マーケティング戦略の3つの系統とその変遷
マーケティング戦略は大別して以下の3つの系統に分けられます。
- チャネル系戦略
- 情報系戦略
- セールス系戦略
それぞれの系統の概要と、アナログ時代からデジタル時代に移行する段階での、変遷の様子を解説しましょう。
チャネル系戦略の変遷
チャネルとは「経路」を意味します。流通経路や販路、顧客接点(タッチポイント)などを指して「流通チャネル」「販売チャネル」「コミュニケーションチャネル」などと呼びます。
従来のチャネル系戦略は、主として流通チャネルで行われてきました。生産者が作った商品をエンドユーザーの消費者に届けるまでの、ルートや組織をどのように効率的に管理運営していくかがテーマの戦略です。
しかし物を作りさえすれば売れる時代が去り、消費者が複数の同様の商品を比較検討して購入を決める時代になると「販売チャネル」における販促・広告プロモーションの戦略が重要になりました。
やがて、ITおよびインターネットが普及して、デジタル要素がビジネスに浸透していく中で、顧客とのコミュニケーションチャネルが店舗だけでなくなります。
コーポレートサイトやオウンドメディア、SNSの企業アカウント、メルマガなど、スマホを持つ消費者は、いつどこにいても企業やショップとの接点を持てる時代となったのです。
しかも、デジタル系のチャネルは多くの場合、双方向(インタラクティブ)なやり取りが可能となっています。
そのため、コミュニケーションチャネルを駆使したキャンペーンやアンケート、資料ダウンロードや問い合わせへの対応など、コミュニケーションチャネルを舞台とした戦略の重要性が、今日では極めて高まっているのです。
チャネル系戦略の基礎となる4Pと、時代に対応した4Pに付加する考え方について、以下の記事で特集しています。興味がある方はそちらもぜひご覧ください。
情報系戦略の変遷
情報系の戦略は、従来では新聞や雑誌、テレビCMが主な情報発信の舞台でした。そこでは、あくまでも一方通行の、生産者からの情報をエンドユーザーが受け取るのが基本形です。
自社商材に関して、イメージやコンセプトをどの媒体でどうやって発信して、ブランドイメージや認知度を向上させ、購入意欲を高めるかという戦略です。
それらはいずれも、企業側からマスメディアを使って広告を仕掛けたり、チラシやダイレクトメールを配布したり、個別に訪問したりなどで情報を届ける戦略です。
逆に消費者から得る声は「お客様ダイアル」などの一部のチャネルで吸い上げるのみでした。しかし前述のようにインターネットの発達で顧客接点(タッチポイント)が多様化し、それに連動して情報戦略もWebを舞台とする機会が増えてきました。
とりわけSNSや動画サイトによる情報発信は、共有拡散につながるので、やり方次第で大きな効果が期待できます。
社会と経済の情報化やデジタル化、グローバル化などが急速に進む中で、顧客側の興味を喚起する情報に、向こうから反応してもらう戦略も登場しています。
セールス系戦略の変遷
セールス系戦略とは販売戦略のことになります。どういう販売促進策を実施し、どういった広告を打って販売につなげるかという戦略が基本でした。
競合との価格差で攻める価格戦略、価格は据え置きにしつつスペックやサービス内容を充実させる高付加価値による戦略、関連する異業種とのタイアップによる戦略などさまざまな方法があります。
今日では、そういうものに加えて、潤沢なデジタルデータと連携した裏付けを持つ販売戦略が、BtoCとBtoBのどちらの分野でも広まりつつあります。
以上がマーケティング戦略の3系統の概要と、時代の流れに沿った変遷です。ここからは3つの系統別にマーケティングの種類、合計9つのマーケティング戦略を解説します。
なお、マーケティング戦略の実践に欠かせない論理モデル「フレームワーク」については、以下の記事で特集しています。ぜひ参考にしてください。
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現代のチャネル系マーケティング戦略の種類
現代のチャネル系マーケティングを整理すると、以下の3種類となります。
- マルチチャネルマーケティング戦略
- クロスチャネルマーケティング戦略
- オムニチャネルマーケティング戦略
それぞれの戦略を見ていきましょう。
マルチチャネルマーケティング(MCM)戦略
マルチチャネルマーケティングとは、企業が複数の販売チャネルでビジネスを展開する考え方を指します。たとえば店舗展開をする企業が並行してネット通販のチャネルとしてネットモールに出店したり、ECサイトを運営したりすることです。
