 裁量労働制の対象にできる業種である
また企画業務型の裁量労働制を導入する際は、下記の要件を満たしていなければいけません。
- 本社・本店のある事業場、もしくは事業の運営に大きな影響及ぼす事業・営業計画の決定を行っている支社・支店のある事業場
- 企画や立案、調査、分析の業務であること
- 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること
- 相互に関連し合う作業方法については、広範な裁量が社員に認められていること
- 業務を遂行するための方法を、大幅に社員に委ねる必要があると判断される性質であること
上記の条件や要件を満たしていなければ、違法といえるでしょう。
ケース2:裁量がない
裁量がない裁量労働制も、違法とみなされます。
裁量労働制は本来であれば、労働時間規制の縛りがなく、出勤・退勤時間も自由であり、頻繁に上司から指示を受ける必要もありません。
ところが、企業によっては違法な裁量労働制を社員に強いている事例もあります。
裁量がない裁量労働制の例は、下記の通りです。
- 始業・就業時刻が厳しく決められている
- 休日労働や深夜労働をしなければ仕事が終わらない
- タイムカードがなくなり、自分の労働時間がわからない
- 残業代がなくなり基本給は上がったが、給料の総額が減った
裁量労働制を導入しているにもかかわらず、裁量がない働き方になっている場合は違法といえるでしょう。
ケース3:実態とかけ離れている
みなし労働時間と実労働時間は違った合計時間になりますが、実態とあまりにもかけ離れている場合の裁量労働制は違法になります。
違法とみなされた裁量労働制は、無効になるでしょう。
みなし労働時間の定め方は、下記の3つです。
- 労使協定みなし:労使協定であらかじめ働いたとみなす時間を裁量労働制と定める
- 通常労働時間みなし:特定の業務に必要な時間だけ働いたものを裁量労働制とみなす
- 所定労働時間みなし:会社が定める所定の労働時間だけ働いたものを裁量労働制とみなす
上記の見出し時間に比べて日労働時間が長すぎたり、長時間労働が常態化したりすると違法といえます。
まとめ
今回は、裁量労働制がやばいと言われている理由や違法となるケースを解説しました。
裁量労働制は実際の勤務時間とは関係なく、企業と社員間の労使協定で定めた時間を労働時間とみなし、その時間分の賃金が支払われる制度です。
下記にあげている3点の理由から、裁量労働制がやばいといわれています。
- ブラック企業を助長してしまう
- 企業が悪用しているケースがある
- 残業代が支払われないケースがある
裁量労働制の要件を満たしていなかったり、実態とかけ離れたりする場合は違法となるので注意しましょう。
また、裁量労働制と残業代については、リバティ・ベル法律事務所が運営する以下のサイトの記事でも説明されていますので読んでみてください。
参考:裁量労働制は残業代が出ない?残業代ゼロが違法な3つの例と計算方法|リーガレット
本記事でお伝えした裁量労働制を悪用していた事例を参考にして、慎重に導入を検討してください。
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