ステルス・マーケティングとは?
ステルス・マーケティングとは、特定の商品・サービスを宣伝と気づかれないように消費者に宣伝する行為です。
企業が介在しているにもかかわらず、消費者に宣伝行為を偽ったり隠したりする情報発信を指します。
アメリカではアンダーカバー・マーケティングと呼ばれており、2011年ごろから日本でステルス・マーケティングとして普及しました。
身元・宣伝目的を隠して消費者を騙す側面があるため、問題視されています。
ステルス・マーケティングが問題視される理由
ステルス・マーケティングが問題視される理由は、下記の通りです。
- 消費者の目を欺いているから
- 業界全体の信用を落としてしまうから
それぞれ解説していきます。
消費者の目を欺いているから
ステルス・マーケティングが問題視される理由として、消費者の目を欺いている点が挙げられます。
そもそもステルス・マーケティングは、商品・サービスを宣伝する企業や芸能人、インフルエンサーにお金が大きく動く行為です。
仮にファンであった場合でも、騙された事実は不信感を抱くきっかけになり得ます。
そのため消費者の目を欺く行為として、ステルス・マーケティングは問題視されているといえるでしょう。
業界全体の信用を落としてしまうから
ステルス・マーケティングは商品・サービスだけでなく、業界全体の信用を落としてしまう行為として問題視されています。
仮にステルス・マーケティングが発生すると、業界への不信感が強まり、買い控えなどで大手や中小企業が大きなダメージを受けてしまうでしょう。
つまり事業者や業界全体だけでなく、商品・サービスを利用しているファンにとってもデメリットといえるでしょう。
ステルス・マーケティングは違法なのか
ステルス・マーケティングは、近年の急速なデジタル化によって違法性が強まっています。
SNS広告の発展を背景として、消費者庁は2022年に「ステルス・マーケティングに関する検討会」を開始しました。
検討会で行われた施策は、下記の通りです。
- 関係者へのヒアリングと実態調査
- 複数回にわたる「ステルス・マーケティングを法規制すべきか」の議論
施策の結果、2023年10月1日から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」を景品表示法上の不当景品類及び不当表示防止として取り締まる旨を告示しています。
出典:内閣府告示第十九号
こちらの記事では、マーケティング界隈で注目を集めている「バイラルマーケティング」の概要や事例、戦略について解説しているので、ぜひ参考にしてください。
ステルス・マーケティングの主な手法は?
ここまで、ステルス・マーケティングの概要や問題視される理由、違法であるかについて解説しました。
続いて、ステルス・マーケティングの主な手法を2つ紹介します。
- なりすまし
- 利益提供
ひとつずつ解説していきます。
なりすまし
なりすましとは、企業もしくは個人が自社の商品・サービスと無関係の第三者を装い行われるステルス・マーケティングです。
自社の社員が自社商品・サービスを宣伝すると不審に思われますが、第三者を装うことで消費者に怪しまれずに宣伝を行えます。
ほかには、競合他社の評価を下げるネガティブキャンペーンとして、なりすましで書き込むケースもありますが、法的キャンペーンもあるため絶対に避けましょう。
利益提供
利益提供とは、影響力のある有名人やインフルエンサーに依頼して、自社の商品・サービスを宣伝してもらうステルス・マーケティングです。
利益を提供する方法には、下記の2つがあります。
- 固定報酬をわたす
- 売上に応じた報酬をわたす
有名人やインフルエンサーの宣伝は非常に影響力がある宣伝なので、悪質なステルス・マーケティングと捉える消費者は少なくないです。
しかし依頼した企業側からすると、売上を伸ばせる可能性があるので、怪しまれないようにバランスを鑑みる必要があります。
ステルス・マーケティングの事例は?
