LTVとは「顧客の生涯価値」
LTVは、顧客が製品やサービスなどの商材を利用しはじめてから終了するまでに生み出す利益を表す指標です。Life Time Valueの頭文字を取った略称で、日本語では顧客生涯価値と翻訳できます。
たとえば、月額サービスを1ヵ月利用した顧客と、2ヶ月利用した顧客では、後者の方が高いLTVを持っています。継続的な取引によって生まれる企業の利益を測るために、LTVは重要な要素となっているのです。LTVはマーケティング分野で使われることの多い用語のため、営業業務やマーケティング業務に携わる人はLTVに関する情報を把握しておくことが求められます。
LTVが重要視される理由・背景
LTVは現代社会のビジネスにおいて重要視される要素の一つとなっています。なぜ企業に求められるようになったのか、その理由や背景についても把握しておきましょう。LTVが重要視されるようになった理由や背景は、主に次の3点から挙げられます。
- 人口減少による新規顧客獲得コストの上昇
- ニーズの多様化による個別対応の必要性
- サブスクリプション型サービスの普及
人口減少による新規顧客獲得コストの上昇
LTVが重視されるようになった背景には、人口減少に伴って新規顧客が獲得しにくくなった、現代社会の市場事情が存在しています。新規顧客の獲得にこだわるとコストがかさみ利益を得られないため、既存の顧客から継続して利益を出すためにLTVが重視されるようになったといわれています。
LTVを意識したマーケティングをおこなえば、顧客に長く自社商材を購入・利用してもらえるようになるため、新規顧客の獲得をおこなわずとも利益を確保できるようになります。自社の営業成績に伸び悩んでいる、新規顧客の獲得ができていないという課題を抱えている場合には、発想を転換しLTVを重視したマーケティングを検討してみましょう。
ニーズの多様化による個別対応の必要性
LTVはニーズの多様化に対応し、One to Oneマーケティング(消費者一人ひとりのニーズに対し行動するマーケティング手法)を実施する上で重要な指標となります。インターネットの普及と情報技術の進化により、顧客のニーズは多様化の傾向が見られます。
「女性なら商品A、サラリーマンなら商品B」というような、属性でニーズを仮定して商材を当てはめるマーケティング戦略には限界があるため、より個人を見るマーケティングが重要です。One to Oneマーケティングは、顧客のロイヤリティ(商材に対する消費者の愛着)を高めることが求められます。LTVはロイヤリティの高さを判断する基準として有用であるため、企業のマーケティングにおける重要性が高まっているのです。
サブスクリプション型サービスの普及
サブスクリプションサービスの普及も、LTVの重要性が高まってきた背景の一つです。サブスクリプションサービスは、定期的に料金を支払うことで利用できるサービスで、顧客が継続して利用することで利益を得るビジネスモデルとなっています。
サブスクリプションサービスのマーケティングでは、一人ひとりの消費者に長期的に利用してもらうため、LTVを使い施策の成果を判断することが多くなっています。継続利用を前提とするサービスであるサブスクリプションサービスにとって、消費者の利用開始から終了までの利益を測れるLTVは最適な指標といえるでしょう。
LTVの2種類の計算方法
実際にLTVを計測する場合には、次の2種類の計算方法を用いることができます。
- LTV=平均購入単価※×粗利率×平均購入頻度(回/年)×平均継続期間(年)
- LTV=平均購入単価×チャーンレート(解約率)
それぞれの計算方法を、例を通してみていきましょう。
※平均購入単価:ARPUとも表記される。後の項目で解説します。
通常の商材向けのLTV計算方法
1つ目の方法は主に通常の商材で用いられます。平均購入単価が5,000円、粗利率が50%(0.5)、年間の購入頻度が12回、平均継続期間が2年の場合を、式に当てはめてみましょう。
LTV=平均購入単価×粗利率×平均購入頻度(回/年)×平均継続期間(年)
LTV=5,000円×50%×12回×2年=60,000円
計算をおこなうと5,000×0.5×12×2=60,000で、LTVの値は60,000円であることが分かります。この式から1人あたりの顧客獲得コスト・顧客維持コストを差し引くことで、コストを踏まえたLTVが算出できます。
サブスクリプション型サービス向けのLTV計算方法
2つ目の方法は、サブスクリプション型サービスのLTV算出に用いられます。平均購入単価が1,000円でチャーンレート(解約率)が10%(0.1)の場合を想定し、式に当てはめましょう。
LTV=1,000円 ÷ 10%=10,000円
1,000円 ÷ 0.1で計算し、LTVは10,000円と算出されます。
解約率を抑えるほどLTVが高まるため、サブスクリプションサービスにおけるチャーンレートの抑制が重要であることがわかります。
LTV以外によく使われるマーケティング指標・用語
