マーケティングにおいて「フェーズ」という言葉がよく使われます。
フェーズとは「段階」を意味し、顧客の関心度の段階を意味する場合や、事業の成長度の段階を意味する場合があります。
本記事では、マーケティングにおける「フェーズ」の意味を解説したうえで、フェーズ別にどのような施策が有効なのかを、おすすめのサービスやツールをまじえて紹介します。マーケティングに関わる方は、ぜひご参考ください。
マーケティングにおけるフェーズとは?
マーケティングにおいて「フェーズ」と言うと、商品・サービスについてリード(見込み顧客)の認知から購買までのプロセスにおける、それぞれの段階を指すことが一般的です。
リードの関心度によってフェーズは細分化され、フェーズによってリードが求めている情報が異なります。そのため、それぞれのフェーズに合ったアプローチが必要です。
代表的なマーケティングフェーズモデル
リードのフェーズは商材やビジネスモデルによってもさまざまですが、代表的なモデルとして以下が挙げられます。
AIDMA
「AIDMA(アイドマ)」は、非常に著名なフェーズモデルとして認知されています。顧客の購買行動プロセスを、以下の各フェーズに分けています。
- Attention:認知
- Interest:興味・関心
- Desire:欲求
- Memory:記憶
- Action:購買行動
AIDMAに沿うと、以下の流れで購買行動が進みます。
- テレビCMなどで商品・サービスを知る
- その商品・サービスに興味を抱く
- その商品・サービスを欲しいと思う
- いつまでもその商品・サービスのことを忘れられない
- やはり欲しいから購入する
AIDMAが提唱されたのは1920年代と言われており、インターネットが発達して情報収集や購買行動が多様化した現代では、通用しにくくなっているとも言われています。
ただし、いま登場しているさまざまなフェーズモデルの基礎ともなったモデルなので、覚えておきましょう。
AISAS
「AISAS(アイサス)」は、AIDMAにインターネットの要素を加えたフェーズモデルとして登場しました。
AISASの場合、顧客の購買行動は以下のように進みます。
- Attention:認知
- Interest:興味・関心
- Search:検索
- Action:購買行動
- Share:共有
「Search」と「Share」という要素が加わったことで、顧客の購買行動は具体的に以下のようになります。
- テレビCMなどで商品・サービスを知る
- その商品・サービスに興味を抱く
- 検索エンジンやSNSなどで、商品・サービスについて調べる
- 購入する
- 感想や評価を、SNSやブログ、口コミサイトなどで共有する
「購入して終わり」ではなく、評価を発信してもらうことで、さらに新たなリード獲得へとつなげることができます。
AISCEAS
「AISCEAS(アイシーズ/アイセアス)」は、AISASと同様にインターネット時代の購買行動をモデル化したものですが、よりプロセスが複雑化している点が特徴です。
リードタイムが長くなりがちなBtoBビジネスや高額商材などが当てはまりやすいと言えます。
AISCEASは、以下の頭文字を取っています。
- Attention:認知
- Interest:興味・関心
- Search:検索
- Comparison:比較
- Examination:検討
- Action:購買行動
- Share:共有
具体的な購買行動に合わせて考えると、以下の流れになります。
- テレビCMなどで商品・サービスを知る
- その商品・サービスに興味を抱く
- 検索エンジンやSNSなどで、商品・サービスについて調べる
- 他社商品・サービスと比較する
- 営業担当者から話を聞いたり、無料トライアルを試したりして検討する
- 購入する
- 感想や評価を、SNSやブログ、口コミサイトなどで共有する
市場にモノやサービスがあふれている現代では、競合品や類似品、代替品など数多くの選択肢があります。その中から、より納得できるものを見つけたいという顧客の意識が高まり、AISCEASのように比較・検討をする顧客が増加しました。
DECAX
情報が豊富な今の時代、消費者は自身で必要な情報を取捨選択できるようになっています。消費者が能動的に情報を探すため、企業側は消費者が自社の情報を見つけやすいよう工夫しなければなりません。
そこで近年、オウンドメディアやSNSなどインバウンド型のマーケティングが主流となっています。
そんな時代に合わせて登場したのが、以下の頭文字から名付けられた「DECAX(デキャックス)」です。
- Discovery:発見