ここまで、ステルス・マーケティングの主な手法をお伝えしました。
続いて、ステルス・マーケティングの事例を6つ紹介します。
- ウォルマート
- Zipatoni社
- デビッド・マニング
- Dr.Pepper
- マイクロソフト
- サムスン
ひとつずつ紹介していきます。
ウォルマート
世界最大の小売店であるウォルマートは、2006年10月にPR会社に対して、自社のブランドイメージを改善するために依頼しました。
依頼内容は、一般人カップルを装いブログを開設して、ウォルマートに肯定的な記事を投稿するステルス・マーケティングです。
その後、このカップルは実在していないことが明らかになり、ウォルマートとPR会社に批判が殺到しました。
Zipatoni社
マーケティング会社であるZipatoni社は、ソニーコンピューターエンターテイメントの商品「PSP」を宣伝するために、ステルス・マーケティングを行いました。
概要は下記の通りです。
- Zipatoni社が架空の個人ファンサイトを立ち上げる
- PSPを絶賛して、商品を持っていない読者に向けて、買う方法などを紹介
非常にサイトの完成度が高い点が第三者に怪しまれて、ドメイン検索サービス「who is検索」で確認したところ、Zipatoni社のステルス・マーケティングであると発覚しました。
その後は多くのメディアに取り上げられ、架空サイトにコメントが殺到して炎上しています。
デビッド・マニング
映画制作企業であるソニー・ピクチャーズエンタテインメント社は、自社の映画作品を宣伝するために、架空の映画評論家「デビッド・マニング」を作りました。
デビッド・マニングは、同社の映画や出演俳優を褒めるレビューを行い、多くの消費者から支持を得ていました。
しかし実際は、「デビッド・マニングは存在しない」「ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社のねつ造」であると告発されて、約1億6,000万円の賠償金を支払っています。
また経営陣の2名を一時停職として、今後の宣伝活動に関しては監視体制を強化すると述べました。
Dr.Pepper
アメリカで最も古い炭酸飲料「Dr.Pepper」は、10代のブロガー6人に依頼した件は控えて、新商品に関する記事を書いてほしいと依頼しました。
しかし、それぞれの投稿内容が不自然だったため、投稿した記事がステルス・マーケティングであると発覚しています。
結果として、Dr.Pepperは新商品の公式ページを閉鎖する事態に陥りました。
マイクロソフト
ソフトウェアの開発・販売を行なうマイクロソフトは、同社の家庭用ゲーム機「Xbox One」の販売促進を目的として、ステルス・マーケティングを行いました。
キャンペーン内容は、下記の通りです。
- Xbox Oneを使用している30秒以上の動画を投稿する
- 視聴回数1,000回につき、3ドルが支払われる
上記のキャンペーンがユーザーのメールやSNSで周知されたことで、ステルス・マーケティングが発覚しました。
結果として、マイクロソフトは動画キャンペーン費用として3,750ドルの支払いを命じられています。
サムスン
電子機器メーカーであるサムスンは、2014年のアカデミー賞授賞式の撮影において、意図的に自社製品を使用させたステルス・マーケティングが発覚しています。
内容は、下記の通りです。
- 司会者がハリウッドスターとの自撮り写真をサムスンのスマートフォンを使用して撮影した
- 司会者自身はiPhoneユーザーでありながら、授賞式ではサムスンのスマートフォンを使用していた
当時の自撮り写真はTwitterに投稿されて、投稿から「1時間で100万リツイート」「2日後に320万リツイート」の世界最高リツイート数を記録しました。
結果としてサムスンは、チャリティとして300万ドルを寄付しています。
こちらの記事では、BtoB企業のTwitter活用方法やメリット、デメリットを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
ステルス・マーケティングがなくならない理由は?
ここまで、ステルス・マーケティングの事例をお伝えしました。
続いて、ステルス・マーケティングがなくならない理由を解説します。
- 認識せずにやってしまう
- リスクをわかっていながらやってしまう
それぞれ解説していきます。
認識せずにやってしまう
ステルス・マーケティングがなくならない理由は、認識せずに行なってしまうためです。
例えばステルス・マーケティングについて理解していない企業が、投稿内容に関与している点を明示せず、有名人やインフルエンサーに依頼するケースも違法行為に該当します。
ただし有名人・インフルエンサーの施策に対する取り組み自体は、非難されるものではありません。
施策を行う際には、企業側と有名人・インフルエンサー側の両者がステルス・マーケティングに抵触する項目を明確に理解して、ルールを遵守したうえで施策を実行しましょう。
リスクをわかっていながらやってしまう
ステルス・マーケティングのリスクをわかっていながら実行してしまう点も、なくならない理由のひとつです。
商品・サービスを熟知している人物が、外部の人物に評価・口コミなどを依頼する際は、低コストで効果的に宣伝できます。
つまり高い費用対効果を見込める点から、ステルス・マーケティングのリスクを理解しながらも、実行してしまう企業が存在するのです。
まとめ
今回は、ステルス・マーケティングの概要や問題視される理由、違法になるかどうかを解説しました。
ステルス・マーケティングとは、特定の商品・サービスを宣伝と気づかれないように消費者に宣伝する行為です。
問題視される理由として、下記の2つがあります。
- 消費者の目を欺いているから
- 業界全体の信用を落としてしまうから
また、主な手法として「なりすまし」「利益提供」があります。
本記事でお伝えした事例やなくならない理由も参考にして、自社のマーケティング活動に活かしてください。
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