今回はオンライン広告において最も重要である指標といっても過言ではない「コンバージョン(CV)」について取り扱います。
実際の成約数とCV数に乖離が発生する理由
実際の成約数と計測上のCV数が乖離する現象を説明するうえで、「コンバージョントラッキング」について理解する必要があります。
「コンバージョントラッキング」とは
「コンバージョントラッキング」とは、出稿した広告に接触したユーザーがコンバージョンに至ったかどうかを測定できる無料のツールです。
コンバージョンとは訪問したユーザーに期待する行動であり、コンバージョントラッキングによりWebサイトまたはアプリ上の様々な行動を測定することができます。
たとえば次のような行動です。
- 商品購入
- 会員登録
- お問い合わせ
- 電話ボタンタップ
- アプリインストール
- アプリ内購入
- 予約
以上はすべて「クリック(またはタップ)」により記録されます。
CV数の測定には「コンバージョントラッキングタグ」が必須!
これらのCV数を計測するためには「コンバージョントラッキングタグ」と呼ばれるコードを発行する必要があります。このコードをwebサイトのページやアプリに設置するとCV数が記録できます。
逆に言えば、このコードを設置せずにCV数を記録することはできません。
CV数と実際の数字に乖離が発生する場合がある
しかしながら、タグをしっかり設置していたとしても、CV数を確認してみると、実際の販売数や問い合わせ数との乖離が発生している場合があります。
そのため、最近は計測ツールを用いて実際にCV数を確認するなどの対策をとる方もいます。
次に、乖離が発生する原因について紹介します。
CV数が実際の成約数から乖離が発生してしまう原因
乖離が発生してしまう原因として考えられるのは次のとおりです。
原因①:広告媒体ごとに重複してCVがカウントされている
ユーザーは様々な広告媒体を経由してコンバージョンに至ることがあります。
複数の広告媒体の広告をクリックしてコンバージョンした場合、コンバージョン経路上にあった広告媒体の管理画面レポートそれぞれにコンバージョンとしてカウントされます。
この場合、広告管理画面上で表示されるコンバージョン数は次のとおりになります。
■Google Ads:1件
■Facebook広告:1件
■Yahoo広告:1件
合計すると3件ですが、実際は1件しかコンバージョンしていません。
つまり、複数の広告媒体で広告を配信しているときに重複のカウントになってしまうということです。
これをどう考える?
アトリビューションの考え方からすれば、上記の広告媒体はすべて最終的なコンバージョンに貢献した広告と考えられ、乖離は単に計測上の問題と考えます。広告の効果は、CV数やCPA(コンバージョン単価)というような媒体それぞれの効果だけで判断せず、全体の広告配信を一連の流れとして判断することが重要となります。
原因②:広告媒体にコンバージョンに「ビュースルーコンバージョン」が含まれている
広告媒体によってコンバージョンとする指標やカウント方法も様々で、これが数字の乖離の理由の一つとなっています。
カウント方法には『ビュースルーコンバージョン』と『クリックスルーコンバージョン』があります。
カウント方法:「ビュースルーコンバージョン」
「ビュースルーコンバージョン」とは、広告が表示されたがクリックしなかったユーザーが、別のルートでコンバージョンに至った数のことを指します。
たとえば、媒体Aの広告を見たユーザーが、後日媒体B経由で広告をクリックしコンバージョンした場合、媒体Aのビュースルーコンバージョンは1となります。
これにより、直接的な広告効果を除いた間接的な効果を計測できます。
カウント方法:「クリックスルーコンバージョン」
「クリックスルーコンバージョン」とは、広告をクリックしたユーザーが直後、または数日以内にコンバージョンに至った数のことを指します。
計測方法に「ビュースルーコンバージョン」が含まれていれば重複カウントになってしまう
特にFacebookは「クリックスルーコンバージョン」と、「ビュースルーコンバージョン」の2種類のコンバージョンを区別しておらず、Facebook広告の管理画面上でそれぞれのコンバージョン数を個別に確認することはできません。
そのため、表示だけされただけで別の媒体でコンバージョンした数も重複して含まれることになります。
原因③:リピート購入の場合のカウント方式が違う
カウントの方式が「ユニークコンバージョン」なのか「総コンバージョン」なのかによって、リピート購入の数え方が異なってきます。
「クリックスルーコンバージョン」の場合、カウント方式は「ユニークコンバージョン」となり、1人のユーザーが何度もコンバージョンに至っても1としかカウントしません。
「総クリックスルーコンバージョン」の場合は、カウント方式は「総コンバージョン」となり、同一のユーザーであってもコンバージョンした回数をカウントします。
両者の違いは、コンバージョンをユーザー単位で捉えるか、アクション単位で捉えるかの違いです。実務的に言えば、リピート購入をカウントするか否かの違いになります。
「ユニークコンバージョン」は顧客獲得に焦点をあてたカウント方式であり、同一ユーザーの2回目以降の購入をカウントしませんので、実売数と乖離が生まれることになります。
その他に考えられる原因
今回は詳しくは解説しませんが、次のような原因も想定できます。
- コンバージョンタグの設定が間違っている
- コンバージョン日と実売日が月をまたいでいる
- ウェブサイトに訪問した後に電話などのカウントできない方法で売上に至った
- 途中でCookie情報を遮断されてしまいトラッキングできなくなった
まとめ
今回は、管理画面上のCV数と実際の成約数との乖離をテーマにご紹介しました。
コンバージョンはネット集客の出口であり、ゴールです。全プロセスの最後に位置する指標ですから、「ピンポイントの視点」と「全体を鳥瞰する視点」のどちらが欠けても、正しい評価ができなくなります。
乖離自体が問題なのではありません。最終地点は広告の成果を最大化することです。それには、目的に合わせてコンバージョンの指標や数え方を使い分け、単純にCV数やCPAだけで一喜一憂するのではなく、ネット広告、ソーシャル、Web、メルマガ等、ユーザーに提供している情報の全体から評価し、次はどうすれば良いのかを考えることが大切になります。
執筆者:宋 尚潤