オンボーディングツールとは?
オンボーディングツールは、新規顧客やユーザーがサービスを効果的に利用できるよう支援するためのソフトウェアやプラットフォームです。特にSaaS企業にとって、顧客の成功を確保し、解約率を減らすために非常に重要な役割を担っています。
まずは、カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの重要性を再確認しましょう。
オンボーディングの重要性
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの位置づけ
カスタマーサクセスのフェーズは、大きく以下の3つのフェーズに分かれています。
オンボーディング
(導入期)新規ユーザーが製品やサービスに初めて触れる段階。
初期設定を進め、基本機能の紹介と使い方の説明が中心となる時期。ここで基本的な質問が顧客から多く寄せられる。 アダプション
(活用促進時期)ユーザーが製品の価値を理解し、日常的に使用し始める段階。
活用を促進し、習慣化を図る時期。より深い機能の使用方法や応用的な使い方に関する質問が増える。 エクスパンション
(定着期)サービスの活用が進み、活用が定着している段階。
ユーザーは製品が日常に完全に組み込まれ、より高度な機能も使いこなせるようになる。カスタマイズや連携機能に関する問い合わせが増加する。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングは、顧客との長期的な関係構築の出発点であり、サービスの価値を最大化するための基礎を築く重要なフェーズです。
オンボーディングが重要な理由
適切なオンボーディングには、以下のような効果があります。
■初期体験の最適化
良質なオンボーディングは、顧客がサービスの価値をすぐに理解し、活用できるよう促すことができます。
これにより、顧客満足度が高まり、長期的な利用につながります。
■使用頻度の向上
効果的なオンボーディングは、顧客のサービス利用を促進します。
使用頻度が高まれば、サービスが顧客の日常に不可欠となり、解約のリスクが低下します。
■障壁の排除
初期段階で起こりうる混乱や困難を事前に解消することで、顧客のフラストレーションを減らし、継続利用の可能性を高めます。
■期待値の適正化
オンボーディングを通じて、サービスの正確な機能や利点を伝えることで、顧客の期待を適切に管理し、失望による解約を防ぎます。
■関係性の構築
丁寧なオンボーディングは、顧客との信頼関係を築く機会となります。
この関係性が、困難な状況でも顧客の継続を促す要因となります。
適切なオンボーディングは顧客の成功と継続的な満足を促すことができるため、
顧客の解約率を下げるうえで非常に重要です。
また、導入後比較的早く顧客をオンボーディングさせることが解約率低減に直結するという調査結果も報告されています。
効率良くオンボーディングを行うには
適切なオンボーディングの重要性は明らかですが、多くの企業が直面する現実的な課題があります。
それは、リソースの制約です。
理想的なオンボーディングを実現したいものの、人的資源に限りがあり、すべての顧客に十分な時間と注意を払うことが困難な場合があります。
その課題を解決できる手段の一つが、オンボーディングツールです。
オンボーディングツールは、プロセスを自動化し、効率化することができます。
オンボーディングツール導入のメリット
では、オンボーディングツールを導入すると具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
メリット1:オンボーディングプロセスを効率化できる
オンボーディングツールは、チャットやFAQ機能で基本的なサポートを自動化し、顧客の導入プロセスを効率化することができます。
共通の説明や設定を自動化することで、カスタマーサクセスチームの負担を軽減しつつ、顧客の立ち上げ時間を短縮可能です。迅速な情報提供と効率的なサポートを実現します。
メリット2:顧客ごとのタイミングに合わせることができる
オンボーディングツールを活用することで、顧客の進捗状況や行動に基づいて、最適なタイミングで適切な案内を行うことができます。
例えば、以下のようなことが可能になります。
顧客の行動 | オンボーディングツールのアクション |
初めてアカウントを作成 | 初期設定のガイドを自動送信。 |
特定の機能を利用 | その機能に関連する詳細な使い方を案内。 |
顧客に最適なタイミングで適切な案内を提供することは、顧客満足度とエンゲージメントを高め、長期的な関係構築につながります。
個々のペースに合わせた学習を促進し、サービスの価値を最大化することができます。同時に、サポートへの問い合わせを減らし、重要業務へのリソース集中を可能にします。
メリット3:顧客がすぐに疑問を解決できる
チャットボットやFAQツールは24時間稼働し、顧客が必要な時に即時対応が可能です。これにより、顧客のフラストレーションを減らし、サービス体験を向上させます。
また、時間帯を問わず支援を提供することで、グローバルな顧客ベースにも効果的に対応できます。
結果として、顧客のロイヤリティ向上とチャーンレートの低減に貢献し、ビジネスの成長を支援します。
