春闘とは?労使交渉の概要と目的
春闘とはひとことでいうなら、毎年春に行われる労使交渉です。まずは春闘の意味や意義、歴史についての基本情報を見ていきましょう。
春闘の読み方や意味などの基礎知識
春闘は「しゅんとう」と読みます。意味としては労使双方が年度ごとに行う賃金・労働条件に関する交渉のことです。
春闘は日本の労働市場において、重要なイベントの1つとされています。そのなかで企業側と労働組合側がそれぞれの要求を出し合い、交渉を重ね、結果的に賃金や福利厚生の改善を目指します。
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春闘の「ベア」とは?
春闘の用語で頻繁に出てくる「ベア」とは「ベースアップ」の略語であり、基本給を引き上げることを意味します。ベアは、年齢や勤続年数に関係なく、全社員の給与水準を一斉に引き上げるものであり、定期昇給とは別物です。
基本給の水準を上げることで、全社員の給与アップを実現するため、生活水準の向上につながります。春闘の際には、ベアの実施が注目されるなか、労使交渉が行われます。
また、ベアは企業の業績や景気動向、社会情勢などからも影響を受けざるをえません。そしてベアがどうなるかは、労使交渉の行方やその結果に大きな影響を与えることがあります。
春闘の意義と成り立ち
春闘が意義を持つ理由としては、労働者の権利保護、賃金の適正化、生産性向上などが挙げられます。また、春闘は日本独自の制度であり、戦後の復興期から現在に至るまで、社会・経済状況の変化に合わせて改良が重ねられてきました。
春闘ができるまでの歴史を辿ると、戦後の労働運動の歴史と深く関わっています。
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春闘が生まれるまで
春闘が生まれる以前、労働組合が賃金や労働条件の改善を要求する際は、ストライキなどの直接行動を取ることが一般的でした。
しかし、ストライキによる生産の停止が、企業および経済に多大な被害をもたらすことから、労使双方はより建設的な労使協働関係を築くための努力を重ねるようになったのです。そして今日の春闘という、労使交渉の定番フォーマットが始まったという経緯があります。
春闘が目指すものとは
春闘の目的は、企業の経営状況や生産性を考慮しつつ、労働者の賃金や労働条件の改善を目指すことです。春闘で合意された賃上げは、他の企業や業界にも波及し、全体的な賃金水準の向上につながります。
また、企業側と労働組合側が円満な合意を形成することで、労使協働関係の改善にもつながるでしょう。
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春闘が抱える課題
春闘は労使が互いの要求や意見を交換しながら進められますが、その過程で抱える課題もあります。その代表的なものを以下に挙げておきましょう。
経済状況の影響
経済状況の悪化や不確実性が高まると、企業側は賃上げなどの要求に慎重になる傾向があります。
国際競争力の確保
グローバル化が進む中で、労働コストを抑えることが重要視されるため、賃上げなどが企業の国際競争力に悪影響を与える可能性もあります。
労働力不足の解消
人手不足が深刻化している中、企業は賃上げや待遇改善によって人材を確保する必要があります。しかしその一方で経営改善のために、人件費を抑える必要があるというジレンマに直面しているのが実情です。
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春闘の具体的な交渉内容一覧
春闘の具体的な交渉内容については、企業ごとに異なります。ただし、一般的には以下のような要求が提示されることが多いです。
賃上げ
最も基本的な要求であり、経済状況や企業の業績に応じて、一定程度の賃上げが行われます。
待遇改善
賞与の改善や福利厚生の充実など、労働者の待遇改善に関する要求が出されることもあります。
労働時間の短縮
労働時間の短縮や、労働生産性の向上による労働時間の削減が要求されることもあります。
雇用の安定
派遣社員の正社員化や、雇用の安定化に関する要求が出されることもあります。
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「春闘は意味ない」と言われる理由
春闘での賃上げについて、日本では税金や社会保険料の負担が大きな理由で、意味がないという批判があります。「扶養に入りながら働く時間の上限が130万円であるため、給料が上がっても実質的な収入が変わらない」と言われることがあるわけです。
具体的にいえば、所得税が発生するのは103万円を超えた場合なので、増えた分の収入が税金や社会保障負担分で消えてしまうことがあるということです。とはいえ、働く人たちの収入が増えることで経済が活性化し、社会全体の利益につながる効果もあります。
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集中回答日を経た2023年の春闘の動向
2023年の春闘の動向について、特に注目される自動車業界および電機連合の交渉について、集中回答日を経て、わかっている範囲の状況を解説します。
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「セクショナリズム」については、以下の特集記事『セクショナリズムとは?その特徴と対策をわかりやすく解説!』で取り上げて詳しく解説しています。そちらの記事もぜひ、参考にご一読ください。
