BtoBとBtoCは購買プロセスが異なる
BtoC企業の顧客は個人消費者なので、購入を検討する人と最終的な意思決定を行う人は同じであり、購入までの検討期間も短いです。そのため、カスタマージャーニーマップも比較的作りやすい傾向にあります。
しかし、BtoB企業の場合は顧客も企業なので、購入に至るまでの検討期間が長いことに加え、購入を検討する人、決裁権を持つ人、さらには実際に商品やサービスを使用する人が異なります。
このように、実際に商品やサービスを購入するまでに関与する人が多いので、キーとなる人物はもちろん、そのキーパーソンを取り巻く関係者のことも具体的に想定していく必要があります。
カスタマージャーニーマップを作成するメリット
作成に手間がかかってしまうカスタマージャーニーマップですが、作成することで以下のようなメリットもあります。
メリット1:顧客の購買行動が可視化できる
どうすれば顧客に自社の商品やサービスを購入してもらえるのかを考えるとき、つい顧客が購入を決断する段階に着目してしまいがちです。
しかし、顧客は購入に至るまでに、課題の認知、ニーズの高まり、解決策の捜索などさまざまな段階を経ています。
カスタマージャーニーマップは、そういった顧客の購買行動を可視化できることはもちろん、各段階で顧客が抱える課題なども考えやすくなります。
メリット2:顧客視点のマーケティング施策が実現できる
カスタマージャーニーマップを作る際は、「リサーチ段階にいる顧客は、何を考えながら情報を集めているのか」など顧客の感情や行動をつぶさに考える必要があります。
当然ですが、漠然とした顧客像しか思い描けていなかったときよりも、顧客にじっくりと向き合ったときの方が、どんな情報を求めているのか、その情報はいつほしいのか、などをより具体的に考えることができます。
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客視点のマーケティング施策を実現することができます。
メリット3:認識の共有ができる
BtoBビジネスの場合、購入するまでに多くの人が関与する、ということは先ほど説明しましたが、売り手側も多くの人が関与しています。
自社の商品やサービスを購入してもらうためにはどんな施策が必要なのか、どこをアップグレードさせていけば他社と差別化できるのか、などを考えるためには多くの部署の担当者が関わってきます。
関わる人が多くなればなるほど、認識にズレが生じやすく、期待していた成果物が得られないこともあります。
それを防ぐために効果的なのが、カスタマージャーニーマップです。
顧客との接点や感情、購買に至るまでの行動などがわかりやすくマップに落とし込まれているので、さまざまな部署の人と認識を共有しやすくなります。
カスタマージャーニーマップの作成手順
ではここからはカスタマージャーニーマップの作成手順を解説していきます。
手順1:テーマを設定する
カスタマージャーニーマップを作成する際に設定しておくべきテーマとしては、「顧客に購入してもらいたい自社の商品・サービス」「顧客のスタートとゴール時点で状態」「スタートからゴールまでの期間」です。
たとえば、購入してもらいたいものが自社で独自に開発したアクセス解析ツールだった場合、以下のようにテーマを設定することができます。
商品・サービス | 自社で開発したアクセス解析ツール |
スタート | サイトを作ったはいいものの、コンバージョン率が思ったように上がらない。 具体的に何を改善すべきなのかがまだわかっていない。 |
ゴール | ツールを導入したことで適切な施策が行えるようになり、コンバージョン率が上がった。 |
期間 | 3か月 |
手順2:ペルソナを設定する
BtoCの場合はペルソナが個人ですが、BtoBの場合は、ターゲットとなる「企業」そしてその企業に所属しており、意思決定に大きな影響力を持つ「個人」の2つのペルソナを設定します。
企業ペルソナを設定する際に必要な情報
企業名、売上規模、従業員数、業種、取り扱っている商材、企業風土、事業における課題など
個人ペルソナを設定する際に必要な情報
年齢、性別、家族構成、居住地、趣味、よく使用するSNS、使用しているデバイスなど(個人属性)
所属部署、役職、勤続年数、業務内容、決裁権の有無、業務上の課題など(企業内属性)
また、BtoBは購入に至るまでに複数の人間が関与しますので、購買関係者一覧というものもあわせて作成しましょう。
先ほどのアクセス解析ツールの例で購買関係者を考えると、ツールの導入を検討している当事者、ツールを実際に使う部門に所属している人、経営者などが挙げられます。
先ほども少し述べましたが、BtoBの場合は商品やサービスを購入するまでに関与する人が多いのでキーパーソンを取り巻く関係者のことも具体的に想定しましょう。
