CRMシステムの導入で押さえておくべき5つのポイント
CRMシステムを導入のための5つのポイントは次の通りとなります。
- ポイント1:基本情報を整理する
- ポイント2:CRMシステムを「導入する目的」を明確化する
- ポイント3:CRMシステムを導入するためのデータを準備する
- ポイント4:最適なCRMシステムを選定する
- ポイント5:CRMシステム導入後のフォローアップ
ポイント1:基本情報を整理する
CRMシステムがもたらすメリットなどを理解していないと、せっかくのシステムを有効活用できません。
まずは、CRMシステムの基本について確認しておきましょう。
CRMとは「Customer Relationship Management」の略であり、文字通り「顧客との関係性を管理する」ことです。
そして、この「顧客との関係管理」を効率化するためのシステムがCRMです。
「顧客」を起点に、その顧客とのさまざまな基本情報や接点情報を一元管理し、これらのデータをもとに分析したうえ、その顧客に合ったプロモーションなども支援してくれます。 各営業員がエクセルなどで管理しているようなデータを会社で一元化し、チームとして最適な戦略を考案したのち、次のアクションに活かせるような形にするイメージです。
CRMシステムを導入するメリット
CRMは、顧客ごとに役職などの基本情報や接点履歴、ニーズ、関心度合いなどの情報を管理できるシステムです。 これらの情報をもとに戦略を立てて実行することによりPDCAサイクルを回しやすくなります。顧客に合わせた提案を行いやすくなり、顧客満足度の向上にもつながります。 また、これらの情報が社内システムに残ることで、特定の営業員の力に依存せず、組織全体として営業力・マーケティング力を強化することも可能です。 もちろん、受注後のフォローなどの情報も残せるので、マーケティングからカスタマーサクセスまで一貫して、顧客ごとの情報を集約することも可能となります。
ポイント2:CRMシステムを「導入する目的」を明確化する
CRMシステムの概要や導入するメリットについて理解できたら、それらを踏まえたうえでCRMシステムを「導入する目的」を明確にする重要になります。
「導入する目的」が明確化されていないと・・・
多くの企業でCRMシステムの導入が進んでいますが、業務への組み込みに失敗してしまうケースも少なからずあります。その大きな要因がシステム導入の目的を明確化できていないことにあり、その結果、実際に利用する現場に全く馴染まないツールができあがってしまうケースも多いです。
たとえば、顧客満足度の向上のためか、売上拡大のためか、営業効率を上げるためなのかなど、企業によって重要視すべき要件も変わってきます。 目的ごとに重複する要素もあるにせよ、何を目的としてCRMを利用するのかを固めておかなければ真価を発揮できないでしょう。 また、システムを導入し実際に活用するのはシステム導入の担当者だけではなく、営業現場のメンバーやマネジメント層です。 目的が明確でないまま導入が進むと、社員への浸透も進まず、せっかくのシステムへの投資効果が薄れてしまいます。
①どうすれば?:自社が持つ課題を分析して導入目的を決定
では、CRMシステム導入の目的を明確にするにはどうすればよいのでしょうか。
大事なことは、自社が抱える課題をしっかりと分析することです。 たとえば、一度商品やサービスを利用してもらった顧客へのフォローが手薄になり、アップセルやクロスセルにつなげられていないのであれば、顧客満足度向上に主眼を置いてCRMシステムを導入するのが適切ということになります。
このように自社の課題を分析することで、CRMシステムを導入する目的が見えてきます。
②どうすれば?:導入目的を社内へ共有
目的を明確にすることができたら、次に重要となるのは、その目的を社内へ共有していくことです。
それというのも、イニシアチブを取ってCRMシステム導入を進めるメンバーと、実際に現場でCRMシステムを利用するメンバーは異なる場合が多いからです。 利用するメンバー側の目的への理解が不十分であれば、逆に「業務が増えた」と捉えられかねません。時間をかけてでも、現場のメンバーにCRMシステム導入の目的を伝達・共有し、理解してもらうことが成功のカギとなります。
③どうすれば?:プロジェクトチームと運用の仕組みを構築
せっかくのCRMシステムも、メンバーによって使い方が異なったりすると効果が薄れてしまいます。すべてのメンバーに導入目的や運用方法を理解してもらい、正しく使ってもらうためには、部署の責任者などを巻き込んでプロジェクトチームを立ち上げ、システム運用の仕組みを構築していくのがよいでしょう。
システムの運用については、チーム内で属人的になってしまうケースもままあるので、メンバーが入れ替わってもしっかりと運用していけるような仕組みを導入初期の段階で固めておくことが重要になります。
ポイント3:CRMシステムを導入するためのデータを準備する
CRMシステムについて理解を深め、導入の目的も明確化できたら、いよいよ具体的な準備に取り掛かります。
データの所在を確認
CRMシステムは顧客データがあってこそ効果を発揮します。
まずは、活用可能なデータはどれか、そしてそのデータは一か所にまとまっているのか、または分散しているのかなどを確認します。
データの集約や移行には、さまざまな部門の協力が必要になるため、あらかじめ社内の体制を調整しておくとよいでしょう。
顧客データ活用のために「獲得」「集約化」を行う
システムを活用していくためのデータを集める必要があります。
新製品や新しいプロジェクトの場合はまだデータが十分にない可能性もあります。 その場合は、データを集めることからシステム本格導入がスタートとなります。
既存の製品やプロジェクトの場合は、データが十分に存在しているのであれば、プロジェクトメンバーが中心となってデータの集約化や成型を行いましょう。
ポイント4:最適なCRMシステムを選定する
データの準備まで目途がついたら、次に行うべきはシステムの選定になります。
CRMシステムは決して安価な投資ではなく、しかも一度導入すると簡単にはリプレイスできない場合も多いでしょう。 そのため、この「選定」は非常に重要なステップとなります。
では、担当者はどのような観点で選定すればよいのでしょうか?
