仮想デスクトップとは?
仮想デスクトップとは、オペレーションシステムとアプリケーションを事前に構成してイメージ提供されるデスクトップ環境です。
仮想デスクトップは大きく2種類に分けられ、それぞれ下記の特徴があります。
- OS拡張機能:複数のデスクトップを作成して、作業内容に合わせて切り替えられる
- VDI(Virtual Desktop Infrastructure):サーバー上にデスクトップ環境を構築して遠隔操作する
どちらもデスクトップの操作端末を拡張する機能が備わっていますが、仕組みは異なります。
要するに仮想デスクトップは、人数分のデスクトップ画面をサーバーの中に用意して、モニターに環境を映して作業するための仕組みといえるでしょう。
次に、仮想デスクトップとリモートデスクトップ・シンクライアントとの違いを解説します。
リモートデスクトップとの違い
リモートデスクトップ(RDS)が仮想デスクトップと異なる点は、ひとつのサーバーを複数のユーザーで共有できる点です。
リモートデスクトップは「Remote Desktop Service」と略されており、社内のパソコンにアクセスして遠隔操作できます。
同じリソースをユーザー同士で共有するため、毎回同じ環境での業務は難しいです。
リモートデスクトップのメリットとして、下記があります。
- OSライセンスをユーザーごとに用意する必要がないので安価
- メモリとCPUのオーバーヘッドが少なく、ハードウェア1台で多くのユーザーに対応できる
人数分のOSライセンスを用意する必要はありませんが、個別の要件が発生した際に対応が困難になる点は注意しましょう。
シンクライアントとの違い
シンクライアントが仮想デスクトップと異なる点は、クライアント側の端末処理を最小限に抑えて、ほとんどの処理をサーバー側で行う点です。
シンクライアントには、「端末にデータが残らない」「テレワークなどの新しいワークスタイルを実現できる」などの特徴があります。
また、シンクライアントは下記の3つに分類され、それぞれの方式は下記の通りです。
- サーバーベース型:サーバーOS上で実行しているアプリケーション画面だけを転送する方式
- ブレードPC型:ブレードサーバーにデスクトップ環境を集約して、遠隔のパソコンに画面を転送する方式
- デスクトップ仮想化型:複数のデスクトップ環境をひとつのハードウェアで稼働させて、遠隔で画面転送する方式
ちなみに仮想デスクトップでは、デスクトップ仮想化型が主流の方式です。
仮想デスクトップのメリット・デメリット
ここまで、仮想デスクトップの概要をお伝えしました。
続いて、仮想デスクトップのメリット・デメリットを解説します。
- 仮想デスクトップのメリット
- 仮想デスクトップのデメリット
それぞれ解説していきます。
仮想デスクトップのメリット
まずは、仮想デスクトップのメリットを解説します。
- 運用コストの削減
- セキュリティが強固
- 利用場所に制限がない
- 利用者情報を一元管理できる
- BCP対策になる
ひとつずつ解説していきます。
運用コストの削減
仮想デスクトップを活用するメリットは、運用コストを削減できる点です。
仮にクライアント端末を1台ずつ運用する場合に、業務システムやOSのインストールだけでなく、セキュリティソフトのアップデートやダウンロード作業を個別で行わなければいけません。
企業規模や社員数が多いほど運用コストがかかり、システム部門の担当者への負担が大きくなるでしょう。
しかし仮想デスクトップであれば、下記の理由から作業負担を軽減できます。
- ソフトウェアやOSのインストール・アップデートをサーバー上で行える
- すでに社内にあるパソコンを仮想デスクトップ用の端末として使用できる
またクライアント端末に関しては、サーバー側から転送された画面が表示できるスペックがあれば問題ないので、高額でハイスペックのパソコンを購入する必要がありません。
セキュリティが強固
仮想デスクトップの特徴として、クライアント側の端末にデータがないためセキュリティの安全性が高い点があげられます。
従来のクライアント端末は、下記の外部端末にデータが保存されています。
- HDD
- SDD
- 外付けHDD
- フラッシュメモリ
そのため、これらの媒体を紛失もしくは盗まれてしまった場合に、社内の情報が漏れてしまうでしょう。
仮想デスクトップであれば、サーバー側で構築したデスクトップ環境の画面を転送しているだけなので、作成したすべてのデータはサーバー上で管理・保存されます。
つまりクライアント側の端末が紛失したり盗まれたりしても、第三者に情報が漏れる心配はありません。