- Engage:関係構築
- Check:確認
- Action:購買行動
- eXperience:体験・共有
具体的な購買行動に落とし込むと、以下のようになります。
- 検索エンジンやSNSなどで情報を発見する
- オウンドメディア、SNS、動画、メルマガなどのコンテンツを通じて関係性を深める
- その商品・サービスの使い勝手や評判などを確認する
- 購入する
- 自分の体験をSNSや口コミサイトなどで共有する
コンテンツマーケティングなどのインバウンド型マーケティング向けのフェーズモデルと言えます。
BtoB向けフェーズ別マーケティング施策一覧
マーケティングで「フェーズ」と言うと、前章の通り、顧客の関心度に合わせた段階を指すことが一般的です。 ただし、BtoBビジネスの場合は、事業の成長段階に合わせたマーケティング施策も必要になります。
そこでここからは、事業規模のフェーズに合わせたマーケティング施策を紹介します。
新規事業立ち上げ期フェーズ
新規事業を立ち上げたフェーズでは、認知を拡大することと、新しいリードを獲得することが重要です。そのため、以下の施策が効果的でしょう。
サービスサイトの制作
まずは新規事業について紹介するサービスサイトが必要です。商品・サービスの特徴や機能、料金や導入事例などのページを作り、商品・サービスについて詳しく理解できるサイトを意識しましょう。
また、興味を持ってくれたユーザーがアクションを起こせるように、お問い合わせフォームやオンライン接客チャット、FAQページなどの設置も有効です。
外部メディアへの露出
新規事業を立ち上げたばかりの時期は、サービスサイトのドメインパワーも弱く集客力がありません。したがって、ドメインパワーの強い外部のメディアを活用するのも一つの手です。そのメディアのユーザーとの接点を持つことができ、認知拡大につながります。
たとえば、タイアップ記事を書いてもらったり、広告枠に出稿したりする方法があります。 露出を増やして認知拡大を目指しましょう。
Web広告の出稿
事業立ち上げ期は一気にリード数を増やしたいため、早く効果の出やすいWeb広告を出稿しましょう。
特に、検索エンジンの検索結果ページに表示される「リスティング広告」は、出稿するキーワードによっては低コストで運用できるのでおすすめです。
また、マーケティング予算を確保できる場合は、PV数の多い外部のWebサイトの広告枠に出稿することも効果的です。
CRMの導入
せっかく獲得できたリードを手放さないよう、リード情報の管理のためにCRMを導入しましょう。
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客に関する多様な情報を一元管理し、顧客との関係を構築するために役立つツールです。
事業を立ち上げたばかりの頃はリード数がそれほどいないので管理すべき情報も少ないですが、早いうちから情報管理の基盤を作ることは重要です。また、早期から情報を蓄積しておくことで、後々のマーケティング施策にも大いに活用できます。
事業成長期フェーズ
事業が拡大して成長していくフェーズに入ると、今までとは異なるアプローチが求められます。
オウンドメディア(SEO)の運営
事業が成長してきたら、サービスサイトとは別でオウンドメディアを始めましょう。
オウンドメディアとは、有益な情報を記事コンテンツとして継続的に発信する媒体を指します。自社と関わりの深いキーワードで記事コンテンツを制作し、主に検索エンジンからの流入を目的としています。
検索エンジンで自社の記事コンテンツを上位に表示させるための施策を「SEO(検索エンジン最適化)」と言い、上位にランキングされるほど多くの流入が見込めます。
事業が軌道に乗ってきたタイミングでオウンドメディアを始めることで、今までとは違う角度からのリード獲得が期待できるでしょう。
オウンドメディアは、サービスサイトやコーポレートサイト内に「ブログ」「記事」といったかたちで付け加える場合と、それとはまったく別のWebサイトとして構築する場合があります。自社で運用しやすいほうを選択しましょう。
セミナーへの登壇・イベントへの出展
外部企業が開催しているセミナーに登壇したり、イベントや展示会などに出展したりすることで、より多くのリード獲得につながります。
自社でセミナーやイベントを開催すると、手間もコストもかかります。しかし外部のセミナーやイベントを活用すると、効率よく認知を拡大できるでしょう。
ただし、イベントの出展の場合は費用がかかる場合がほとんどです。せっかくのチャンスを無駄にしないよう、名刺交換をした際には必ずネクストアクションにつなげましょう。