LTV以外のマーケティング指標や用語を理解し、場面ごとで使い分けることも大切です。次の4つの指標と用語を紹介します。
- ARPA・ARPU
- CAC
- MQL・SQL
- ユニットエコノミクス
それぞれのマーケティング指標・用語は、意味や使用される場面も異なります。
ARPA
ARPA(Average Revenue Per Account)は、1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標です。1アカウントで複数ユーザーが契約するSaaSサービスなどで用いられる指標で、次の計算式で求められます。
ARPA = 売上 ÷ アカウント数
たとえば、売上が3,000万円でアカウント数が400の場合、ARPAは「3,000万円 ÷ 500 = 6万円」となります。1アカウントから、どれだけの売上を得られているかを把握するのに役立ちます。
ARPU
ARPU(Average Revenue Per User)は、1ユーザーあたりの平均売上金額を示します。ARPAよりも基本的な計算方法で、先に紹介したLTVの計算にも用いられています。計算方法は次のとおりです。
ARPU = 売上 ÷ ユーザー数
売上が1,000万円でユーザー数が200人の場合、ARPUは「1,000万円 ÷ 200人 =5万円」となります。LTVを計算したい場合には、まずARPUを計算し、その後に他の数値で計算をかけるようにしましょう。
CAC
CAC(Customer Acquisition Cost、顧客獲得コスト)は、新規顧客1人を獲得するためにかかった費用を評価する指標です。新規顧客獲得のためにおこなうマーケティングや広告などの費用対効果を判断する目的で用いられます。CACは次の計算式で求められます。
CAC = 顧客獲得に使った費用 ÷ 新規獲得した顧客数
たとえば、マーケティングや広告に200万円を費やし、その結果として200人の新規顧客を獲得した場合、CACは「200万円 ÷ 200人 = 1万円」となります。CACはマーケティングのコストを意識するうえで重要な要素であり、新規顧客の獲得の難しい現代ビジネスでは特に注意したい指標といえるでしょう。また、後述するユニットエコノミクスの計算に用いられ、LTVと共にビジネスの採算を計測する指標として用いられます。
MQL・SQL
MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティング活動によって創出されたリードの中で、特に購買意欲が高いと判断された見込み顧客を指す言葉です。メールマガジンやWebサイト、イベントを通じて獲得できます。
MQLに関連したキーワードにSQL(Sales Qualified Lead)というものがありますが、こちらはMQLの中でも、営業部門が購買意欲が高いとみなしたリードを指す用語となっています。MQLとSQLにあたる潜在顧客は自社商材に対する高いニーズがあると推測できるため、より長期的な取引を期待できます。長期取引はLTV向上に欠かせないため、MQLとSQLの選別とアプローチも欠かさずおこなうようにしましょう。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスは、顧客1人あたりの採算性を示す指標です。顧客1人当たりの利益を示すLTVを、1人当たりの獲得コストを表すCACで割ることで算出でき、事業の健全性を明らかにできます。LTVがCACの3から5程度の数字であれば、ビジネスの採算性は高いと判断できます。ユニットエコノミクスの計算式は次のとおりです。
ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC
LTVが80,000円で、CACが40,000円であれば、「80,000円÷40,000円=2」でユニットエコノミクスは2となります。ユニットエコノミクスは、3以上が健全な状態を示すため、このケースは要改善の状態にあるといえるでしょう。
LTVを向上させる4つの方法
「LTVを向上させたい」と考える際には、次の4つの手法を意識しましょう。
- 顧客の購入単価を上げる
- 購入してもらう頻度を上げる
- コストを削減する
- 解約率の改善
それぞれの手法を理解し、ビジネスの成果につなげていくことが大切です。
顧客の購入単価を上げる
LTVを改善したい、現在よりも高めたいと考えているなら、顧客単価を向上させましょう。顧客の購入単価が向上すると、連動してLTVも上がります。具体的な手段としては、現在の顧客により上位の商品・サービスを販売することが考えられます。より高品質な商材を提供することで、顧客は満足して対価を払うことができます。セット商品やオプションサービスを提案し、「お得感」を感じられる提案も有効です。
一方、単純な値上げによる購入単価の向上は控えたほうがよいでしょう。品質が変わらないのに値段だけが上がる状態では顧客は納得せず、取引から離脱してしまうリスクが高まります。顧客満足度を高められるかたちで単価を上げることが大切です。
