ECサイトの改善の流れ
まず行うべきは現状の分析です。
流入数はどうか、離脱はどこで起きているのかなど課題を発見する必要があります。この課題を発見したら、課題の改善、そして改善後の検証(PDCA)という流れになります。課題発見にあたり、KPIの再設定・再確認を行います。「売上〇〇%アップ」をKPIとする場合、目標はコンバージョン数増加です。そのためにまず現状の客単価を算出します。
・客単価=合計売上÷ユニークユーザー数
例えば、合計売上が50万円でユニークユーザー数が10の場合、客単価は5万円となります。客単価を出すときには、「コンバージョン数」ではなく「ユニークユーザー数」で合計の売上を割ることに注意します。また、KPIとして「売上150%アップ」を設定した場合、不足しているコンバージョンを次のように計算します。
・目標コンバージョン数=現状のコンバージョン数×1.5(KPIで設定した%の1/100)
・不足しているコンバージョン数=目標コンバージョン数-現状の平均コンバージョン数
Google Analyticsで月平均のコンバージョン数を確認し、どこまでコンバージョン数を上げたいのか改善箇所を探すのが課題発見のポイントとなります。
ECサイト改善の課題発見ポイント
ECサイトの改善では、以下のポイントに絞って課題を発見していきます。
ボリュームゾーンの確認
ボリュームゾーンとは、ユーザーの訪問数が多いページを意味します。
すべてのページを改善するのは、時間・コストを要し、ユーザー訪問数の少ないページを改善しても効果はあまり期待できません。優先的にボリュームゾーンの大きいページから課題を見つけていきましょう。このボリュームゾーンの大きいページを確認し、課題を発見することに注力します。ボリュームゾーンの確認には、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを参照しますが、ページビューだけで判断するのではなく、3つの項目から絞り込みます。
・デバイス(パソコン、スマホ、タブレットなどのデバイスごとに分ける)
・ランディング(ユーザーがサイトに訪問した際に最初に見たページ)
・チャネル(Webサイトへの訪問経路をOrganic Search、Paid Search、Referralなどグループ化されたもの)
デバイスの項目ではユーザーがパソコン、スマホ、タブレットどのデバイスでアクセスしてきたのがわかります。デバイスごとにページの見え方が違うので、それによってどのデバイスからのアクセスやコンバージョンが多いのか分析できます。ランディングの項目では、ユーザーがサイトに訪問した際に最初に見たページが判明します。ランディング先からどのページへ遷移しているのか、もしくはどれぐらいの直帰率なのかが判明します。新規のユーザーが、そのページにランディングして、直帰率が高い場合、そのページに何らかの問題がある可能性が高いと考えられます。
また、チャネルの項目では以下のような項目で、どのようにユーザーがページへ訪問してきたのかを知ることができます。
・Organic Search(自然検索)
・Paid Search(リスティング広告からの流入)
・Social(ソーシャルメディアからの流入)
・Referral(別サイトからの流入)
・Direct(直接の流入)
・Other Advertising(他の広告からの流入)
・Email(メールからの流入)
・Affiliates (アフェリエイトからの流入)
・Display(ディスプレイ広告からの流入)
・Other (その他の流入)
上記の項目からボリュームゾーンを絞ることで、ECサイトを訪れるユーザーの属性が見えてきます。この訪問ユーザーの属性を知り、課題発見と改善につなげていきます。
コンバージョン率が高くPVが低い、コンバージョン率が低くPVが多いページをピックアップ
ECサイトを運営していく上で改善しなくてはいけないのは、次のような2つのページです。
・コンバージョン率が高くPVが低いページ
・コンバージョン率が低くPVが多いページ
コンバージョン率が高くPVが低いページは、ユーザーが接触するチャネルを増やし、コンバージョン数増加につなげていく改善が行えます。SEO対策をしてOrganic Searchからの流入を増やす、もしくはリスティング広告をしてPaid Searchからの流入を増やすなど改善を行うとコンバージョンの増加が見込めます。
また、コンバージョン率が低くPVが多いページは、チャネルは確立されているがユーザーが求めているコンテンツになっていない、カートまでの導線においてユーザビリティが低い可能性があります。改善策としてページ公開を取り下げる、もしくはユーザーが探している商品を発見しやすくひと目で理解しやすいコンテンツや導線に改善する必要があります。
ECサイト改善ポイント
