ROIとは
ここでは、ROIの概要を詳しく解説します。ROIは、実施した施策の効果やマーケティング部門全体の収益性を確認するために欠かせない指標です。マーケティング担当者であれば必ず押さえておきましょう。
ROIの意味
ROIは「Return On Investment」の略称で、投資費用に対し、利益をどれだけ出せたかを示す指標です。他にも、「投資利益率」や「費用対効果」などと呼ばれます。ROIが高いほど投資の効率が高くなるので、企業はROIが低い事業の予算や人員を縮小し、よりROIの高い事業に寄せる傾向にあります。
マーケティングの効果が可視化できる指標
マーケティングにおいて、ROIは実行したマーケティング施策に対して、どれだけ利益が出たのかを示すために使われます。どの販売チャネルや施策が効率よく収益につながるのか、個別にROIを算出して比較することで明確になります。企業がマーケティングに投下できる予算は無限ではありません。より少ないコストで大きな成果を出せるよう、施策ごとのROIを常に意識して仕事に取り組む必要があります。
ROIの計算方法
ROIの計算方法と利益の出し方は、以下の通りです。
| 内容 |
ROI | 利益÷投資額✕100 ※単位は% |
利益 | 売上-売上原価-投資額 |
ROIが100%を下回っている場合、投資額が利益より低く赤字と判断できます。逆に100%を上回っていれば、そのマーケティング施策は黒字です。定期的にROIを計算して、長期間赤字が続く場合は施策の見直しを検討しましょう。安定して黒字を出しているマーケティング施策がわかれば、その施策に対して予算を増やすなどの意思決定が可能になります。
ROIの計算例
ここでは、AとBの商品を販売していると仮定したROIの計算式を紹介します。
商品の種類 | 概要 | 計算式 |
商品A(黒字) | 利益2,000万円 マーケティング投資500万円 | 2,000万÷500万×100=400% |
商品B(赤字) | 利益1,000万円 マーケティング投資1500万円 | 1,000万÷1,500万×100=67% |
商品AのROIは400%なので、マーケティングにかかった投資コストに対して、費用対効果が高いことがわかります。一方、商品Bは投資コストよりも利益が下回り、ROIは67%という数値です。この場合は、商品Bの投資コストを商品Aに移すか、商品Bのマーケティング手法を根本から見直す必要があると考えられます。
ROIと似た指標
ROIと似た指標には、以下のようなものがあります。
- ROAS
- CPA
ROAS
ROASは、Return On Advertising Spendの略称で、広告の費用対効果という意味です。広告を実施してどれだけ利益を上げられたかを示す数値として使われます。ROASを算出する式は、以下の通りです。
「ROAS(単位は%)=広告からの売上額÷広告費用✕100」
ROASは、どの広告クリエイティブが効果的だったのか、どのチャネルで配信することが効率が良いのか確認するために使われます。ROASを高めるためには、収益を伸ばすだけでなく、無駄な広告費がないか確認して削る努力も必要です。
CPA
CPAは、Cost Per Actionの略称で、顧客1人を獲得するために必要なコストの意味です。CPAを算出する式は、以下の通りです。
「CPA(単位は円)=広告費用÷コンバージョン数」
CPAが低いほど、顧客の獲得効率は高いといえます。CPAはROASと同様に収益性を測る指標ですが、シチュエーションに応じた使い分けが必要となります。CPAは、会員登録や資料請求を狙ったビジネスや、客単価が一定のビジネスにおいて主に利用されます。ROASは、客単価が変動するECサイト等のビジネスに向く指標です。
ROIをビジネスで活用する2つのメリット
ROIをビジネスに活用することで、以下のメリットが得られます。
- 費用対効果の評価が可能
- 事業改善のきっかけになる
費用対効果の評価が可能
2つの事業を比較する際、売上額の多さだけではどちらが成果を出しているのか判断しにくいですが、ROIを使えば、費用対効果を客観的に数字で評価できます。ビジネスモデルが違うとしても、ROIを算出すれば同様に評価や比較が可能です。マーケティングの収益をチェックし、どこに力を入れるべきかを考える上で、ROIは非常に効果的といえるでしょう。
事業改善のきっかけになる
自社事業の改善や、撤退を考える上でもROIは有用です。ROIが低い事業は、実質利益が少なく、会社への売上貢献度も低いといえます。改善策を考えて実行してもROIの数値が上がらない場合には、事業の撤退も検討する必要があるでしょう。
ROIが高い事業に予算を集中できれば、利益が上がり会社の業績アップにつながります。どの事業のマーケティングに力を入れるべきか判断しやすくなるのは、ROIの大きな強みです。
ROIをビジネスで活用する2つのデメリット
ROIをビジネスで活用するのには、デメリットもあります。デメリットを踏まえた上で、自社にROIでの利益数値化が効果的なのかを判断しましょう。
- 長期的な施策の評価はできない
- 利益以外の評価が困難
長期的な施策の評価はできない
事業によっては、成果が出るまでに期間がかかるものもあります。長期的な施策の事業で、ROIを計算し、利益見込みがないからとすぐに撤退の判断をしてしまうのは危険です。ROIは長期的な施策の評価には不向きなため、基礎研究などの成果がでにくい分野で用いるのは、避けるべきといえるでしょう。
しかし、短期的な施策で爆発的な利益が出やすい分野には、ROIが有効です。マーケティングや営業、短期的な投資などを行う場合には、高い効果が期待できます。
利益以外の評価が困難
利益以外の評価ができず、汎用性がないのは、ROIのデメリットといえます。たとえば、企業のブランドイメージや認知度など、数値化しづらい指標の評価はROIではできません。ROIは、あくまで売上や利益といった数値の分析のみに利用できる指標であると覚えておきましょう。
