多面評価とは?
「多面評価」とは人事制度の一つであり「360度評価」とも呼ばれています。
通常の人事評価制度は、直属の上司によって評価される場合がほとんどですが「多面評価」は上司以外にも部下や同僚、他部署からなど複数のチャネルによって評価を行う方法です。
評価対象となる従業員に関わる複数人からの評価も取り入れることで、評価の制度を高められることから導入する企業も増えています。
しかし、多面評価を導入したが運用するにあたって悩みを抱える企業や人事担当者も少なくありません。
そこで、この記事では多面評価について詳しく解説するほか、正しい導入手順についても紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
また以下の記事「360度評価のよくある失敗事例は?導入が失敗する理由と対策を解説します!」では、多面評価(360度評価)の失敗事例や原因、対策方法について詳しく解説していますので、ぜひ併せて一読ください。
なぜ多面評価の導入が増えているのか
まずは、なぜ多面評価を導入する企業が増えているのかについて見ていきましょう。
理由としては以下の3つが挙げられますので、それぞれ説明していきます。
- 人事評価による処遇格差が拡大してるから
- 従業員の自立性を育成させる必要があるから
- 管理職をより慎重に選抜する必要があるから
まだ多面評価を導入していない企業にとって、上記の項目が現状の課題に当てはまる場合は、多面評価を導入や評価制度の見直しが必要となる可能性がありますので、ぜひ参考にしてください。
人事評価による処遇格差が拡大しているから
人事評価は、従業員の昇進や給与・ボーナスに大きく影響する要素です。
そのため、従業員は評価の結果で処遇に格差が生じることに対し不安や不満をもつ人が多いでしょう。
現代社会では、リモートワークの普及や直接コミュニケーションがなくてもできる業務がも増えるるあることから、上司が部下の能力を把握しにくく、適切な評価を行うことが難しいことも影響しているのでしょう。
また従来の人事評価において、直属の上司との関係がうまく構築できなかった場合「評価に影響するのではないか」とさらに評価結果に対し不満をもってしまう可能性もあります。
転職が比較的簡単に行える現代では、こうした不安・不満から離職へとつながってしまう可能性もあるため、多面評価を導入し公平な評価や人事評価による処遇格差を低減させる必要があります。
従業員の自立性を育成させる必要があるから
多面評価は、従業員の自立性の育成にも効果的であると言えます。
自己成長において自立性は重要であり、他人に指導してもらうばかりでは成長できません。
そのため、多方向のさまざまな視点からの評価や意見を取り入れることができる多面評価を行うことで、周囲からどのように見られているかが分かり、その後の成長に役立てることができます。
また、一人だけからの評価に対するよりも複数人からの評価では納得性の面でも異なる点でも、多面評価は人材育成において有効であると言えるでしょう。
管理職をより慎重に選抜する必要があるから
売上拡大や生産性向上などの企業の成長においても、管理職の選抜は重要と言えるでしょう。
管理職の存在は、部下の成長にも影響すると言われており、管理職の選抜を誤っててしまうと部下からの信頼が失われるだけでなく企業全体の成長の妨げにもなる可能性があります。
そこで、多面評価を導入することで全員が納得できる昇格制度の構築や管理職の選抜の際にも役立てることができます。
多面評価の評価項目
多面評価の評価項目にはどのようなものがあるのでしょうか。
多面評価の評価項目は以下の4つとなります。
- 課題発見項目
- 課題遂行項目
- 人材活用項目
- コミュニケーション項目
多面評価を成功させ効果を得るためにも評価項目への理解は必要不可欠となりますので、ぜひ参考にしてください。
課題発見項目
まずは「課題発見項目」について説明します。
- 現状把握力:自分のチーム・部署、さらに会社全体が置かれている状況の把握力
- 問題分析力:個人・チームが直面している問題や顧客が抱える問題を分析する力
- 企画力:新しいアイデアを生み出す力
- チャレンジ精神:達成が難しいとされる問題・課題においても前向きに取り組める力