自動車業界の2023年春闘における交渉
自動車業界の各企業が2023年春闘において労使交渉を行い、賃金アップや福利厚生の改善などの要求を交渉していました。こうした交渉の結果、多くの自動車メーカーでは賃上げを含むボーナスなどの支給額が、過去最高の水準となったことが報じられています。
その中でも、トヨタ自動車は労働組合が示した15パターンの賃上げ要求に満額回答し、社員の育成に関する新たな人事制度も導入することを発表しました。一方、労働組合側も、経営側の回答に対して理解を示しているコメントを出しています。
そのほか ホンダ、日産自動車、三菱自動車工業、SUBARU、スズキ、マツダ、ダイハツ工業などでも、ベアを含めた賃上げやボーナスの支給額が過去最高になったと報じられています。
電機連合の2023年春闘における交渉
「電機連合」は電機・電子・情報関連産業が結集した、組合員60万人の産業別労働組合であり、半世紀の歴史を持っています。
2023年の春闘で電気連合の労使交渉は2023年3月13日、従業員の基本給を底上げするベア(ベースアップ)を「月5000円以上」とする方向で決着する運びとなりました。
電機連合が同日の中央闘争委員会で、経営側に求める最低回答基準を「5000円以上」とする方針を決め、経営側はベア実施には10年連続で応じる方針を示した結果です。
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「ジョブローテーション」については、以下の特集記事『ジョブローテーションとは?その概要とメリット&デメリットを日本一わかりやすく解説!』で取り上げて詳しく解説しています。そちらの記事もぜひ、参考にご一読ください。
2023年春闘の結果を俯瞰すると?
「2023春季生活闘争 第4回回答集計結果」によると、2023年の平均賃上げ率は3.69%と、30年ぶりに高い水準に達しました。一方、厚生労働省の春闘賃上げ率は、1994年以来の3%台になる見込みで、前年からの改善幅は1%以上に上り、1980年以降では最大となる可能性があります。
これにより、2023年度入り後には、所定内給与を中心に賃金上昇率が明確に高まる見通しです。所定内給与は賃金総額の約4分の3を占めており、ベースアップと同じ2%台の伸びが予想されています。
また、2023年度後半には消費者物価上昇率の鈍化が見込まれるため、実質賃金上昇率がプラスに転じる可能性があります。ただし、フォーカスすべきは賃上げの持続性です。企業収益は全体として堅調ではあっても、規模や業種によってばらつきがあります。
日銀短観によると、2022年度の赤字社数の割合は約15%程度に上り、高い水準を維持しています。2023年春闘では中小企業でも大幅な賃上げが実施されましたが、大企業に比べて収益環境が厳しいため、持続的な賃上げになるかどうかは不透明です。
なお、春闘による賃上げや待遇改善は、現代の働き方にとって大切な「ワークライフバランス」や「ウェルビーイング」の実現にもつながります。
この「ワークライフバランス」については以下の特集記事『「ワークライフバランス」の使い方はもう間違わない!例文付き解説で完全マスター』で取り上げて詳しく解説しています。そちらの記事もぜひ、参考にご一読ください。
また、「ウェルビーイングの実現」については、以下の特集記事『ウェルビーイングとは?社会・福祉・健康・経営等の視点からみた重要性』で詳しく解説しています。ぜひ、そちらも参考にご一読ください。
まとめ
春闘は日本の労使交渉の一つであり、企業と労働組合が基本給(ベース)の水準を引き上げることを目指すものです。歴史や成り立ち、目的や抱える課題、そして具体的な交渉内容など、さまざまな要素があります。
2023年の春闘では、自動車業界や電機連合などの注目された交渉が行われ、結果的にベアを含めた賃上げが実現する見込みです。今後も、春闘を通じて企業と労働者が抱える課題を解決し、社会全体の発展に貢献することが期待されています。
経営者や経営陣、決裁者のみなさんにはここでご紹介した情報を、従業員の賃金の見直しや交渉を行う際の参考にしていただければ幸いです。
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※2023年以降のマーケティング戦略構築に参考になる、マーケティングトレンドについて、以下の特集記事『マーケティングトレンドを徹底解剖!2022年までの考察と2023年の展望』で総合的かつ詳細に解説しています。ぜひとも、参考にご一読ください。
※マーケティングを実践するにあたって、消費者の購買行動を可視化するマーケティングモデルというものがあります。マーケティングモデルとは何かについて、以下の記事『マーケティングモデルとは?認知から購買の消費者行動を分析した仮説』でわかりやすく解説しています。そちらも、参考にご一読ください。
※マーケティング活動は幅広い領域にまたがるため、全体を統括するスキル「マーケティング・マネジメント」が求められます。
「マーケティングマネジメント」について、そのプロセスと業界別成功例を以下の特集記事『マーケティングマネジメントとは?プロセスと業界別成功例を徹底解説』で詳細に解説しています。そちら、ぜひ参考にご覧ください。