マーケティング戦略とは?
マーケティング戦略とは、自社が利潤を獲得するために、どういう顧客(ターゲット)に、どのような商材(製品・サービス)を、どういう価格帯で、どのような方法・手段で提供していくのが最も経済合理性が高いかを追求することです。
なお、高度な情報化社会となった今日では、企業と顧客との関係性が昔のように一方通行では成立しません。商材が顧客に渡るまでのプロセスにおいて、双方向(インタラクティブ)の良好な関係の構築も、重要なファクターとなっています。
なお、「マーケティングとは何か」について、総合的に解説している以下の特集記事も、ぜひ参考にご一読ください。
マーケティング戦略と経営戦略の違い
「経営戦略」はマーケティング戦略と似たニュアンスを持つ言葉です。しかしながら、両者には決定的な違いがあります。
マーケティング戦略は、あくまでも商材にフォーカスしたもので、商材の誕生から顧客の手元に渡り使用されていくというストーリーの周辺にあるものです。つまり、マーケティング戦略の対象範囲は商材を起点にして限定されます。
そのためマーケティングは、人事に関することや財政に関することにはタッチしません。
一方の経営戦略は、企業経営に関わるすべての事象が対象です。企業活動の発展や継続、安定を考慮し、企業が保有するリソース(経営資源)をどのように活用するのが最適解であるかを追求することが、経営戦略です。
マーケティングの戦略と混同しやすい戦術について、以下の記事で特集しています。そちらも、ぜひ参考にご覧ください。
マーケティング戦略が重要度を増す背景
企業組織にとってマーケティング戦略は、昔から重要なものでした。近年ではその重要度がさらに増しており、どの企業もマーケティングの精度を上げるために奮闘しています。
その背景にあるのは、経済社会の「グローバル化」および「情報化」の進展と、それによる消費者の価値観やニーズの多様化です。
ビジネスに国境や時間、空間の制約が消滅
今や企業の業者間取引や市場開拓、サプライチェーン(商品が原材料から製造されて流通に乗って消費者の手元に届くまでの一連のプロセス)に国境は関係なくなりました。
また、消費者はスマートフォンによって、いつどこにいても企業とインタラクティブな接点を持てるようになっています。
価値観やニーズが多様化
さらにいえば、そういった経済社会の変化は、人々の価値観や生き方に影響を与え、消費者のニーズが多様化している点も見逃せません。
従来のようにマスメディアを使ったプロモーションもさることながら、WebサイトやSNSを接点とした集客や顧客育成のアプローチなどにより、多様化するニーズを掬い上げる施策が、業績拡大には欠かせなくなっています。
マーケティング戦略は時代の変化が生んだそういう状況に対して、現状のリソースで行いうる最適解を求め、施策を効率的に実行するのに役立ちます。
また、マーケティング戦略の実践に役立つツール「フレームワーク」について、以下の記事で詳しく取り上げているので、ぜひ参考にお読みください。
食品業界の成功事例一覧
まずは、マーケティングの巧拙が売上を左右する、マスマーケティングの代表分野、食品業界の成功事例を見ていきましょう。
- アサヒスーパードライ|前例への固執を断ち切った英断
- レッドブル|発想の転換でマーケットを創出
- ヘルシア緑茶|競合不在のゾーンに注力して市場開拓
アサヒスーパードライ|前例への固執を断ち切った英断
アサヒビール株式会社は、1984年に同社の歴史上最低のシェアを記録し、翌1985年に起死回生を目指してCI(コーポレートアイデンティティ)を刷新しました。その柱となったのは消費者志向です。今風にいえば「消費者ファースト」でしょう。
プロダクトアウトからマーケットインへ
それまでのような、製造部門が製造した商品を営業部門が黙々と売るのではなく、「消費者が求めている商品を市場に提供する」という考え方です。いわゆる生産者の論理である「プロダクトアウト」から、顧客至上主義といえる「マーケットイン」への大転換です。
そして同年に実施した、消費者調査の結果から、消費者の多くがビールに求めるものは、従来の「苦味」や「重さ」から「口に含んだ瞬間の味わい」と「喉ごしの心地よさ」、つまり「コクとキレ」に変化してきていることを突き止めました。