ROIを高める3つの施策
ここでは、ROIを高めるために有効な3つの施策について、解説していきます。
- 新規顧客の獲得と単価アップの検討
- 無駄なコストを削減する
- マーケティングオートメーションツールの導入
一つずつ見ていきましょう。
新規顧客の獲得と単価アップの検討
ROIを高めるには、新規顧客の獲得と客単価の改善をするのが一般的です。新規顧客を効率よく獲得するためには、既存顧客のデータを分析して自社サービスとの相性が良いペルソナを作成し、ターゲットを絞ってアプローチをかけると良いでしょう。
あらゆる層にアプローチするのではなく、対象を絞り込むことで、効果が見込めない層に無駄なコストをかけずにすみます。顧客数がこれ以上増やせないなら、1ランク上の商材へのアップセルや、別の商材をセットで販売するクロスセルで、単価をアップさせる手法も検討してみてください。利益が上がれば、必然的にROIは高まります。
無駄なコストを削減する
売上だけではなく、無駄なコストがないかもチェックしましょう。現状であまり効果がでていない広告コストを減らすだけでも、ROIの数値は上がります。
ターゲットを絞ったり、効果が期待できる媒体にだけ広告を出すなどして、コストの削減を検討しましょう。社内で分析が難しい場合は、マーケティングを専門とする外部のコンサルタントに相談するのも一つの手です。
MAツールの導入(マーケティングオートメーション)
可能ならば、積極的にMA(マーケティングオートメーションツール)を導入しましょう。MAツールを導入することで、マーケティング施策の効率化と、人の手によるミスの防止が同時にかなえられます。以下のような作業は、MAツールでも充分に代行できます。
- 見込み客の抽出作業
- メールの自動配信
- データに関する分析
アタックすべき顧客の分析やメールの送信の自動化などを、正確なツールに任せれば、ROIを高める作業に人材コストをかけられます。
【kyozon編集部おすすめ】ROIを高めるMAツール3選
ROIを高めるおすすめのMAツール、サービスを3つ紹介します。
- Account Engagement
- 配配メール
- Salesforce Sales Cloud
Account Engagement
見込み客の関心を可視化!商談までつなげやすくするBtoB向けツール
・BtoB向けのMAツールを探している
・見込みが高い顧客を抽出しアプローチをかけたい
・リード獲得から成約までのプロセスを一貫でサポートしてほしい
顧客の行動をトラッキングしたり、スコアリングしたりする機能が付いているMAツールです。リアルタイムで通知を送り、見込み顧客の動向を追跡する機能もあります。セールスキャンペーンの追跡も可能なため、最適なタイミングで見込み顧客をフォローできるでしょう。個別化アプローチを自動で実行でき、確実にサービスを購入しそうな顧客を自動抽出できます。
また、営業担当にリストを提供できるため、新規顧客開拓でのROI改善を強力にサポートしてくれるのもメリットです。無料トライアルプランがあるので、自社に合うか試してから利用するか決められるのも嬉しいポイントです。
配配メール
・メールで販促活動の改善をはかりたい
・メールマーケティングにおける配信の業務を削減したい
・ツールに開封率が高い時間帯や文面の分析を代行させたい
メールマーケティングにぴったりの、企業販促活動を支援するツールです。初心者でも非常に使いやすく直観的に操作できるため、まだMAツールを導入したことのない人でも簡単に使えます。コンサルタントがサービスには常駐しており、ノウハウの提供をしてくれるのも特徴です。
自社でメールマーケティングに精通した人材がいなくても、運用支援を受けながら業績の改善に取り組めます。メールマーケティングに必要な分析作業を自動化してくれるのもメリットでしょう。担当者に代わりメールを分類・解析してくれるため、業務の効率化に役立ちます。料金は、気軽に使えるライトのものから本格的なものまでさまざまなプランがあるため、予算にあわせて利用できます。
- 業種:IT / 通信 / インターネット系
- 会社名:-
- 従業員規模:2〜10人
- 部署:マーケティング部
- 役職:係長・主任クラス
Salesforce Sales Cloud
・顧客情報や営業活動を一元化したい
・優先度の高いリードに対しリソースを積極的に投下したい
・リアルタイムで素早くデータ分析をしたい
Salesforceが提供する、クラウドベースの営業支援(SFA)と顧客管理(CRM)システムツールです。リードのスコアリングが可能で、優先度が高いリードに優先してリソースを投下できます。リアルタイムでデータは分析されるため、正確な経営判断をしやすいのは大きな強みでしょう。
データドリブンな営業が行えるのもこのツールのメリットです。部門を越えた情報共有が非常に簡単にできるため、営業活動が効率化します。チーム別にレポートやダッシュボードを作成することができるため、営業担当者だけでなくリーダーや経営層が正確な判断を下すのにも役立つツールです。
- 業種:金融 / 保険系
- 会社名:株式会社FREEPEACE
- 従業員規模:31〜100人
- 部署:営業・販売部門
- 役職:係長・主任クラス
まとめ
ROIは、営業の業績や会社全体の利益を確認するための指標で、マーケティングの効果を可視化するためにも重要なものです。しかし、中長期的な施策の効果は測りづらい、数値化できない指標を計測するのには不向きなど、デメリットも存在します。
ROIを高めるには、新規顧客の獲得や客単価の改善、コストの削減、MAツールの導入などの手法があります。本記事でもおすすめのMAツールを紹介しているため、事業の目的にあったツールを試してみてはいかがでしょうか。