レガシーシステムとは?
まずは、レガシーシステムとはどのようなシステムであるのかを解説します。
システムの特徴や難点などの他、現在注目されているレガシーシステムにおける「2025年の壁」について見ていきましょう。
レガシー化の仕組みとは?
レガシーシステムとは、過去の技術・仕組みが採用されたシステムのことで、最新技術を取り入れにくいといった特徴があります。
もともと使っていた古いシステムの部分最適化を繰り返したり、部分的に最新技術を取り入れたりして、システムが複雑化・肥大化してしまい、次第にレガシー化に陥ってしまいます。
レガシー化に陥っている企業は、メインフレームをはじめ、メインフレームを小型化したオフィスコンピューターを使っていることがほとんどです。
レガシーシステムは、柔軟性及び機動性に課題があるケースが多いのが事実。実際、レガシーシテムのメインフレームは、独自のOSで稼働するものが多いだけでなく、アプリケーションソフトウェアは自社の業務内容に特化させて開発しているケースが少なくありません。
仮にアプリケーションソフトウェアの回収が必要となった場合、社内外を問わずレガシーシステムに精通した人材が対応しますが、本システムに精通する人材の高齢化が進んでいる状況であり、人手不足が問題視されているのが現状です。
上記の理由から、レガシーシステムは「古いもの」「いずれ廃れるシステム」といったイメージが根強いですが、銀行や電話業界などクリティカルシステムが求められる場においては、レガシーシステムのメインフレームが採用されています。
「2025年の崖」とは?
レガシーシステムにおける2025年の壁とは、経済損失にも関わる企業の大きな問題です。
現在、社内でレガシーシステムの問題を抱えている企業が、問題解決に至れなかった場合DXの実現の難易度が高まると考えられています。さらに、レガシーシステム問題に対応できなかった企業は、2025年を境に年間経済損失が生じるリスクが高まると考えられているのです。損失額は最悪の場合12兆円にも及び、レガシーシステム問題を抱える企業としては早急な対策が必要とされています。
ちなみに、2025年に予測されているレガシーシステム関連の問題は、データの活用や、システムトラブルのリスク上昇、コスト面の問題などが挙げられます。次項でも詳しく触れますが、「データの活用・連携の問題」においては、古くなってしまった技術・仕組みで構築されているシステムなので、データの活用や連携がうまくいかなくなってしまう可能性があります。結果的に、近年激化しているデジタル競争で生き残りを図ることが難しくなってしまうのです。
また、「システムトラブル・データ消失リスクの上昇」も懸念点です。古い技術を使用し続け、DX化に対応できないまま放置していると、システムトラブルが発生したり、データを失うなどの問題が起きやすくなります。企業にとって大きな損失となってしまう可能性もあるため、早急な対応が求められるでしょう。
さらに深刻な問題でもあるのが、「予算の問題」です。現代の汎用性の高いシステムは、不具合の発生頻度が少ないなど、高コスパを誇るものも増え、予算を抑えやすいケースも少なくありません。
しかし、独自のシステムを使い続けている企業は、定期的なメンテナンスなどにより維持管理費が高額になりやすく、場合によってはIT予算のうち7~9割を占めることも考えられます。
レガシーシステムの「2025年の壁」は想像以上に深刻となる企業は決して少なくありません。レガシーシステムに課題を感じている企業は、早めの対策が必要となるでしょう。
レガシーシステムを放置してしまうと起きる問題は?
古いシステムの部分最適化を繰り返していくうちに、複雑化・肥大化してしまったレガシーシステム。対策には時間も手間もコストもかかることから、ついつい後回しにされがちです。
しかし、仮にレガシーシステムを放置した場合、どのような問題が起きるのかをきちんと把握しておかなければなりません。
企業の損失を防ぐためにも、レガシーシステムを放置したことによる問題について、以下のポイントを把握しておきましょう。
問題1:システム障害が発生する
レガシーシステムを放置することで起きる問題として、まず挙げ荒れるのが「システム障害の発生」です。
古くなったシステムは老朽化していて、処理能力の低下を招きやすくなります。システムの処理能力の低下は、大切なデータの処理が正常に行われなくなったり、データの消失にもつながったりすることから、企業としてはとても深刻な問題でしょう。
また、システム生涯による影響は、会社全体に及ぶことも考えられます。大規模なシステム障害が発生すると、そもそも業務が進められないといった事態に陥るかもしれません。結果的に事業活動がストップする事態となります。当然、企業の損失も計り知れないものとなるでしょう。
さらに、システム障害の影響が社内にとどまらず、取引先や一般消費者などにも及ぶ場合は、企業の信頼性にも大きく関わります。
いずれにせよ、システム障害を招く要因となるレガシーシステムは、企業の損失に直結する問題を引き起こしかねないため対策が必要といえます。
問題2:管理コストが増大する
レガシーシステムを放置することで、発生すると考えられる問題の一つが「管理コストの増大」です。
古い技術や仕組みで構築されたシステムを使い続けることは、前項でも触れた通り何らかの障害が発生しやすくなったり、不具合の頻度も高まったりします。問題が生じるたびにシステムを修理していては、コストが重なってしまうためIT予算の大部分をレガシーシステムの管理費が占める結果となることも珍しくありません。
実際、経済産業省のDXレポートによると、レガシーシステムの継続的な使用により、メンテナンスコストはIT関連予算の90%を占めると予測されているのです。
レガシーシステム問題を解決するだけで、IT関連予算の配分を適正化へとつなげることは可能。メンテナンスだけで予算を使ってしまうことのないよう、これを機にレガシー化脱却を目指したほうがいいでしょう。
問題3:業務が属人化される
レガシーシステムを放置することは、業務の属人化を招き、企業にとって非常に危険な事態となります。
システムが社内で使用されるようになってから、特定の業務に特化させたり、新しい技術を組み込んだりと、アップデートやプログラムの更新が重ねられてきているレガシーシステム。システム全体を知る人材が一部のみであると、仮にその人材が退職してしまった場合、万が一システム障害や不具合が発生したときに慌てることとなってしまいます。最悪の場合、企業の事業がストップしてしまいかねません。
業務の属人化はレガシーシステムを採用している企業によく見られる問題であるため、心当たりがある場合には速やかな改善が重要といえます。
問題4:IT人材が不足する
レガシーシステムの放置は、現代ならではの働き方に対応しにくく、IT人材の不足を加速させるリスクがあります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、一気に普及したテレワーク。他にも、フレキシブル出勤や時短勤務など、近年はさまざまな働き方が増えてきました。しかし、レガシーシステムを採用している企業の場合、働き方の多様化に対応できない事例が存在します。
たとえば、レガシーシステムの遠隔操作が難しい場合、担当者の出社は欠かせません。場合によっては、特定の処理をこなすためだけに出社するなど、担当者の負担が増えることも考えられます。
働き方の多様化は現代の求職者が求めているポイントでもあり、テレワークの可否も無関係ではありません。
レガシーシステムを採用し続けることが、働き方の多様化に影響を及ぼしている場合、人材の獲得が難しくなることが考えられます。もともと不足気味なIT人材のさらなる不足を加速させる可能性があるでしょう。
レガシーシステムから脱却する方法は?