前例がないビールのテイストであったため、勇気ある決断が必要だったことは、想像に難くありません。それでも「コクとキレ」を全面に出した「スーパードライ」を開発し、発売します。
プロモーションも前例を覆す方向性で
広告プロモーションも積極的に行われましたが、これも従来のような大物タレントの起用によるイメージ広告ではなく、現役で精力的に活躍しているジャーナリストやスポーツ選手によって商品のコンセプトを表現しました。
初期は新聞を媒体にして、従来の2倍ほどの宣伝費を投入しています。
確信が的中しての大ヒット
キリンラガーのような苦くて重さがあるテイストが、それまでのビールの主流であったため、スーパードライが市場に初登場した頃は、「そのような軽いビールは誰も買わない」などと酷評する人たちもたくさんいました。
しかし、実は伏線として、その少し前に酎ハイブームが起こっていたのです。若年層が多くを占める酎ハイファンは、軽い飲み口に慣れています。
彼らにとってキリンラガーは少しハードに感じられると解釈し、キレがあるスーパードライは飲みやすいからウケるはずだとマーケティングチームは確信していたのです。
結果的にマーケティング史上に残る大成功を収めました。
レッドブル|発想の転換でマーケットを創出
レッドブル・ジャパン株式会社の主力商品「レッドブル」は、スタンダードな滋養強壮剤を参考にしながらも、ポジショニングで差別化しました。
滋養強壮剤は種類が多いですが、いずれも疲労回復をコンセプトにしています。つまり「マイナスをゼロに戻す飲み物」というポジショニングです。同じタウリンの効果を「エナジードリンク」というコンセプトで表現しました。
疲れたときではなく「スポーツで結果を出したい」「残業を乗り切ろう」などのこれから頑張るときに、エネルギーを補給するものと再定義したのです。「ゼロからプラスに上げる」という発想です。
この事例のように、先行商材が多数存在する市場では、ポジショニングを大きくズラすことが効果的です。
ヘルシア緑茶|競合不在のゾーンに注力して市場開拓
花王株式会社の「ヘルシア緑茶」は、ダイエット飲料あるいは健康飲料のスタンダードの地位を確立しています。この商品のマーケティング戦略はポジショニングの勝利といえるでしょう。
緑茶の市場は「伊右衛門」や「お〜いお茶」など強力な人気商品があり、新規参入はハードルが高いとされていました。
しかし、花王のマーケターはリサーチの結果それらがすべて青年向けであると結論づけます。そして競合しない、肥満に悩む中年のダイエットと健康をサポートする診療として再定義しました。
結果的にその定義は唯一無二のポジションとなり、「ヘルシア緑茶」は大きな存在感を示してロングセラーとなりました。
ファッション業界の成功事例一覧
次に長期的な事業継続が難しいとされる、ファッション業界の成功事例をご紹介します。
- ユニクロ|シンプルでコスパを徹底し多くのファンを獲得
- 無印良品|ライフスタイル提案型の先駆けとなる成功例
- JINS SCREEN|眼鏡の用途の壁を取り払って市場拡大
ユニクロ|シンプルでコスパを徹底し多くのファンを獲得
従来のアパレル企業のマーケティングであれば、キャリア志向や年齢層などで顧客を分類してターゲットを設定するのが一般的でした。
しかし、株式会社ファーストリテイリングの「ユニクロ」は、シンプルに「カジュアル&ベーシック」を追求するコンセプトなので、幅広い層がターゲットになりました。
もともとは小売業としてメーカーから仕入れて販売する衣料品のチェーン展開していたファーストリテイリングが、SPA(製造型小売業)に業態転換を図ったのは1990年代後半のことです。SPAとしての戦略はアメカジをベースとしたシンプルで汎用性が高いファッションアイテムを、中国で量産して日本で売るというものでした。
メンズもレディースも、そしてキッズも含めてオールジャンルでサイズ展開や色展開も充実させました。大ブレイクのきっかけは1998年のフリースです。未曾有ともいえる膨大なカラーバリエーションが、手頃な価格設定と相まって人気が爆発しました。
新たな価値観を提案するイメージ主体のテレビCMと、価格訴求を徹底した折込チラシのダブルエッジのアプローチも功を奏したといえるでしょう。
その後もヒートテックやエアリズムなどの人気商品を生み出して世界的な優良企業に成長したことは周知のとおりです。
