IMCとは?
IMCとは「Integrated Marketing Communication(インテグレイテッド・マーケティング・コミュニケーション)」の略称で「統合マーケティングコミュニケーション」とも言われます。
顧客とのコミュニケーションに使われるチャネルは、以下のような多岐にわたります。
- 実店舗
- テレビCM
- チラシ
- Webサイト
- Web広告
- SNS
- メール
- 電話営業
- カスタマーサポート(カスタマーサービス)
上記は一例で、業種や商材によってはオフライン・オンラインともにもっと複数のチャネルを活用している場合もあります。
タッチポイント(接点)が多様化しているなか、従来のように画一的なアプローチでは成果が得にくくなっています。顧客のニーズやライフスタイルにマッチしたチャネルでアプローチすることで、成果を最大化できるのです。 逆に、広く宣伝したい内容は、複数のチャネルを活用して一気に広めることも効果的でしょう。
こうした背景から、チャネルを使い分けてアプローチしたり、多様なチャネルでのコミュニケーションの内容を一元管理したりできる、IMCの重要性が高まっているのです。
なお、マーケティングでのコミュニケーションの重要性については、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご参考ください。
IMCの歴史
IMCを初めて提唱したのは「統合マーケティングの父」とも言われる、ドン・シュルツ氏。シュルツ氏は出版社や広告会社での勤務ののち、大学に入り学び直し、ノースウェスタン大学の名誉教授やコンサルティング会社の経営などを行っています。
シュルツ氏が初めてIMCを提唱したのは、1980年代と言われています。その後、多くの書籍やセミナーなどを通じてIMCの重要性を広めてきました。
そして2000年代に入り、インターネットが進歩したことで顧客とのタッチポイントはオンラインへとシフトして、より多様化しました。さらに2010年代にはスマートフォンの普及が急速に進み、タッチポイントの多様化に拍車をかけたのです。
こうした背景から、1980年代から提唱されているIMCの注目度が徐々に高まっています。
IMCが重要視されているのはなぜなのか
IMCの重要度が高まっている背景には、タッチポイントの多様化・複雑化があります。
従来は、実店舗でのリアルな接客や、カスタマーサポートでの電話問い合わせなどが、企業と顧客のコミュニケーションで使われていました。さらに、企業からのマーケティングでは、テレビCMや新聞チラシなど、一方通行のチャネルが主流でした。
しかしインターネットの進歩によって、WebサイトやWeb広告などのオンラインでのタッチポイントが増加。また、SNSによって双方向のコミュニケーションが可能になり、さらに口コミサイトによって第三者を通じたコミュニケーションが登場しました。
こうした背景から、各チャネルでのアプローチに一貫性を持つことが困難になるようになったのです。
たとえば、SNSやポスターなどで「この商品がほしい」と思った顧客が実店舗を訪れた際、実店舗の店員がブランドイメージにそぐわないと顧客の購買意欲は大きく低下してしまうでしょう。
また各チャネルを横断的に管理できていないと、メールでアプローチした顧客に対して同じ内容のDMを送信してしまうなど、重複アプローチを引き起こすリスクもあります。
このような課題を解消するために、すべてのチャネル・タッチポイントを一元管理し、一貫性を持って効率的にコミュニケーションやアプローチをするIMCの重要性が高まっているのです。さらにSNSが台頭している現代では企業と顧客はインタラクティブなコミュニケーションが可能になっているため、IMCを活用して細やかにアプローチすることが重要なのです。
なお、SNSを活用したマーケティングについては、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひご参考ください。
IMC活用のメリット
自社のマーケティングにIMCを取り入れることで、以下のメリットが期待できます。
メリット1:費用対効果が高い
複数のチャネルを別々に管理していると、それぞれの素材を用意したりクリエイティブを制作したりする必要があります。これでは、コンセプトがバラバラになったり、同じようなクリエイティブを二重で制作したりすることになります。また、複数のチャネルで同じ内容を宣伝するため、二度手間、三度手間になり非効率な運用になるでしょう。
しかしIMCによってすべてのチャネルを管理できていれば、素材やクリエイティブを共有できて制作費が大きく削減できます。
また、複数のチャネルに一括で配信できるため宣伝費や販促費も減り、トータルのマーケティングコストが大きく削減します。
マーケティング活動の費用対効果に悩んでいる場合、IMCを取り入れてみると効果があるかもしれません。
メリット2:ザイオンス効果が期待できる
一貫したコンセプトで顧客にアプローチを継続していると、ザイオンス効果が期待できます。
ザイオンス効果とは、繰り返し接することで関心度や好感度を高める効果です。
テレビCMやWeb広告、SNSなどを通じて顧客が自社商材を見かける機会を増やすことで、自然と自社商材について認知し、さらには関心度も高まっていくでしょう。
ザイオンス効果を高めるためには、同じコンセプトやデザインを用いて、顧客に「デジャブ」のような感覚を引き起こさせることが重要です。そのため、IMCによって一貫性・統一性をもたせたアプローチが効果を発揮します。