リードマグネットの設置
事業成長期は、サービスサイトやオウンドメディアにある程度の集客が期待できます。サイトにリードマグネットを設置しておくことで、関心度の高いリードの取りこぼしを防げます。
リードマグネットとは、リード情報を獲得するきっかけとなるコンテンツです。たとえば、eBookやホワイトペーパーなど、氏名や連絡先を入力しなければダウンロードできないコンテンツが挙げられます。
- ノウハウ集
- 事例集
- 料金表
- テンプレート集
- 調査レポート
このように、リードの興味をひくコンテンツを設置して情報を入手しましょう。
事業成熟期フェーズ
事業が成熟してきたフェーズでは、自社のブランドや商品・サービスの認知度も高くなっています。新規リード獲得だけでなく、顧客エンゲージメントを高めてファンを増やすフェーズと言えます。
そこで、マーケティング活動の範囲を広げたり、精度を高めたりする作業に注力する必要があります。
インバウンドマーケティングの拡充
顧客が能動的に自社についての情報収集ができるよう、さまざまなコンテンツを用意しておきましょう。具体的には、以下の施策が挙げられます。
- オウンドメディアでの記事コンテンツ
- SNS発信
- メルマガ配信
- 動画コンテンツ
- セミナー・ウェビナー
- eBook・ホワイトペーパー
このようなインバウンドマーケティングを拡充させ、顧客との信頼関係を構築しましょう。
広告の拡大
インバウンドマーケティングの有効性が高まっているとは言え、企業からの積極的な情報発信も継続する必要があります。
そこで、Web広告を拡大させてみましょう。リスティング広告やディスプレイ広告の他、SNS広告や動画広告などがあります。
また、予算を確保できる場合はWeb広告だけでなく、テレビCMや折り込みチラシ、電車の中吊りなど、オフラインの広告にも拡大するのも一案です。
インサイドセールスの導入
成熟期になるとマーケティングで獲得できるリード数が増えるため、セールスとの連携が難しくなります。
そこで、マーケティングとインサイドセールスの橋渡しとなる存在の「インサイドセールス」を導入するとよいでしょう。
インサイドセールスは営業手法の一種で、マーケティングで獲得したリードを育成し、見込み度が高くなったタイミングでフィールドセールスへ引き渡す役割です。
マーケティングで多くのリードを獲得しても、すべてのリードが受注に至るわけではありません。そのため、リードの購買意欲を高めて見込み度を向上させるインサイドセールスが必要となるのです。
MAツールの導入
自社で取り組むマーケティング施策が多岐にわたると、情報管理が難しくなったり、施策の運用に手間がかかったりすることもあります。また、各リードをどのチャネルで獲得し、どのような施策を経て購買意欲を高めたか、という情報も管理し、見込み度の高いリードを抽出しなければなりません。
そこで役立つのがMAツールです。
MAツールとはマーケティング活動を自動化・効率化するためのツールで、主に以下の機能が搭載されています。
- リード情報管理
- メール配信
- お問い合わせフォーム作成
- ランディングページ作成
- Webサイトアクセス解析
- データ分析
- リードスコアリング
このように、リードジェネレーション(リード獲得)やリードナーチャリング(リード育成)に活用でき、マーケティングだけでなくインサイドセールスにも向いているツールです。
この中で特に重要なのが「リードスコアリング」です。「メールを開封したら1点、リンクにアクセスしたら3点」というように、リードのアクションに合わせて点数を付け、合計点数が高いほど見込み度が高いと判断できる機能です。
この機能を活用することでリードの見込み度を可視化でき、膨大な量のリードの中から見込み度の高いリードのみを抽出できるのです。
まとめ
BtoBビジネスにおけるマーケティングでは、リードの関心度や事業の成長度などのフェーズにより、適したマーケティング施策が異なります。現状のフェーズを理解したうえで、必要な施策を展開できるよう意識しましょう。
また、マーケティング施策を手動で実行するとミスを招いたり時間がかかりすぎたりするため、最適なサービスやツールの活用もポイントとなります。本記事で紹介した方法を参考に、フェーズに合わせたマーケティング施策を取り入れましょう。
なお、当メディア「kyozon」では、他にもマーケティングに活用できるサービスやツールを多く掲載しています。資料ダウンロードも可能なので、ぜひご活用ください。
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