課題遂行項目
次に「課題遂行項目」について説明します。
- 判断力:あらゆる課題・問題に対し的確に判断できる力
- 計画力:目標・目的達成のために効果的となる計画を立案する力
- 行動力:物事に対し率先して行動する力
- 責任感:問題解決だけではなく日々の業務などにも一生懸命に取り組みやり抜く力
人材活用項目
次に「人材活用項目」について説明します。
- 共感力:メンバー・顧客の立場に立って物事を考える、行動する力
- 人材育成力:フィードバックなど部下に対しての育成、能力開発を促す力
- 動機付け力:部下に対するモチベーションを高める・維持する力
- 包容力:メンバーや部下に対してサポートを行う力
コミュニケーション項目
最後に「コミュニケーション項目」について説明します。
- 傾聴力:周囲の話に親身に耳を傾ける力
- 意思疎通力:自分の思い・考えなど相手に分かりやすく伝える力
- 折衝力:意見が対立した場合でも相手と話し合い妥協点を見つける力
- 協調性:メンバーや他部署、顧客や社外の人と連携して取り組む力
多面評価のメリット・デメリット
多面評価の導入において、メリットやデメリットが気になる企業、人事担当の人も多いでしょう。
ここからはメリット・デメリットについてそれぞれ詳しく説明していきます。
メリット・デメリットを把握しておくことで、導入後に発生する課題解決にも役立てることができるため、しっかり理解しておくことが重要です。
多面評価のメリット
まずは、多面評価のメリットを見ていきましょう。
- 評価対象者が自分の強み・弱みに気づくことができる
- 評価自体に説得性が生まれる
- コミュニケーションが活発化される
評価対象者が自分の強み・弱みに気づくことができる
従来の直属の上司からのみの評価制度では、一方向からの評価となるため、評価対象者が自分の強みや弱みに気づきにくく見落としがちです。
しかし、多面評価の場合は直属の上司だけでなく部下や同僚、他部署など多方向から複数の人間によって評価されるため、評価対象者が自分の強みや弱みに気づくことができるでしょう。
評価自体に説得性が生まれる
評価制度を人材育成にも活用したいと考える企業や人事担当者の方も多いでしょう。
多面評価で複数の人から評価を受けることにより、評価自体に説得性が生まれ、評価対象者が結果を受け自らの課題に取り組む意欲が生まれたりモチベーションの向上にもつながるでしょう。
企業にとって従業員のモチベーションの向上や維持は、生産性の向上や売上向上においても重要です。
従業員のモチベーションについては以下の記事「モチベーションとは?モチベーションが下がる理由と上げる方法を徹底解説します!」にて詳しく解説していますので、ぜひ一読ください。
コミュニケーションが活発化される
多面評価の導入によって社内のコミュニケーションが活発化される効果が見られる可能性があります。
企業において上司や部下の関係だけでなくチーム間など、社内のコミュニケーション不足はなるべく解消したい課題であると言えるでしょう。
多面評価では、評価内容に対するフィードバックや課題の進捗状況など面談を行う機会が多くなるため、コミュニケーションを活発化させるツールとしても活用することができます。
多面評価のデメリット
それでは、多面評価のデメリットにはどのようなものがあるか、見ていきましょう。
- 評価者との関係性が崩れることがある
- 評価対象者に遠慮してしまうことがある
- 評価材料を悪用されることがある
評価者との関係性が崩れることがある
多面評価は上司だけでなく、部下や同僚、他部署など多方面からの評価を受けることになります。
そのため、部下や同僚から予想よりも低い評価を受けたり、批判的な内容があった場合、評価者との関係性が崩れることがあるケースがあります。
しかし、自己の成長において批判的なコメントや評価が自分の行動を見直すきっかけとなるなど、長期的にプラスの効果をもたらす場合もあるでしょう。
評価者との関係性が崩れることが懸念される場合は、匿名での評価や人事部があらかじめ評価者を決めておくなどといった対策を行うといいでしょう。
評価対象者に遠慮してしまうことがある