オンボーディングツールにはさまざまなメリットがありますが、ひとえにオンボーディングツールといってもその種類は多岐にわたります。
オンボーディングツールの種類をご紹介
オンボーディングツールの代表的な種類は以下の6つです。
ツールの種類 | こんな方におすすめ! |
1.FAQツール | ✔ 頻繁に同じ質問を受ける |
2.チャットボット | ✔ リアルタイム、24時間サポートを提供したい |
3.チュートリアル動画作成ツール | ✔ 視覚的な説明が効果的な製品やサービスを提供している |
4.メール配信システム/MAツール | ✔ 顧客とのコミュニケーションを自動化したい企業 |
5.問い合わせ管理ツール | ✔ 複数チャネルからの問い合わせを管理したい |
6.顧客管理ツール | ✔ 顧客データを一元管理したい |
課題や叶えたいことに応じて、最適なツールを選択しましょう。単一のツールだけでなく、複数のツールを組み合わせることで、より包括的かつ効果的な解決策を構築できます。
1.FAQツール
FAQ(Frequently Asked Questions)とは、「よくある質問」のことです。
FAQツールでは、FAQページの作成・管理・分析などができます。
FAQツール導入のメリット
■ノーコードでFAQサイトの構築ができる
コーディングなどの専門的な知識がなくても、直観的な操作でFAQサイトの構築やFAQページの作成・公開を簡単に行うことができます。
■検索ヒット率が高いFAQを作ることができる
検索頻度が高いキーワードなどを分析できる機能があり、検索ヒット率が高いFAQページを作ることができます。人力で検索ヒット率が高いFAQページを作成することは容易ではありません。このため、ツールに任せる大きなメリットでしょう。顧客は少ない検索回数で疑問を解決できるため、ストレスが少なく、結果的に顧客満足度を上げることができます。
2.チャットボット
チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ロボット」を組み合わせた言葉です。
テキストベースや音声ベースのインターフェースを通じて、ユーザーの問いかけに合わせて返事をしてくれるプログラムのことを指します。
- 「ちょっと質問があるけどサポート対応時間外で質問ができない・・」
- 「分からないことがあるけど電話をするのは億劫だな・・」
こんなときにユーザーがいつでも気軽に質問をすることができます。
チャットボット導入のメリット
■24時間対応が可能
チャットボットは24時間稼働し続けるため、顧客がいつでもサポートを受けられる環境を作ることができます。また、質問形式で疑問を解決することができるため、まるで有人のような対応が可能です。これにより、サポートチームの稼働時間外であっても顧客の問い合わせに対応できるため、顧客満足度を向上させることができます。
■問い合わせ履歴の蓄積ができる
チャットボットは基本的に問い合わせ履歴を自動で蓄積していきます。蓄積された問い合わせ履歴を分析することで、顧客がプロダクトのどこでつまずきやすいかを把握することができます。そのポイントを把握し、対応するコンテンツを拡充したりプロダクトを改善したりすることで、更なる顧客満足度の向上につなげるアクションを取ることができます。
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3.チュートリアル動画作成ツール
「チュートリアル動画」とは、ものごとを説明する動画のことを指します。
カスタマーサクセスにおけるチュートリアル動画とは、サービスや商品についての使用方法、業務の手順、システムの使用方法など、これまで「説明書」や「マニュアル」として存在していたものを、動画化したものだとイメージすると分かりやすいでしょう。例えば、「初期設定方法」や「●●機能の有効な活用方法」などがあります。
チュートリアル動画作成ツールは、このような動画マニュアルを専門知識がなくても簡単に作ることができるツールです。
チュートリアル動画作成ツールのメリット
■直感的で分かりやすい
動画は視覚と聴覚を使うため、テキストのみの資料よりも直感的に理解しやすい傾向があります。特にSaaS事業者の場合は、プロダクトがシステムのため、利用画面を実際に動画で映して説明した方が分かりやすい場合がほとんどです。設定が複雑な機能の説明は特に有効です。ただし、動画視聴は時間がかかるため、FAQツールやチャットボットなどと組み合わせて活用するとより良いでしょう。
■より興味を惹きやすい学習機会を提供できる
動画マニュアルの場合、テキストベースのマニュアルと比べて、クイズ形式の動画マニュアルにしたり、オンラインセミナー形式にしたりするなど、より顧客側の興味を惹きやすいようなインタラクティブな学習機会を提供できます。文書マニュアルと比較して面白味が強いコンテンツを作りやすいため、顧客が飽きることなくオンボーディングを進めることができます。
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4.メール配信システム/MAツール