購入してもらう頻度を上げる
商品を購入してもらう頻度を上げることでも顧客単価は上昇し、LTVの向上が期待できます。メールマガジンやSNSなどで顧客に自社商品をアピールしましょう。たとえば、売りたい商材が消耗品であれば、消費を促進することで購入頻度を向上できます。食料品や嗜好品などを取り扱う会社であれば、顧客の興味や嗜好にあった商品を提案することが選択肢に数えられるでしょう。
しかし、過剰なアピールは顧客の不信感を買う原因にもなります。営業系ITツールなどを利用すれば、メールの開封率やアクセス履歴などを分析し、適切な内容・タイミング・ボリュームのアプローチをおこなえるようになります。
コストを削減する
コストを削減すると利益も増えるため、LTVが向上します。自社商材にかかるコストに削減の余地がないかどうかチェックしてみましょう。たとえば、衣類や食品といった有形商材を扱う企業であれば、製造プロセス見直しが有効な手段となります。仕入れ先や原材料から、コスト削減の余地を見出せます。
しかし、コスト削減によって品質が下がってしまうと顧客満足度が低下し、逆効果になる点には注意が必要です。コスト削減にあたっては、営業・マーケティング分野の業務にかかる人的コストの削減も有効です。CRMやSFAなどのツールを導入し、業務効率の向上を検討してみましょう。
解約率の改善
解約率を抑えられれば、LTVの数値を高めることができます。顧客1人当たりの取引継続期間を伸ばして、長期的な生涯価値を向上させましょう。具体的な手段としては、長期利用者の優遇などが考えられます。たとえば、会員制サービスであれば、契約期間に応じたプレゼントや割引などを提供することが有効です。
また、営業・マーケティング分野のITツールを導入していれば、顧客データを活用して解約行動に先回りしたコミュニケーションを実現できます。ロイヤリティが低下していると分析したユーザーに自社商材のメリットを提示する、特別オファーを送るなどの施策も効果が期待できます。
【kyozon編集部おすすめ】LTVの向上に役立つツール3選
LTVの向上に役立つおすすめのツールを3つ紹介します。
- LES GO ISM
- ファン育成ツール オルト
- Account Engagement
LTVの向上には顧客ニーズの把握や分析が欠かせません。CRMやSFAなどの機能を持ったツールを通し、顧客満足度を高められる体制を社内に作りましょう。
SALES GO ISM
・営業活動の管理ツールを安価に導入したい
・使いやすいツールが欲しい
・複数の営業機能が欲しい
SALES GO ISMは、コストパフォーマンスの良さと使いやすさが特徴の営業活動の管理ツールです。本当に必要な機能だけを厳選して作られたツールのため、高い利便性を持ちながら、同時に低価格を実現しています。
顧客台帳・インサイドセールス管理・企業データ・SFA機能が搭載されており、営業・マーケティング分野を大幅にサポートできます。商品や顧客ごとに営業活動のフェーズを管理し、効果的なタイミングでの提案ができるため、LTVの向上に役立つでしょう。
ファン育成ツール オルト
・LINEを活用したい
・顧客ニーズの分析をおこないたい
・リピーターを育成したい
ファン育成ツール オルトは、LINEを活用して、店舗に来店した顧客を即座に会員化できるツールです。手続きにかかる時間は最短3秒で、顧客側と店舗側の両方の負担を最小限にして会員登録をおこなえます。
登録後は会員が「いつ」「どの店舗に」「何回来店したのか」といったデータを蓄積できるようになります。取得した顧客情報は分析に用いることができると同時に、顧客の潜在ニーズに応じて製品やサービスの情報を配信できます。リピーターの育成に最適のツールです。
Account Engagement
・営業活動全般を効率化したい
・データを蓄積・分析したい
・マーケティングを成功させたい
Account Engagementは、AI機能を搭載したB2B向けのMA(マーケティング自動化)ツールです。営業活動全般の効率を上げられる機能を多数搭載しており、人的コストの削減を狙うことができます。
蓄積したデータから見込みが高いリードを抽出し、最適なタイミングでアプローチできるためマーケティングの効果を上げたい時に高い効果を発揮します。見込み獲得から商談成立までワンストップで実現できるツールです。
まとめ
LTV(顧客生涯価値)の向上は、企業が長期的な収益性と顧客満足度を高めるために重要な戦略です。LTVをマーケティングの指標に加えて、顧客が継続利用してくれる商品やサービスを検討しましょう。
LTVを向上させるためには、営業・マーケティング分野の業務効率や顧客情報の分析ができるITツールを導入することも有効です。LTVをはじめとしたマーケティング用語の知識とツールの力を併用し、コストを抑えながら効率的なLTV向上施策を実施していきましょう。