無印良品|ライフスタイル提案型の先駆けとなる成功例
株式会社良品計画は生活に合理性を求める層をターゲットとして、シンプルなライフスタイルを提案する「無印良品」の多店舗展開に成功しました。
いつでも誰でも使える汎用性を意識し、シンプルで無駄のないものづくりの姿勢と、製造過程で廃棄物を極力生まないことにこだわりました。
今でこそSDGsの高まりで、環境に配慮したサスティナブルな考え方が普及していますが、1980年代からそういう志向を打ち出していた同社の先見性は、極めて高いといわざるを得ません。
JINS SCREEN|眼鏡の用途の壁を取り払って市場拡大
眼鏡というものは本来、「眼力矯正の必要がある人」のための医療機器であり、サングラスやファッショングラスは全体の一部でした。
株式会社ジンズは眼鏡の市場を再定義し「眼力矯正の必要がない人」たちをターゲットに加えたのです。
具体的には視力が悪い人に加えて、視力は良いがPCに仕事で向き合う時間が長く、ドライアイや疲れ目などの悩みを持つ人や、おしゃれ好きの人たちを潜在顧客として捉えました。
おしゃれで機能性がある軽いアイウェアとして、PC仕事による目の疲れを軽減する効果があるブルーライトカット眼鏡「JINS SCREEN」などにより、ダイナミックに差別化を図ります。
「JINS SCREEN」は健康グッズやオフィス用品、ファッションアイテムなどの幅広い位置づけで、視力の程度にかかわらずメガネを掛けるライフスタイルの選択肢を提案し、業績を大きく伸ばし、多くの顧客を獲得しました。
飲食業界の成功事例一覧
続いて、飲食業界の中でも、多くの人が利用したことがある外食チェーンやテイクアウト専門店などの成功事例をご紹介します。
- ハーゲンダッツ|競合の逆張りが奏功
- すき家|位置づけを大胆に変えて王座逆転に成功
- マクドナルド|積極的なSNSマーケティングでV字回復
- ほっともっと|TikTok運用でブランドイメージ向上
- カクヤス|手間な仕事で顧客の利便性を揺るぎない付加価値に
ハーゲンダッツ|競合の逆張りが奏功
ハーゲンダッツジャパン株式会社が展開する「ハーゲンダッツ」は、アイスクリームの中でも高級品になります。季節感やプレミアム感のある商品を良いタイミングで投入し、読みが当たれば爆発的な売れ行きを見せてくれます。
アイスクリーム市場の本来のメインターゲットは子供です。そのため、お小遣いの範囲で買えて、なおかつ万人受けするフレーバーが基本といえるでしょう。
しかし、ハーゲンダッツは「大人のアイス」という逆張りのコンセプトで、グレード感がある高級アイスを打ち出して、強烈な差別化を図り、多くの顧客層を生み出しました。
すき家|位置づけを大胆に変えて王座逆転に成功
従来のほとんどの牛丼店は「吉野家」をお手本にしていたので、ターゲットも「男性のひとり客」であり、コスパで手早く満腹になれる店というポジショニングでした。しかし、「すき家」はターゲットをファミリーや女性まで大胆に広げたのです。
連れ立って気軽に行けて、ワイワイガヤガヤと楽しく食卓を囲める「ファミレス」や「バーガーショップ」のポジションに並んだことにより、牛丼チェーン店でトップの座を獲得できました。
マクドナルド|積極的なSNSマーケティングでV字回復
期限切れ食品の使用や異物混入問題など、いくつかの不祥事が重なり、2015年末に約350億円の赤字を記録した日本マクドナルドは、実にわずか1年後の2016年末にはおよそ50億円の黒字というV字回復を果たします。その影には凄まじい企業努力があり、懸命なマーケティング施策の数々が施されました。
とりわけTwitterを中心としたSNSなどのWebを活用したプロモーションの成功が挙げられます。費用が大きく掛かるテレビCMではなく、ローコストで運用できるSNSなどのWebメディアの利用は、共有拡散を促して費用対効果を高いものにしました。
ほかにも、ユーザーから新企画ハンバーガーの名称を募るなど、インタラクティブな施策で新規顧客の獲得につなげています。
ほっともっと|TikTok運用でブランドイメージ向上
株式会社プレナスが運営する「ほっともっと」では、TikTokアカウントを積極的に活用して若年層を中心にファンを増やしました。
2021年の夏はコロナ禍のもとで、家でできる「おうち夏祭り」が流行しましたが、ほっともっとはそれを上手に利用したのです。
