登壇者のプロフィール
伊藤忠商事株式会社および伊藤忠テクノソリューションズ株式会社を経て、2012年より伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(ITV)にて、メルカリ(4385)、ユーザベース(3966)、Box(Ticker:BOX)、Muse&Co(Mixiが買収)、WHILL、TokyoOtakuMode、Fab(全損)等国内外ITベンチャーへの投資および投資先企業へのハンズオン支援に従事。 2015年3月よりセールスフォース・ベンチャーズ 日本代表に就任しSansan(4443)、freee(4478)、Visional(4194)、Goodpatch(7351)、Yappli(4168)、フレクト(4414)、Andpad、カケハシ、スタディスト等B2Bクラウド企業へ投資。2020年4月にOne Capital株式会社を創業、代表取締役CEOに就任。
慶應義塾大学経済学部卒業、マサチューセッツ工科大学にてMBA取得。
1998年アクセンチュア株式会社へ入社。中央官庁や大企業向けのITコンサルティングプロジェクトに従事。
2003年、株式会社チェンジを設立し、代表取締役兼執行役員社長に就任。
1969年、大阪府生まれ。甲南大学法学部を卒業後、広告代理店の営業部長を経て、2000年にインターネット広告を手掛けるアイブリッジ株式会社へ入社。
2007年9月、アイブリッジ株式会社、アドデジタル株式会社、アカラ株式会社、ブランド総合研究所という4つの会社を束ねるグループ会社へと成長した同社の社長を辞し、株式会社コミクスを設立し、代表取締役社長に就任。
VCから見た「伸びるSaaSスタートアップ」の特徴とは
VCから見た伸びるSaaSスタートアップの特徴について説明します。
1つ目は「逆算思考&因数分解力」の思考が成功している方の共通項ということです。
たとえば1億円のARR(Annual Recurring Revenue(年次経常収益))を獲得するのなら、今日明日明後日、来月と何をするのがざっくりとなりますね。
・1000件のリードが必要、200件の商談が必要。
・そうすると10件受注できます。単価は5,840円。
・これを「翌月に5%ずつくらいで成長させていきます」
というのは空でも言えるわけです。
3人採用します。そのために頑張っていろんな求職サイトに載せます。
ということではなくて、
・どこのファネルから来ると内定率と辞退率がバランスされていますか?
・そうすると入社した人はどのチャネルから来た?活躍してますか?
・入社して何ヶ月間で初受注させようとしていますか?
・その時に1人あたりのノルマって何が適正値ですか?
という質問がやっぱり投資家って知りたいんですよね。
そういうのも全部、逆算。自社のユースケースに基づいた逆算でいいんですけど。
これをやった方が良いというのと、それをやっていないときついっていうのがあります。
あとは「プロダクトのStickyさを測っている」。
さっきの因数分解にも通じるんですけど、AirtableもNotionも、Zoomも利用しているということは、ログデータがあるんですよ。
どのようなアクセスをしているユーザーは、緑でハッピーで、どういうのがレッドなのか、黄色なのか。これをヘルススコアと言うんですけど、これを各プロダクト毎に違うんですけど、3つやっぱり共通する測り方があって。
1つ目はログイン率、2つ目がデータをどれだけ貯めているか、3つ目が高度な機能を使っているか。たとえばダッシュボードなんですけど。
この3つはどのSaaSでも共通的に見るべきポイントですね。解説を軽くすると、やっぱりログインをしていないと言うことは「何かがよくなかった」ということですよ。また、ログインしていてもデータを貯めていっていないと言うのはあまり良くないです。
データを貯めていれば「この角度とこの角度でダッシュボードを作りたい。」という候補タイプになる訳です。要するに、3つのログをちゃんと測っておけば、この赤、黄色、緑に分けられます。
このダッシュボードデータを見て経営をすれば、「先手」で赤になっていたとしても、すぐにチームをオンラインでも良いので送ることで、黄色にアップデートする、緑にアップデートするということができるんですけど、契約のスタートとエンドだけ見ていて「3ヶ月前だから連絡しよう。」というのは、真っ暗闇のところにいきなりアップセルしてこいみたいな話でして。
そのよくあるって言うのが、まだ日本の伸び代があるということなのかなと思います。
最後ですけど、3つ目はプロダクトを通じた売り上げの方がやっぱりスケールするんですよ。
なので、これは売り上げの8割くらいをサブスク売り上げで構成すると良いですよという話です。優秀なコンサルタントとかが起業していたりすると、自分の元仲間を採用して、すごいデックを作れるんですよ。
そうするとコンサル売りができてしまうので、この辺を頼ってしまうと危険。
SaaSは無料で安く手軽に誰でも使えるから挑戦するべき
最後に1つ目で申し上げた「逆算思考&因数分解力」ですね。
ここが必要なんですけど、これを実現するツールがExcelだったら、そこって私たちが開発しているprojection-aiみたいなもので解決できますよね。
未達の事業計画が世の中に多すぎるんですよね。
原因は色々あると思うのですが、僕らとしてはExcelなどで細かいパラメータを作るのがゴールとなっています。
でもそれは必要でありながらも、細かすぎて見られなくなるじゃないですか。
ということは、「ツールが足りていないんだ」と思うんですよね。
今はダイエットアプリってたくさんあるじゃないですか。
そこからインスピレーションをもらっています。
ライザップとかすごい会社だと思っていて、「2カ月後に20キロ痩せる」とか決めるじゃないですか。月次、週次、日次に落として、それであとは日次を頑張ってやると思うんですけど、半分くらい出来れば良いなという感じで1週目はやるじゃないですか。
そこでパーソナルトレーナーとダイエットした人がいるわけですね。