メール配信システムもMAツールも、一度に多数の顧客にメールを送ることができるシステムです。
メール配信システムはメールマーケティングに特化したツール、MAツールはメールマーケティング以外にも高度な機能をもち、一連のマーケティング施策を管理・自動化・効率化することができます。
メールによる効率化を図りたい場合は、まずはメール配信システムを導入してみるのがおすすめです。ツールによっては月額数千円の利用料金で導入が可能で、気軽に始められます。
メールマーケティング | MAツール | |
チャネル | メールマーケティングに特化している。 | 複数チャネルにまたがったマーケティング施策ができる。 |
コスト | 比較的低い。 | 比較的高い。 |
機能 | メール配信機能がメイン。 | メール配信機能だけでなく、顧客管理機能やスコアリング、細かいセグメンテーションなど、高度なマーケティング施策を打てる機能がそろっている。 |
メール配信システム/MAツールのメリット
■顧客の初期設定から応用までを自動でサポートできる
段階的なオンボーディングメールの自動配信をすることが可能です。多くのツールには「ステップメール」という機能が備わっており、あらかじめ設定した順序とタイミングで、一連のメールを自動的に配信することができます。これによって、顧客のサービス利用開始登録直後から、製品の基本機能や初期設定方法を説明するメールを自動で送信することができます。
例えば、以下のようなメルマガを順に送るとオンボーディングに効果的でしょう。
タイミング | メルマガのタイトル |
登録直後 | 【重要】[サービス名]へようこそ!まずはここから始めましょう |
登録から1日目 | [お名前]様、[サービス名]の活用で成果を出すための3つのステップ |
登録から2日目 | 【初心者向け】[サービス名]の基本機能を5分で理解する方法 |
登録から4日目 | 【事例紹介】[サービス名]で成功を収めた企業の秘訣とは |
登録から7日目 | 1週間お疲れさまでした!次のステップで[サービス名]をさらに活用しましょう |
■顧客の興味関心がわかる
ほとんどのツールでメールの開封率・クリック率がわかるようになっているため、各配信の数字を見比べれば、どのようなトピックにより関心があるのかがはっきりと分かります。そこを把握した上で、更にそこを掘り下げるようなコンテンツを発信するなど普段の顧客サポートに活かせば、より顧客満足度を上げることができるでしょう。
■顧客ごとに最適なタイミングで最適なコンテンツを提供できる
顧客の行動に応じて、次のステップや応用的な使い方を紹介するメールを自動で配信できる機能を持つツールもあります。
顧客ごとに最適なタイミングで最適なコンテンツを送ることで、顧客満足度を上げプロダクトの利用を更に進めることに繋がります。
この機能を使えば、例えば以下のことが可能になります。
- 顧客が特定のページを閲覧した際に、その機能に関するメールを流す
- 特定の機能に関するメールをクリックした顧客に、その機能に関するメールを送る
■継続的に顧客とのタッチポイントを作れる
人的リソースをかけずとも自動で継続的に顧客とのタッチポイントを作ることができます。
顧客との接触回数を増やし、定期的にサポートを行うことは解約率の削減に寄与するため、カスタマーサクセス担当者にとって大きなメリットになります。
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5.問い合わせ管理ツール
問い合わせ管理システムとは、さまざまなチャネルからの問い合わせを一元管理するツールです。
見落としや返信漏れを防止し、迅速かつ正確に問い合わせ対応業務を行うことが可能です。
問い合わせ管理ツールのメリット
■問い合わせの見落としや二重対応が減る
近年、顧客からの問い合わせは電話・メール以外に、Webサイトの問い合わせフォーム、チャット、LINE、Facebook、Twitterなど多様化しています。複数のチャネルから問い合わせが来る場合、人力で管理しようとすると見落としなどが増えるケースが多くあります。問い合わせ管理ツールでは、複数チャネルからの問い合わせを一元管理できる他、対応状況も一目でわかるようになるため、見落としや二重対応を格段に減らすことができます。
■チーム内での協業がしやすくなる
問い合わせの担当者を割り当てることができるため、役割分担が明確になる他、メールの対応履歴は全て共有できるため、チーム内でのスムーズな情報共有ができるようになります。例えば、急に担当者が休まなければならなくなったときも、対応した状況がすぐにわかり、引継ぎ不要ですぐに顧客対応を行うことができます。
■テンプレートを活用し返信を効率化できる
テンプレート機能があり、返信を格段に効率化することができます。 例えば、初期設定のマニュアルを送るときは「初期設定マニュアル用テンプレート」、セミナー案内をするときには「セミナー案内用テンプレート」というように事前に登録をしておくことで、一から文章を作らずとも迅速な返信が可能です。これによってオンボーディングのスピードを加速させることができます。
おすすめの問い合わせ管理ツール
▼「あの問い合わせ対応した?」から解放される!