当時、TikTokやInstagramなどで多くのUGC(ユーザー生成コンテンツ)が発信されました。ほっともっとアカウントもその流れに乗り、自社の惣菜を使ったおうち夏祭りの模様を投稿します。
その投稿は公式アカウントっぽくない、茶目っ気とアイデアが詰まった内容が大受けし、バズりました。コメントでも公式では従来なかったような、フレンドリーな発言が多く、大きな反響を呼び、ブランドイメージが一挙にアップしたのです。
カクヤス|手間な仕事で顧客の利便性を揺るぎない付加価値に
酒類量販チェーン「カクヤス」は、基本的には一般向けの小売を店舗で営みつつ、飲食店への卸とデリバリーで事業を拡大しました。そのために、まずカクヤスは小売と卸と配達をそれぞれの部門として再編しました。
居酒屋、レストラン、クラブ、バーなどのまとまった酒類購入が見込めるターゲットに、瓶1本からでもデリバリーする体制を作ったのです。お酒の在庫が急遽必要な店に、速やかに調達できる店という位置づけを確立して成功しました。
1本で数十万円や数百万円もするような高額酒類を在庫として潤沢に揃えることは、高級クラブであってもリスクと資金負担がかなり大きいです。とはいえ在庫を絞り過ぎると、高級酒のオーダーが入ったのに機会ロスが生まれる上に、顧客からの信頼性を失してしまいかねません。
瓶1本でもすぐに届けるポジショニングは、顧客にとって有り難い存在であるのは間違いないでしょう。
ちなみに、飲食店を成功させるWebマーケティングについて、以下の記事で特集していますので、ぜひ参考にしてください。
その他の身近な例・面白い例
最後に、その他の業界の身近な例や面白い例をご紹介します。
- ライフネット生命|保険契約の常識を変えた新たな切り口
- スタディサプリ|サブスク型と変数の組み合わせが生んだヒット
- レッツノート|分厚い層を狙って大量に一本釣り
- ファブリーズ|従来なかった新しい文化の提案
ライフネット生命|保険契約の常識を変えた新たな切り口
ライフネット生命は日本初のWeb特化型生命保険会社として2008年に創業し、順調に成長を続けています。ライフネット生命の理念は保険料を半分に下げて、若い世代が安心して家族を形成していける社会を作るのに貢献することです。
24時間365日、いつでもWebで申し込みや種々の手続きができるという「利便性」と「わかりやすさ」、そして「保険料の安さ」を強みとして急成長しました。
既存の生命保険は人を介した販売が中心なので、原則的にWebで完結できる手軽さや財布に優しい点において差別化が成功したといえるでしょう。
スタディサプリ|サブスク型と変数の組み合わせが生んだヒット
リクルート社の「スタディサプリ」は、サブスク型のオンライン学習サービスで、受験を控える高校生向けにサービスを展開しています。特徴としては、経済的あるいは地域的に予備校に通えない事情を抱える高校生をターゲットに設定したことです。
高校生全体の中で、そういう状況にいる層が7割ほども占めているという、リサーチ結果にもとづいての戦略です。
マーケティング上の変数の中で、「高校生」や「世帯収入」という人口動態変数、受験を目指しているという心理的変数までは、マーケターなら普通は考えるでしょう。しかしそれに加えて「予備校が存在しない地域」という地理的変数を考慮する切り口で、多くのユーザーを獲得できました。
レッツノート|分厚い層を狙って大量に一本釣り
パナソニック株式会社のヒットPC「Let’snote」は、巧みに人口動態変数を用いたマーケティングで成功を収めました。具体的には、ビジネスパーソン全体に向けてではなく「フィールドセールス」、つまり外回りの営業担当者に特化したことが成功要因です。
一貫してモバイルPCにこだわってきたのは、そういう理由です。なおかつ持ち運びしやすいサイズと重量で、しかも丈夫である「Let’snote」はロングセラーとなりました。
当時は多くのPCメーカーが、スペックの高さにフォーカスしていましたが、「Let’snote」は独自のコンセプトを貫き通してきたことが、多数のヘヴィユーザーを生んだのです。
ファブリーズ|従来なかった新しい文化の提案
従来、「布地」(衣服やカーテン、シーツなど)の臭いが気になった場合、洗濯かクリーニング・我慢・捨てるの三択でした。