観点①:求める要件を備えているか
CRMシステムの導入において、目的の明確化が重要なことは先にも述べましたが、目的を定めるとおおよその要件も見えてきます。
システムによって特徴や機能が異なるので、現場メンバーに実際の運用面も想定してもらいヒアリングを実施し、必要な機能などを取捨選択していきます。 また、ベンダーの意見に流されることなく、「本当にその機能が自社にとって必要か」を入念に検討しましょう。
CRMシステムに限りませんが、たとえば近年ではシステムの運用面やセキュリティ面の観点で、自社サーバー上にシステムを構築するオンプレミス型か、それともクラウド型にすべきかなどの選択も一つのポイントになります。
観点②:費用対効果
システムに限らず、購買時の意思決定において大きな要素となるのが「価格」ですが、費用が安ければよいかというと必ずしもそうではありません。
特に、CRMシステムのような中長期的な投資においては、費用と得られる効果とのバランスに目を向ける必要があります。
システム導入に際して定めた「目的」に対し、どれだけのインパクトがありそうなシステムなのかを考え、それに対する費用のバランスを見極めることが重要です。 仮に安価で導入できたとしても、当初の目的に沿った効果をもたらさなければCRMシステム導入の意味は薄れてしまいます。
観点③:ベンダーのサポート体制
CRMシステムは長い目で見た投資になります。そうすると、実際に導入してからベンダーから必要なサポートを受けられるかという点も大事な要素となります。
特に、大きなシステムを導入する際は、初めに現場に混乱が生じることも想定されます。メンバーによっては、システムやITそのものに対するリテラシーの差も大きい場合があります。ベンダーのサポート体制についても事前に確認しておきましょう。
観点④:トライアルができるか
ベンダーによる説明やデモなどで、CRMシステムについておおよそのことは把握できますが、やはり実際に使用してみないと分からないこともたくさんあります。
トライアル期間を設けてくれるベンダーも多くあるので、現場メンバー含め実際に試してから導入を決定するのがおすすめです。
ポイント5:CRMシステム導入後のフォローアップ
CRMシステムの導入は、その後の運用体制が確立できるかにより成否が左右されます。導入後にフォローを行わず放置していては、望んだ結果をもたらすことは難しいでしょう。
本格導入に向けて、担当者はどのようにフォローアップしていけばよいでしょうか?
フォローアップ①:利用状況の確認と利用している社員へのサポート
導入後、本格的に利用するのは現場の社員であることがほとんどでしょう。メンバーの数も多く、各々のシステムに対する理解度やスキルも異なる場合が多いです。メンバー全員が整合的に、共通認識を持ってシステムを活用してこそ、CRMシステムはその目的に対しての効果を発揮します。
そこで欠かせないのは、利用している社員へのサポートです。
まずは、しっかりとシステムを利用できているか計測する必要があります。
社員からの指摘や不明点をスムーズにフォロー・解決する体制を整え、利用状況をこまめに確認しましょう。 場合によっては、システムを有効に活用しているメンバーに何らかの形でインセンティブを付与し、積極的なシステム活用を促すのも有効です。
フォローアップ②:ビジネスの変化に伴うシステムの再定義
CRMシステムは、1年などの短いスパンではなく、中長期的に活用していくことで真価を発揮していきます。
長くにわたりCRMを活用していると、自社のビジネスそのものが変化していたり、それに伴って営業戦略や体制などが変わったりすることもあるでしょう。 導入時に重視されていた要件がビジネスの変遷とともに変わっていくことは、変化の激しい現代社会においてよくある話です。 そういった場合は、予算とのバランスも踏まえつつ機能の拡張なども検討するとよいでしょう。
フォローアップ③:社内エヴァンジェリストの育成
CRMシステムの活用の成否は、いかに現場レベルのメンバーにその利用の目的を理解させ、システムを目的に合わせて活用してもらえるかに懸かってきます。
この点を念頭に置いてシステム導入の担当者は奔走するわけですが、担当者だけではシステム活用を浸透させることは難しいでしょう。 そこで社員のほかのメンバー、できれば現場のメンバーを巻き込んで「社内エヴァンジェリスト」を育成すると、システム活用の浸透が加速します。
「エヴァンジェリスト」とは「伝道師」という意味で、文字通り現場の目線でCRMシステム活用の有効性や具体的な使い方をほかのメンバーに浸透させていく役割です。 特に規模が大きく、人数の多い組織においては社内エヴァンジェリストの育成も大切になります。
まとめ
CRMシステムの導入は、決して安い投資ではなく、しかも社内の関係者も非常に多くなるため、導入の中心となる担当者にとって、非常に大きな仕事となります。しかし、CRMシステムの活用は会社の売上や利益を大きく伸ばす可能性もあり、プレッシャーが大きい反面、さまざまなリターンを得ることが見込めます。
まずはCRMシステムそのものの理解と、自社の課題にもとづいたシステム導入の目的を明確にしましょう。そのうえで、現場メンバーの意見も踏まえて要件決めやシステム選定を行い、現場メンバーのフォローを行いながら導入を進めていくとよいでしょう。
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