6.顧客管理ツール
顧客管理ツールとは、顧客の基本情報、契約詳細、利用状況などの一元管理ができるツールです。
顧客データの収集・分析・活用を効率化し、顧客のニーズに応じたサービスやサポートを提供することを目的としています。
顧客管理ツールのメリット
■オンボーディング状況が一目でわかる
顧客データを一元管理することができます。SaaS企業のカスタマーサクセスマネージャーにとって、顧客データを一箇所で管理できることは非常に重要です。オンボーディングの状況は顧客ごとにさまざまで、スピードも異なります。顧客管理システムで顧客の顧客の利用状況、問い合わせ履歴や対応履歴などを瞬時に把握することができれば、迅速かつ的確な対応が可能になります。
■次にやるべきタスクが一目で分かる
CRMの中には、顧客ごとに次回やるべきタスクが一目で分かる機能を備えているものが数多くあります。カスタマーサクセス担当者は一人あたり数十社以上の顧客を抱えていることも珍しくありません。このため、瞬時に次回行うべきタスクがわかることは、顧客を効率的にオンボーディングさせることにおいて大きなメリットがあります。
■顧客データの分析を通して解約リスクを察知できる
顧客の利用状況や満足度などのデータを分析し、視覚的に表示することで、解約リスクの高い顧客を早期に特定したり、アップセルの機会を見つけたりすることができます。
■顧客とのコミュニケーションが強化できる
メール、チャット、電話などのさまざまなチャネルを統合し、顧客とのやり取りについても一元管理することができます。これにより、顧客からの問い合わせに迅速に対応し、サポート品質の向上につながります。
オンボーディングツールを活用した成功事例
では、実際にオンボーディングツールを活用した企業はどのような効果があったのでしょうか。
いくつかの成功事例をご紹介します。
チャットボットを活用した成功事例
株式会社テンダ
導入の背景 |
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導入サービス | FAQチャットボット「さっとFAQ」/株式会社サンソウシステムズ |
効果 |
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OLTA株式会社
導入の背景 |
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導入サービス | All-in-one AIメッセンジャー「チャネルトーク」/株式会社Channel Corporation |
効果 |
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同じような質問に毎回人的リソースを割く必要がなくなることは、チャットボット導入の大きなメリットでしょう。
FAQツールを活用した成功事例
株式会社ラクスル
導入の背景 |
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導入サービス | FAQシステム「Helpfeel」/株式会社Helpfeel ※顧客向けサポートとして導入。 |
効果 |
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FAQツールの導入で、顧客の自己解決能力を高め、問い合わせ数の削減と顧客サポートの効率化を同時に実現することができます。
メール配信システム/MAツールを活用した成功事例
株式会社エムティーアイ
導入の背景 |
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導入サービス | メール配信システム「配配メール(Bridgeプラン)」/株式会社ラクス |
効果 |
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メール配信システムを導入したことで、顧客の興味を事前に把握し、その情報を基に的確なアプローチを行うことで、顧客満足度の向上にもつなげることができます。
問い合わせ管理ツールを活用した成功事例
株式会社カカクコム
背景 |
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導入サービス | 問い合わせ管理ツール「MailDealer」/株式会社ラクス |
効果 |
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問い合わせ管理ツールの導入によって、顧客対応の一元化と効率化が実現され、迅速かつ一貫性のあるサポートの提供が可能になります。
まとめ:オンボーディングを成功させるにはツールの活用がカギ
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの成功には、限られたマンパワーで効率的かつ早期にプロセスを進めることが重要です。
そのためには、適切なツールを活用することが不可欠です。これにより、顧客担当者の負担を軽減し、効果的なトレーニングとスムーズな導入を実現します。ツールの活用は、時間とリソースの節約だけでなく、新しい顧客の早期成功にも貢献します。
カスタマーサクセスのオンボーディングにおいて、適切なツールを選び、効果的に活用することで、顧客との強固な関係を築く第一歩を踏み出しましょう。
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編集:平山 理沙