ネットリサーチを実施する際の注意点
ネットリサーチは、従来の紙で行うアンケートとは異なり、インターネット上で行う調査になります。そのため、調査対象者が絞られたり、回答者層が異なったりする場合があります。
また、調査票の内容によって精度が低くなる可能性や、プラットフォームのユーザー登録方法や管理体制によっては不正な回答のリスクなども生じてきます。ネットリサーチを実施する上で発生し得る可能性について、具体的に確認していきましょう。
調査対象者はインターネット利用者に限定される
ネットリサーチは、インターネット上での実施である以上、調査対象者がインターネットを利用している人に限定されます。そのため、ネット利用率が低い層のデータ収集には向いていません。
一方で、ネット利用者数は増加しています。総務省の情報通信白書によると、2021年のインターネットの利用率(個人)は82.9%であり、2013年に利用率80%を超えてから概ねその水準が維持されています。このように、ネット利用は浸透傾向にあり、それに比例して調査対象者も増えてきているのは確かと言えます。
デバイスによって回答者層が異なる
使用するデバイスによって、回答者の層が異なるという点にも留意が必要です。一般的に、若年層は主にスマートフォンやタブレットを利用し、パソコンをほとんど使わない場合もあります。逆に高齢層にとっては、パソコンの方が親しみやすく、アンケートなどの作業をする場合にもこちらの方が操作しやすい場合もあるでしょう。
このようなデバイスによる利用者層の違いがあることを加味せず、いずれか1種類のデバイスのみでの回答に絞ってしまうと、回答者層に偏りが生じたり、十分な回答数を確保することが難しくなったりする可能性があります。ネットリサーチの実施においては、このようなデバイスによる利用者層の違いも把握しておくべきと言えます。
質問項目が多すぎると精度が低くなる可能性がある
どのような内容・ボリュームのアンケートを実施するかにも注意が必要です。例えば、ページ遷移を伴うリサーチをした場合、回答者は全体の質問数を把握することが難しくなります。あまりにも質問項目が多すぎると、回答意欲が低下し、回答数が減ってしまう可能性があります。また、回答者が疲れて回答の精度が低下するリスクも発生します。
このような課題には、質問数を示したり、目安の回答時間を表示するなどの対策を実施しましょう。
不正回答のリスクがある
調査の実施方法によっては、回答者のプロフィールが実際と異なったり、虚偽の回答内容が含まれたりする可能性もあります。このような問題が発生する要因として、匿名登録が許可されたネットリサーチサービスが存在していること、調査員による確認や監視が行われないことなどが挙げられます。
不正回答のリスクを低下させるには、信頼性のあるリサーチ会社に依頼することが1つの方法です。実名登録や本人確認を実施しているサービスなどであれば、回答者の属性を検証するシステムが整備されているので、信頼性の高いデータを集めることができます。
また、十分な回答数を集めることも、データの信頼性を高めるために重要な対策です。
ネットリサーチの精度を高める対策
ネットリサーチを実施する上での注意点を見てきました。では、そのような注意点に配慮しながら、リサーチの精度を高めるにはどのようにすれば良いのでしょうか。
こちらの段落では3つの対策についてご紹介します。それぞれ、高齢者世代向け、アンケートのボリューム面、回答デバイスに配慮した対策となっています。これらの対策を施して、信頼性あるリサーチデータの確保を試みましょう。
高齢者世代のデータが必要な場合は紙などのアンケート形式を併用する
先ほど、ネット利用者数は年々増加傾向にある点について触れてきました。その一方で、依然としてネット利用に不慣れな層、特に高齢者世代の方にとっては難しい面があることも考慮する必要があります。
そこで、ネットリサーチ利用率が低い層への調査方法もあわせて検討するのが有効です。具体的には、ターゲットに応じて、郵送調査や電話調査など他の方法と使い分けたり、組み合わせたりする方法が考えられます。これにより、各年齢層から均等にデータ取得でき、データの偏りを減少させることができます。
調査の回答しやすいボリュームを考慮する
次に、アンケートのボリューム面についてです。原則として、ネットリサーチは調査協力をしてくれる回答者ありきで成り立つものです。
実際に、一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会が公表した「インターネット調査品質ガイドライン」では、基本方針が4つ挙げられており、そのうちの1つで「調査協力者の回答負荷を意識した調査票を設計する/調査ボリュームの軽減」が挙げられています。そのため、回答者がなるべくストレスなく回答してもらえるよう、実施側も設計について配慮する必要があります。
具体的には、下記のような項目が挙げられています。
- 回答所要時間は10分以内を推奨する
- スクリーニング調査では抽出に使わない質問を控える
- マトリクス形式や自由回答を多用しない
また、質問ごとに回答負荷が異なることも認識しておく必要があります。設問数ではなく、実際の回答負荷を基準に、調査票のボリューム感を調整することが不可欠です。
複数の回答デバイスに対応する
ネットリサーチにおいて、年々スマートフォンからの回答が増加している傾向にあります。日本マーケティングリサーチ協会の調べでは、主要調査会社での回答デバイス率が、2018年時点でスマートフォンが50%を超え、2019年には56%となっています。
一方で、先述の通り、パソコンの方が操作しやすいと感じる層も一定数いると考えられます。そのため、回答率やデータの質を向上させるには、複数デバイスでの対応が必須となります。リサーチサービスを利用する際にも、マルチデバイスに対応したシステムを選択するようにしましょう。
また、デバイスごとの画面サイズの違いにも留意する必要があります。スマートフォンの小さな画面では、見やすさへの配慮と誤操作がないような設計が必要です。スマートフォン、タブレット、パソコンなど、異なるデバイスで同様に回答できるよう整えることで、回答者の利便性向上が見込めます。
見た目だけでなく、内容面においてもマルチデバイス化を意識する必要があります。例えば、パソコンでは設問文や選択肢が全て表示できるのに、スマートフォンでは一部のみが表示され、全体を見るにはスクロールが必要、などといったケースが生じ得ます。そのようなことがないよう、質問文は短く、選択肢は少なくするといった配慮を施しましょう。
アンケート回答時に感じるストレスを極力削減できるような調査票・回答形式の設計を心がけましょう。
まとめ
ネットリサーチは、商品企画、販売戦略、プロモーション施策など、次に取るべきアクションを検討する際に貴重な情報源となります。ネットリサーチを成功させるためには、実施における注意点を把握し、事前に対策を講じることが重要になります。
短期間で多くの回答数を集められ、かつ紙よりも低コストで実施できるネットリサーチで、精度の高い情報を集め、次のアクションに活用しましょう。