シャツやカットソーなら家庭で洗えますが、ジャケットやコート、カーテンやシーツはそうもいきません。かといってクリーニングに頻繁に出すのは面倒で、費用もかさみます。
ファブリーズの登場は、上記の三択に代わる「スプレーで除去する」かつてなかった新たな方法の提案だったのです。今やスプレー消臭は、多くの人にとって日常に溶け込んでおり、もはや文化といえるほど広まっています。
なお、これからマーケティングを学ぼうというみなさんのために、おすすめの解説本を以下の記事でご紹介しています。
マーケティング戦略の立案手順
マーケティングの成功事例・アイデアを学んだところで、ここからは自社の商品やサービスの価値を高める為に必要な、マーケティング戦略の立案手順を解説します。
マーケティングを成功させる秘訣は、『物事を客観的に捉え、正しい手順を踏むこと』。
以下の5ステップはどれも欠かせない工程です。それぞれに具体例も用意していますので、参考にしてみてください。
- 内部・外部環境を分析する
- ターゲットを明確にする
- ポジショニングで差別化を図る
- 顧客のベネフィットを明確化する
- マーケティングミックスを行う
内部・外部環境を分析する
まず自社の事業や製品が展開される環境を理解するため、内部環境と外部環境を分析し、SWOT分析などの手法を用いて課題や機会を把握します。
内部環境と外部環境の特徴は以下のとおりです。
- 内部環境:自社の強みや弱み、リソース、経営資源などを評価することで、自社の現状や課題を把握すること
- 外部環境:マーケット規模や成長率、競合他社の市場シェア、消費者のニーズなどを把握すること
これらの分析を組み合わせて、自社の競争優位性を明確にします。
たとえば、自社の製品が販売される市場で、競合他社が急速にシェアを伸ばしている場合、市場の成長率や競合他社の戦略を調査する必要があります。また、自社の製品が顧客から高い評価を得ている場合、その理由を分析しなければいけません。
内部・外部環境の分析は、マーケティング戦略を成功させる上で非常に重要なため、SWOT分析をはじめとしたフレームワークを通じて、客観的な現状を正確に把握するようにしましょう。
ターゲットを明確にする
マーケティング戦略において、ターゲット層を明確にすることは、販売促進効果を高めるために非常に重要です。
ターゲット層を明確にすることで、製品やサービスのニーズを把握できます。これにより、マーケティング活動の効果を最大化できるだけでなく、販売チャネルの選択やマーケティングプランの立案、広告やプロモーションの展開など、具体的な戦略の展開にも役立つでしょう。
たとえば、あるスポーツウェアブランドが、女性向けの新製品を発売する場合、ターゲット層を「30代のワーキングマザー」と明確に定めたとします。
この場合、商品の特徴やニーズに合わせて、SNSや女性誌などを活用したマーケティングコミュニケーションの展開、または子育てをしながらスポーツを楽しむことのできるワークアウトプログラムの提供など、ターゲット層に効果的なアプローチが可能です。
このように、ターゲット層を明確にすることで、マーケティング活動の効果を高めることができ、マーケティングプランの立案や広告展開、販売チャネルの選択にも役立ちます。
ポジショニングで差別化を図る
ターゲットを明確に決めたら、他社と差別化するために、独自のポジショニングを設定しましょう。
ポジショニングは、顧客のニーズに合わせた製品イメージやブランドイメージを形成し、顧客にそれらの魅力を提供します。
自社の製品やサービスを顧客に選んでもらうには、提供するベネフィットや付加価値が他社と異なる必要があります。ポジショニングを設定することで、製品の特長やユニークな価値提供点を明確にできます。
たとえば、あるコスメブランドが、独自のポジショニングとして「エシカルビューティー」というコンセプトを打ち出しています。
このブランドは、自然由来の原料を使用し、動物実験を行わない製品を提供しています。このポジショニングは、エシカル志向の消費者に支持され、差別化された存在感を生み出しているのはいうまでもありません。
ポジショニングは、顧客のニーズや市場の状況に合わせて独自の立ち位置を設定し、製品やサービスの魅力を顧客に伝えることが重要です。
顧客のベネフィットを明確化する