あるいは、卸業を営んで小売店に商材を卸売りしながら、直営店で直接顧客に販売するのもマルチチャネルマーケティングになります。
マルチチャネルマーケティングでは、それぞれの販売チャネルが独立して機能します。店舗は店舗として、ネットショップはネットショップとして完結しており、在庫管理や顧客管理は別になります。
クロスチャネルマーケティング(CCM)戦略
クロスチャネルマーケティングはマルチチャネルマーケティングと一見同じように見えますが、それぞれのチャネルの在庫情報や顧客情報が連携している点が異なります。
ECサイトで購入した商品の修理やメンテナンスを、情報を連携して実店舗で対応するなどがクロスチャネルマーケティングのスタンスです。SNSを使った実店舗への誘導もこれにあたります。
オムニチャネルマーケティング(OCM)戦略
オムニチャネルマーケティングはマルチチャネルからクロスチャネルに進化する方向性の、完成形ともいえるマーケティング戦略です。
実店舗やECサイト、SNSアカウント、コーポレートサイト、オウンドメディアなど、ひとつの企業の持つ複数ある顧客接点(タッチポイント)のすべての情報が一元化されている状態です。
顧客はどの顧客接点でも違和感なく、シームレスにサービスを受けられます。
なお、基本的な「マーケティング」自体の意味については、以下の記事を参考にしてください。
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現代の情報系マーケティング戦略の種類
現代の情報系マーケティングを整理すると、以下の3種類となります。
- コンテンツマーケティング戦略
- データドリブンマーケティング戦略
- インバウンドマーケティング戦略
ひとつずつ見ていきましょう。
コンテンツマーケティング戦略
コンテンツマーケティングとは、Webコンテンツを武器に、顧客予備軍を集め、顧客に育ててゆく考え方です。主に「オウンドメディア」を拠点として展開されます。
オウンドメディアはホームページ(コーポレートサイト)が企業情報の広報の場であるのに対し、ユーザー向けに客観・中立の立場で有益な情報を発信してブランドイメージを高め、ファンとして顧客予備軍を育てる戦略です。
SEO(検索エンジン最適化)を意識してコンテンツを制作し、自社メディアの記事を検索上位に送り込むことで、自身の課題やニーズに関してネットで検索するユーザーが訪問します。
そこで質の高いコンテンツを客観的な立場で発信し、そのメディアのヘヴィユーザーとなってもらい、次第にその企業のファンとなって商材にも興味を持ち始めてもらうことを目指します。
ポイントはSEO対策で検索の流入数を上げることと、せっかく訪れたユーザーをがっかりさせない、上質なコンテンツを用意しておくことです。
しかし、それは容易なことではないので、SEOのコンサルタント企業のサポートを受けたり、経験豊富なディレクターやライターにアウトソーシングしたりするケースが多いです。
データドリブンマーケティング(DDM)戦略
データドリブンマーケティングは、WebサイトやSNSアカウント、ウェビナーやバーチャル展示会、メルマガなどの多岐に渡るソースから収集される情報を集積して解析し、それをベースに施策内容や仕掛けるタイミングなどを判断する戦略です。
コンピューターの機能向上およびアプリケーションの解析技術の発達で、収集したデータをより効率的に活用できるようになってきました。
これまでマンパワーによる経験値や「勘」に頼っていた部分も、裏付けとなるデータを基準とした精度が高い判断によって組み立てるマーケティングです。
入手できるすべてのデータを包括的に分析して「可視化」することで、従来よりも成功する確率の高いアプローチができます。
インバウンドマーケティング戦略
インバウンドマーケティングとは、こちらから営業をかけるのではなく、多様化した顧客接点(タッチポイント)を最大限に使って顧客側からのアクションを促すマーケティング戦略です。
顧客接点に興味を惹きそうな材料を顧客接点にちりばめて、問い合わせや資料請求を促し、アクションがあった潜在顧客を見込み客(リード)として育てます。見込み客にとって望ましい信頼関係を構築して、見込み客の悩みや課題を寄り添いつつ解決する姿勢を取ります。
カスタマージャーニー(顧客が購入に至るまでの心理や行動の変化のプロセス)のあらゆる段階で、課題の解決をサポートするアプローチによって、顧客としての囲い込みを目指す戦略といえるでしょう。前述のコンテンツマーケティングも、インバウンドマーケティングの一種といえます。
