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チャーンレートとは?基本的な定義と重要性
チャーンレート(Churn Rate)とは「解約率」のことで、一定期間内にサービスを解約したユーザーの割合や、解約によって失った収益の割合などを指します。
チャーンレートの重要性
月額利用料金が発生するサブスクリプションサービスや、定期購入の商品・サービスなどは、継続利用を前提としているため解約せずに継続してもらうことで収益が増加します。
どれだけ新規顧客を獲得しても、チャーンレートが高ければ収益につながりません。逆に、サービスに満足していればチャーンレートは低い数値になり、収益が増加して事業が成長していきます。つまり「顧客満足度が高ければチャーンレートは下がる」という相関関係になっています。
チャーンレートが高い場合は、チャーン(解約)が発生する原因を突き止めて早急に対策を打ち出すことで改善が見込めます。
このように、チャーンレートは企業の収益や成長を測る重要な指標であり、高い場合は下げるための対策が必要となるのです。
チャーンレートの種類と計算方法
チャーンレートは、顧客数ベースでの計算方法や売上金額ベースでの計算方法など、複数の種類があります。主に、以下のチャーンレートがよく使われています。
それぞれの定義と計算方法を解説します。
1.カスタマーチャーンレート:顧客数に基づいて算出
カスタマーチャーンレートは、顧客数に基づいて算出するチャーンレート(解約率)です。特定期間内に契約している顧客数から、その期間内に解約した顧客数を割り出して算出します。
カスタマーチャーンレート =(特定期間内に解約した顧客数 ÷ 期間開始時の契約顧客数)÷ 100
2.アカウントチャーンレート:アカウント数に基づいて算出
顧客数とアカウント数は必ずしも比例するとは限りません。会社やチーム、家族で1アカウントを共有している場合や、1人で複数のアカウントを保有している場合もあります。そうしたサービスでは、契約しているアカウント数に基づいて解約率を算出するアカウントチャーンレートが活用されます。
アカウントチャーンレート =(特定期間内に解約したアカウント数 ÷ 期間開始時のアカウント数)÷ 100
3.レベニューチャーンレート:収益金額に基づいて算出
レベニューチャーンレートは、収益金額に基づいた解約率を指します。解約による収益の損失だけでなく、ダウングレードによる損失も計算されるため、複数の料金プランを設けているサービスで活用されます。
カスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートは同じ数値になるとは言えません。たとえば、大口契約の顧客が解約してしまった場合、カスタマーチャーンレートは低いですがレベニューチャーンレートは大きくなります。そのため、どちらも算出して、事業の状況や成長度合いを見ていく必要があります。
なお、あくまでも既存顧客の収益をベースにするため、新規顧客による収益分は計算に含みません。
レベニューチャーンレートには、さらに「グロスレベニューチャーンレート」と「ネットレベニューチャーンレート」の2種類があります。
グロスレベニューチャーンレート:損失額に基づいて算出
グロスレベニューチャーンレートとは、特定期間内の解約・ダウングレードによる損失額から収益全体にどのくらいの影響があったか算出するチャーンレートです。
グロスレベニューチャーンレート = 特定期間内の損失額 ÷ 期間開始時点での収益額 × 100
ネットレベニューチャーンレート:損失額と増収額に基づいて算出
ネットレベニューチャーンレートは、特定期間内の解約・ダウングレードによる損失額だけでなく、その期間内のアップセル・クロスセルによる増収額も計算に入れます。そのため、損失額よりも増収額のほうが上回ればチャーンレートはマイナスの値となり「ネガティブチャーン」となります。
ネットレベニューチャーンレート =(特定期間内の損失額 - 期間内の増収額)÷ 期間開始時点での収益額 × 100
チャーンレートの目安
チャーンレートの目安は、業種や料金体系、サービスの認知度、BtoB/BtoCなどによって異なるため、目安としては「3~10%」と幅広く設定されています。