顧客のニーズに合わせた魅力的なベネフィットを訴求すれば、製品やサービスの需要拡大につながります。
そもそも顧客は、自分たちが必要としているものや、自分にとって役立つものを求めています。そのため、製品やサービスが提供するベネフィットを理解しやすく、受け止めやすいようにすることで、顧客のニーズに合った商品として認知されやすくなります。
たとえば、ある美容サロンが、肌の悩みを解決するための美容メニューを提供している場合、ベネフィットを「肌の悩みを解決し、美しく健康的な肌に導く」という形で明確化したとします。
このように、顧客にとって魅力的で理解しやすいベネフィットを訴求すれば、顧客に受け入れられ需要拡大につながることが期待できます。
顧客にとって魅力的で理解しやすいベネフィットを訴求することは、製品やサービスの需要拡大につながるためには欠かせません。顧客のニーズに合わせた魅力的なベネフィットを打ち出し、需要拡大につなげていきましょう。
マーケティングミックスを行う
マーケティングミックスとは、マーケティング戦略全体のなかで「実行戦略」と位置付けられ、商品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)の4つの要素を組み合わせて設計されます。
これらの要素を適切に調整すれば、顧客のニーズに応じた効果的なマーケティング戦略を実行できます。
4つの基本要素の特徴は次のとおりです。
- 商品:顧客のニーズに適した機能やデザイン、品質、特徴の提供
- 価格:顧客が支払いやすい価格の設定
- プロモーション:製品やサービスを広めるための広告や販促活動
- 流通:顧客が製品やサービスにアクセスしやすい場所の提供
たとえば、あるスポーツ用品メーカーが、新しいランニングシューズの販売を開始する場合を考えてみましょう。
その際、マーケティングミックスに基づいて行うとすれば、以下のように戦略を設定できます。
- 商品:軽量でクッション性の高いシューズを提供
- 価格:競合他社の価格や製品の特徴に基づいて適正な価格を設定
- プロモーション:ランナー向けのマラソン大会や、専門誌の広告を利用
- 流通:ランニングシューズを扱っているスポーツ用品店や、オンラインショップで販売
マーケティングミックスは、4つの要素を適切に調整することで、顧客のニーズに応じた効果的なマーケティング戦略を実行できます。ただし、これらの要素はお互いに関連しているため、バランスをとりながら実行するようにしましょう。
マーケティング戦略で役立つフレームワーク5選
最後に、マーケティング戦略で役立つ代表的なフレームワークを5つご紹介します。
- STP分析
- SWOT分析
- PEST分析
- 4P分析
- 3C分析
フレームワーク(マーケティング特有の考え方)を用いることで効果的な施策を講じることができるようになります。
STP分析
STP分析とは、市場を細分化することで、ターゲット層を明確にし、そのターゲット層に合わせたマーケティング戦略を立てる手法です。
まずは、市場を「Segmentation(セグメンテーション)」します。これは、市場を複数のグループに分けることで、それぞれのグループに合わせたアプローチを行いやすくするためです。
次に、各グループを「Targeting(ターゲティング)」します。要するに、どのグループに重点を置くかを決めることです。この際には、グループごとに異なるニーズや行動を理解するようにしてください。
最後に、各グループに合わせたマーケティング戦略を展開するため、「Positioning(ポジショニング)」を行います。ポジショニングでは、各グループに向けどのように自社製品やサービスをアピールするかを考え、差別化を図ることが必要です。
STP分析を行えば、マーケティング戦略を明確にでき、ターゲット層に合わせた効果的なアプローチを行うことができます。
SWOT分析
SWOT分析とは、「Strengths(強み)」、「Weaknesses(弱み)」、「Opportunities(機会)」、「Threats(脅威)」の4つの要素を分析する手法です。企業戦略やマーケティング戦略の策定において、自社の内外環境を客観的に把握するために利用されます。
SWOT分析は2ステップで行います。
- 自社の強みや弱みを分析し現状を把握する
- 自社の機会や脅威を洗い出し戦略を策定する
