商談のフェーズ管理方法
BtoBでは営業(フィールドセールス)によるラストワンマイルの対応で勝負が決まります。「商談」というステージの中ではさらに細分化してフェーズ管理を行い、パイプラインやフォーキャスト(予測)の管理を行います。
商談のフェーズ管理は、自社の商材におけるプロセスとマッチしていなければ上手くいきません。フェーズの移行判定基準を曖昧にしないことが大切です。
ここでは一般的なITソリューションの商材をモデルに、各フェーズの概要、確度、定義、移行判定基準をお伝えします。下記で紹介するフェーズ一覧はあくまで一例ですので、自社の商品・サービスに置き換えて適宜、調整してみてください。
フェーズ1 リード以上商談未満
すぐには商談にはならないものの、マーケティングによるナーチャリングやインサイドセールスによるフォローではなく営業が直接接点を持ち続けるリードは、どこにも登録していないと営業がフォローを忘れてしまいます。したがってこの「リード以上、商談未満」をフェーズ1として管理します。
フェーズ1 リード以上商談未満 | 内容 |
確度 | 0% |
定義 | 商談管理の抜け漏れを防ぐためのリード以上商談未満のフェーズ。顧客のビジネス課題に気づいてもらい、それを解決する手段が自社にあるという理解を得る。 このフェーズで最も重要なことは定期的なフォローを欠かさないこと。また、相手が気づいていない課題に気づかせてあげること。多くの会社は自分たちの課題そのものに気づいていない。顧客のビジネス課題を意識してもらい、「このくらいの期間に着手しましょう」という会話ができるようになれば商談として進めるスタートラインに立てる。 |
移行判定基準 | ・自社の製品・サービスで解決可能なビジネス課題を持っている ・意思決定のタイムラインが一定期間内である |
フェーズ2 ビジネス課題の認識
購買検討フェーズを表現する時に使われる「不信、不要、不適、不急」の「4つの不」の中で、フェーズ2は「不要」を突破する段階です。つまり顧客に自社の課題を認識してもらい、「この製品やサービスが必要だ」と理解してもらうフェーズです。「ザ・モデル」ではこのフェーズを、営業活動のプロセスの中で最も重要なフェーズとしています。
フェーズ2 ビジネス課題の認識 | 内容 |
確度 | 25% |
定義 | 顧客のビジネス課題(ビジネスイシュー)、問題点(プロブレム)、解決策(ソリューション)、効果(ベネフィット)の4つを整理する |
移行判定基準 | ・要件詳細確認やデモ、プロトタイプによる検証開始 ・他社製品との比較検討開始 |
フェーズ3 評価と選定
コモディティ型の商材は、いきなりこのフェーズからスタートすることも少なくありません。顧客は他の選択肢である競合他社との比較を行うため、営業はコストだけでなく、自社の強みを活かした提案をすることが求められます。つまり、選定条件を自ら作り出すことが必要です。
フェーズ3 評価と選定 | 内容 |
確度 | 50% |
定義 | キーマン(役職者ではなく影響力を持つ人)とフェーズ 2での4つのポイントを合意し、自社が競合他社に対して差別化できる強みが顧客にとっての選定条件となるように商談を進め、自社製品を選定してもらう。 |
移行判定基準 | 自社製品が選定される |
フェーズ4 最終交渉と意思決定
このフェーズの移行判定基準は正式に稟議プロセスを開始してもらうことにあります。商談の期間を縮めるというのは、このようにお互いにとって何も生み出さない非生産的な時間を最小限にしていくことであって、「早く決めてください」という押し売りではありません。そして商談のスケジュールは顧客ではなく、営業担当者自らがコントロールできます。
フェーズ4 最終交渉と意思決定 | 内容 |
確度 | 75% |
定義 | 顧客と合意した契約に至るまでのスケジュールや契約に必要となるタスクを双方で洗い出して、正式に稟議プロセスを開始してもらう。 |
移行判定基準 | ・Mutual Close Plan(※)を顧客と相互に合意する ・顧客担当者が稟議決済の準備を開始する |
※Mutual Close Plan:自社と顧客の双方で、契約までに必要なタスクをリストアップした一覧表
フェーズ5 稟議決済プロセス
顧客が稟議決裁の準備を開始したら高い確率で受注に結びつきます。しかし一定の確率でフェーズが後退したり、失注につながることもあります。それを防ぐためには「リスク検知能力」が必要となります。
フェーズ5 稟議決済プロセス | 内容 |
確度 | 90% |
定義 | 顧客における正式な稟議決済プロセス、最悪のケースで発生する可能性があるリスクに備えて準備と対応をし、契約を締結する。 |
移行判定基準 | 契約の完了 |
営業マネージャーが見るべき商談の7項目
商談のフェーズを設定しても、営業がそれに沿って実行しなければ意味がありません。きちんとプロセスを回していくためには、営業マネージャーのフォローアップが不可欠です。
しかし忙しい営業にただ指示を出すだけでは上手くいきません。マネージャーは「管理する」という発想ではなく、自ら「現場で何が起こっているかを理解する」というマインドが求められます。そのためにも営業とのコミュニケーションが重要であり、営業ミーティングは有効な手段の1つになります。
営業ミーティングでは以下の項目に注目すると、効率的に概略を理解できるでしょう。
- 受注予定日
- 金額
- フェーズ
- 競合
- 商談日数
- フェーズ滞在日数
- ネクストステップ
目先の数字は大事ですが、同時にパイプラインの積み上げやターゲットアカウントへの仕込みなど、短期と中長期の両方に目を向けなければなりません。業績が順調なときは余裕を持って先の話もできますが、厳しい時は目先の数字にばかり集中してしまい、中長期の計画を立てる余裕がなくなります。
これを回避するためには、あらかじめ営業ミーティングを「パイプライン(※)ミーティング」と「フォーキャスト(予測)ミーティング」2つに分けて実施することを「ザ・モデル」では推奨しています。
※パイプラインとは、商談が受注に至るまでのプロセス管理を意味します。一般的には、提案、見積提出、最終交渉などのフェーズ別管理を行います。
パイプラインについて 9割の営業が勘違いしているパイプラインの考え方
営業部門が売上目標を達成するにはパイプラインを作る必要があります。どんな組織もパイプライン以上の売上を作ることはできません。成果を上げる組織は、すぐに売上に結びつきそうな商談を追うだけではなく、常に少し先を見越してパイプラインの数字を意識しています。
営業チームメンバーにパイプラインの数字に対する意識を高めてもらうために「時間軸」と「確率」に着目することが「ザ・モデル」では推奨されています。
時間軸について
仮に平均商談日数が60日だとした場合、4月1日に初回訪問する案件を受注できるのは、理論上5月30日となります。受注率が25%だとすれば4初回訪問が入っていて、やっと1件の受注です。
仮に3件しかなければ5月30日に受注できる案件はゼロかもしれません。4月に発掘活動に励み、5月上旬のアポを4件取ったとしても、それは5月ではなく、6月末に受注できる1件となります。この感覚を持つことが大切です。
「確率」について
4月1日時点で20件の商談を持っているとします。その中から1件商談が受注できた時、残りのパイプラインは何件かと質問するとほぼ全員が19件と答えるでしょう。しかし受注率が25%であれば1件の受注は3件の失注を意味します。つまりこの場合、1件受注した時に残りの商談は16件しかないのが正解です。
パイプラインミーティングで確認すべきこと
上記のような計算ができる営業は、パイプラインの積み上げを怠りません。実績を上げている営業はパイプラインの数字に敏感です。これらを踏まえ、パイプラインミーティングは以下の項目に注意して実施することが推奨されています。
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