顧客をより深く理解するための因子分析・クラスター分析とは?【いつまでも「性別」や「年齢」による分類で顧客分析していませんか?】|デロイトトーマツグループ

2020年6月15日

昨今において、インターネット調査は簡単に、かつ低予算で実施できるようになりました。マーケティング領域においても、顧客のニーズを把握し、有効なマーケティング施策を検討する際に、インターネット調査を実施されている方は多いと思います。 ご承知の通り、マーケティング施策を検討する際には、顧客分析を通じ自身の商品やサービスのターゲット顧客を正しく捉えることは極めて重要なテーマです。 一方で、分析に不慣れであるが故に、調査結果に対して「性別」や「年齢」による分類など、一般的な切り口でしかターゲット顧客を分析できていない、という悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。 本記事では、調査結果を「性別」や「年齢」ではなく「顧客心理」に基づき、顧客を”意味のある形”に分類することで、ターゲティング精度の向上に活用可能な分析手法「因子分析」「クラスター分析」について解説します。

顧客理解の因子分析とクラスター分析

 

因子分析・クラスター分析とは?

まず、「因子分析」「クラスター分析」それぞれについて、簡単に概要を解説します。

 

因子分析

  • 設問への回答結果に共通して関係する心理要因を抽出することができる分析手法です。
  • 例えば、「顧客の購買行動をアンケートにて質問し、それらの購買行動に共通する顧客の購買心理を把握する」ことに活用可能です。
  • 具体的には、「モノがまだ使えるなら、新しいものは買わない」「多少値段が高くても、質が高いなら許容する」「衝動買いをしない」などの購買行動の裏には「合理性を重視する」という心理要因が隠れている可能性があり、その要因を発見する分析です。
概要:因子分析

 

クラスター分析

  • 性別・年齢・居住地などだけでなく、心理要因等を含めた様々な変数を基に、集団を特徴のあるグループに分類する分析手法です。
  • 例えば、「因子分析で明らかにした購買心理を基に、顧客を類似するグループに分類する」ことが可能です。
    ※分析においては「セグメントに分類する」と表現します
概要:クラスター分析

実務上では、因子分析にて顧客行動を下支えする心理要因を特定した上で、その心理要因を心理的変数として扱い、クラスター分析にてセグメントに分類することが多くあります。

 

因子分析・クラスター分析のポイント(アンケート設計時)

ここまでは簡単に概念について解説してきました。ここからは、具体的な実務におけるポイントについて解説をしていきます。

まず、調査アンケート設計時のポイントについて解説します。

 

因子分析

  • 因子分析は顧客の行動の裏側に隠れる心理的な要因を「発見」する分析ですが、実際には、アンケート設計時点において、「この質問の組み合わせで〇〇という心理要因が出現するだろう」という心理要因仮説を構築します。
  • アンケート設計の際は、心理要因仮説1つあたり、その要因を説明する質問を一定数以上アンケートに盛り込むことが必要です。
    • 分析結果によっては、すべての質問が想定通りに心理要因を説明するとは限らないためです。
    • 因子分析は、複数の質問に”共通する”心理要因を特定する分析ですので、分析結果において、1つの心理要因を説明する質問数が少ない場合、顧客の行動を下支えする共通の心理要因を見出せず、顧客を”意味のある形”に分類することができない可能性があるためです。
    • したがって、我々が実施する実際のプロジェクトでは、心理要因仮説1つあたりに、少なくとも5個以上の質問を割り当てるようにしています。
  • また、回答者のほぼ全員が同じ回答をするような質問文は避けることが必要です。回答者のほとんどが「そう思う」と答える質問では、顧客を区別するための心理要因の「差」が明確にならないためです。
  • 分析の観点では、選択肢点数が小さい方を「全く思わない」、大きい方を「とてもそう思う」という順序にすると、集計時の負荷を低減することができます。
    • 例えば、「全く思わない(1点)」~「どちらとも言えない(3点)」~「とてもそう思う(5点)」のようにスコアを振ります。
    • 選択肢数は5択が一般的ですが、4択・7択などでも問題ありません。
    • 心理要因を出現させるための質問の中で、ベクトルが逆(例えば、「合理性を重視」という心理要因を導くために、あえて合理的ではない質問の仕方をするなど)の質問を置く場合は、分析時にポジティブ・ネガティブを逆転させる処理が必要です。
アンケート設計ポイント
分析時のポイント:因子分析