たとえば、自社の強みが商品品質やブランド価値であれば、それを生かしたマーケティング戦略を展開できます。一方で、弱みが人材不足や資金不足であれば、それを改善する施策を打ち出すことが必要でしょう。
SWOT分析は、自社の現状を正確に把握し、戦略を策定するための重要な手法です。ぜひ、活用してみてください。
PEST分析
PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの要因に注目して、環境分析を行うフレームワークのことです。企業戦略や市場調査、マーケティングプランの策定に利用されます。
要因 | 説明 |
政治的要因 | 政府の規制や政策の変更、政治的不安定や紛争が影響 |
経済的要因 | 株式市場や金融政策、景気やインフレ率、雇用率の変化が影響 |
社会的要因 | 人々のライフスタイルや価値観、人口構成、教育レベル、文化的背景が影響する |
技術的要因 | 新しい技術やイノベーションの登場、例えばインターネットの普及やスマートフォンの影響 |
政治的要因、経済的要因、社会的要因、技術的要因を分析し、それらの要因が企業や市場に及ぼす影響を評価することが目的です。
具体的には、政府の法律や規制、税制、景気や市場の動向、人々のライフスタイルや価値観、新しい技術の登場などを分析して、企業の競争力や市場環境の変化を予測します。
PEST分析は、企業の戦略策定やマーケティングプランの策定に役立ちますが、外部環境の変化に対応するための具体的な戦略を策定する際には、より詳細な分析が必要になることもあります。
4P分析
4P分析とは、マーケティングの基本的な考え方の一つで、「商品(Product)」、「価格(Price)」、「販売促進(Promotion)」、「場所(Place)」の4つの要素を分析することによって、商品の市場への浸透や顧客獲得に向けた戦略を立てる手法です。
- 商品:顧客ニーズに合わせた商品開発や製品の特長を明確にすることが重要
- 価格:競合他社の価格や顧客の購買力を考慮して適切な価格設定を行うことが必要
- 販売促進:広告やプロモーションなどを活用して商品の認知度を高めることが重要
- 場所:顧客の居住地やアクセスしやすい場所に販売店を設けることが成功の鍵
4P分析を行うことで、商品の市場浸透や競合優位性の確立につながる戦略を立てることができるでしょう。
3C分析
3C分析とは、競合分析の一種であり、ビジネス戦略の立案に使われます。3Cとは、「Company(自社)」、「Competitors(競合他社)」、「Customers(顧客)」の頭文字をとったものです。
自社の強みや弱み、競合他社の状況、顧客のニーズや要望を分析することで、市場の状況を正確に把握し、自社のビジネス戦略を立てることができます。
3C分析を行う手順は次のとおりです。
- 自社の強みや弱みの洗い出し
- 競合他社との比較
- 自社の優位性や改善すべき点の明確化
- 顧客のニーズや要望を把握し、それに応える商品やサービスを提供
これらのステップを踏むことで市場での競争力を高められます。
3C分析は、ビジネスの競争力を高めるために非常に重要な手法です。自社のマーケティング戦略の立案に役立ててみてください。
まとめ
マーケティングの過去の事例はそれぞれの時代背景があって成立するので、同じことをやれば成功するというわけでは決してありません。また、最近ではデジタル要素が占める比重も大きくなっており、過去とは状況が異なります。
とはいえ、マーケティングの発想となる本質部分は普遍であり、これらの成功事例で学びたいものは着眼点であり、それを確信を持って実行するに足る分析や調査の徹底ぶり、そして勇気ある決断です。
マーケティングの世界に、予定調和はありません。確信を持ったマーケターの周到な分析・調査とそれにもとづいた斬新で合理性があるアイデアが、マーケティング戦略の生命線です。
そういう観点で、今回ご紹介した成功事例を参考にしていただき、ご自身が取り組む案件のマーケティング戦略にぜひ活かしてください。
また、当メディア「kyozon」ではマーケティングに役立つ、さまざまなサービスの資料が無料でダウンロードできます。ぜひご利用ください。
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