メリット3:顧客と信頼関係を構築できる
IMCを活用してそれぞれのチャネルを活用して顧客と適切なコミュニケーションを取り続けると、顧客からの信頼感を得ることができ関係性を醸成できます。
IMCを活用しない場合、チャネル別に担当者を配置するため、どのチャネルからどのようなメッセージをいつ送っているのか、担当者同士で把握するのが困難です。同一の顧客に対してさまざまなチャネルから一気にメッセージが届いたり、コンセプトが異なるメッセージを送ってしまったりすることもあります。そうなると、顧客は混乱してしまい、ネガティブなイメージを持つ可能性もあるでしょう。
しかしIMCによって各チャネルのアプローチ内容を一元管理できれば、戦略的なスケジュールで各チャネルからメッセージを配信できます。統一したコンセプトのメッセージを最適なタイミングで配信できるため、顧客と適切な距離感を保ちながら関係性を深めていくことが可能です。
IMCの活用事例
ここからは、IMCを取り入れている企業の事例を紹介します。
事例1:コカ・コーラ
コカ・コーラと聞くと、ブランドカラーの赤をイメージする方も多いのではないでしょうか。製品パッケージやテレビCM、自動販売機のデザインまで、一貫して赤をメインに取り入れ、消費者のブランドイメージを構築しています。
近年では、自動販売機と連動するスマホアプリを提供したり、SNSでのシェアキャンペーンを打ち出したりするなど、オフラインとオンラインのチャネルをうまく活用して消費者とのコミュニケーションを図っています。
事例2:Salesforce
Salesforceは今でこそ世界的にトップクラスのシェアを誇るSFAとして成長していますが、創業当時はSaaSの概念もまだ広まっていない時代だったため、メディアの取材記事と口コミを中心に認知を広める活動に注力しました。
その結果、SaaSの概念とSalesforceの利便性が認知され、今ではオウンドメディアやSNS、書籍やテレビCMなど多様なチャネルでIMCを実践しています。
事例3:freee
会計クラウドサービスのfreeeは、メインターゲットの中小企業や個人事業主に向け、戦略的にメッセージを配信して自社サービスについてアプローチしています。
主にオウンドメディアや動画などで、多くの中小企業や個人事業主が抱える「会計処理」「確定申告」などの悩みに対して有益な情報を発信。さらにTwitterは、個人事業主や起業したばかりの企業など、ターゲット別に複数のアカウントを運用し、各ターゲットに最適なアプローチを行っています。
IMCの正しい進め方
IMCを実行するうえでポイントとなるのが、戦略的な進め方です。やみくもに始めては効果が得られないため、最適な進め方を意識して実行しましょう。
進め方1:目的・ペルソナを明確化する
まずは、IMCを始める目的と、自社のマーケティングでターゲットとなるペルソナを明確にします。
目的がないまま始めると、何をゴールにして進めたらよいのかわからず、具体的な施策やコンセプトがブレてしまうでしょう。また、ペルソナが不明瞭だとどのようなチャネルでどのようなメッセージが効果的なのかわからず、施策を無駄打ちしてしまいコストを浪費しかねません。
さまざまなチャネルでメッセージを発信する必要性は何か なぜ統一したコンセプトでメッセージを発信する必要があるのか ペルソナ像はどのような人物か これらの内容を明確にし、方向性を定めます。
進め方2:コンセプトを共有する
IMCでは、すべてのチャネルから統一したコンセプトのメッセージを配信することで、効果を高めることができます。メンバー間でコンセプトを統一しておかなければ、コンセプトがバラバラのメッセージになる可能性があるでしょう。
メンバー間での認識のズレをなくすために、全員でコンセプトを考えて共有しておく必要があります。
進め方3:マーケティングプランを設計する
次は、各チャネルでの具体的な施策内容を設計していきます。IMCではオフラインとオンラインでの取組みが求められるため、各チャネルを横断してプランを考案しましょう。
たとえば「展示会で名刺交換した人を対象にメルマガを配信する」などのようにチャネルをクロスすると、顧客に自社商材を印象付けることができ購買意欲を高められます。
進め方4:PDCAサイクルを回す
施策をやりっぱなしにするのではなく、定期的に振り返りの機会を設けて効果を検証しましょう。課題や改善点を見つけてブラッシュアップしていくことで、効果を高めていくことが可能です。
PDCAサイクルについは以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご参考ください。
まとめ
マーケティングチャネルが多様化している現代では、各チャネルで統一したコンセプトのメッセージを配信することが重要です。コンセプトがバラバラだったり、各チャネルでのメッセージ量が適切ではなかったりすると、顧客との信頼関係をうまく構築できません。
マーケティング活動にIMCを取り入れることで、各チャネルでのアプローチを一元管理することが可能です。
ただしIMCはすぐに効果が出るものではなく、中長期的に取り組む必要があります。PDCAサイクルを回しながら、成果を高めていきましょう。
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