情報系マーケティングを実践するには、現代マーケティングを深く理解する必要があります。そのために、優れた解説本で学ぶことをおすすめします。以下の記事で、厳選して20冊をご紹介しています。
現代のセールス系マーケティング戦略の種類
現代のセールス系マーケティングを整理すると、以下の3種類となります。
- デジタルセールス戦略
- コンサルティングセールス戦略
- アカウントベースドマーケティング戦略
各戦略を詳しく見ていきましょう。
デジタルセールス戦略
デジタルセールス戦略とは、文字通りデジタルテクノロジーを駆使する販売戦略です。これまでのセールスは、見込み客への提案は対面で行うことが当たり前でした。
しかしITの進歩やSFA(営業支援システム)などの登場、パンデミックによる非対面需要の広がりなどにより、加速度的にセールスのオンライン化、デジタル化が進んでいます。
デジタルセールスに取り組むことで、物理的にアプローチが叶わなかった遠方や海外の見込み客に対しても、販売アプローチが可能です。商圏を一気に広げられるのも、デジタルセールス戦略の特徴です。また、1日あたりの販売アプローチ数が飛躍的に向上します。
加えて、データにもとづく科学的な販売アプローチができることも見逃せません。根拠がなく継続するアプローチを排し、明確な裏付けを持つ販売アプローチが展開できます。アメリカで生まれて現在日本でも普及し始めているインサイドセールスは、デジタルセールス戦略の中のひとつの戦術といえるでしょう。
コンサルティングセールス戦略
コンサルティングセールス戦略は従来の売手目線の戦略ではなく、あくまで顧客の課題解決を軸に、解決方法の模索と提案というコンサルティングを行う中で販売に結びつける戦略です。
主にBtoB企業で行われるもので、売る側のスタンスを、大きく転換した戦略と言えるでしょう。
コンサルティングセールス戦略の良いところは、顧客に寄り添う形での真摯なアプローチゆえに、成約できたときは別の関連商材の追加購入(クロスセル)や、本来勧めていた商材より上のグレードの商材の購入(アップセル)などが期待できる点です。
信頼も熟成できるので、一度成約した顧客は長期間に渡って取引を継続できます。企業の成長に有効な戦略ですが、担当者のコンサルティングスキルと一貫した誠実な取り組み、真摯な態度などのヒューマンスキルを必要とします。
アカウントベースドマーケティング(ABM)戦略
アカウントベースドマーケティングとは、BtoB企業がターゲットを大企業などの大口取引が望める顧客(アカウント)に絞って、ピンポイントで最適なアプローチを行う販売戦略です。
「20%の顧客が売上の80%を占める」という有名なパレートの法則の、20%に当たる顧客企業にフォーカスして狙い撃ちします。無駄なアプローチを避け、成果を上げやすい戦略として注目されています。
一般的なBtoB企業の考え方では、見込み客(リード)を広く集めて育成し、成約の確度を高めていってから、本格的に商談のアプローチを仕掛けます。
一方、アカウントベースドマーケティングは、最初から絞り込んだ優良リードにのみアプローチするところが大きな違いです。
大口取引を目指して大企業に特化した販売戦略そのものは、昔からありました。それでも今日アカウントベースドマーケティングがビジネストレンドとして注目されるのは、デジタル要素を取り入れることで、アプローチの精度を高める環境が整っているからです。
BtoBビジネスの世界でもBtoCと同様に、顧客接点(タッチポイント)が多様化しています。そのため、企業別のリアクションの分析が効率的にでき、施策の確度が向上しているのです。
なお、マーケティング戦略と混同されがちなマーケティング戦術について、以下の記事で詳しく取り上げています。そちらもぜひ参考にお読みください。
まとめ
マーケティング戦略は時代の移り変わりに伴って、それに適した形に進化してきました。特にデジタルテクノロジーとインターネットは、情報化とグローバル化を推進したことによってマーケティング戦略に与えた影響は計り知れません。
今回はマーケティング戦略を3系統に分けて、その変遷に触れ、現代のマーケティング戦略を系統別に9種類を解説しましたが、それらは必ずしも別個で存在しません。複数の戦略に重なる要素も多く、相互に関連しあっています。
マーケティング担当者や責任職のみなさんは、ここでご紹介したマーケティングの傾向を理解した上で、柔軟に現代的な戦略を用いて、業績拡大に取り組んでください。
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