もし端末が盗難にあった場合でも、紛失に気づいたタイミングでパスワードを変更するなどの対処も可能です。
利用場所に制限がない
仮想デスクトップはデータが保存された固有端末を持つ必要がなく、利用場所にも制限がありません。
OSがインストールされたサーバーに接続できる環境が整っていれば、カフェなどの外出先からでも自分のデスクトップ環境で仕事ができます。
仮想デスクトップの強みを活かせる仕事や働き方の例は、下記の2つです。
- テレワーク
- 営業などの外回りの仕事
オフィスだけでなく、自宅やサテライトオフィスなど利用場所を選んで業務できるでしょう。
近年は働き方改革や労働人口の減少の対策として、テレワークを導入する企業が増えています。
仮想デスクトップを活用することで、テレワークの導入が行いやすくなるかもしれません。
こちらの記事では、サテライトオフィスを利用するメリットや活用している企業事例、活用時の注意点を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
利用者情報を一元管理できる
仮想デスクトップは、利用者情報を一元管理できるメリットがあります。
システム管理者がセキュリティ対策ソフトのアップデートを忘れて放置した状態で運用を続けていると、ウイルスに感染するリスクがあるかもしれません。
しかし仮想デスクトップであれば、システム管理者がソフトの最新状態をチェックできるので、アップデートされず放置される状況を防げます。
また仮想デスクトップを導入することで、アップデート時に下記のメリットもあります。
- サーバー側からアップデート・インストールする端末を一括指定できる
- 数百台のクライアント端末に対しても、メンテナンス作業を一斉に実行できる
さらに、社員が閲覧もしくはダウンロードしたログ情報もサーバーに保存されるので、問題が発生した際に、保存したログから再発防止策を検討できるでしょう。
BCP対策になる
仮想デスクトップの導入は、BCP対策につながるメリットがあります。
BCP(Business Continuity Plan)対策とは、自然災害やテロ攻撃といった事業の継続が困難な事態に直面した際に、事業資産の損害を最小限にして、事業を復旧・継続するための計画や対策です。
日本は自然災害大国なので、下記のリスクが考えられます。
- 地震や台風、大雨などで業務が停止してしまう
- 災害でパソコンが損傷してしまい、新しくパソコンを用意してOS・アプリケーションをインストールする
しかし仮想デスクトップを導入していた場合、パソコンとインターネット環境が整っていれば、どこからでも業務継続が可能です。
また、一人ひとりのセットアップも不要なので、早期に業務を再開できるでしょう。
仮想デスクトップのデメリット
次に、仮想デスクトップのデメリットを解説します。
- ネットワーク環境が不可欠
- サーバーへの負荷が高くなる
- 導入コストがかかる
- 専門知識が必要になる
ひとつずつ解説していきます。
ネットワーク環境が不可欠
仮想デスクトップのデメリットとして、ネットワーク環境が不可欠な点があります。
デスクトップ環境を活用するには、サーバーに接続するためのネットワーク環境が不可欠です。
そのため、ネットワーク環境が災害などで停止したり不安定だったりした場合、業務の継続が困難になるでしょう。
ネットワークに接続しにくい際の対処法は、下記の通りです。
- 中継機を使用する
- ルーターの置き場所を変える
- Wi-Fiにつないでいるデバイスの数を減らす
可能であれば、有線LANへの接続も有効です。
天災などの事態に備えて、ネットワークに依存しない端末を数台ほど確保するといった対策を検討しておきましょう。
サーバーへの負荷が高くなる
仮想デスクトップを活用するデメリットは、サーバーへの負荷が高くなる点です。
企業規模や社員数によっては、ひとつのサーバーに数百台のOSをインストールして運用する場合もあります。
つまり、インストールすべきOSが増えると処理すべき量も増えてしまうわけです。
サーバーへの負荷が高くならないための対策方法として、下記があげられます。
- 今よりハイスペックなハードウェア環境を用意する
- 導入前にメモリやCPUなど、十分なスペックがあるか確認しておく
しかし、仮想デスクトップで高いスペックに引き上げるには、高額なコストがかかります。
そのため、サーバーへの負荷とコストのバランスを測りながら、導入を検討しましょう。
導入コストがかかる
仮想デスクトップの導入にあたっては、導入コストが発生します。