チャーンレートは低い数値であるほど、サービスに対する顧客のロイヤルティが高いと判断できますが、目安となる数値は企業によって異なります。まずは、過去のデータから毎月・3カ月ごと・半期ごと・期ごとなどのチャーンレートを算出し、自社の平均値を把握しましょう。
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チャーンレートが高くなってしまう主な原因
改めてチャーンレートを算出すると、予想よりも高い数値になっていて驚いたということも珍しくありません。チャーンレートの分析では、その数値を算出するだけでなく、高くなっている(解約が多い)原因を特定して適切な対策を講じる必要があります。
それでは、そもそもなぜチャーンレートが高くなるのでしょうか。解約が増える主な理由を見ていきましょう。
原因1|期待以下の顧客体験
サービスを導入しても、顧客体験が期待しているよりも良くない場合に満足度が低下し、解約につながりやすくなります。期待以下の顧客体験とは、具体的に以下のような例があります。
- 使いにくい
- 自社で必要な機能が不足している
- サービスの必要性がなくなって使う機会が減った
- なくても困らない
- サポートやカスタマーサービスの質が低い
サービス導入当初は自社の課題を解決できると期待していたものの、実際に使ってみると上記のように「使いにくい」「機能が足りない」などの不満が出てきて、そのサービスに対する満足度が低下するため、解約につながってしまいます。
原因2|ビジネス環境の変化とその影響
ビジネス環境の変化により、もっと魅力的なサービスが登場したり、そのサービスを使う機会が減ったりすると、解約につながるでしょう。
- 他社のサービスの方が魅力的
- 法律や規制が変わった
- このサービスはトレンドに合っていない
- 経営方針が変更になり、サービスがマッチしなくなった
ビジネスを取り巻く環境はめまぐるしく変化しているため、サービスの改善やサポート体制の強化をして、ビジネス環境にマッチする価値を提供し続けなければなりません。
原因3|コストの問題
コスト面で不満を抱き、解約する顧客も少なくありません。
- 利用料金が高い
- 費用対効果が見合わない
- 運用が定着するまでに時間がかかるため、人件費や教育費がかかる
このように、単純にサービスの利用料金だけでなく、サービス自体が使いにくいために従業員が使い慣れるまでの教育コストがかかる場合にも、解約を検討せざるを得ないでしょう。
チャーンレート改善戦略のポイント
チャーンレートが高い数値であれば、早期の改善が必要です。もし低い数値だとしても、それで安心するのではなく、低い数値を維持するための取り組みを継続すべきでしょう。
そこで、ここではチャーンレート改善に向けた戦略を立案する際のポイントを紹介します。
ポイント1|原因を特定する
まずは、解約が増えている原因を特定しなければなりません。顧客から解約の申し出があった際には、なぜ解約を検討しているのかヒアリングしましょう。原因を特定しなければ適切なアクションを打ち出せないため、明確な原因を突き止めることが重要です。
ポイント2|既存顧客のニーズを常に把握する
既存顧客と定期的にミーティングを行い、サービスに対する不満や要望がないか、ニーズを吸い上げていく取り組みも必要です。顧客のニーズを吸い上げることで、現状の満足度を把握するだけでなく、「自社サービスを使ってどのような状態になりたいのか」という期待値や、「その期待に対してどのくらい達成できているのか」という達成度も把握できます。顧客視点を理解し、自社と顧客の間にギャップが生じていないか見極めましょう。
ニーズを把握できていれば、解約を検討している顧客にも迅速に対応して、解約リスクを軽減できるという効果もあります。
ポイント3|ニーズに沿ったアプローチをする
顧客によって「使い方がわかりにくい」「組織での定着が進まない」など、課題やニーズは異なります。そうしたニーズに寄り添ったアプローチを設計することで、チャーンレートの改善が見込めるでしょう。
たとえば、「使い方がわかりにくい」という顧客には、顧客自身で使い方を学べるようにマニュアルやチュートリアルなどのコンテンツを用意したり、勉強会やミーティングなどで使い方をレクチャーしたりする必要があります。