ということは、それを起業家と投資家をそのような関係性に持っていきたいなと。
1つはSaaSは無料で安く手軽に誰でも使えるので、そこはぜひ挑戦していただきたいです。
ビジネスモデル上、嘘がないのでプロバイダー側にとって。ちゃんと提供すると、お客様自体にメリットが大きいからですね。
2つ目は自分自身も起業したので、リスクを取ることのリターンはあるのでそれを強調したいです。
国内SaaSが大きく変わるポイントを理解することが重要
今回浅田さんが仰っていたところで、特に経営者が注目しないといけないポイントは「法人向けのソフトウェア産業の構造変化」だと思います。
「これまではほとんどの会社がオンプレ、カスタムメイドで業務システムを作っていました。」と言う話をされていたと思うんですが、この業務システムはどんどんSaaS化していくと思うんですよ。
ここが重要なポイントで、共通的な人事とか経理だとか、競争力を決めないものに関してはどんどんSaaS化していくという話と、競争力を決めるものに関しては内製化していく。
これからの日本のソフトウェア産業が大きく変わるポイントをちゃんと理解しているかが、極めて重要ですね。
SaaSが普及していくことが、日本の法人向けIT産業が変わっていく一番のポイントですよね。
そこに大きな合理性があるというのが、事例を交えていたのでコンパクトにまとまっていたのでよかったと思います。
投資家も自分達の投資先のプロダクトを楽しそうに語っていたので、社長はもっと突き抜けていないといけないと思います。自分達の製品に対する愛や、並々ならぬ情熱やエネルギーを注いで「我々のこのプロダクトはこんな風に世の中を変えるんだ」「我々のプロダクトがあるとこんな風に働き方が変わるんだ」と社長が信じて、それを1つずつ粘り強く形にしていくというのが、SaaSプロダクトの経営者には求められると思います。
あの熱量で、いかにも「このプロダクト大好きなんです。」というのが伝わってきたじゃないですか。
その上でSaaSのビジネスの変遷だとか、どういう風に発展していかなければいけないのかと言うところのマクロな部分。マクロ環境の話というのが本質をついていて、ここから先の日本のSaaSって3.0を目指していかないといけないんですよ。
いわゆる、「システムオブエンゲージメント」というところのノーコード・ローコードに代表されるような「自らものが作れる、自らクリエイターになれる、自ら事業者になれる」というこの世界観をサポートするプレイヤーがどんどん出てくると、日本のSaaSシーンは盛り上がります。
「ユーザーがいかに主役の世界を作るか」というところかと思っていて。
ベンダーとユーザーというところで、今まではベンダーや専門家を介さないとシステムを修正できない世界があると思うんですけど。
Notionなんかは、「Wordが使えればウェブサイトが作れる」仰っていたと思うんですけど、まさにあれですよ。
あの世界観が一番重要で、今まで専門家などの作り手が主役だったものがユーザーに対してエンパワーされていく。
ユーザーに対してパワーが移っていくのがSaaSビジネスの本質です。
YouTubeがひとつのきっかけとなって、「素人がプロを凌駕するような世界」になってきたと思うのですが、それってITの世界にもいえると思うんです。競争軸が変わってくるんですよね。
特にコンシューマー向けのマーケット、BtoCのビジネスに関して言うと大きく変化していきますよね。
YouTubeがひとつのきっかけとなって、「素人がプロを凌駕するような世界」になってきたと思うのですが、それってITの世界にもいえると思うんです。
競争軸が変わってくるんですよね。
特にコンシューマー向けのマーケット、BtoCのビジネスに関して言うと大きく変化していきますよね。
これからの法人向けSaaSに求められる力は?
今回の法人向けのSaaSというのは、業務や業種のナレッジがこれから先必要だと思います。
人事や経理のような既存SaaSの領域は、ある程度業務が想像しやすくて標準化されていると思うんです。これから先、建設業の図面の管理や病院の診断、電子カルテのような、それぞれの業種の中での特殊な業務を掛け合わせた領域に「業種特化型」や「業務特化型」のSaaSができていく中で、競争の軸が良いプロダクトを作っていくという中で、誰でも使うオンラインミーティングツールや、採用支援ツールがより細分化されてきたり、より具体的な業務支援に入り込んでいくんですよね。
そこを考えた時に重要なのがプロダクトを愛して、プロダクトを改善していくためのノウハウや、そこにパワーを割けるかというところと同時に、その業界をどこまで知っているか、業務をどこまで理解しているかが併せて重要になってきますよね。
人事システムが何千億市場、会計システムが何千億市場という風にファンクションベースでSaaSを語るのと、図面管理のような特定業種の特定業務みたいなところにマーケットが広がっていくというか、SaaS製品が既存の大きいオンプレベースのカスタムメイドで作っていたシステムをがさっと塗り替えていくので、塗り替える場所が自分の会社がどこなのかという。
今まではわかりやすくHRテックは人事システムのリプレイス、しかも人事システムというのは今までは色々な従業員の情報を貯めていくだけだったものが、レファレンスチェックのような足りなかった機能まで含めて人事システムがSaaS化することによって、より便利な人事業務の世界があるわけじゃないですか。
そこって今までの人事の基幹システムというのがどんどん色々なSaaS製品によって塗り替えられていくという姿なんですけど、今は人事とか経理とかという、どちらかというとどこの会社にも発生するような業務や、どの会社でも持っているようなシステムがSaaS化されて塗り変わっているわけですけど、これから先はもっと細かくなっていく。
細かいといっても意外と市場規模は大きいんですよ。
まとめ
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