ボリュームゾーンを確認し、改善対象のページを発見したら、改修作業に移ります。そのポイントは5つ。
・訪問者数を増やす
・商品を見つけやすくする
・検索オートコンプリートを組み込む
・わかりやすい購入までの導線
・安心感を与える
これらのポイントの根本にあるのは、ユーザビリティが高いページになっているかです。ユーザーが見やすく、利用しやすいUIになっていなければ、KPIの達成は難しくなってしまいます。
訪問ユーザー数を増やす
訪問ユーザーを増やすためには、ECサイトが認知されなければなりません。主な改善方法としては、以下の3つになります。
・Web広告
広告やFacebookやTwitter、InstagramなどのSNS広告は少額予算から始められます。広告経由からの流入を増やし、もしコンバージョン率が上がらなければ、広告の見直しを行います。ランディングページにあわせたキーワードで広告を出しているか、広告文が訴求したいユーザー像と合致しているかを見直しをすることでコンバージョン率を改善することができます。
・検索エンジンからの流入
検索エンジンからの流入強化(SEO対策)も、訪問ユーザー数を増やす改善策の一つです。顧客となるユーザー層が検索しているキーワードを発見し、検索ニーズに合ったコンテンツを提供するのがポイントとなります。
Web広告と比べると効果が出るまで時間がかかりますが、流入が安定してくれば広告にかけるコストを減らすこともできます。
・メディアからの流入
おろそかにしがちなのがメディアへのアプローチです。各種メディアに取り上げられれば、ユーザーにも認知され、流入数が増加します。
新商品の発売やキャンペーンなどはプレスリリースで発表し、IRやPRを活用したメディアからの流入を増やす改善策を練り上げましょう。
商品を見つけやすくする
ユーザーは購入を意識して目的の商品を探していても、商品がすぐに見つからない場合、ページを離脱します。その離脱を防ぐために、ユーザーが目的の商品を見つけやすいページ構成にしなければなりません。
まずは一覧で多くの商品を同時に見せるのではなく、ユーザーがわかりやすいように構造をシンプルにします。1ページに掲載する商品やサービスは1種類に限定し、インパクトのあるビジュアルやキャッチコピーを使って、検索から流入したユーザーを離さない構成にします。そのようなページ構成の中に関連商品や関連記事、おすすめ商品を適切な場所にリンクすることでユーザーの離脱を防ぎながら、サイト内で回遊させることができます。
検索オートコンプリートを組み込む
検索オートコンプリートは単語の一部を入力すると、自動的に商品名やサービス名の候補を表示してくれる機能です。検索入力の補助を行うことで、ユーザーは入力の手間を省けますので、検索結果ページへの導線がスムーズになります。
ユーザーがわかりやすい購入までの導線
商品ページや個人情報の入力、決済画面など、入力の手間を感じると離脱してしまいます。こられを改善するためには、購入までのプロセスを見直しましょう。
・購入ボタンを一目でわかるよう目立たせる
購入ボタンを一目でわかるようページ内で目立たせます。わかりにくいのは、離脱の原因にもなりますので、商品写真の位置やテキスト配置、カラーパレットを意識した構成を考える必要があります。商品写真の下部や横に大きく目立つようにボタンを配置する、もしくは余白と文字サイズを調整することで伝える情報をコントロールします。また、購入ボタンと商品写真のコントラストが同一傾向色になると見辛くなってしまいます。離脱防止、購入の機会損失を防ぐためにも購入ボタンはわかりやすく、目立つように配置しましょう。
・複数個所に購入ボタンを設置する
複数個所に購入ボタンを設置することで、ページ内のどこからでもカートへ遷移できるようになります。ユーザーの購入意欲を逃さないようにファーストビュー、ページ下部などに購入ボタンを設置することで、コンバージョンを高められます。
・入力項目を最小限に抑える
入力項目を最小限に抑えるのも、ユーザーの離脱防止につながります。一般的なECサイトの場合、商品選択→個人情報入力→支払い方法選択→完了というフローですが、カート画面での個数の選択や郵便番号を入力したら住所が表示されるオートコンプリート機能を導入することで、ユーザーの入力の手間も省け、改善につながります。
また、購入手続きが完了する前にアンケートなどを実施すると、離脱の原因にもなります。アンケートを実施したい場合は完了画面後に設置するようにしましょう。
・購入までのステップを見せる
購入までのステップを見せることで、離脱防止にもつながります。入力項目数やステップなどをあらかじめ表示しておくと、ユーザーは購入完了まであと何ステップあるか、手間がかからないのをイメージできます。
・買い物を続けるボタンを設置