前項の通り、レガシーシステムを使い続けたり、問題を抱えている状態を放置することは決して好ましいことではありません。むしろ、企業の損失に関わるだけではなく、最悪の場合は企業の存続にも影響する可能性があります。
企業の未来を守るためにも、レガシーシステムの脱却は必須の課題といっても過言ではないでしょう。
そこで、ここからは、レガシーシステムから脱却するための方法をご紹介します。現在、効果的な脱却方法であるといわれている「マイグレーション」「モダナイゼーション」「クラウド活用」の3つの方法を詳しく紹介します。
方法1:マイグレーション
レガシーシステムから脱却するための方法として、まず挙げられるのが「マイグレーション」です。
マイグレーションは「移行」を意味する言葉であり、文字通りシステムやデータを新しい環境へと移行することです。
レガシーシステムで使用しているシステムや保有しているデータは、段階的に移行できる点が特徴。移行時のデータ消失などの深刻なリスクを防ぎやすく、安全性の高さが魅力です。
ちなみに、保有データの移行を行う場合には「データマイグレーション」、システムを移行する場合には「システムマイグレーション」と呼ばれています。
また、システムをクラウド環境に移行する場合は「クラウドマイグレーション」といいます。クラウドマイグレーションは、コストを抑えやすいだけではなく、業務に支障が生じにくいなど、担当者にとっても企業にとってもメリットが大きいのが魅力です。
方法2:モダナイゼーション
モダナイゼーションは、レガシーシステムの悪い部分をすべて取り払い、全く新しくすることで現代の望ましいIT環境に対応させます。
モダナイゼーションでのレガシ―システムの脱却方法は、現代の新しい技術と組み合わせるのが主です。これまでのレガシーシステムの問題を取り去りつつ、システム基盤を新しくできるのが特徴。また、既存のソフトウェアやデータを活かしながら、レガシーシステムの脱却を図れる点もモダナイゼーションならではといえます。
上記の方法であれば、新しいシステムを開発する必要はないので、開発コストはかかりません。最低限のコストでレガシーシステムから脱却できることから、予算に不安のある企業でも安心して導入しやすい方法といえるでしょう。
ちなみに、モダナイゼーションの方法は大きく3つです。1つ目が「リプレイス」です。古いシステムと同等の新しいシステムに置き換える方法です。2つ目が「リホスト」と呼ばれ、既存のシステムを別のシステム基盤へと置き換えます。3つ目が「リライト」と呼ばれる方法で、新たなプログラミング言語を使って、現在のシステムと同等のシステムを開発する方法です。
どの方法が自社に適しているかを考え、必要な方法を取り入れましょう。
方法3:SaaSなどのクラウド活用
レガシーシステムを脱却した後、低コストで運用したいと考えている企業には、SaaSやIaaSなどのクラウドを活用することがおすすめです。
クラウドを活用することで、従来のようなハードウェア上での操作ではなくなり、ハード故障による不具合やシステム障害のリスクを解消できます。メンテナンスの頻度が減り、結果的に低コストで運用しやすくなります。また、クラウドサービスによっては、機能のアップデートも無料提供していることが多く、IT予算の削減にもつなげやすくなるでしょう。
ただし、デメリットとして「クラウドサービスの質・機能に左右されやすい」といった難点もあります。カスタマイズが難しいうえに、パフォーマンスもクラウドサービス側に依存しやすく、万が一サービスが終了した場合に新たなクラウドサービスを探さなければなりません。
信頼できるクラウドサービスを探し、長期的に使えるかを判断したうえで導入を検討してください。
まとめ
レガシーシステムの問題は、古いシステムを導入している企業すべてに該当するといっても過言ではありません。
レガシーシステムの脱却は決して簡単なものではなく、手間や時間、コストがかかるのが事実。後回しにした結果、現代のDX化に遅れをとっている企業もあるでしょう。
現在、レガシーシステムを使用している企業は、「2025年の壁」も視野に入れ、早急なレガシーシステム脱却の計画を立ててみてはいかがでしょうか。