手順3:顧客行動を洗い出す
手順1で設定したスタートからゴールまでに、顧客がどのような行動をとるのかを洗い出していきます。
たとえば、自社サイトのコンバージョン率が上がらなくて悩んでいるペルソナは、最初にどのような行動をとるでしょうか。
コンバージョン率を上げるための方法を検索したり、外部顧問に相談したりするかもしれません。
コンバージョン率を上げる方法はいろいろありますが、仮にアクセス解析ツールの導入が効果的と気づいた場合、次はどのような行動をとるでしょう。
このように顧客の行動を考察して洗い出します。
手順4:行動をステージにわける
顧客の行動が洗い出せたら、時系列に沿って、ステージごとにわけていきます。
わけ方にルールなどはありませんが、一般的には以下の8ステージにわけることが多いです。
認知 | 運営しているサイトのコンバージョン率の低さから改善の必要性を感じる |
情報収集 | コンバージョン率を上げるためにはどうすればいいか検索する |
比較検討 | アクセス解析ツールでコンバージョンに至るまでのユーザーの行動を知ることが重要と気づき、さまざまなアクセス解析ツールの特徴を比較する。 |
意思決定 | ピックアップしたツールの中から、コスト面と機能面のバランスが取れたツールを選択する。 |
稟議・承認 | 稟議用資料を作成し、社内で選択したツールの説明を行い、問題なければ承認される。 |
購入 | ツールの使い方を確認する。 |
評価 | 導入したアクセス解析ツールを使用し、ユーザーの離脱ポイントやサイト内での動きを把握する。 それにより効果的な施策を打ち出し、コンバージョン率が改善する。 |
リピート | ツールを継続利用し、さらにコンバージョン率を上げていく。 |
手順5:顧客の感情変化を考察する
行動をステージごとにわけたら、次は顧客の感情変化を考察します。
感情まで考える必要があるのか、と思う方もいるかもしれませんが、BtoBの場合も会社に所属した「人」を相手にします。
そのため、顧客の感情まで掘り下げられると、より効果的なマーケティング施策を行うことができます。
手順6:自社との接点を作る
これまで、顧客のステージごとの行動や感情の変化などを考えてきたわけですが、手順6では自社が取るべき行動を考え、顧客との接点を作っていきます。
具体例として、「アクセス解析ツール おすすめ」と言ったキーワードで検索した顧客が複数社のアクセス解析ツールを見比べ、気になったものに関しては資料をダウンロードするとします。
自社の商品やサービスに関しての資料をダウンロードしてくれた顧客は、詳細な説明を求めている可能性が高いので、積極的にコンタクトをとって、接点を作りましょう。
また、解決策をWebで探す顧客が多いので、サイトに問合せフォームを設置しておけば、自社との接点を作ることができます。
手順7:対応策を考える
顧客が購買に至るまでに「取る行動」「感情の変化」そして「自社との接点」とカスタマージャーニーマップに必要な要素がそろったわけですが、全てそろった状態で再度見直すと、新たな課題を発見することがあります。
たとえば、マップを横で見直したとき、顧客の行動ステージの流れが不自然、感情の起伏が極端すぎる、自社との接点をもっと増やすべきなどの課題が出てくるかもしれません。
一方、マップを縦に見直すと、ステージごとの顧客の行動、感情、自社との接点が確認できるので、顧客がこういった感情を抱いているときに、自社の行動やサポートは本当に適切なのか、といった課題が見つかることもあります。
KPIの設定方法はこちらをご覧ください。
作成後はPDCAサイクルが必要
手間も労力もかかるカスタマージャーニーマップを作成したことで、満足してしまう方も多いのですが、カスタマージャーニーマップは作って終わってしまっては非常にもったいないです。
まったく別の視点から考えれば、新しい施策や接点があるかもしれません。こまめにカスタマージャーニーマップをブラッシュアップさせることで、より顧客目線のマーケティング施策を展開できる可能性を秘めていますので、1回作成して終わりではなく、PDCAを回していくようにしましょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の購買行動の可視化、顧客視点のマーケティング施策の実現、チーム内での認識の共有などが可能になるため、BtoB企業においてもやる価値は大いにあります。
ただ、BtoCに比べるとBtoBは購入するまでのプロセスがやや複雑であるということは理解しておきましょう。
初めて作成するとなると手間も時間もかかりますが、じっくり顧客に向き合うことで、適切なアプローチの仕方が見えてくるので、企業としてはプラスになります。
ぜひ作成後もブラッシュアップを続け、より顧客目線のマーケティングができるようにしましょう。