部下が上司の評価を行う場合もある多面評価では、評価者である部下が評価対象者となる上司に対して遠慮してしまう場合もあります。
また、同僚や部下に対しての評価を行う場合においても、仲の良さなどをつい考慮してしまい、適切な評価が行えない場合もあるでしょう。
その場合、多面評価を導入したが効果が現れず失敗となってしまう可能性もあるため、事前に評価制度の目的や重要性を従業員に周知するなど評価制度について理解してもらう取り組みが必要となります。
評価材料を悪用されることがある
上司と部下がお互いに評価し合うことから、お互いにどう評価するかの取引を行うなど評価材業が悪用されてしまう場合もあるでしょう。
そこで、前述した通り従業員への評価制度に対する周知や評価者を対象にした研修を行うことが重要です。
また、人事部や対象者となる従業員の忙しさなどから周知が困難となる場合には、評価システムの導入を検討してみるのもいいでしょう。
以下の記事「人事評価システム15選を徹底比較!導入メリットや選び方まで詳しく紹介」では、導入メリットや選び方だけでなく、評価システムの比較も行っていますので、ぜひ併せて参考にしてください。
多面評価の導入手順
ここからは、実際に多面評価の導入手順について説明していきます。
- 導入目的・範囲を明確化する
- 評価運用方法を検討する
- 評価項目を選定する
- 従業員へ周知する
- 多面評価を実施する
導入手順を理解しておくことで失敗となるリスクの低減にもつながります。
それぞれ詳しく説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
評価運用方法を検討する
多面評価を導入するにあたってまずは、評価運用方法を充分に検討することが必要です。
アンケートを利用するのか、オンライン集計を利用するのかなど、多面評価を導入する目的や評価者の人数にを加味しながら適切な方法を検討していきましょう。
多面評価を行う上で従業員の工数や負荷があまりにも増えてしまうと、評価制度に対して不満が発生し効果を得られなくなる可能性があるため、まずは評価運用方法をしっかり検討することが重要です。
評価項目を選定する
評価運用方法が決まったら、評価項目を選定していきましょう。
多面評価の評価項目を選定する際のポイントは以下です。
- 管理職と一般社員で評価項目を分ける
- 設問の数を多くしすぎない
- 5段階の回答項目で評価する
- 選択式・自由記述式のどちらの設問も設ける
また成果だけでなく、そこに至るまでのプロセスに対しても評価できる項目を選定することが重要です。
従業員へ周知する
多面評価の運用方法が決まったら、従業員へ周知します。
従業員への周知は、多面評価の運用を成功させる上でとでも重要な手順です。
そして、従業員へ周知する際は必ず、多面評価を行う目的を説明し運用の協力を仰ぎましょう。
実際に評価を行う従業員の目的が不透明なままだと、多面評価の効果を得られない可能性があり、失敗へと繋がってしまうでしょう。
さらに、評価に対して納得してもらうためにも、運用ルールや実施期間、評価対象や範囲についても丁寧に説明しておくと良いでしょう。
多面評価を実施する
従業員への周知が完了したら、いよいよ多面評価を実施してきましょう。
実施期間内に全ての従業員が回答を完了するように、一定のタイミングでリマインドをかけることも重要です。
全ての従業員の評価結果を集計後、個別・チームでの評価結果の開示やフィードバックの実施など、評価結果を活かしながら、課題を見つけていきましょう。
また、実施後に評価の対象となる従業員に対しアンケートも同時に実施することで、運用方法や評価項目の改善点を見つけることができるでしょう。
実施を繰り返す中で、制度を高め多面評価を効果的なものにしていきましょう。
まとめ
多面評価の導入により、自社が抱える課題解決に役立てるだけでなく、業務効率化や生産性の向上、さらに売上拡大にも効果的と言えるでしょう。
しかし、運用に失敗してしまうと従業員からの信頼を失うだけでなく、業績悪化などにも繋がってしまうため、項目の選定や従業員への周知は慎重に行っていくことが重要です。
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