ニーズを把握するだけでなく、そのニーズに沿ったアプローチをして満足度を高め、チャーンレートを改善につなげましょう。
ポイント4|顧客へのサポートに投資する
チャーンレートを下げるには、サービス自体の機能追加や改良が必要です。しかし、顧客のニーズによっては、適切なサポートをしていればサービス自体の改良を行わなくてもチャーンレートを改善できる可能性があります。
たとえば、「自社で求めている機能がない」という顧客がいたら、サービスにその機能の追加を検討する企業が多いでしょう。しかし、既存の機能を応用することで、顧客のニーズに対応できる場合もあります。
単に、サービスをアップデートしたり利用料金を低くしたりするだけでなく、顧客へ手厚くサポートしていれば対応できるケースも少なくないため、サポートを充実させるのも一案です。
ポイント5|プロダクトを磨く
チャーンレートを下げるためには、戦略を磨くだけでなく、プロダクトそのものの品質向上が不可欠です。どんなに優れた顧客獲得戦略を立てても、提供する製品やサービスが顧客のニーズを満たさなければ、長期的な顧客維持は困難です。
顧客フィードバックを積極的に収集し、ユーザビリティの改善や新機能の追加を継続的に実施することで、プロダクトの価値を高めましょう。競合他社の動向にも注目し、市場の変化に柔軟に対応できる製品開発体制を整えることが、持続的な顧客満足度向上とチャーンレート低下につながります。
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チャーンレートを下げるための具体的なアプローチ
それでは、チャーンレートを下げるための具体的なアプローチ・施策を紹介していきます。
比較的すぐに実行できる「短期的なアプローチ」と、中長期的な取り組みが必要になる「長期的なアプローチ」に分けて見ていきましょう。
短期的アプローチ
まずは短期的なアプローチ方法を紹介します。
短期施策1|マニュアルやチュートリアルの作成
使い方や活用方法がわからずに不満を抱く顧客は少なくないため、使い方がわかるようなマニュアルやチュートリアルなどのコンテンツを作成しましょう。
マニュアルは、実際のサービスの画面に沿って説明すると親切です。また、FAQ形式でまとめられていると、顧客が求める情報にたどり着きやすくなるため利便性が向上するでしょう。
チュートリアルに関しては、作成するのにスキルが必要となるため、チュートリアル作成ツールを活用するのも一つの手です。ツールを活用することで、見栄えがよくわかりやすいチュートリアルを効率的に作成できます。
短期施策2|初期費用や料金体系の見直し
コストが原因でチャーンレートが高い場合は、初期費用や料金体系を見直してみましょう。
- 機能面とのバランスが取れているか
- 競合他社と比較して高すぎないか
- 料金プランが複雑すぎないか
このような視点から自社サービスの価格が適切か判断し、状況によってはテコ入れをすることも重要です。ただし、価格が低すぎるとサービス品質を維持できなくなる可能性もあるため、注意深く検討する必要があるでしょう。
短期施策3|定期的な顧客とのコミュニケーション
顧客のニーズや課題を把握して解約リスクを事前に回避するためには、定期的な顧客とのコミュニケーションが欠かせません。
電話やメールでのサポートのほか、SNSでの情報発信や、定例ミーティングの実施、アンケートによる調査など、さまざまなチャネルからコミュニケーションを図って関係性を構築しましょう。
短期施策4|サポート体制の強化
サポート体制を強化して顧客の問い合わせや不満にスピーディに対応することで、チャーンレートを改善できるケースもあります。
たとえば、電話やメールでのサポートのみの場合、「電話がなかなかつながらない」「メールの返信が来ない」などのストレスが生まれる場合も。また、平日の10時から18時までしか問い合わせ窓口を開いていない場合には、営業時間内に問い合わせできない顧客もいるため、解約リスクが高まります。
チャットやLINEなど手軽に問い合わせできる窓口を増やしたり、チャットボットを設置して問い合わせ対応を自動化したりするなど、サポート体制を強化しましょう。