クラスター分析

  • 因子分析結果を基にクラスター分析を行う場合、クラスター分析結果は因子分析の結果に依存するため、設計時の留意点はありません。
  • 因子分析を介さない場合は、一般的なアンケートのように選択肢数が4-7個程度の設問や数量を問う設問などを設計します(名称などを問う設問も可)。

 

因子分析・クラスター分析時のポイント(分析時)

アンケート設計時のポイントに続き、ここからは分析時のポイントについて解説していきます。

 

因子分析

  • アンケート回収後は、質問ごとに回答者の回答傾向に差があることを検証しましょう。因子分析に用いた際に、心理の「差」として使えるかどうか判断するためです。
  • また、因子分析を行う方法はいくつかあり、事前に構築した仮説について最も解釈しやすい分析結果となるよう、複数方法にて検証することが重要です。
    • 我々が実施する実際のプロジェクトでは、1日で30パターン程度を検証することもあります。
  • 分析結果において、心理要因1つに対して、最低でも3つ以上の質問で説明されている必要がある、というのが一般的な見解です(ですので、調査設計の時点では、余裕を持って心理要因仮説あたり5個以上の質問を設計します)。
  • ただし、以下の条件を満たす場合は、心理要因を説明する質問が3つ未満でも、心理要因として取り扱う場合があります。
    • 個別心理要因の意味は該当する質問群から心理要因の意味を解釈可能であること
    • 他の心理要因との関係性において、意味が解釈可能であること
    • 当初の仮説に合致すること
    • 複数分析方法で心理要因を説明する質問として出現し、心理要因に対する各質問の説明力が強いこと
分析時のポイント:因子分析
因子分析のアウトプットイメージ

クラスター分析

ここからは、クラスター分析のポイントについて解説していきます。

  • クラスター分析は、因子分析同様に分析方法が複数あり、方法によって分析結果が変わります。したがって、意味のあるセグメントに分類できる分析結果が出るまで分析を繰り返すことが必要です。
    • 具体的には、クラスター分析の結果ごとに、各セグメントについて様々な分析を行い、それぞれが意味のある区分になっているかを検証することが必要です。
    • 例えば、自社の顧客のうち、20代男性で合理性を重視する層がセグメントの1つとして出力された際に、別の情報と組み合わせ購買傾向を分析したとします。この際に、衝動買いをしたり、芸能人のおすすめを購入したりする購買傾向が出現してしまうと、セグメントとしてのつじつまが合わないため、再度別のやり方でクラスター分析する必要がある、というように考えます。
  • したがって、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、因子分析と組み合わせてクラスター分析を実施する場合には、クラスター分析の結果が意味のある区分になっていると判断できるまで、因子分析まで遡り繰り返し分析を行うことが必要となるケースも往々にして存在します。
    • 我々が実施する実際のプロジェクトでは、クラスター分析のみで1~2日で50パターン以上検証することもあります。
  • クラスター分析の結果は、一般的に基本属性などの項目で検証しますが、それだけでは不十分であることが実情です。
    • 限定された項目のみの検証で止めてしまうと、「クラスター分析したが、意味のある示唆は得られなかった」のようになりがちですので、何度も様々な項目に対し深く検証することが必要です。
    • 我々が実施する実際のプロジェクトでは、基本属性に加え、心理要因や実際の購買行動(検討理由、情報取得チャネル、購買チャネルなど)、購買結果(商品種類、単価など)など幅広く検証していきます。
    • 何度も深く検証したセグメントの中で最も解釈性の高い結果を最終分析結果として採用します。
クラスタ分析時のポイント
クラスター分析のアウトプットイメージ

 

まとめ

いかがでしょうか。

顧客を”意味のある”セグメントに分類するためには、因子分析・クラスター分析を組み合わせ、「複数パターンを深く検証すること」が重要であることをご理解いただけたと思います。

実務で分析される際にはご留意いただければ幸いです。

 

 

著者紹介

デロイトトーマツグループ コンサルタント

山口 翔太

日系商社を経て現職。参画後は一貫してマーケティング領域のプロジェクトに従事。

放送業界での高度統計解析を用いたマーケティング戦略立案支援、保険業界での2nd/3rdデータ活用によるマーケティング施策高度化支援、他

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