最後に、購入完了時の画面にも改善できるポイントがあります。それは、引き続きユーザーに買い物をしてもらう画面設計です。購入完了時の画面に、「買い物を続ける」ボタンを設置し、閲覧履歴を表示させるとユーザーは自身の行動と欲しかったものを思い出します。この「買い物を続ける」ボタンや閲覧履歴の表示はユーザーの回遊性を高め、複数の商品を購入しやすくさせてあげます。
安心感を与える
商品ページにメリットだけでなく、デメリットもしっかり伝えましょう。
デメリットは隠すのではなく、正直にデメリットを伝えることで商品への安心感を高められます。例えば「制作に時間がかかる」というデメリットも、「丁寧に作りこんでいるため、時間がかかる」と言い換えが可能です。メリットとデメリット両方を知ってもらい、それに納得して購入させるコンテンツが必要となります。
レビューや口コミも重要なコンテンツとなります。
実際の使用者や第三者の意見は、ユーザーの購入基準になるほか、レビューや口コミを参考に商品購入するユーザーもいるためです。総務省が発表した平成28年版 情報通信白書によると、レビューや口コミをどの年代でも「かなり参考にする」、「まあ参考にする」を合わせると6割強となり、過半数がレビューをある程度参考にしていることがわかりました。そして、年代が低いほど「かなり参考にする」の割合が高く、若者ほどレビューを参考にして買い物をしている傾向がうかがえます。
参考:総務省資料
また、クレジットカードのロゴやセキュアのロゴを表示させるのも、ユーザーの安心感につながります。サイトのセキュリティがしっかりしている印象をもたせることで個人情報漏洩やカード番号の流出に対する危機感を払拭することができます。不安を持った状態でユーザーに購入を促すのではなく、安心感と信頼を明示することが重要になります。
改善後の効果検証
改善後には施策効果を検証する必要があります。効果検証の際は以下の指標を見るようにしましょう。
セッション数
まず確認したいのがセッション数です。Web広告や検索エンジン、メディアからの流入強化を行ったことによって、サイトへの流入がどのように変化したのか、費用対効果に見合っているのかを確認します。また、回遊率の測定も同時に検証しなければなりません。どのページから入り、どのページで離脱しているのか。コンバージョンに至らないページはどこなのかを洗い出しましょう。
コンバージョン
セッション数が増加すれば、期待されるのはコンバージョン数の向上です。セッション数が増えたにもかかわらず、コンバージョン数が伸び悩んでいる場合どこで離脱が起きているかを確認し、再度改善しなければなりません。コンバージョンに至ったアクションだけでなく、コンバージョンに至るまでの全ての接触メディア・経路の貢献度を測るアトリビューション分析を行うことで、離脱ポイントなど改善ポイントが見つけられます。
コンバージョン率
セッション数やコンバージョン数が増えたならば、コンバージョン率も確認しましょう。コンバージョン率の計算の仕方は次のとおりです。
・コンバージョン率(%)=(クリック数÷コンバージョン数)×100
全体のコンバージョン率向上を目指してサイト改善を行いながらも、どのような流入経路のユーザーのコンバージョン率が高いのかも見極めていくと、どこに費用をかけて改善すべきかが明らかになります。
ツールを導入することでさらに課題が発見できる
Google Analyticsで分析できることはたくさんあります。しかし、ツールを導入することでさらに課題を発見し、サイトを改善することもできます。
ヒートマップツール
ヒートマップツールはユーザーがよく見るセクションやクリックポイントがサーモグラフィーで可視化され、どこがよく見られ、どこで離脱しているのか把握するのに最適です。アクセス解析では、ページ単位で滞在時間や離脱率を見れますが、ヒートマップを導入することで、購入ボタンの色違いによるA/Bテストなど、検証がしやすくなります。
アトリビューション分析ツール
アトリビューション分析とは直接成果に繋がったものだけを評価するのではなく、それまでに接触したものも含めて全てを評価する分析手法です。ビュースルーコンバージョンや、広告クリック後の別チャネルからのコンバージョンなど、直接コンバージョン以外の間接コンバージョンの計測が行えます。より正確にどのチャネルがコンバージョンにつながっているか見えるため、広告や外部メディアのROIやROASを評価・分析できます。
改善のためのPDCAを手早く行う
サイト改善に必要なのは、これまで紹介してきたことを手早く行うことです。このPDCAを回すときに忘れがちなのが、ユーザーファーストであることです。改善にはコストが掛かり、それを回収するために無理なKPIを設定する、もしくはユーザーを無視した改善では効果がありません。いかにユーザーが使いやすく、購入してくれるかを第一に考えながら、ECサイトの改善を行っていきましょう。