一般的なPCクライアントの場合、通常は1台あたり10万円前後が相場です。
しかし仮想デスクトップの場合は、1台あたり20〜30万円が相場とされています。
仮想デスクトップの環境にはハードウェアとソフトウェアで構築されており、それぞれ下記について費用が発生するので覚えておきましょう。
名称 | 費用が発生する項目 |
---|---|
ハードウェア |
|
ソフトウェア |
|
仮想デスクトップの運用には、社内データをサーバーに集約して保存されます。
そのため導入コストをかけて、処理能力が高いサーバーの構築が必要です。
専門知識が必要になる
仮想デスクトップを導入するにあたって、管理・設定するための専門知識が必要です。
具体的に必要な知識として、下記があります。
- サーバー構築
- 通信環境整備
- セキュリティ設定
- 業務用各種アプリケーション設定
- 仮想デスクトップイメージの作成・管理
そのため導入する際は、ハードウェアとソフトウェア、ネットワークに関して専門知識を持った技術者が不可欠です。
もし自社のこういった技術者がいない場合は、外注への依頼を検討しましょう。
仮想デスクトップを導入するときの注意点
ここまで、仮想デスクトップのメリット・デメリットをお伝えしました。
続いて、仮想デスクトップを導入するときの注意点を解説します。
- 通信セキュリティ対策を徹底する
- 環境設定とサイジングを意識する
- パフォーマンスを可視化する
ひとつずつ解説していきます。
通信セキュリティ対策を徹底する
仮想デスクトップを導入する際に注意する点は、通信セキュリティ対策を徹底しましょう。
導入メリットとして、紛失や盗難による情報漏洩が防げるとお伝えしました。
しかし、端末使用中に通信を傍受されるリスクがあるので注意が必要です。
通信傍受のリスクを回避する方法として、SSLやVPNを活用しましょう。
それぞれの特徴は、下記の通りです。
- SSL:インターネット上のやり取りを暗号化して、なりすましや盗聴を防ぐ仕組み
- VPN:やり取りする通信が暗号化されて、第三者が解読できないようにデータが保護される仕組み
社内の機密情報や個人情報などを守るために、Webサイトへの実装を検討しましょう。
こちらの記事では、VPNの仕組みやメリット・デメリット、導入する際の注意点を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
環境設定とサイジングを意識する
仮想デスクトップを導入する際は、環境構築とサイジングを意識しましょう。
サイジングは、HDDやCPU、メモリといったハードウェアの構成から、システム全体を運用するためにリソースを確保する作業といった意味です。
仮に環境設定とサイジングを誤った場合のリスクとして、下記があります。
- 高い負荷に耐えられない
- サーバーに障害が発生した際にアクセスできない
そのため仮想デスクトップを快適に運用できるかどうかは、自社に適した環境設定とサイジングが重要といえるでしょう。
これらのリスクを避けるために、ハードウェア構成を熟知した技術者が必要です。
パフォーマンスを可視化する
仮想デスクトップを導入する際は、パフォーマンスが適切に保たれているか可視化しましょう。
仮想デスクトップは1台のサーバーに対して、複数のOSが並列して動作しています。
そのため、サーバーとOSごとのパフォーマンスを可視化することで、トラブルが発生した時の原因を迅速に発見・解決できるでしょう。
まとめ
今回は、仮想デスクトップの概要やメリット・デメリット、注意点を解説しました。
仮想デスクトップとは、オペレーションシステムとアプリケーションを事前に構成してイメージ提供されるデスクトップ環境です。
導入するメリット・デメリットとして、下記があります。
- 運用コストの削減
- セキュリティが強固
- 利用場所に制限がない
- 利用者情報を一元管理できる
- BCP対策になる
- ネットワーク環境が不可欠
- サーバーへの負荷が高くなる
- 導入コストがかかる
- 専門知識が必要になる
本記事でお伝えした「通信セキュリティ対策の徹底」「環境設定とサイジングへの意識」「パフォーマンスの可視化」を参考にして、仮想デスクトップの導入を検討してください。
【SNSフォローのお願い】
kyozonは日常のビジネスをスマートにする情報を毎日お届けしています。
今回の記事が「役に立った!」という方はtwitterとfacebookもフォローいただければ幸いです。
twitter:https://twitter.com/kyozon_comix