短期施策5|フィードバックを活用する体制の構築
顧客からの要望や改善などのフィードバックは、事業を成長させるための大きなヒントになります。また、迅速な対応によって顧客の満足度も向上して解約を防げるため、フィードバックを社内に展開して活用する体制を構築しましょう。
各部門が連携しやすいよう、普段からコミュニケーションを取り合ったり、各部門のツールを連携して情報共有しやすくしたりするなどの取り組みが必要です。
長期的アプローチ
次に、中長期的に取り組むアプローチ方法を解説します。
長期施策1|サービス品質の向上
サービスの使い勝手を良くして品質を向上することで、サービス自体に不満を抱いている顧客の解約リスクを防げます。
ヒアリングやアンケートなどで顧客の不満や要望を吸い上げ、サービス改善に役立てましょう。また、問い合わせ窓口に寄せられた顧客の声を分析すると、サービスの改善点が見つかる場合もあります。時には競合他社のサービスも調査し、自社サービスが劣っている部分を分析して改善していくこともポイントです。
長期施策2|オンボーディングの強化
導入してすぐの顧客が解約してしまうと、収益よりも獲得コストのほうが上回ってしまい赤字になることも。早期にサービスを使いこなせるようになり、「このサービスがなくてはならない」という状態にするために、オンボーディングを強化しましょう。
オンボーディングが完了している顧客は自らサービスを活用していける状態のため、解約リスクが軽減します。
▼オンボーディングを効率良く進められるサービスを一挙ご紹介!
長期施策3|顧客ロイヤルティプログラムの設計・運用
顧客のロイヤルティを向上して、サービスへの愛着度が高い「優良顧客」に育成できれば、解約リスクが大きく減るためチャーンレート改善が見込めます。
- 継続期間に応じた割引
- 金額に応じたポイント付与
- 会員ランク
- SNSや口コミの投稿に対するインセンティブ
- リピート特典
- 紹介キャンペーン
- 優良顧客のみのシークレットセール
このようなロイヤルティプログラムを設計して運用していくと、顧客との継続的な関係構築につながり、チャーンレートにも影響するでしょう。
長期施策4|PDCAサイクルの構築
チャーンレートはすぐに大きく改善できるわけではなく、長期的に改善されていくものです。PDCAサイクルを構築し、顧客満足度やサービス利用状況などのデータを分析して現状を把握し、サービス品質やサポート内容を改善していきましょう。
データを集計・分析するためのツール活用も必須です。適切なツールの活用により、顧客データやアクションデータなどを蓄積して効果を分析できるため、PDCAサイクルが効率化・迅速化します。
長期施策5|カスタマーサクセスチームの立ち上げ
顧客からの問い合わせに受動的に対応するのではなく、能動的に働きかけて顧客の解約を事前に食い止めるためには、顧客の成功体験へと伴走する「カスタマーサクセス」チームの立ち上げがおすすめです。カスタマーサクセスについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
▼カスタマーサクセスの立ち上げに役立つ記事はこちら!
まとめ:チャーンレートを下げるには正確な原因特定と継続的な改善が重要
チャーンレート(解約率)は、事業が成長しているかどうか判断するための重要な指標です。チャーンレートが高い場合には、原因を特定して早急に対処する必要があります。
チャーンレートが高い理由には、サービス自体の問題だけでなく、コストやサポートなどさまざまな原因があります。まずは原因を特定し、顧客のニーズに沿ったアクションを実施しましょう。
また、チャーンレートはすぐに改善できるわけではなく、継続的な取り組みにより成果が出ます。カスタマーサクセス導入やオンボーディング強化などはすぐに始められる施策ではありませんが、ツールを活用することで効率的に実行できます。
以下の記事で紹介しているオンボーディングツールを活用し、効率的な顧客対応を実現してチャーンレート改善へとつなげましょう。
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執筆 :西 並子
編集・図解:平山 理沙